落下の危機にさらされてしまった4号!しかし、旭日の新たなる切り札、カ号観測機との連携によって救出成功となる。
夏海が作った防衛ラインを突破し、市街地に無事に到着出来た。しかし、市街地には、100トンを超える超重戦車が2輌待ち構えていた!
E-100に吹っ飛ばされてしまったB1は、煙を出しながら横転していた。かほが焦り声で通信を試みる。
「カモさんチーム!大丈夫ですか!?応答してください!!」
〔・・・・・・・・・・大丈夫よ!全員無事!やられちゃって申し訳ないけど、あとは任せたわよ!〕
〔頑張ってください、西住隊長!〕
〔絶対に勝てるって信じてます!!〕
ちゃんと3人の声は聞けた。大丈夫そうで安心したが、残る戦車はあと10輌になってしまった。
「全車撤退!真っ向勝負で敵う相手じゃない!!」
宗谷が撤退命令を出し、かほたちはバラバラになって建物の影に隠れる。恐ろしい威力を誇るE-100は、獲物を探す巨人のようにゆっくりと走っていた。
車長である
〔西住隊長、大洗は市街地に展開しましたが、少なくとも我々の敵ではありません。見つけ次第攻撃します〕
「分かった。だが、甘く見るな。相手は我々の防衛ラインを強行突破した連中だ。何を仕掛けてくるか分からない。それと、先攻したパンターが橋の上でトラブルを起こしたから、到着が10分ほど遅れる」
〔了解。敵に関しては十分気を付けます〕
通信を終え、夏海はタブレットの画面に目を向けた。防衛ラインを突破されることは想定外だったが、市街地に超重戦車を残してきたことは正解だったようだ。
雨が降ったことで泥道になってしまった箇所もあるので、100トン級の戦車が走れば泥に嵌まって、脱出どころではなかっただろう。観戦席にいるみほは、まほにE-100が参加していることを問い詰めていた。
「超重戦車を2輌用意するなんて、そうとう無茶したんだね・・・・・そこまでして旭日を潰したいの?」
「人聞きの悪いことを言うな。
「設計途中だったE-100を、たった2週間で完成させたって聞いたよ。旭日を潰すために急がせたんでしょ?それに・・・・・勝つために手段を選ばないことが、戦車道のいろはなの?」
しほは2人の言い合いをスルーしながら、試合の状況を確認している。現在の状況は、夏海を含む隊列が市街地に進行し、先に着いた大洗チームが超重戦車ツインズに苦戦を強いられている。
エンジン部を守るためか、マウスとE-100は後部同士をワイヤーで繋げ、2輌で1輌と言った形で走っていた。足立は『トランペッター戦法』と言っているが、トランペッターというのはドイツの装甲列車のことを指す。
何よりも厄介なのはE-100だ。装甲厚はマウスより若干薄いが、車体前面だけで200ミリの装甲に続き、150ミリという大火力を誇る砲を持っている。
少しばかり距離がある中でB1をひっくり返したのだ、威力はかなりあることは確かだ。至近距離で喰らったら大破どころではない。
さらに厄介なのは、40キロ近く速度を出せるという点だ。総重量144トンもある超重戦車が、40キロという速度を出せるというほど厄介なことはない。
そして今は、大洗からの必死の抵抗を受け流しながら攻撃を仕掛けようとしていた。大洗チームの火力では前面装甲を撃ち抜くのは不可能だ。岩山は悔しそうにレバーを叩く。
「クッソ、撃ち抜けねぇ!前面装甲が硬すぎてチリ改主砲じゃ無理だ!」
星野は頭を掻きながら唸り声を上げていた。
「う~、ポルシェティーガーでもダメだねぇ、同じドイツの戦車だっていうのに・・・・・」
かほはどうにか撃破できるようにと指示を送る。
「主砲と車体の間を狙ってください!そこを捉えれば撃破できるはずです!」
かほそういうが、砲搭と車体の間を狙うのはかなりの技量がいる。とてもじゃないがそんなことは出来そうにない、下手に撃つより別の対策を立てた方が良さそうだ。大洗は一旦攻撃を中止し、再び散った。足立は少しイラついているようだ。
