大洗女学院VSサンダース附属高校の本戦で、かほたちを苦戦に追い込んだT34カリオペ。そのカリオペ撃破作戦のため、4式20糎噴進砲を撃とうとするが2発が不発!頼みの綱である最後の1発を撃つことが出来るのか!?
「発射ぁー!!」
水谷が噴進砲の発射ボタンを押した!しかし、頼みの綱である最後の1発も不発になってしまった。全弾不発になってしまうとは思っていなかったので、美優は思わず怒鳴ってしまった。
「ちょっと! 3発全部不発ってどういうことよ!」
「しょうがねぇだろ! テスト無しのぶっつけ本番で使ってんだから!」
まさか使うことになるとは思っていなかったので、テストをせずに持ってきたため全弾不発と言うに結果になってしまった。
お互いに感情的になり、怒鳴りあってしまったがこんなことをしている場合ではない、砲弾の着弾まであと1分半。水谷は外に出て噴進砲に手をかけた。
「何やってんの!?」
「弾に導火線を付けて、直接火をつけて飛ばす!」
スイッチで火がつかなかったので、砲弾の後ろに導火線を取り付け、直接火つけて撃つという作戦に出たのだ。
「そんなことして暴発したりしないの!?」
「とにかく今は1発でも撃つ方が優先だ、暴発しないようにするから心配すんな!」
「・・・・・分かった。そう言ったからには絶対成功させなさいよ!」
「任せとけ!」
砲弾がスポット56に到達するまで後1分、少々強引なやり方ではあったが何とか導火線の取り付けた。そして火をつけ、発射態勢に入った。
「全員耳を塞げ!」
水谷の声が響き、全員が一斉に耳を塞いだ。
『ドシュ!!!』
ロケット砲弾が撃ち出された!円弧を描きながら、カリオペから撃ち出された砲弾の先頭に向かい、
『ドォーン!!!』
と轟音を立て、先頭から後方まで全ての砲弾が撃墜された。水谷はガッツポーズを決めていた。
「ぃよっしゃぁー!!」
「やったぁー!」
思わず美優まで感激してしまった。スポット56の空には、黒い煙が残っていた。
観戦席は歓声に包まれていた。目には目をと言ったところだろう、いやロケットにはロケットと言うべきか。
「いやー、かなり大胆なことやったね。私たちなら絶対に思い付かなかったと思うよね?みほちゃん」
杏がみほに話を振る、みほは呆然としていたのですぐに返答出来なかった。
「え?ええ、そうですね・・・・・・」
あまりの凄さに言葉を失ったのか、かなり薄い返答しかしなかった。カリオペの乗員も、その護衛に付いてるシャーマンの乗員もそっちの方に集中してしまっていた。
「嘘でしょ・・・・・?あいつらロケット砲なんて持ってたっけ?」
「き、きっと主砲で撃ち落としたんだよ・・・そ、そうでしょ?」
あまりに突然過ぎて何が何だか分からない、これにはリンも想定外のことだった。ロケット砲を持っているなんてことは聞いたことがない。
リンが理由を模索しているとカリオペの車長から指示待ちの通信が来た。
〔り、リンさん・・・・・ど、どうしましょう・・・・・?〕
どうしようと言われても、やることはただ1つ。大洗に勝つために戦わないといけない。リンは改めてカリオペに指示を出した。
「次弾の装填が完了したら、リカルセンツチームからの報告を待って。情報が来たら射撃をして」
カリオペはロケット砲を備えているとは言えど、戦車砲よりも遠くの景色が見える照準機を備えているわけではない。元は普通の戦車で、その上にロケット砲の発射菅を載せただけなので、照準機もそのままなのだ。わざわざ偵察のためのチームを編成したのはそのためだ。
カリオペの車長は指示に従うことにした。今出来ることは指示を待つだけだ。ただでさえ目立つ形をしているのだから、下手に動くと
「ラジャー、では情報が来るまで・・・・・うわ!!撃て撃てぇー!!!」
リンの耳には取り乱した声が入ってきた。 嫌な予感しかしない。
「ちょっと?大丈夫?」
〔ご、ごめんなさいリンさん・・・・・後ろを取られてしまいました・・・・・〕
通信機越しから弱々しい声が聞こえてきた。言われずとも理解出来た、
〔いつの間にか後ろにいて、対応が遅れまして・・・・・〕
