ガールズ&パンツァー ~伝説の機甲旅団~   作:タンク

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登場人物

宗谷 佳(そうやけい)

大洗女子学園戦車道科を危機から救おうと立ち上がった男。4年前まで、※近衛機甲学校(このえきこうがっこう)(以下『近衛』と省略)の生徒だった。
所属していた科目は、『車長戦術科』。戦車車長として指揮を取りつつ、戦術を組むという科目だった。その他にも、『車両整備科』という科目に所属していたこともある。そんな彼は、自分で結成させた旭日機甲旅団(きょくじつきこうりょだん)(以下『旭日』と省略)隊長、兼車長を勤めている。

以下の登場人物も、宗谷と同じく近衛の生徒だった男たちである。

福田 彰(ふくだあきら)

所属していた科目は『車両操縦科』で、そのスキルを活かすために操縦を担当し、旭日副隊長を勤める。
そんな彼は、『偵察科』に所属していた経験があり、隠密行動、索敵などもこなせる。


岩山(いわやま)(しょう)

近衛では、榴弾砲、迫撃砲を使う『重砲科』に所属していた。岩山は射撃担当で、命中率は郡を抜いていたらしく、狙った敵は100%命中させるほどの自信があるようだ。
ただ戦車砲は、榴弾砲と違って威力が落ちているので少し残念がっている。


柳川(やなぎかわ) 勇大(ゆうだい)

岩山と同じ『重砲科』に所属していた。岩山とコンビを組んで活躍し、装填を担当していた。旭日でも主砲装填手を担当、岩山のサポートが出来るように尽力している。


水谷(みずたに)(じん)

簡易基地を造る『施設科』に所属。旭日では射撃が多少出来るということで副砲砲手を担当。戦車に乗ったことはなかったが、37㎜程度の対戦車砲を扱ったことがあるらしい。
しかし本人は、戦車砲の射撃音があまりにも大きいため、小銃か拳銃の方がいいと言っている。


北沢(きたざわ)(ひろし)

近衛では通信機器を取り扱う『通信科』に所属。旭日では通信手と副砲装填手を担当。通信機器の取り扱いは上手いのだが、装填の経験は全くないため、今でも少し時間が掛かるときがある。



本編
第1章 九州からの手紙


『初めまして、私は『旭日機甲旅団』の隊長、宗谷佳と申します。本題といたしましては大洗女子学園戦車道科を危機から救うために力を貸したいと思っています。

 もし必要無いのであれば、お手数ですがこの手紙を送り返してください、宜しくお願い致します。

 

旭日機甲旅団隊長 宗谷 佳』

 

「っていう手紙が送られて来たんだよねぇ、どう思う?」

 

 場所は大洗女子学園、戦車道科科長室。部屋には現大洗女子学園戦車道科科長の角谷杏(かどたにあんず)、副科長の小山柚子(こやまゆず)、副科長代理の河嶋桃(かわしまもも)、そして元4号戦車車長、現戦車道科指導員、4号戦車担当の西住(にしずみ)みほがいた。

 送り主は九州の人間らしい、分かっていることはそれだけだ。そもそも旭日機甲旅団なんて聞いたことがないし、調べたが旭日機甲旅団なんて部隊はなかった。今まで手紙が来たことは何度かあったが、『力を貸したい』といったことが書かれた手紙は初めてだった。

 いくらなんでも突然過ぎるし、怪しさしかない。河嶋は手紙を送り返すことを薦めたが角谷は取りあえず向こうがどう出るかを見ようと言い、手紙を机にしまった。

 

「まあ、手紙の件は後回しにして、西住ちゃん、かほちゃんはどんな感じなの?」

 

 今のみほには1人娘の『かほ』がいた。かほもこの大洗女子学園戦車道科に入学していたのだがどうもギクシャク関係でいたので角谷は心配していたのだ。

 

「心配かけてすみません、でも大丈夫です」

 

「そう、なら良いけど。それからちゃんと話も聞いてあげなよ?この年の女の子は悩みが多いからね」

 

