ツムグの頭がパーンします。注意。
教室でのひと悶着から、十日後。
ついにセシリアとの決闘の日を迎えた。
先に試合会場のステージに立ったセシリア。その数分後からイチカが白式を装備して来た。
「あら? 逃げずに…、って…、どうしましたの?」
「…別に。」
セシリアが嘲りの表情で迎えようとしたが、まず一夏の顔色の悪さにギョッとしてしまった。
なんというか、ゲッソリしている。もうなんか修羅場を潜り抜けましたっと言う感じだ。
「だ、大丈夫ですの?」
「…敵の心配してる場合かよ。」
「まあ! 人が心配しているのになんですの、その態度は!」
「とっとと始めるぞ。」
そして、試合開始のブザーが鳴った。
「お別れですわね! 踊りなさいブルーティアーズ!」
「ふん!」
早速ブルーティアーズの四つのビットがレーザーを発射して来た。さらにライフルにより追加射撃も含まれた。
イチカは、鼻息を思いっきり漏らすと、身を低くして、左右にステップを踏みながら最速で全部避け、セシリアの目と鼻の先に接近した。
「えっ?」
セシリアは、キョトンっとしてしまった。
「うらあああああ!」
「きゃあああああ!」
セシリアが咄嗟に両手で顔を庇うように動くと、イチカは、セシリア本体を無視して、周りのビットを切って破壊した。
「えっ? あ…。」
「弱いな…。」
「なっ!?」
「ちきしょう、なんのための特訓だったんだよ!」
イチカは、セシリアの腹に蹴りを入れて転がした。
しかしすぐにセシリアは、態勢を整えた。
「わ、わたくしが弱い…!?」
「敵が目の前に接近しただけで咄嗟に手で頭庇うなんてさ…。普通ならそこで近接武器で応戦だろ。」
「っ! 言いましたわね!」
セシリアは、近接武器であるインターセプターを展開した。
「ブルーティアーズは六機あってよ!」
「おまえ、それ頼りかよ!」
新たなビットから放たれたのはミサイルだったが、イチカは、雪片でそれを切り、セシリアに雪片を切り上げるように刃を振った。
セシリアは、それをインターセプターで、迎え撃つが素早く振られる雪片により根元からインターセプターが切られた。
「そんな!」
「近接攻撃は得意じゃないみたいだな!」
「くっ! 離れなさい!」
「うるせぇ!」
叫んだイチカは、雪片を振り回し、どんどんセシリアのSEを削りまくった。ただし本体を避けて。
『セシリア・オルコット。全武装破壊により、試合続行不可能と判断。よって、勝者。イチカ。』
試合終了のブザーが鳴り、そんな放送拡声器からツムグの声が聞こえ、そう言った。
「……。」
「ま、待ちなさい!」
「試合は、俺の勝ちだ。じゃあな。」
追いすがるセシリアを振り切り、イチカは、ピットに戻った。
セシリアは、知らない、この後に、恐ろしいイベントが待っている…。
***
ピットに戻ったイチカは、白式を解除し、用意されていた椅子に座り込んだ。
すぐにイチカの経過を見るチームのスタッフ達が、イチカの体調チェックに入る。
その間、離れた場所で、千冬は、ツムグと会話した。
「たった十日で、代表候補生を倒させるとはな…。」
「イチカのセンスがかなり良いからだよ。さすがは、ブリュンヒルデの弟だ。」
「そうか…。」
そう言われても千冬は、複雑そうな顔をしただけだった。
「それに彼女自身にも慢心があっただろうね。代表候補生が素人に負けるはずがないって。それに彼女は戦場を知らない。」
「…聞いた話だが、何をする気だ?」
「俺がこの学園に呼ばれた理由だよ。」
「…嫌な予感しかせんぞ。」
「そう?」
その後、ダメージを回復させたセシリアは、なぜかまた試合会場に出された。
「? 何をしますの?」
「はいはーい。どーも。」
「!?」
「観客のみなさーん。ちゃんと見ててよ。」
「な…、生身で!? 何を考えていますの!?」
ツムグは、生身でセシリアと対峙した。
「これから、俺がなぜ学園に呼ばれたのか、生徒さんたちに説明しようってことになったから。」
「だからと言って…。」
「じゃあ、始めるよ。」
試合開始のブザーが鳴った。
スッとツムグは、片腕を前に出した。
「?」
セシリアが不思議がっていると、ツムグは、ギュッとその手を握りこぶしを作った。
その瞬間、セシリアのブルーティアーズのハイパーセンサーが警報を発した。
そしてどんどんSEが削られ始めた。
「な、なんですの!?」
「この試合ステージの範囲で、すべての空気を消した。」
「!?」
「つまりこのステージは、現在真空状態。酸素のない宇宙空間と同じだ。SEが削られているのは、無酸素状態から本体を守るためだ。だがSEが切れればどうなる? 知ってるか? 宇宙空間に、人間が生身で放り出されると……、体が破裂するんだよ。」
「!!」
「さあさ。SEが切れる前に、俺を倒してこの空間を解除しないといけないよ。じゃ、なきゃ、君は死ぬ。それも無残で残酷な姿で…。」
「そ、そんなこと…。」
セシリアは、理解してしまった。理解させられてしまった。
相手は生身だ。こちらは武器を持っている。生身相手に武器を向けたことなどない。
今現在もSEが削られ、警報が鳴り続いている。
セシリアは、ハッとして、ならばと動いた。空間の外へ出ようとしたのだ。だが…。