「良いよ、良いよ。しょうがないことだし、その内回収車が来るから大人しく待っててね」
リンは優しい言葉をかけた一方で、ホッとしている気持ちもあった。やられてくれて良かった、と。
穂香が誇らしげに、チリに撃破完了の報告をしていた。
「もっしもーし、宗谷くん?君が言ってた通り、スポット39にいたよ」
「そうですか、ご苦労さまでした」
宗谷からの返答は、そこにいて当然だと言ってるように呆気なかった。返答のことはともかく、相手の最強戦力を破ったのだ。これでほぼ互角の勝負が出来るはずだ。
かほはすぐにスポット39から離れるように指示した。場所は崖の側なので、追っ手が来たときに退避出来なくなる可能性があるからだ。チーム4はスポット39から離れ、別のチームと合流することにした。
そしてスポット56にいるチーム1も離れることにした。カリオペは
「西住、ここは俺たちが食い止めるから先に行け!」
宗谷はフラッグ車護衛のために先に前に出るように言った。前から来るのでは?と思うが、お互いに出場可能な数は10輌までで、相手チームはカリオペと護衛についていたシャーマンを撃破されて残りは8輌。
他の戦車を探さなければならないのに今いる数以上出すことは出来ないのだ。かほもそれくらいのことは理解していたので、何のためらいもなく前に出て走った。
チリは車体前方をシャーマン側に向けて、バック走行で4号の後を追いかける。宗谷は砲搭から頭を出して後ろを確認し、福田はその指示に従いながら操縦レバーを操作する。後方確認が不可能なので、見てくれるだけで安心できる。
だが副砲では少し揉め事が起きていた。水谷はポルシェティーガーにいるため、代わりに北沢が勤め、優希が装填を担当していたのだが・・・・・優希は装填の経験が全くない。
装填をしたことが無いので優希はただアワアワしているしか出来ず、撃ちたい時に撃てないというあってはならない事態が発生しているだ。北沢がトリガーを引いても砲弾が出ない。
「装填したことが無いってマジで言ってんのか?」
「だって~、私砲手だから仕方ないじゃーん」
(装填したことがないなんて・・・冗談だろ?ん?いや待てよ、確か砲手だって言ってたな。俺と交代すれば解決じゃね?)
「宗谷!星野と交代して良いか?」
北沢が提案したが砲手と言えど、副砲は旋回出来ない固定式だ。使えるか心配だったが前に向かって撃つだけだから大丈夫だろうと考え、許可した。
「分かった。交代は良いけど、しっかりサポートしてやれよ?」
「了解。よし星野!交代だ」
北沢は装填手の位置につき、優希は砲手の席についた。88ミリ砲と37ミリ砲では威力等に大きな差があるが、経験したことがあるものなら出来なくは無いはずだ。優希は照準機を覗き、狙いを定める。狙いは定められたが初めて使う
試射とは簡単に訳すと試し撃ちのことで、戦車砲の正確な値を知る時に行う射撃のことを指す。同じ戦車砲とは言えど、88ミリなら届く範囲の感覚で撃つと届かず、無駄弾で終わってしまうのだ。優希は迫ってくるシャーマンに向けて1発撃った。
弾はシャーマンの1メートル手前に墜ちた、優希は仰角を付けてもう一度撃つことにした。ちなみに『仰角』とは砲身を上向きすることを意味する。砲弾はきつめのカーブを描き、シャーマンに命中した。しかし、37ミリでは装甲を貫通させることは出来なかった。優希は悔しがっている。
「もう!せっかく命中させたのに!」
悔しがる優希を北沢が宥める。
「おいおい、そんなに怒るなよ」
「だって!命中したのに倒せないなんてある!?」
「しょうがないだろ、この砲は37ミリだぞ?」
「岩山!星野さん!砲撃中止だ!発煙筒を投げるから、その隙に逃げるぞ!」
このままでは弾を撃ち尽くしてしまう、そう思ったのだ。ここは森の中、発煙筒を投げらればきっと止まると考えたのだ。木々がある状態で煙の中を走れば絶対に木にぶつかる、そんなリスクを侵してまで追い掛けてくるとは考えられない。
支給されている発煙筒を片手に、ガンポートから2本投げた。すぐ煙が立ち込め、追っ手のシャーマンの前は真っ白になってしまった。操縦手は慌てた。
「くっ!