「はい、気をつけます」

 

「頼むよ~~、もうすぐ戦車道の試合もあるし、それから・・・

 

 角谷は何かを言い掛けたが小山が口を挟んだ。

 

「科長、それ以上は言わない方が・・・」

 

「あ、ごめんごめん、何でもない。それじゃあこれでお開きねー、お疲れさーん」

 

 みほには角谷が何を言おうとしたのかは分かっていた。今となっては母校になってしまった大洗女子学園、そんな今の戦車道科を支えているのはみほの娘たちだ。少し無茶なことを押し付ける形になるかもしれないのだが、頑張ってもらわないといけない。

 

「みぽりん、みぽりん!おーい!」

 

 ハッと我に帰ると横には元4号戦車の通信手、武部沙織(たけべさおり)がいた。武部も大洗女子学園の戦車道科の指導員を勤めていた。勿論担当の戦車は4号戦車だ、30年経ってもその明るい性格は変わらない。武部はみほになんで呼び出されたのかを聞いた。みほは九州から謎の手紙が届いたと話した。

 

「ふーん、手紙かぁ。私宛のファンレターだったら良かったのになぁ」

 

「ふふ、変わらないね、その性格」

 

「当たり前じゃない、娘が産まれても私の恋愛は止まらないよ~~」

 

 そんな武部を見ながらみほは戦車道のことを考えていた。これからどうやって戦車道科を引っ張っていこうか、そんなことを考えていた。武部と明日の授業の話をしていたらあっという間に家に着いた。

 

「じゃあねぇ~みぽりん。また明日~」

 

「お休みなさい武部さん、また明日」

 

 今は元いた寮を出て、立派な一軒家に住んでいる。寮からそんなに離れていないので見に行こうと思えばいつでも行ける距離だ、と言っても今いる町の大きさはたかが知れている。何故なら、この町は艦の上にあるのだ。

 通称『学園艦』と呼ばれるこの艦は、戦車道科がある女子学園と一緒に町を艦の上に載せている。理由としては戦車道の試合の会場までの移動を楽にするためなんだという。また作られた目的としては『自立心を養うため』ということなんだという。

 戦車を大量輸送するのも楽だし、町を載せてしまえば艦の上にいるということを忘れさせてくれる。限られた空間の中にずっといるとストレスを感じる人も多い。おそらくストレスを無くすために艦の上に町を造ったと思われる。

 つまり、大洗女子学園に通う生徒たちは艦の上で暮らしているということになる。本土にいるのと差ほど変わらないのだが。みほが家に入るとかほが2階に上がろうとしていた。

 

「・・・お帰り、遅かったね」

 

「ごめんね、ちょっと会議があったから。ご飯作るね」

 

「いらない、適当に作って食べたから」

 

 そう言うと2階に上がり、部屋に入ってしまった。みほは心配だった、何か悩みを抱えているのであれば素直に話してくれれば良いのに、何故か話してくれない。

 みほから聞きに言っても「悩みなんてない」の一点張りでまともに会話をしたこともない。

 中学の時は「お母さんみたいになりたい」、と言っていたのに女子学園に上がって半年も経たない内に今の状態になってしまった。去年の戦車道の試合では1回戦目で戦車道最強の女学園、黒森峰と当たり、接戦の末に敗北してしまった。

 みほは去年の試合のことを引きずっているのではと思ったがかほは「そんなことで落ち込んだりしない」と言い、原因は分からず仕舞いだった。またすぐに試合が始まるという中、こんな調子で大丈夫なのかと心配になるのだった。

 

 

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 翌日、角谷は九州に向けて手紙を送った。取りあえず様子を見ようと言っていたが一体どうするのかを聞くために手紙を送ったのだ。もうすぐこの学園艦は1週間後に1時間だけ茨城港に停泊する予定なのだ。

 もし乗るのであればこのチャンスしかない、かなり唐突ではあるが仕方がない。申し訳ないと思う一方で、どんな人たちが来るのか楽しみにしていた。

 