「ちょこまかとぉー・・・・・だけど、
大洗チームは各車バラバラで展開し、影から超重戦車を見ていた。堂々と走る2輌の戦車をどうやって撃破するか。側面装甲も厚く、履帯保護のために付いているスカートだけでも50ミリ以上ある。
側面からでも撃ち抜けるか怪しいところだ。影から穂香がE-100を見ている。
「うは~、ヤバイねぇ。あんなのどうやって倒すの?」
梅は砲弾を抱えながら悔しそうに唸っている。
「卑怯にも程があります。マウスだけでも倒すのに苦労してたのに、2輌も超重戦車に来られるなんて・・・・・」
操縦席に座っている夏子も同じ気持ちのようだ。
「全くですよ~、さっきの隊列が迫るって言うのにぃ~~」
そこが1つの大きな問題だった。防衛ラインは突破出来たが、突破してもう12分が経過していた。本隊がいつ到着してもおかしくない状況に置かれている、なるべく早く対処しなければならない。
「黒江ちゃん?そっちはどう?」
〔市街地にかなり接近していますけど、何かトラブってるみたいなんで、到着まであと10分程度掛かりそうです〕
「分かったわ、ありがとう」
残り10分、せめてどっちか1輌を潰すだけでもマシになると思う。そこで、かほにこう聞いた。
「西住ちゃん?多分同じこと考えてたと思うんだけど・・・・・」
「敵戦力を分散・・・・・させますか?」
「やっぱそれしか無いよね、誰かにワイヤー切ってもらおうか?」
「近くに誰かいないか聞いてみましょう。下手に動くと餌食になっちゃいますから」
2人の意見は合致したので、あとはワイヤーを切ってもらうだけだ。通信してみた結果、近くにいたのはM3だった。頼んでみると、あいかはOKと言ってくれた。しかし、他の乗員はワイヤーを切ることを嫌がり、中々攻撃に移せずにいた。
「嫌だよ!!カモさんチームを軽々と吹っ飛ばした戦車相手に撃ちたくないよー!!」
「何言ってんのよ!西住先輩からの命令よ!命令には絶対服従なんだから!」
「だって砲撃音で居場所バレたら私たちが標的にされるんだよ!?怖すぎて狙えないよぉーー!!」
「だったら機銃使えば良いじゃない!!おりゃぁー!!」
あいかが足下にある機銃発射ボタンを踏み、戦車同士を繋いでいるワイヤーに向けて弾をばら蒔く。『タタタタタタタタ』と言う音がし出したので、足立がハッチから頭を出して見てみた。
見たときには既にワイヤーが切られていた。しかし、足立は慌てることなくマウスの車長、
「ワイヤー切られたけど、あんたらだけで行けるよね?」
「当たり前でしょ?むしろこうなった方が都合良いわ」
「作戦は、分かってるよね」
「ええ、『プランB』でしょ?さっさとやりましょ」
どうやら、『プランB』という別の作戦を考えていたらしい。普通の戦車でも出来る簡単なものだが、超重戦車コンビになるとまた違ってくる作戦なのだ。
M3はワイヤーを切った後にすぐ移動し、市街地内をうろついていた。慌てて逃げてきたので、敵が来ていないか心配していたが、鈍重な戦車から逃げるのは容易いことだ。すぐに見えなくなったので、あいかは少し安心していた。
「ほらー、大丈夫だったでしょ?どんなに強い火力持ってたって、
『ドォーーン!!!』
『グワァーーン!!』
凄まじい轟音と共に、目の前の道に穴が開いた!あいかが後ろを向くと、マウスがゆっくりと接近していた。狭い道を走って来るさまは、壁が迫っているようなものだ。
「うわ!さっきのマウス!?逃げるよ!全速前進!!」
一方、建物に身を潜め、福田、水谷、北沢を待っているチリ改には、かほから2輌を接続していたワイヤーを切り離したと報告が入っていた。宗谷はその報告を聞くなり驚いていた。
「何だって!?ワイヤーを切った!?」
「戦力を分散させられればって思ったんだけど、ダメだった?」
「E-100の性能分かってんのか!?