無駄弾になってしまうが、砲弾を1発目の前に向けて撃った。だが晴れなかった。そう簡単には来させまいと発煙筒をそこらじゅうにばら蒔いたのだ、そう簡単には晴れない。シャーマンの車長は、リンに逃がしてしまったと報告をした。
〔リンさん、申し訳ありません。発煙筒を大量に焚かれてしまって、取り逃がしてしまいました〕
「あっちゃ~。まぁ仕方ないね、取り合えず私たちはスポット98にいるからそこで合流しましょ」
(数も少ない、今は纏まって動く方が良さそうね。それにしても、発煙筒を森の中で投げるなんて考えたわね)
チーム1スポット56を離れ、別に森があるスポット43で全チームと合流した。優希と水谷はお互いに元の戦車に戻った。最悪の脅威は無くなった、あとは今まで通りに戦えば良い。
ここまでの試合の流れを整理すると、カリオペに続き護衛についていたシャーマンを1輌撃破。しかしここまでで相手チームのフラッグ車は見つけられていない、という状況だ。
見つけられていないということは仲間と一緒に行動している可能性がある、となれば相手の隊列を見つけなければならない。
ただでさえカリオペ撃破作戦に時間を費やしてしまったというのに、これ以上時間を使うほどの余裕はない。またバラけて動くとすれば、極端な話だと8対2で挑むような形になってしまう。
かほは纏まって動くべきか否かと迷っていた。纏まれば万が一にも対応出来るが、それでは見つけるまでに時間がかかる。だがさっきの4チームでは対応出来なくなる可能性がある。
2チーム編成ならという意見も出たが、1チームで動くのと差ほど変わらない。中々意見が纏まらないところを見かねたのか、宗谷がポツリと呟いた。
「じゃあ、まだ俺たちが行っていないスポットに行くっていうのは?」
行っていないスポット?そんなのあったっけ?かほはそう思いつつ、地図を広げた。
これまで行ったスポットは、今いるスポット43、56、69、大きく分けるとその3つだ。あとは通りすぎた場所を除けば全て網羅しているはず・・・・・いや、あった。まだ1ヶ所だけ、手を付けていなかったスポットが。
「でも、ここにいるって言う確証はないよ?」
かほは地図を見ながら宗谷に言った。確かに
「まぁ、確証は無いけどさ。賭けるってのも、案外楽しいと思うぜ?」
「賭ける!?正気か!?」
梅が思わず反応した。賭けは危険なものだと思っていたからだ。
「正気も正気、それに俺たちが行っていないんならいる可能性も無きにしも非ずだ。ローラー作戦で行くよりも手っ取り早いと思うぞ」
シラミ潰しに探すよりは良いかも知れないが、違った場合を考えると・・・・・
「取り合えず、さっさと動こうぜ。他を探すんなら俺たちだけで例のスポットに行くから」
宗谷はそう言い残すとチリに乗り込み、さっさと行ってしまった。かほたちはどうしようかと迷ったが、結局ついていくことにした。初めての練習試合で4号の隠れ場所を見つけたので、宗谷の勘も少しは当てになりそうだったから。
一方、サンダースは一度全車集合して大洗を迎え撃つ作戦を練っていた。残る戦車はあと8輌、その内の1輌は改良型であるシャーマン・ファイアフライ。
第2次の時には火力による後方支援を担当をするとこが主だったシャーマン・ファイアフライは、みほたちが試合したときにも苦戦に強いれたほどだ。
そこで考えた作戦は、ファイアフライによる
ちなみに、カリオペがしていた戦法も遠距離射撃の1つだ。リンは早速作戦を実行しようとしたとき、偵察隊からの報告が入った。
かほたち率いる大洗チームが近づいて来たというものだった。サンダースのメンバーは慌てたが、リンは冷静だった。そして、新しい指示を出した。
大洗チームはサンダースがいる場所に近づいていた、リンが考えた作戦に掛かっているとも知らずに。目指している場所はスポット12、眺めが広々としている
宗谷たちが今いる場所は近くのスポット13、右横に緩やかな坂があるところ走っていた。栞がぼやいた。
「本当にここにいるのー?」
栞は半分諦めているみたいだ。一応ついてきたものの、絶対と言う保証は無い。
「そうぼやかなくても、宗谷くんのことだからきっと何かあるんじゃないかな?」
かほはそう言ったが、もしかしたら別のスポットにいるんじゃないのかという考えが
「宗谷くん、私たち・・」
「全車、砲撃に警戒せよ」
宗谷の声が、通信機を通して全車に通達された。『砲撃に警戒せよ』と。そう言われたが砲撃音なんて聞こえていなかった。空耳だろう、そう思っていたとき、
『ドォーン!』
と音を立てて隊列の近くに着弾した。突然のことに隊列が止まり、乱れ始めたが宗谷が何とかまとめた。
「落ち着け、相手も
大方把握出来ているものの、何処にどの戦車がいるのかまでは分からないだろう。と思っていたが、着弾した場所は隊列の近くだった。
あと数センチずれていたらその場を走っていた3式中戦に当たっていたかもしれない。宗谷は疑問を持った。
(まさか、ここの位置を把握して撃ったのか?いや、相手は俺たちがここを通ることを知らなかったはずだ。ん?いや待てよ・・・・・この戦術というか、この感じ何処かであったような・・・・・はっ!そうか!!)
