これで行きます。
今回は、セシリアとの接触。
セシリアの発言についてのツッコミと、決闘の約束。
強引な展開です。
「千冬さん!」
「箒か…。」
「あの…。」
「待て、場所を変える。」
千冬は、箒を連れて、裏校舎に行った。
「千冬さん、彼は…、一夏…でしたよね?」
「…ああ。」
「どうして!? 死んだと聞いてました!」
「生きていたんだ…。」
「今、一夏はどこに!?」
「医務室にいる。」
千冬がそう言うと、箒は踵を返して駆けだそうとしたが、千冬に掴まれて止められた。
「なぜです!?」
「…奴がいる。」
「やつって……?」
「椎堂ツムグだ。」
「! あれは本物の椎堂ツムグなんですか!?」
「奴が一夏の傍にいる。奴がいる限り一夏に近づけん。」
「なぜ!?」
「それは…。」
ここで医務室であったことを箒に話すべきなのか、千冬は躊躇した。
「すまない…。」
「なぜ、謝るのです?」
「私の力が至らないばかりに…。一夏は、一夏は…。」
「千冬さん…。」
箒は、こんな弱った千冬を見たことがない。そこまで彼女を追い詰めるようなことがあったのか?
その時、授業開始のチャイムが鳴った。
「…授業が始まる。教室に戻れ。」
「ですが!」
「いいから戻れ。」
「っ…。」
千冬に強く言われ、唇を噛んだ箒。
言われるまま教室に戻ると、イチカがいた。箒の隣の席だった。
「一夏!」
「……。」
「一夏?」
「はいはーい。篠ノ之さん。授業に集中、集中。」
教室の後ろに立って背中を壁に預けているツムグがいた。
箒は、ツムグの方を睨んだ。だがツムグは、ヘラヘラした顔を崩すことなくそこにいた。
やがて授業が始まり、その後、クラス代表戦の代表を決めることになった。
クラスの女子達は、こぞってイチカを推薦した。これは、ISの男性操縦者だからであろう。
「な、なんで俺が…。」
「まあ、珍しいからねぇ。やっぱ売りにしたいんだろうね。」
「納得いきませんわ!」
そこへ異議を唱えたのが、このクラスにいるイギリスの代表候補生、セシリアだった。
「たかがISを動かせたからと言って、素人の男を代表にするなどどうかしていますわ!」
「俺だって好き好んで動かしたわけじゃないぞ。」
セシリアの言い分に、ムッとしたイチカがそう反論した。
「まあ! なんですのその態度は!」
「やりたきゃ、あんたが勝手にやれよ。なんで立候補しないんだよ。」
「それは、確かにその通りだね。」
ツムグは、イチカの言い分に同意した。
そしてカッとなったセシリアは、とんでもない爆弾を落とした。
「わたくしは、物珍しいという理由で極東のサルにクラス代表にさせるのは困ると言っているのですわ! わたくしは、このような文化としても後進的な島国にまでISの技術を修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭もございませんわ!」
「こらこらこらこら。」
「あなたこそなんなんですの! まったくたかが教科書に載ってるだけで男が歩き回っていいというわけであるませんわよ!」
「いや、そうじゃなくて。周り、周り。」
「なんですの? …っ!?」
セシリアは、周りからの視線に気づき顔色を無くした。
「セシリア・オルコットさん。イギリスの代表候補生がそんな異文化差別発言をしたら…、国際問題…。しかもここは、日本だし、ISを作ったのは、日本人だし、ブリュンヒルデって呼ばれてる伝説的なISの装者も日本人だけど?」
ツムグが、あちゃーっとわざとらしく額を押えて言った。
「オルコット。」
「っ、お、織斑…先生…。」
「今の発言は、代表候補生としてあるまじき発言だ。このことは、正式にイギリスに通達する。」
「そ、それだけは!」
「ならば、謝れ。そして先ほどの発言を撤回する誠意を見せろ。」
「うぅ……、み、皆さん…、ご、ごめんなさい。先ほどの発言を撤回しますわ。」
「馬鹿だな~。」
「確かに。」
「っ! そこの二人、なんですの!? わたくしが頭を下げているというのにその態度は!」
「だって、代表候補生の癖にあんな発現軽々しくできるってことは、普段からイギリス以外を馬鹿にしてるってことだろ?」
「そんなことはありませんわ!」
「じゃあ、なんなんだよ、さっきの発言は!」
「っ! 決闘ですわ!」
「はあ?」
「先ほどからわたくしを馬鹿にするようなその態度、もう我慢なりませんわ! わたくしが直々に叩きのめして、その態度を改めさせますわ! そしてこの学園内を歩けなくさせてあげますわ!」
「なんでそうなるんだよ?」
「イチカ! おまえは、挑発し過ぎだ。オルコットも落ち着け。」
「いいえ! ここで引き下がっては、わたくしの負けですわ!」
「……いいぜ。その喧嘩、買った。」
「イチカ!?」
「おー、言うねぇ。」
驚愕する千冬。反対に感心するツムグ。
「ちょうどイチカの専用機ももうすぐ届く頃だし、発注元もデータ欲しがってるからいいんじゃないか?」