「だけど、加速力は圧倒的に低いでしょ?そこを付ければ・・・・・」
〔こちらウサギチーム!マウスに追いかけられています!!応援お願いします!!〕
早速救援要請が入ってきたが、かほは落ち着いた様子で通信を返す。
「落ち着いて、相手は188トンの超重戦車。M3がギリギリ通れる道を選んで進んでみて、そうすれば引き離せるはずよ」
「分かりました!言われた通りにしてみます!」
「何かあったらすぐに連絡して、助けに行くから」
かほは的確な指示だと思ったが、どうもすっきりしない。
(もし私があっち側だったら、追い掛ける役はE-100に任せるかな?チリ改とほぼ同じ速度が出せるんだから・・・・・でも、それだと細い路地に逃げられなら取り逃がすことになっちゃうし・・・・・待って、まさか!!)
「ウサギチーム!今何処にいる!?」
慌てて通信機を手に取り、M3に通信をするかほ。何故こんなに慌てるのか、栞たちは不思議そうにしている。
「今ですか?今はマウスから逃げて、スポット197の裏路地に入ってますよ?どうかしました?」
「今すぐにそこから離れて!!罠があるかもしれない!!」
かほは脱出を促したが、時既に遅し。路地の出口に砲を向けたE-100が先回りしている!!
「全速後退!逃げるよ!!」
あいかは後退の指示を出したが、後ろはマウスによって阻まれた!M3の脱出は不可能になってしまった!プランBとはこのことで、重戦車同士で挟み撃ちにするという簡単な作戦だ。マウスで追い、マウスからの情報を元にE-100が先回りして挟み撃ちにする。
つまり、追い掛ける役は早くても遅くてもどっちでも良かったのだ。結論を言えば、追い込めれば良い。ただそれだけだ。そしてこの作戦にはまってしまったM3は、脱出方法が見つからず、道を行ったり来たりしていた。
対応策が見つからないM3に、足立は無慈悲にも攻撃するように言い出した。
「情報によれば、相手は1年生しか乗っていないらしわ。私たちの恐ろしさ、十分に味あわせてやりなさい!撃ち方始め!!」
マウスとE-100がM3を襲いにかかる!砲弾が飛んでくるが、M3を撃破するまでには至っていない。足立はわざと外し、じわりじわりと倒しに掛かっているのだ。
非常に無駄なことだが、相手に恐怖を与えつつ撃破する、これが足立の戦い方なのだ。
「うわぁーーん!どうしょうー!!脱出出来ないよぉー!!」
「誰か助けに来てぇーー!!」
そんな中でも、あいかだけは必死に抵抗しようと指示を出していた。
「助けを求めても来れないよ!今は私たちだけで出来ることをしないと!主砲は後ろを!副砲は前を攻撃して!」
乗員はあいかの指示通りに前と後ろに別れて攻撃を開始した。『出来ること』は、これしかないのだ。M3からの抵抗は、E-100とマウスからしてみたらへこみにすらならない程度だ。
それでも諦めずに攻撃を続けた。何処かに突破口はあると信じて。
「フン、無駄弾を撃ちまくるだけになるとはね。そろそろ飽きてきたから、撃破しようかしら?」
E-100の砲身がM3に向く。それでもM3は、抵抗を止めなかった。
「撃て撃て撃てぇー!!撃って撃って撃ちまくれぇーー!!」
半泣き状態で指示を出すあいか、それでもE-100は無慈悲に砲を向ける。
「そんな砲で撃ち抜けるわけがないじゃない。撃ち方用意!!う・・・」
『撃て』と言いかけた時、E-100は後ろから攻撃された。足立が頭を出すと、4号が砲を構えていた。
「あら?わざわざフラッグ車から来るとはね。まぁいいわ、あんな中戦車より倒す価値はあるからね。180°旋回!フラッグ車を撃破するよ!!」
突然動き出したE-100に、三浦は慌てた。撃破すると言っておきながら、何もせずに動き出したのだから。
「ちょ、ちょっと!何やってんのよ!
「
勝手に動き出してしまったE-100を呆れた目で見ながら、マウスも動き出した。M3に狙いを定めたが、突破口は形成された!攻撃される前にどうにか脱出出来た!