「全車!横を警戒しろ!『機動班』が来るぞ!!」
機動班という聞き慣れない言葉が出たので、一瞬戸惑った。その言葉の後に横から待ち構えていたと言わんばかりにシャーマンが現れた。宗谷が言っていた機動班と言う言葉はさておき、今は対応しなければならない。
奇襲攻撃をされたものの、ようやく戦車道らしい試合展開になったという感じだ。さっきリンが立てた作戦の完成型と言えるだろうか、バシバシと攻撃をしている。
遠距離射撃に加え、近距離の機動攻撃をするのだからやられるほうはたまらない。何とか反撃はするものの、横から攻められたのだから対応が遅れたことに加え、固定砲が主力武器であるヘッツァーや3突は車体ごと動かさなければならない。
かほは砲戦車を護るために前に出るように指示したが、チリがさらにその前に出た。かほは慌てた。
「ちょっと!前に出ないでよ!」
「西住隊長の4号は
宗谷は
「かほちゃーん、ここはあたしたちに任せて宗谷くんと一緒に相手のフラッグ車撃破に行ってよー」
今のところ持ちそうなので、フラッグ車撃破をかほに任せようという策に出たのだ。ここにはいないので、ファイアフライと一緒にいることは間違いなさそうだ。かほはスポット12に向かうように指示し、宗谷も4号を護衛する形でついていった。
スポット13はかなり接戦になっていた。砲弾が飛び交い、砂埃が辺りに立ち込める。2、3年生は去年の黒森峰戦の教訓があるため、何とか対応出来ている状態だが、1年生組のM3は反撃にてこずっていた。
また、機動力が低いポルシェティーガーも苦戦していた。撃ち抜かれないだけマシだったが、四方八方から攻撃されている。そうこうしているうちに、
装甲厚も攻撃力も、シャーマンと比べたら差がありすぎる。攻撃はしていたものの、撃ち抜くことが出来ず、最後は囲まれてやられた。
そして次に
撃とうとすれば撃たれ、逃げようとすれば退路を塞がれる。サンダースのチームワークは完璧と言わざるを得ない。
『確かに今も昔も攻撃の方がメインかもしれないが、それよりも重要なのはチームワークなんだぜ』
宗谷がかほに言った言葉の通りになったと、穂香は身をもって感じていた。でも、今からでも遅くはないと思い、通信機を手に取った。
「全車、良く聞いて!これから指示を出すから、あなたたちも敵が何処にいるのかをみんなに報告して!『チームワーク』で切り抜けるよ!」
穂香の口からチームワークと言う言葉が出たのは初めてだった。でも、驚いている場合ではない。今この戦況を切り抜けるにはチームワークしかないのだから。
「「「「「分かりました!!」」」」」
全車から力強い声が返ってきた。早速実戦に移さなければならない。
「よーし、まずは展開しようか!固まっていると狙われ易くなっちゃうからね!」
追い詰められて固まってしまっていたので、まずは展開することから始めた。展開したら敵がどの位置にいるのか、攻撃する体勢なのか、逃げる体勢なのかを車長がある程度把握し、攻撃に移る。
ただ1輌で攻撃するのではなく、近くにいる味方に通信し、一緒に攻撃をするという戦法を取り始めた。サンダース側は突然の反撃に手間取りだした。さっきまでバラバラだった大洗チームが、急に1つになったのだ。
一方、スポット12へ向かっているかほたちは、宗谷にさっき言っていた機動班というのは一体何のことなのかを聞いていた。
機動班と言うのは、アメリカ陸軍の歩兵隊の基本戦術に出てくるもので、トーチカと言う防御陣地を制圧するときに用いられる戦術のことだ。トーチカはロシア語で、日本語では特火点と訳され、シェルターの一種に分類されている。