 

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 それから2日が経った。場所は九州、大分県別府市。とある荒れ地の入り口の前に、青年が立っていた。彼は旭日の隊長、宗谷佳。元近衛機甲学校の生徒だった。ここは元々近衛機甲学校が建っていた場所だ。

 大きな校舎があり、格納庫が5棟あった。今は全て取り壊され、すっかり荒れ地に変わり果ててしまっていた。ただ今は、行かねばならない場所がある。大洗だ。

 

「なーに1人で黄昏てんだよ」

 

 声を掛けてきたのは旭日の副隊長、福田彰だ。大洗から手紙が届いたことを知らせようと来たのだ。

 

「いっつも暇さえあればここにいるよな。ここ今はただの荒れ地だぜ?」

 

「ああ、今となってはな。だけどここは俺たちにとっては思い出の場所、俺たちの母校があった場所でもあるからな」

 

「そうだな。あ、それよりよ、大洗から手紙が来たぜ。角谷科長から、お前宛にな」

 

「そうか、じゃあ帰ろうか」

 

 2人は15分程歩き、小さな格納庫の前に着いた。ここが旭日機甲旅団の基地(?)なのだ。中に入ると整備道具が整理された状態で置かれており、カバーを被った戦車が1輌置かれていた。

 この戦車は宗谷たちが部品から集めて造った、世界でただ1輌の戦車だ。宗谷たちはこの戦車で大洗と共に戦車道をやっていこうと考えていたのだ。

 

「お?隊長、いつ帰って来たんだ?」

 

 砲塔の中から顔を出したのは主砲砲手の岩山だ、照準器のチェックをするために砲搭の中に入っていたのだ。

 

「たった今さ、それから隊長って呼ばなくていいぞ」

 

「お帰り隊長、※半自動装填装置のチェック、完了だ」

 

「隊長って呼ばなくて良いって言ってんのに・・・・・」

 

 続いて中から手に付いた作動油を拭きながら出てきたのは主砲装填手の柳川だ。カバーを被っているこの戦車は第2次に造られたのだが少し近代的な技術も取り込んでいる、名前は後で教えよう。

 

「・・・・・まぁ良いか。で、例の手紙は?」

 

「こっちにあるぜ隊長」

 

「あと通信機の整備も完了だ、後は載せるだけだぜ」

 

 奥から出てきたのは副砲砲手の水谷と副砲装填手兼通信手北沢だ。2人は通信機を戦車から降ろして整備をしていたのだ。ついでに作動の確認もして完璧な状態に仕上げていた。

 

「手紙はこれだぜ、内容はまだ見てないが」

 

 水谷が手紙を渡した、宗谷が手紙を読む。

 

『あなたの申し出を受けようと思うわ。でもあなたのその気持ちは本気なのか、まずはそれが知りたい。だから、手間が掛かるかもかもしれないけど、返事を返してくれないかな?

 大洗の学園艦に乗るなら5日後の朝8時に茨城港に1時間停泊する予定だから乗るならこれがチャンスだよ?それじゃあ返事待ってるよー。

 

大洗女子学園戦車道科科長 角谷 杏』

 

 手紙を読み終えた宗谷は、福田に戦車の状態を聞いた。戦車本体は組み上がり、最終テストもクリアしている。ただ変速機に少し違和感があるので、少し調整が必要だ。状態にもよるが、あと2日はかかると予想した。

 宗谷は最終調整を2日で済ませるように指示し、これからのことを話した。

 

「大洗からの手紙の内容は、5日後に茨城港に1時間だけ停泊する予定でいるから乗るならこれがチャンスだと送られた。このチャンスを逃したら次に乗れるのがいつになるか分からない。確実に整備を完了させてくれ」

 

「てことは3日後に大洗に行くってこと?」

 

「そうだ、2日で整備を終わらせて3日目に大洗に向けて出発する。それまでに出発準備も済ませておけよ」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

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 翌日、場所は変わり大洗女子学園の戦車道科科長室、角谷が小山と河嶋に旭日宛てに手紙を送ったと話していた。河嶋は焦っていた。