「よ、良かったぁ・・・・・西住先輩が助けてくれたから・・・・・あ!助けにいかなきゃ!!」
助かったが今度はかほたちがピンチに陥ってしまった!助けにいこうとしたとき、穂香から通信が入った。
〔何とか脱出出来たみたいだね。無事で何より〕
「角谷先輩!そんなこと言っている場合じゃないですよ!西住先輩が!」
〔まぁまぁ、慌てない慌てない。西住ちゃんもこう言ったことは予測してのことだから、きっと大丈夫だよ。それと、あのバカでかい戦車を倒す作戦があるからしっかり聞いて〕
2~3分前、かほはM3が窮地に立たされることを察していたが、E-100たちを倒す方法が見つからなかった。どうにかして倒さなければ、後々で窮地に立たされるのは
どうにかしなければ、そう思えば思うほど分からなくなっていった。悩むかほに、宗谷からの通信が入る。
「ヤベーなぁ、こりゃ。俺たちの火力じゃ太刀打ち出来ないなぁ」
「そんなの分かりきったことでしょ?だけど、私達でどうにかしないと。お母さんたちがやったあの戦法を使う?」
「効かないだろ、きっと対策済みだよ」
みほたちはマウス撃破の際、ヘッツァーで足止めをしたあと、マウスの砲搭を90°旋回させた直後に89中戦が車体に上がり、無防備となったエンジン部を撃ち抜いて撃破したのだ。
だが、同じ手が何度も通用するような相手ではない。何か別の方法を考えなければどうしょうもない。
「迫撃砲とかあればなぁ。そうすりゃ山形の曲線描いてエンジン部を上から撃ち下ろせるのに」
「そんなこと出来ないよ。動き続ける戦車相手に撃ち下ろすなんて、そんな簡単には・・・・・」
返信しかけた時、さっき救助されたときのことを思い出した。さっきはカ号からワイヤーを下ろしてもらい、引き揚げて助けられた。ワイヤー・・・・・引き揚げる・・・・・張る・・・・・
「・・・・・そうだ!これならいけるかも!」
「うん?どうかしたのか?」
「宗谷くんたちに助けてもらったから、1つ作戦が思い付いたの!」
宗谷にはさっぱりだった。確かに救助はしたが、そこから一体どんな作戦を思い付いたの言うのか。
「みなさん、今から言うことをよく聞いてください。私たちの連携が物を言う作戦になります」
「ええい、もう何でも良い!早くその作戦を伝えろ!!」
焦っているのか梅は普段以上にピリピリしていた。
「ではまず、囚われの身となっているM3を救出します。
と言った感じ作戦を立て、今4号はE-100の囮として引き付けていた。砲撃が来る度に凄まじい衝撃で地面が揺れた。かほは朝子に指示を送っている。
「冷泉さん、E-100が動き出したよ!相手は遅いように見えて早いらしいから、旋回は素早くね」
「・・・・・コーナーで差を付けるなら、任せろ」
朝子は角を曲がるとき、減速することなく強引に曲がっていった。曲がる度に『ガガガガ』っと地面が削れるかのような音が響く。
振り切るために無理な操縦をしているのだが、E-100の操縦手もかなりの腕を持っているようだ。狭い角を素早く曲がり、差をつけないように追いかけている。そして正確な射撃が襲ってくるので、何とかして振り切らなければ1発で撃破されてしまう。
ジグザグに走ったり、フェイントで急ブレーキを掛けたりしたが全く効果はない。動きを読まれているようだった。
「西住・・・・・次は?」
「ちょっと待って、えっと・・・・・」
朝子は次の指示を待ったが、試せるものは全て試してしまったため、かほは焦っていた。今はとりあえず逃げるしかない、150ミリの驚異を間近で感じながら逃げるのは恐怖だった。
反撃に転じてみたものの、やはり攻撃は通用しない。E-100は弾を弾き返しながら4号に迫っていく!
「フッフッフ、最後の悪あがきってやつかしら?無駄なことを」
足立は嘲笑うように4号を見ていた。あと少しで追い付くと思ったその時、4号が通りすぎた角からM3が現れたのだ!