ちなみにアメリカ陸軍のトーチカ制圧方法としては、まずトーチカの前に狙撃班を置き、攻撃を仕掛ける。その隙に別のルートで機動班と言う歩兵を向かわせ、制圧するというものだ。
さっきの状態で例えるならファイアフライは狙撃班、シャーマンは機動班に区別出来る。「機動班が来るぞ!!」と叫んだのは基本戦術を思い出したので、つい歩兵用語で言ってしまったのだ。
そんな話をしていたらスポット12に着いていた。ここからは用心しなければならない。あのシャーマン・ファイアフライがいる場所なのだから、気が付いたらやられていたでは洒落にならない。2輌はなるべく音を立てずに慎重に捜し始めた。
見晴らしが良いだけあって隠れる場所が何処にも無い。辺りを少し見渡しているとすぐに発見出来た。ファイアフライの砲身は真っ直ぐに空に向いていた。
いつでも攻撃出来る体制を整えていると言っているように見えた。宗谷はどの作戦で行くか、かほに相談することにした。
「西住、どうする?さっきやられたみたいに、奇襲攻撃仕掛けるか?」
「それだと逃げられるかもしれないよ、もう少し動きを見ようよ」
かほはなるべく慎重にいきたいらしい。厄介なファイアフライもいる、ここは慌てずに行こうと言う策だろう。宗谷にその策に従うことにしようと思ったが、穂香からの通信で状況が変わった。
「ごめーん、全滅しちゃったわ。でも2輌まで数減らしたから、あとは任せたよー」
減らしたと言われても2輌は仕留め損ねたと言うことだ。その2輌はもうすぐそこまで来ている可能性は十分考えられる。と思っていたらファイアフライの砲搭が回りだした。
かほたちを捜し始めたようだ。流石に慎重に行くなんて悠長なことを言っている場合ではない、宗谷はかほに作戦を変更することを伝えた。
「西住、ここは一気に突撃しよう!
かなり無鉄砲な作戦だが、今はこれしか無さそうなので実行に移すことを決断した。
「分かった!行くよ!」
「よっしゃぁー!
2輌の戦車が轟音を立てながらフラッグ車に近づく!4号は真っ直ぐにフラッグ車の方に向かい、チリはファイアフライに攻撃を仕掛ける。ここまでは予定通りだ、あとはファイアフライの邪魔をして、4号がフラッグ車を撃破すれば作戦成功だ。
だが、そう易々とは勝たせてくれないようだ。宗谷がガンポートから覗くとさっきの2輌のシャーマンが射撃しながら迫っていた。
「西住!もう時間が無い、一気に決めろ!」
宗谷の一気に決めろと言う言葉をヒントに、かほは距離を詰めるようにしようと考えた。
「冷泉さん、フラッグ車と距離を詰めて!五十鈴さんはそれに合わせて射撃をして!」
「・・・・・分かった・・・・・」
「任せてください!」
4号は真っ直ぐフラッグ車に向かい、チリはファイアフライに向かっていく。岩山は照準器でファイアフライの
4号は先に攻撃を受け、すかさず反撃に移した。反撃に移れただけマシと言うべきだろうか、追っ手から猛攻が激しく照準がブレる。
フラッグ車は逃げようと動き始めた、このままでは逃げられる!かほは追いかけてと言うが、チリはファイアフライの撃破に手間取り、後ろからは追っ手の猛攻、フラッグ車の撃破以前の問題が多すぎる。
かほは次の手を考え始めたが、そんなことを考えている余裕はなさそうだ。ハッと気付くと、300メートル程離れていた。
今すぐ追わないと、追い付けなくなる。すぐに追いかけようとするが、敵からの砲撃が止まない。宗谷は岩山にフラッグ車を狙えと言った。
「岩山!