 

「なんで得体の知れない部隊に手紙を送り返したんですか!!」

 

「えー、だって悪そうな感じじゃなかったし、それに送ってもらったんだから何か返さないといけないかなーって思ったから」

 

「だからって手紙に『来るなら今しかない』なんて書かなくても!そんなこと書いたら来るに決まってるじゃないですか!!」

 

「・・・・・でもさ、今の私たちは『生徒』じゃなくて『指導員』だよ?今は戦車道科で頑張ってる、私たちの娘に教えるべきことを教えることが急務でしょ?」

 

「う・・・・・確かに、そうかもしれませんが・・・・・」

 

「・・・・・あなたの言うことも分かるよ、桃ちゃん。確かに、得体の知れない部隊だから、不安になるのも分かる。でも、こうしてわざわざ手を貸すって言ってくれているんだよ?私は、絶対に悪い人たちじゃないって信じる。戦車道科を、()()()()()()()()()()って」

 

 角谷が話終えたと同時に、誰かがドアをノックした。そろそろ授業の時間だ、3人は教室に向かっていった。

 

 

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 それから2日後、夕方になりようやく変速機の最終調整が終わった。違和感が無くなり、軽快に走るようになった。後は大洗に行くまでの経路をどうするかだ。

 戦車ごと行くにはまず別府港から大阪港までフェリーで半日移動しそこからトレーラーに載せて9時間ほど高速に乗って移動する、それが宗谷たちに出来る移動手段だ。

 過去にはどこかの学校がC-5『ギャラクシー』という軍事輸送機を試験的に使って戦車を輸送したという話があったが流石に頼めそうにないので自力で向かおうという結論に至ったのだ。

 まずはフェリーの手続きと戦車を公道に走らせるために申請をしなければならない。公道はまだしも、フェリーに乗せようものなら断られかねない。取りあえず片道分だけでもとダメ元で交渉に行くことにした。交渉に行くのは岩山と柳川、公道の走行の申請は宗谷と福田が行くことになり、水谷と北沢は留守番をすることになった。

 

 

ーー

 

 

 

 そして3時間後、何とか許可をもらい宗谷たちは帰ってきた。1つ条件付きで、公道を走行するときもフェリーに載せる時もカバーを付けたままにしてほしいと言われたのだ。フェリー会社からしたら兵器を取り扱っているなんて思われたくないらしい。

 フェリーに乗るのは明日の18時30分、大阪に着くの翌日の朝7時前後と言ったとこだろうか。そこからのトレーラー移動に関しては、宗谷の知り合いの運送屋が手伝ってくれるらしいのでその辺は心配いらないだろう。

 出発を前日に控え、全員がぼつぼつと準備を進めるなか宗谷の姿が忽然と消えていた。どこに行ったのかは見当がついているので探さないでおこうと誰もが思った。

 

 

ーー

 

 

 

 宗谷は、別府が一望出来る十文字原(じゅうもんじばる)展望台に来ていた。悩み事がある時や考え事をしたい時、1人でぼーっとしたい時は必ずここに来ていた。この景色を見ていると何もかも忘れさせてくれる、宗谷にとって一番のお気に入りの場所だ。

 そして今なぜここにいるのかというとこの景色を見るのはしばらくはないと思い見納めに来たのだ。この展望台から見る夜景はとても綺麗だった。そして運が良いことに晴れていたので国東半島まで見渡せた。出発前に綺麗な夜景が見れたので宗谷は嬉しかった。

 

 

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 そして翌日の16時、そろそろ出発しなければならないときが来た。持っていく荷物の確認と、戦車の状態をチェックし、予備の部品の確認も済ませた。宗谷が指示を出す。

 

「ついにこの時が来た。我々旭日機甲旅団は、この戦車と共に、大洗へ向かう。今まで戦車道で『男子が出ていた』という事例は無い、非難の声を掛けられることもあるだろう。だが忘れるな、俺達の目的は『大洗女子学園戦車道科を危機から救う』ことだ。それだけは絶対に忘れるな」