「澤さん!?何やってるの!?」
「西住先輩に頼りっぱなしだったから、今度は私たちが何とかする番です!」
M3はE-100の前に立ちはだかったあと、突進していった!車体がぶつかり合い、火花が散った。
「澤さん!戻って!あなたたちじゃ太刀打ち出来ないよ!」
「大丈夫ですよ!私たちは、『重戦車キラー』の娘何ですから!」
M3は突進しながら砲撃しているが、砲弾と車体は弾かれている。諦めずに攻撃を続けるM3、その必死の抵抗も簡単に受け流されている。しかし、E-100は背が高いので、攻撃しようにも懐に入られて攻撃出来ずにいた。
そして今の6人は、さっきの時とは打って変わり、好戦的な姿勢を見せていた。足立は砲弾が弾かれる音を聞いてイライラし始めていた。
「何をしているの!!急制動掛けて一気に吹っ飛ばしなさい!!」
「は、はい!」
足立の指示で急制動を掛け、M3とE-100の間に隙間が出来た。そのタイミングを逃すことなく、E-100の150ミリ砲が火を吹いた!
『ズドォーン!!!』
『ドォーン!!』
2輌同時に射撃し、煙が晴れた時にはM3が白旗を上げていた。かほが通信を試みる。
「ウサギチーム!大丈夫!?」
〔大丈夫でーす!やられましたけど、全員無事ですよー!〕
あいかの元気そうな声が聞けた。かほは安心出来た反面、申し訳なさで気持ちが少し沈んだ。助けてくれたのに、まさか犠牲になるとは・・・・・
〔西住!!何やっているんだ!!作戦決行中だぞ!!〕
梅が呼んでいる。かほは通信機を握り、M3に通信した。
「澤さん、ごめんね。それと、ありがとう」
そう言い残すと4号と共にその場を去った。あいかはその言葉を聞いて、泣きそうになっていた。
「『ありがとう』だなんて、お礼言われるほどのことはしていないのに・・・・・」
そしてE-100は4号に向けて照準を合わせようとしていたが、問題が発生していた。
「何してんのよ!さっさと撃ちなさい!!」
「無理です!砲搭が旋回出来ません!」
「何がどうなってんのよ!まさかさっきの砲撃で旋回装置壊れたとか言うんじゃないでしょうね!!」
足立がハッチから頭を出して見てみると、砲搭と車体の間に不発弾が挟まっていた。M3の旋回砲搭である37ミリ砲弾が見事に挟まっているのだ。
「クソッ!まぁ良いわ!砲搭が旋回出来なくても射撃は出来る、さっさと行くわよ!」
E-100が動き出した頃、大洗チームはマウスに攻撃しながら後退していた。これでも作戦は決行しているのだが・・・・・
「おい、偵察員!準備は出来ているのか!?」
梅は福田に向けて通信していた。福田は陸王を待機させてきたあと、ようやくチリ改に戻れたと言うのにいきなり出撃命令が出されて単独行動中だったのだ。
「偵察員って呼ぶな!それと準備は進めてる!今すぐに決行しても問題無しだ!」
福田は建物の陰に立ち、ワイヤーを持っていた。『今回の作戦には欠かせないものだから』と言われ、カ号に付いていた物を持ってきたのだ。福田はワイヤー片手にぶつぶつ不満を溢していた。
「ったくよぉ・・・・・やっと隠し場所見つけてチリ改に戻ってこれたってのに・・・・・帰って早々出撃指令出される羽目になるたぁなぁ・・・・・」
そんなことを言っていると戦車の砲撃音と同時にマウスが『ゴゴゴゴゴ』と音を立てながら走ってきた。福田はマウスを見て、ワイヤーを準備した。
目の前を3突とヘッツァーが通り過ぎ、マウスがゆっくりと福田の前を通り過ぎていく。マウスの後ろが見えた時、福田はこっそりと乗り込み、ワイヤーを取り付けた。