「任せろ!」
ファイアフライとの戦闘を止め、狙いをフラッグ車に変えた。狙いを定めると同時に、すぐにトリガーを引いた!逃げるフラッグ車に1発の砲弾が飛び、撃ち抜いたのはエンジンではなく、履帯だった。
『ガキィーン』と金属音を立て、履帯が切れた。履帯が切れた戦車は進むことは出来ない。そこにすかさず4号の1発がエンジンを撃ち抜いた。エンジンから黒い煙りが上がった。
〔サンダース附属高校フラッグ車、走行不能!よって、大洗女学院の勝利!〕
審判が勝敗を決め、観戦席は歓声に包まれた。杏たち指導員もホッとしていた。まずは、第1回戦目は突破だ。
やられた戦車の回収も終わったあと、大洗戦車道生は杏の前に集合していた。杏は笑顔で試合の感想を伝えた。
「みんなお疲れさん、良い試合だったよ。困難な状態に陥っても、冷静な判断が出来たのは上出来だけど、もうちょっとチームワークを大事にしてね」
「「「「「「「「はい!ありがとうございました!」」」」」」」
解散したあと、大半の生徒は学園艦に戻っていった。宗谷たちもチリに乗って学園艦に乗ろうとしていた。そこにリンが近づいてきた。「少し話がしたい」、そう言われた。
チリから降りて、リンに着いて行くとかほもいた。一体何を言われるのかと思っていたら、謝られた。
「まず、かほさんには謝らないとって思ってさ。
リンは頭を下げた。
「そんな、わざわざ謝らなくても良かったのに」
「本当は使いたくなかったんだけど、ママがどうしても使ってって言ったから逆らえなくて」
リンの落ち込みようを見る限りでは本当に使いたくなかったという感じが伝わってくる。『試合はフェアプレイでいく』というところは母のケイに似ている。宗谷はフッと笑った。
「まぁ、
「ううん、あと1つだけ聞きたいことがあるの。どうしてロケット
「そんなことか、何ら難しい事じゃないさ」
宗谷はこう説明した。サンダースが主力として使っている戦車はシャーマンで、新戦車の情報が来たのは試合が始まる2週間前のこと。常日頃シャーマンを使っている学校が、いきなり右も左も分からない戦車を2週間足らずで完璧に扱えるようになるとは思えない。
そこから考え出したのは、シャーマンを改造した戦車、ファイアフライ以外の戦車だろうと推測した。そして浮かんできたのが、カリオペだったのだ。
万が一、カリオペだったときの場合だった時の対処法として噴進砲を持ってきた、というわけだ。リンは理由を聞いて納得したようだ。
「なるほど~・・・・・て言うか聞いたら『ああそう言うことか』ってなるわね」
「でも、
宗谷はニッと笑った。そして桃に呼ばれ、学園艦への帰路に着くことにした。だがリンはまだ伝えなければならないことがあったらしく、宗谷とかほを呼び止めた。
「あの、角谷科長に伝えて。私のママは、
リンは少し落ち込み気味に頼んだ、かほが聞き返す。
「どういう意味なの?」
「・・・・・強要されたみたいなの、協会からの指示だった見たいで、『こんなのフェアじゃない』って嘆いてた」
協会からの指示、となると会長であるしほからの指示なのか?男子がいるからと言って、ここまでするものだろうか。でも、男子が大洗にいることを知っていて協会勤務の人と言えばしほぐらいしかいない。
疑問は残るが杏には誤解を解いてもらわなくてはならない。かほは「分かった、任せて」と言い、3人は別れた。
場所は変わり、みほの実家ではまほがしほに試合の結果を伝えていた。
「試合は大洗の勝利で終わりました。旭日の試合は初めて見ましたが、他校とは差ほど変わりなかったです」
「・・・・・そう、少しは知的な試合を見せてくれるかと思ったけど、その程度というわけね」
今回の大洗、サンダースの試合はしほが思っていた展開とは程遠いようだ。そして、まほは今回の試合で特に気になったことを聞いた。サンダースのカリオペ出場の件だ。
「それと、カリオペの出場を許可したのはお母様ですか?」
「・・・ええ、でもある人の頼みで仕方なくね」
『ある人』、と言われるとかつて一緒に戦火を交えた『
「・・・・・まさか、島田さんじゃないですよね?」
「ええ、島田さんじゃないわ。それにあの人はまだ旭日のことなんて知らないはずよ」
まほは納得したと同時に、一体誰がサンダースにカリオペの使用を強要させたのかが気がかりだった。
強要をさせたのは、確かに協会に関係している人物だ。その人物は近衛が廃校になるずっと前から旭日のメンバーを知っていた。いや、正確に言えばメンバー全員ではなく、2人だけなのだが。
大洗女子学園、1回戦目突破。次の試合は2週間後にプラウダと2回戦目を繰り広げることになる。
今回も読んでいただきありがとうございました。
ちなみに余談になりますが、作中に出てきた『試射』という言葉は防衛庁が使う言葉だそうです。
防衛庁や自衛隊で使われる言葉には面白いものがたくさんあるので、よかったら調べてみてください。