 

「分かってるよ隊長、俺達はそのためにここまで来たんだ。今さら目的を見失うわけがないだろ?」

 

「よし、全員搭乗!!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 宗谷の指示で全員が一斉に戦車に乗り込む。慣れているだけのことはあり、乗り込むのは早かった。福田が操縦席に座り、エンジンをかける。力強いエンジン音が格納庫中に響き渡る。

 宗谷が扉を開けると中からカバーを被った戦車が1輌出てきた。後ろに荷車を付けて格納庫から出ると、宗谷が扉に鍵をかけた。そして宗谷も乗り込み、別府港に向けて出発した。

 

 

ーー

 

 

 

 戦車は時速30キロ程度の速度でゆっくりと港を目指していく。カバーに穴を空けて操縦席から見えるようにはしているが外から見たら怪しい物が道路を走っているようにしか捉えられない。

 通り過ぎていく車からバシャバシャ写真を撮られている。

 そんな中を掻い潜り、何とか港に着いた。駐車場に一旦止めて、じゃんけんで負けた福田を留守番させて、お土産を買いに店に立ち寄った。選んだのは大分の名産、とり天の味がする煎餅だ。それを4箱買って戦車に戻った。

 フェリーに乗る時間になったので待機するラインに戦車を走らせ、岩山が最後の手続きに行った。そしてフェリーに乗り込み、転輪の間に輪止めをして客室に上がった。ロビーのカウンターで部屋の鍵を受け取り、荷物を部屋に入れて、6人全員で甲板に上がった。

 

『ボォーーー』

 

 低い汽笛が夜空に響いた。宗谷たちを乗せたフェリーはゆっくりと夜の海を進み出す。月の明かりが海を照らしている、その中をフェリーは進んでいく。進み始めて10分後、港はすっかり小さくなってしまっている。

 

「敬礼!」

 

 全員が別府に向けて敬礼をした、夜景が見えなくなるまで。そして中に入り、普段着に着替えた。レスントラで食事を済ませ、風呂に入って部屋に入った。宗谷が明日の予定を説明する。

 

「明日は朝7時に大阪港に着く、そこからトレーラーで茨城港まで移動する。覚悟しろよ、大阪港から茨城港までの移動は9時間かかるからな」

 

「マジかよ~、9時間も高速か~」

 

「たまに休憩入れるから心配すんなよ。それに9時間って言ったけど休憩含めて9時間だからな?さあ、明日に備えて間に早く寝よう。」

 

 

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ーーー

 

 

ーー

 

 

 

 朝4時、フェリーの中は静まり返っている。福田たちもぐっすりと寝ている。そんな中、宗谷だけ起きていた。片手に缶コーヒを持って窓から外の景色を見ている、うっすらと明るく少し霧がかかっている。

 

「フー・・・今日はいよいよ大洗に向かうか・・・何とか無事に付ければそれで良いがなぁ・・・・・」

 

 宗谷は隊長としての責任を感じていた。4年前に近衛が廃校になり、これから何をしていこうかと考えていた人を集めて旭日機甲旅団を結成した。

 ただこれが正しかったと言えるかは分からない、この4年間ずっとバイトと戦車の組み立てをしてきただけだ。勉学に関しては多少なり高校の内容を勉強してきたがそれで足りるかはまた別問題だ。

 宗谷たちの経緯を説明すると、近衛の中等科に通っていたのだが2年生の時に突然廃校になったのだ。生徒だった宗谷たちは成す術もなく廃校を受け入れざるを得なかった。

 何故大洗に行こうと思ったのかというと、元々無名だった女子学園が、優勝まで上り詰めたという話を聞いて、どういう人たちが大洗女子学園を優勝に導いたのかが気になっていたのだ。