「これ上手く行くのか・・・・・?成功する確立0%に近いと思うんだが・・・・・まぁ良いさ、きっと上手くいくだろ」
大洗チームはマウスに攻撃を仕掛けながら後退している、パッと見ではただ逃げているようにしか見えない。これでも作戦の内なのだが。
「一体いつまで逃げれば良いんだ!こんなことしていて本当に撃破なんて出来るのか!!」
装填しながら愚痴を溢す梅、それでも穂香は落ち着いた態度を見せている。
「こりゃダメかもねぇ、貫通出来ない装甲撃ち続けても無意味だしねぇ」
「負けそうになるかも知れないってときにそんなこと言わないでください!!」
梅の鋭い突っ込みを流しながら、3突の美幸も穂香と同じ思いでいた。
「確かに・・・・・このままでは何も進展が無いままで終わってしまうぞ。西住殿は一体何を考えているのだ?」
4号がE-100の囮となって動き始めた頃、ヘッツァーと3突はマウスの囮になっていた。かほからは、『これが作戦だから』とだけ言われて。
「西住殿、これが作戦になるのか?正直私にはこの作戦の意図が理解出来ていないんだが?」
「予定ルートの先に福田くんが待機しているはずですから、そこまで誘導してください。今は、これしか出来ませんから」
「それは良いが、いつまで逃げれば良い?我々もそう長くは持たんぞ」
「福田くんが待機している場所から建物をぐるっと1周してください。そうすれば相手の動きは封じ込めるはずです」
「・・・・・分かった、今はあなたを信じよう」
と言った会話をしてから4分が経過し、建物をぐるっと1周したが、何が変わると言うのか。流石にこれ以上は対処のしようがない。
「もうダメだ!戦況を支えきれない!逃げるぞ!!」
梅がそう言った直後、突然「ガクン!」と音を立て、マウスの動きが止まった!美幸は驚いている。
「!? 何だ!?急に動きが止まったぞ?」
そう言う視線の先には、マウスの後ろからワイヤーが1本キラリと光った。ワイヤーを取り付け、ぐるりと1周させたことでワイヤーが張り、動きを止めることが出来たのだ。
初歩的ではあるが、ただ動きを止めるだけなら十分な作戦だ。
「早くワイヤーを切り離して!主砲で撃ち切れるはずよ!!」
三浦はそう言い、主砲を旋回させ始めた。ワイヤーを切ろうとしたとき、目標が変わった。距離を取った位置に、4号が待機していたのだ!藍が真剣な表情で照準器を覗いている。
「仰角最大、目標捕捉!射撃用意完了です!」
「藍さん、あなたのタイミングで撃って。私は、あなたに任せるから!」
「はい!」
藍は射撃時の弾道、着弾予測を立て、若干修正したのち、トリガーを引いた!砲弾は円弧を描き、マウスのエンジン部を目掛けて飛んでいく!
『ガイーン!!』
当たったかと思ったが、砲弾は車体を掠めただけで、撃破には至らなかった。惜しいところに当たったので、もう1発撃てれば撃破出来るはずだ。しかし、マウスは隙を与えまいと砲撃を開始した。
攻撃に邪魔され、4号は2発目を撃てずに逃げ惑うしか出来なかった。
「このままだと、マズいぞ・・・・・一旦撤退した方がいい」
「それは出来ないよ。今ここで仕留めないと、私たちが不利になってくる。藍さん、次は撃てる?」
「ごめんなさい。攻撃される度に地面が揺れて、照準器がブレますから狙いが定まりません!」
マウスの攻撃をどうにかして封じなければ、反撃出来ない。
「じゃあ、こうしたら良いんじゃないかな?」
「攻撃できないようにすれば、こっちのもんですよ!」
と言う声と共に、89中戦の汰恵がマウスの砲身にワイヤーを引っ掛け、3式中戦が反対方向に引っ張り始めた!