ツムグは、ニヤニヤと笑った。
そして、パンパンっと手を叩いて。
「じゃあ、十日後。クラス代表を賭けて戦うってことでオーケー?」
「なぜおまえが決める!?」
「俺の発言権は、世界機構規模で保証されてますよ。織斑先生。」
「なっ…。」
千冬だけじゃなく、クラス中がその言葉に固まった。
「じゃ、そういうことで。頑張ってね。二人とも。」
ツムグは、イチカとセシリアを交互に見てそう言った。
***
「なぜ、あんな風にオルコットに喧嘩腰になった?」
「……イライラしたから。」
一日が終わった後、医務室でイチカは、千冬にそう言った。
「この学園に来てから…、いや、学園に行くことが決まってからずっとだよ。なんで俺がって…、それにあいつの発言も酷かったから…。」
「一夏…。」
「俺は見世物なんかじゃない…。クラス代表なんて嫌だ。」
「でも喧嘩は買ったんだから、勝てば代表だ。それとも、わざと負ける気?」
ツムグの言葉を聞いて、イチカは、ツムグを睨んだ。
「誰が負けるかよ。喧嘩を買ったのは俺なんだから、負ける気なんてない。」
「うんうん。その意気その意気。」
ツムグは、笑いながらうんうんと頷いた。
「しかし、一夏の特訓はどうする気だ?」
「俺がするよ。」
「おまえは、ISを使えないだろう。」
「使えるよ?」
「なんだと!?」
「使おうと思えば使える。使おうと思わなきゃ使えない。正直邪魔くさいけど、イギリスの専用機相手を想定した特訓はしなきゃね。」
「結局、あんたが相手かよ…。」
「特訓も、今後の経過を見るための大切なデータ取りだからね。俺がついてないと何が起こるか分かったもんじゃない。心臓がまだ万全じゃない以上、それは避けられない。」
「…ちくしょう。」
イチカは、吐き捨てるように言った。
「私も特訓に付き合う。」
「それはダメ。」
「なぜだ!」
「それじゃあ、織斑先生が一人の生徒を贔屓していることになる。あなたは、教師だ。あくまでも公平であるべきなんだ。ブリュンヒルデの二つ名が仇になったな。」
「っ!」
「それに、ただでさえ世界機構が後ろ盾でついてるんだし、これ以上のハンデはないだろう。…んで、守代(もりよ)ちゃーん。特訓はいつからできそう?」
守代とは、前回千冬に対して冷静に対処した初老の女のことだ。
ちなみに、彼女は、イチカの体の調整と経過を見るチームのリーダーでもある。
「ナノマシンの調整を今夜控えているので、明日からならいいですよ。」
「じゃあ、明日からだね。」
「分かった…。」
「一夏…。」
「なに?」
「…無理だけはするな。」
「…うん。」
千冬の泣きそうな声に、イチカも泣きそうなりながら頷いた。
***
医務室から出た千冬を、箒が出迎えた。
「千冬さん…。」
「ずっとそこにいたのか?」
「一夏の特訓は、あいつが?」
「聞いていたか。」
「……一夏は、昔はああじゃなかった。」
「ああ。だがそうならざる終えない状況に立たされているんだ、あいつは。」
「なんだったら、訓練の始終の見学する? 篠ノ之箒ちゃん。」
いつの間にか医務室の戸から顔を出していたツムグがにやついた顔で言った。
「き、貴様…、どういうつもりだ。」
「どうって? 織斑先生がついていられないなら、幼馴染がついててやってもいいんじゃないかって思って。それだけ。」
ツムグの口から、イチカと自分が幼馴染だということが吐かれ、箒は目を見開いた。
「なんで知ってるかって? 君とイチカの出身校が途中まで同じだったからね。調べればすぐわかるって。」
ツムグは、なんてことはないと両手をすくめた。
「箒…。すまないが…、出来うることなら、一夏についててやってくれないか?」
「千冬さん…。はい。」
申し訳なさそうに言う千冬に、箒は頷いた。
「じゃ、決まりだね。明日、全部の授業が終わったら医務室へおいで。」
ツムグは、そう言うと、医務室の中に戻っていった。
医務室に戻ったツムグの内ポケットにある通信機が鳴った。
「はいはーい。…えっ? マジで? やるの? 別にいいけど、いきなりは、かなりショッキングだと思うよ? あっ? 戦場におけるメンタル強化のため? ISって宇宙開発の目的のはずなのに、すっかり兵器だもんねぇ…。あっ、こっちの話。じゃっ。」
ツムグは、通信機をきった。
ふと見ると、イチカがツムグを見ていた。
「なに?」
「あんた…、何する気だよ?」
「何するって…、頼まれごとだよ。上からのね。」
ツムグは、何のことはないと言いたげに両手をすくめた。
先ほどのツムグの言葉から、イチカは嫌な予感がした。
次回は、特訓回かな。
白式がセシリア戦との前に到着します。
ツムグは、使おうと思えばISが使えるということにしました。ただ本人的には、邪魔くさいと思ってる。
セシリア戦イベントでは、ツムグが学園に呼ばれた本当の意味が行われる予定です。