 それだけではなく、宗谷自身は中等科を卒業したら大洗女子学園に行きたいと思っていたのだ。大洗女子学園は宗谷にとっては憧れの女子学園だった。

 中等科で学べることなんて基礎かそこからの応用ぐらいしかない。でも宗谷は2年間で学んだ知識を使って戦車道に出たい、そう思っていた。

 例えダメでも、せめて戦い方だけでも見たかった。元々は自分1人の考えだったのだが、廃校をきっかけに仲間を集めて皆で戦車道に出ようという考えに変わったのだ。

 そして2年前、風の噂で大洗女子学園が危機に立たされているという話を聞いて、中途半端な仕上がりだった戦車を急ピッチで仕上げた。早く大洗女子学園に行けるようにしたい、その一心でここまで来たのだ。

 ただ1つ気がかりなのはこれからやっていくことが正しいのかという所だ。先程も言った通り、戦車道に男子が出たことはない。ましてや6人も出るなんて前代未聞だろう。それでも、宗谷は戦車道に出たかった。ただ出たいというだけではなく、危機から救うために行くのだ。

 

「・・・まあ、先の事ばかり考えていても仕方ねぇか。見据えるのは良いけど、そればかり気にしたところで、どうにもなるものじゃないしな」

 

 そして宗谷は部屋に戻っていった、大阪港まであと2時間半。

 

 

ーー

 

 

 

「ほらほら全員起きて顔洗ってこい」

 

 大阪港まで残り1時間、宗谷が全員をたたき起こした。福田は寝ぼけながら宗谷に言った。

 

「本当に朝が早いな~隊長」

 

「そんなことは良いから、さっさと行ってこい」

 

 顔を洗い終え、軽めに朝食を済ませた宗谷たちは車の格納室に向かった。戦車が乗っている時点で車格納室とは言い難いのだが。

 大阪港に着くとまずは大型のトレーラーから下ろされる、乗用車などは後回しだ。もちろん宗谷たちも待たされている。柳川はため息をついている。

 

「ハァー・・・・・朝早くに起きて、待たされているなんてなぁ、いつ順番が回ってくるんだ?」

 

「まあ、待てよ。すぐに動くさ」

 

 そして10分後、ようやく進み出した。格納室の中を『ガラガラ』と音をたてながらフェリーを降りた。空は晴れている、いい天気だ。

 

「う~ん、やっぱり晴れていると気分が良いなぁ」

 

 そう言う宗谷に男性が1人近づいてきた。

 

「あんたかい?戦車を運んでくれって言ってきたのは」

 

 どうやら運送屋の人らしい、宗谷が挨拶をする。

 

「ええ、本日は宜しくお願いします」

 

「ほー、あれかい?例の戦車は」

 

「はい、自分達で造り上げた物なんです」

 

「へー、そりゃスゲーな。20年運送屋をやってるけど戦車を運んでくれなんて言われたのは始めてだな。よっしゃ、大洗まで行くぞ!」

 

「はい!宜しくお願いします!」

 

 戦車を載せ終わるとトレーラーは出発した。ここからは先が長い。

 

 

ーーー

 

 

ーー

 

 

 

 一方、大洗女子学園には宗谷から以下の手紙が届いていた。

 

 

『返事を返してくれたことに感謝します。そちらの要望に従うため、停泊する時刻に合わせて学園艦に乗らせていただきます。それではよろしくお願いいたします。

 

 

旭日機甲旅団隊長 宗谷 佳』

 

 

 手紙を見ながら角谷はニヤニヤしていた。

 

「ふーん、来る気なんだ。なかなか根性ありそうじゃん。一体どんな物好きなのやら」

 

 角谷は楽しみにしていた。でもこの事は、科長組の3人しか知らないことで、他の指導員たちは何も知らされていない。角谷は一体どうなるのかが気がかりだったが、先の事は考えない事にした。もう決定していることなのだから。

 

 

ーー

 

 

 

 一方、高速にのって5時間経っている宗谷たちは、SA(サービスエリア)で2回目の休憩に入っていた。トレーラーには全員乗れないので4人は戦車のなかで過ごさなければならない。