「え!?猫田さん!?」
「用は攻撃が出来なければ良いんでしょ?だったら砲搭を回せば良いじゃないですか?元々デカいんですからワイヤー引っ掛けるのも楽でしたし」
「行くよ、行くよ、行っちゃうよー!グーンと引っ張るよー!」
ももがーの娘であり、現操縦手を担当しているミカンはノリノリで操縦レバーを引いていた。3式中戦が強引に引っ張り、砲搭は少しずつ回り始めた。電動と内燃機関の戦いを見せられることになるとは。
かほは少し呆然としていたが、砲搭が別方向に動いたので攻撃は止んだ。これなら十分狙える!藍が照準を修正している間も3式中戦は引っ張り続けている。
「ゴーゴー!引け引けぇー!!」
ミカンは加減せずにグイグイ引っ張っている。その横で89中戦も攻撃し、4号から気を逸らそうとしてくれている。マウスは反対方向に砲搭を回しているものの、砲搭は回るどころかモーターが加熱していた。
エンジンとモーターをどう比べても、圧倒的にエンジンの方が馬力が高いに決まっている。おまけにそこそこの出力を誇る3式中戦に引っ張られているのだ、そう簡単には回せない。砲手は手動で回そうともしていたが、全く効果はない。
強引に回そうとしているので旋回部からは『ギギギギギ』と軋み音を立てている。藍はその瞬間を逃さなかった!
「かほさん!撃ちます!!」
「撃て!!」
かほの声と同時にトリガーを引き、轟音と共に砲弾が撃ち出される!砲弾はさっきと同じように円弧を描き、エンジン目掛けて飛んでいく!
『ズドーン!!』
凄まじい音と共に、煙を上げてマウスは撃破された!この状況を見ていたみほたちは歓声を上げていた。かなり追い詰められた状況に置かれ、チームプレーで切り抜けられた。
しかし、安心したのも束の間、今度はE-100が高速で接近していた!4号たちはすぐに離れられたが、3式中戦だけはワイヤーが引っ掛かり脱出出来ずにいた!ミカンはアクセルを踏みながら焦っていた。
「ちょっ!マズい!マズいって!!脱出出来ない!!」
「焦らないで、反対に引っ張ればイケるかもよ?」
猫田は落ち着いていたが、ワイヤーは砲身の根元に近い位置で引っ掛かっているので、反対方向に引っ張っても対して変わらない。3式中戦が脱出に手間取っている時でも、E-100は容赦なしに迫る。
「マウスが撃破されたけど、私たちで全車吹っ飛ばすわよ!!先ずは動けずにいるそこの中戦車からね!!」
3式中戦は反撃に転じてみたものの、砲弾は弾かれてしまう始末。あと少しで接触する!となったとき、チリ改が飛び出してきた!
「見つけたぞあんりゃろー!!一気に懐に入って吹っ飛ばしてやる!!」
どうやら福田は機嫌が悪いらしい。アクセル全開で、何のためらい無しに突っ込んで行く!岩山たちは焦っていた。
「おい福田!落ち着け!怒るのは分かるが冷静に判断しろ!」
操縦席に顔を近づけながら叫ぶ柳川。
「攻撃通用しない相手に突撃しても何も解決しねぇって!!頼むから落ち着けぇー!!!」
前と横を交互に見る水谷。
「無理、無理、無理、無理だって!!マジで無理だから止まってくれーー!!」
頭を抱える北沢。
「まだ死にたかねぇー!!」
4人は焦っていたが、宗谷は何も言わなかった。反対することなく、岩山に指示を出していた。
「岩山、やつの
「弱点!?何処にあるんだよ!補助タンクも無いし、※
「難しく考えるなよ。やつは‘爆弾’抱えてんじゃねぇか」
‘爆弾’と言われ、マウスに目を向けたときにM3の砲弾が刺さっていることに気づいた。確かに‘爆弾’を抱えているようだ。
「なるほどな、これなら1発逆転狙えるぜ!!」
岩山が照準を合わせ、砲撃準備を進める。E-100が攻撃してくるが、チリ改は速度を落とさない。福田は一気に詰めようと更に速度を上げる!
射程圏内に入り、射撃態勢に入ったとき、E-100がほぼ至近距離で砲撃してきた!とっさに避けたので砲弾は砲搭を掠めただけで済んだが、掠めた砲弾は真っ直ぐに3式中戦に向かって飛んでいった!