ガンッと見えない壁に当たって内側に戻された。
「なんですの!?」
「言っとくけど、この空間を作るのに壁も作ってあるから脱出したかったら俺を倒すしかないよ。」
「そんな!」
「さあ、持ってる銃なり、ビットなりを俺に向けてごらん。」
「っ、…で、できませんわ!」
「じゃあ、死ぬしかないね。」
「ひっ!」
SEの残量を見ると、残り半分を切っていた。
「そ、そんなことになれば、わたくしの祖国イギリスが許しませんわよ!?」
「ああ、そこんとことは大丈夫。これは世界機構が…というか全世界のIS所有国が許したことだからさ。つまり君が死ぬってことは、君はその程度だったってことで次の候補生が出来るだけだよ。」
「!!」
「これは、IS装者のメンタル強化の学習でもあるんだ。戦場でいざ血と肉に慣れてないとまともに使い物にならないからって、上の人が言うから…。だから死ねない俺が来ることになったんだ。」
「戦場!?」
「君はどうやらISを競技用、またはファッション程度にしか考えてなかったみたいだね。そういう子の認識を改めさせることも、この学習の一環なんだ。さあさあ、早くしないと本当に死ぬぞ。」
SEは、すでに4分の1まで減っていた。
セシリアは、涙を零し頭を振った。
「いやですわ! 死にたくない死にたくない死にたくない、誰か、誰か助けてくださいまし!!」
「じゃあ、俺を殺してごらん。たった一回だけでいい。頭をぶっ飛ばせ。」
「できませんわ!」
「じゃあ、死ぬ?」
「いやあああああああああああ!」
SEの残量が秒読みに入りかけた時。
「あんた、やりすぎだ。」
「ん?」
次の瞬間、ツムグの首から上。頭が爆ぜた。
というか、バラバラに砕け散った。
白式を装着したイチカが、雪片を横に振った状態でツムグの後ろに立っていた。
頭部を失ったツムグの体が倒れると同時に、真空の空間が消え失せた。
セシリアのブルーティアーズのハイパーセンサーが警報を鳴らすのを止めた。
試合ステージの上に大量の血が、流れて行く。そこいらに飛び散った肉片と思われるピンクと、骨と思われる白が散らばっていた。
「おい、あんた、大丈…。」
「い……。」
セシリアは、助けられたことより、目の前のツムグの死体に。
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
悲鳴を上げた。
だがその時、ピクリッとツムグの手が動いた。
すると、頭部のない体が不自然に起き上がりだした。というか胸の部分が何やら膨らんできているのだ。
それは心臓だった。
骨を肉を突き破り肥大化した心臓がドクンドクンと脈打つ。
観客席からは沢山の悲鳴が上がっていた。
ゴボゴボとメチャクチャな首の傷口から血が泡立ち、肉と骨が生えて来た。
そこからは早かった。まるで高速で再生シーンを見てるかのように、骨が脳が舌が歯が肉が皮膚が髪が形成されていき、あっという間にツムグの頭部は再生を果たした。
それと共に肥大化していた心臓がしぼんでいき、崩れた。
起き上がったツムグは、無表情で少し赤らんだ胸を撫で、周りを見回した。
「……イチカがやったの?」
「ああ。見てられなかったからな。」
「へえ、敵を助けるんだ。」
「敵でも死ぬところなんて見たくない。」
「…そう。」
ツムグは、イチカとそう会話を交わした後、後ろを振り返り、へたり込んでいるセリシアを見た。
セシリアは、顔から出る液体を全部出し放心していた。へたり込んだ彼女の股の下には水たまりができていた。どうやら失禁してしまったらしい。
「おい、大丈夫か?」
イチカがセシリアに近づくと、ビクンッと体を跳ねさせたセシリアが、バッとイチカを見上げ、イチカの足に抱き付いた。
「って、おい。…完全にトラウマになってるだろ。」
「それも一環。」
「上の連中は何考えてんだよ…。俺だけじゃ飽き足らず…。」
「ISに対する認識の改めだと思うよ。彼らは、ISを兵器だと思ってるからね。本当は、宇宙開発が目的のものになのにさぁ…。」
両手をすくめたツムグは、観客席の方を見た。
観客達は、口々に。
『バケモノ』っと言っていた。
「っと言うわけで、これから皆さんには卒業まで俺がメンタル強化のための一環として俺を殺して血と肉に慣れる訓練をしてもらいます。嫌なら今すぐ学園から去ることをお勧めするよ?」
なにせこれは、世界機構が決めた、IS保有国家全部が決めたことなのだからと、ツムグは、笑って締めくくった。
可哀想なセシリア。
可哀想な生徒達でした。
戦争でも始めるかのような展開ですが、戦争は発生しません。
世の中がISを兵器と認識しているため、メンタル強化を図り、ツムグを殺させるカリキュラムを組んだということにました。
なお、一夏は、ツムグが死ぬ場面というかグロいシーンを見て知っているのでセシリアを助けるために平気で頭をパーンしました。
宇宙空間と同じ空間を作り出すことについては、ISのほとんどが本来の宇宙活動より地上活動を想定しているので宇宙空間に放り出されたらその時点で本体を守るべくSEを使い、SEが切れるとISが解除されるため本体が死ぬ、ツムグ的にはISの本来のあるべき姿を思い出せるために編み出した技です。