 当然のことだが乗り心地が言い訳がない、おまけに鉄箱の中なので放熱よりも吸熱の方が勝るのでかなり暑い。さらにカバーも被っているので暑さは倍増している。

 宗谷は熱中症にならないように気をつけるよう言っているがいつなってもおかしくない。とりあえずうちわで対策を取っているが暑いものは暑い。さらに悪いことに今度は渋滞にはまり、1メートル進むのに20分かかる始末に・・・・・

 

 そんな状態だったので大洗に着いた時には夜7時を回っていた。日が落ちて、辺りは街頭と月明かりしかなかった。

 

「えっと~、ここが・・・大洗・・・だよな?」

 

「暗いし、静かだし、何も分からん。」

 

「うーん・・・・・標識には『大洗』って書いてあったし、間違いないんじゃないか?」

 

「て言うかよ、肝心の学園艦ってやつはどこにあるんだよ」

 

「明日ここに停泊するはず、だったよな?」

 

「ああ、そう言ってたぜ」

 

「とりあえず、戦車降ろすぞ!手伝え!」

 

 戦車を降ろすとカバーを取った。回りが暗いのでライトを使わないと足元が見えない。運送屋の運転手が、宗谷たちに一言声を掛けた。

 

「頑張れよあんちゃん、戦車道に出られると良いな!」

 

「どうもありがとうございます!帰りはお気をつけて!」

 

「ありがとうよ!じゃあな!」

 

 そんなこんなで運送屋と別れた・・・が1つ問題が起きた。

 

「なあ隊長、宿どうすんだ・・・?」

 

 福田がそう言ったのはごもっともで、別府を出発する前に宿を予約することを完全に忘れていたので大洗に着いてから探せば良いだろう、と言っておいて現在に至る・・・

 今から探す気力なんてない、となれば答えは1つ。

 

「「「「「「車中泊だな」」」」」」

 

 という訳で全員一致で車中泊に決まった。まずは銭湯で汗を流してコンビニで夕食を買った。食事をしながら宗谷が明日の予定を話す。

 

「よし、少し時間はかかったが何とか予定通りだ。明日は学園艦がこの港に停泊する予定だ、8時に来て1時間停泊する、その間に乗り込むぞ」

 

「寝坊厳禁だな」

 

 予定を一通り説明し終わると、寝袋に入っての就寝となった。戦車の中は狭いのだが、全く気にしていない。しかし、宗谷だけは外に出て、港から見える海を眺めていた。月明かりに照らされる海は、幻想的だった。

 

「場所は違えど、見える海は一緒か・・・・・寝るか、今日は色々ありすぎて疲れたからな」

 

 宗谷も戦車の中に戻り、毛布を被って眠りについた。

 

 

ーーーーー

 

 

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ーーー

 

 

ーー

 

 

 

 ハッと目が覚めると何故か暗い。?、まだ夜なのか?と思ったら何か壁が目の前に・・・?

 

「おい!起きろ!!学園艦が目の前に来てるぞ!!!」

 

 宗谷の声で全員が一斉に目覚めた。慌てて起きた福田たちは目の前にある学園艦に言葉が出なかった。

 

「スゲェ・・・これが学園艦、か・・・」

 

 唖然とする福田たちに宗谷は指示を出す。

 

「と、とりあえず乗り込むぞ。福田、操縦頼む!」

 

「り、了解!」

 

 全員が慌てて戦車に乗り込み、学園艦に乗り込み始めた。宗谷たちの戦車道の戦いが、今始まる!!

 




※解説

近衛機甲学校

宗谷たちが通っていた機甲学校。機甲学校という名前でありながら、榴弾砲の取扱いや整備全般、その他にも偵察や通信機器の取扱いなども学ばせる学校だった。

半自動装填装置

重い砲弾の装填時間の短縮と装填手の負担軽減のために開発されたもので、砲弾を装置に乗せるまでは手動で行い、装填は自動で行うというもの。(あくまでも自分の見解です)
現在では全自動の装填装置が採用されているので4人だった搭乗員も装填手を除く3人に減らされた。


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