「ヤベ!!3式!避けろぉーーー!!!」
福田が叫んだが3式中戦にはどうすることも出来ず、エンジン部に直撃弾を喰らってしまい、撃破されてしまった。
「クソっ!仕方ねぇ、岩山!仇を討つぞ!!」
「了解!何か違う気がするけど、撃てぇー!!!」
岩山がトリガーを引き、砲撃が真っ直ぐ‘爆弾’に向かっていく!そして見事に命中し、「ドォーン!!」と爆音を立て、白旗を上げた。M3のあいか率いる2代目重戦車キラーが爪痕を残してくれた。
その後、チリ改がゆっくりと3式中戦に近づいた。エンジンからは黒い煙が上がり、白旗が風に吹かれていた。その姿を見て、福田は申し訳無さで言葉が見つからなかった。
避けただけとは言え、チリ改の砲搭を掠めたときに弾道が変わってしまったのだ。福田は通信機を通して謝った。
「すまん3式・・・・・俺の避け方が悪かったばかりに・・・・・」
「気にしないで、私たちは大丈夫だから。やられたけど、楽しかった。後は任せるよ」
「そうそう!明るくね!勝てるように応援するから!」
「ファイトだよ!優勝して帰ってきてよ!」
3人に励まされた時、ルクスから通信が入る。
「全車聞こえる?黒森峰が市街地に侵入したわ!あなたたちが今いる方向に向かってる!」
マウスとE-100を撃破することに夢中になってしまい、夏海たち率いる本隊のことをすっかり忘れてしまっていた。
そして本隊には、超重戦車が2輌ともやられたという報告が入っていた。
「あんたら揃いも揃ってやられましたってどういうことよ!!何やったらそんな情けない結果を出すの!!」
感情的になっているマリカに、夏海は冷静に話す。
「落ち着けマリカ。まだ敗北と決まったわけではない。数は我々の方が優勢だ、そこまで焦る必要はない」
夏海は余裕そうにしていた。そして、ティーガー1だけ、別行動を取り始めた。その様子をルクスがじっと見ていた。
その一方で、かほたちは建物の中に隠れ、ルクスからの情報を待っていた。残った戦車は4号、ヘッツァー、3突、ポルシェティーガー、89中戦、ルクス、そしてチリ改の7輌。
黒森峰側はまだ10数輌残っている。数は不利だが、まだ勝機はある、とかほは思っていた。その勝機を逃さないために、作戦を立て直しているところだった。その間に、ルクスから新しい情報が入ってきた。
「皆聞こえる?ティーガー1が別行動を取り始めたわ。この方向からすると、スポット364に向かっていると推測出来る。そこまで行く道は1本道で、その先に広場があるわ。もしかしたら、西住さんと決着を付けるんじゃないかしら」
みほとまほの一騎討ちの時も広場で戦っていた。その時とほぼ同じ状況が行われようとしているわけだ。
「1本道なら1輌だけで動くのは危険を伴うな、誰かが一緒に付いていった方が良いだろ?」
宗谷は「自分達が」ではなく、「誰かが」と言い、自ら護衛には付かない姿勢を見せた。
「じゃあ宗谷くんたちが適任でしょ?わざわざ『誰かが』なんてはぐらかさなくても良いじゃない」
穂香の言葉に全員が賛成した。しかし、宗谷は納得がいかないらしい。
「俺たちじゃなくてもポルシェティーガーだとか、ヘッツァーとかでも護衛は出来るでしょ?我々に一任しなくても」
「あなたたちだからこそ任せるのよ。護衛任務の技術に関してはあなたたちの方が上でしょ?」
「まぁ、確かにそうですけど・・・・・」
あまり乗り気ではない宗谷。そこでかほは、宗谷に隊長として命令を下した。
「宗谷くん、隊長の私が命令します。
流石の宗谷もこれには服従するしかない。渋々了承することにした。
「分かったよ、俺たちが護衛に付く」
「それじゃあ、あとのメンバーは他の敵を足止めしてください。それでは、パンツァーフォー!!」
「「「「「「「おーー!!!」」」」」」」
※解説
砲を保護するために付いている盾を指す。砲身の根元に付いており、攻撃から守るために備えられている。
この防楯に関しては銃身の先につける盾、兵が使用する手持ちの盾の盾に関しても同様の言葉を使う。
今回も読んで頂き、ありがとうございました。今回の章は、読者の方からのご提案を意識しつつ執筆してみましたが、いかがでしたでしょうか?
ご提案をしてくださった読者の方には、感謝しております。今後も意識しつつ、執筆していきたいと思います。
感想、評価、お待ちしています。