ガールズ&パンツァー ~伝説の機甲旅団~   作:タンク

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前回のあらすじ

チリ改は追っ手により、履帯を外されてしまい、行動不能になってしまう。かほが手伝おうとするが、宗谷は福田と協力して4号ごとかほたちを逃がす。
逃がす選択を選んだ宗谷、かほたちはあまりに強引すぎるやり方に、納得がいかなかった。



第23章 かほと夏海の直接対決!

 ハイジャックに成功し、どうにか難を逃れた4号。車内は誰1人として何も言わず、エンジン音しか聞こえてこない。暫く走り、スポット364に少し近い、スポット367の、狭い路地で停車した。

 

「こっからなら後は自力で行けるだろ?早く戻って、履帯をはめ直さないといけないから戻るぞ」

 

 エンジンを切った後、操縦席を降りた福田に七海が声を掛けた。

 

「待て」

 

「何だよ?早く戻ら・・

 

『パァーン!!』、七海が福田にビンタを1発食らわせた。かほたちは慌てて七海に駆け寄り、止めに入ったが、七海は掴みかかった。かなり怒っているようだ。

 

「どうして!?どうして無理矢理引き離した!?私たちはチームで動いているんだぞ!誰かが危機に陥っているなら助けるのは当たり前のはず!それなのに・・

 

「1つ聞こうか。角を曲がったあとに、パンターが()()()()()()()ことに気づいていたか?」

 

 福田の指摘に何も言い返せなかった。『()()()()()()()』、つまり、回り込まれる可能性があったということだ。

 

「あの状態なら猫の手を借りたいところだ。だけどよ、俺たちを助けようとしてフラッグ車(自分たち)がやられたら元も子も無いだろ?あいつだって、本当は手を貸してほしいって思ってるさ。だけどあえてそうせず、お前らを逃がしたんだ」

 

「・・・・・何で?冷泉さんが言うように、私たちはチームで動いているんでしょ?だったら、手助けするのは当たり前じゃない」

 

 あまり納得がいっていないかほ、叩かれて頬が赤くなっている福田が真剣な声で答える。

 

「冷泉が言うことにも、西住が言うことにも一理ある。だがな、やられたら困るって時になっても、助けようとするのは違うぞ」

 

「どうして?宗谷くんは『犠牲の上で勝利するべきじゃない』って言ってたじゃない!」

 

「確かにそう言ったさ。だけど、あいつが言った『犠牲の上で勝利するべきじゃない』って言葉はな、仲間を犠牲にしないって言う意味も入ってるけど、それ以前に『自分自身も犠牲にならないようにする』って意味も込められてんだぜ?」

 

『自分自身も犠牲にならないようにする』、そう言われてみれば、親善試合のときも攻撃は受けていたものの、最終的にはやられないために、敵戦車を撃破してから救助していた。

 

 そう言われれば、何故こうまでして逃がしたのか、納得がいく。

 

「やれやれ、あいつがこの作戦を立てといて正解だったな」

 

「は!?ずっと前から計画してたの!?」

 

 栞の指摘に、福田は「うん」と一言返した。

 

ーーーーー

 

ーーーー

 

ーーー

 

ーー

 

 

 決勝戦3日前の夕暮れ、宗谷と福田が試合をどう運ぶか話し合っていた時。宗谷から急に話題を変えてきたのだ。

 

「なぁ福田。万が一、チリ改が走行不能に陥ったら、お前が4号を安全圏まで誘導してやってくれ」

 

「何言ってんだ?チリ改(俺たち)と4号が一緒に行動すること前提で話してんのか?そんなことしなくても自分で動くだろ?」

 

「西住のことだ、俺たちを護衛の任に付かせて、何かあったら絶対に助けるって言ってくる。何言っても絶対に動かねぇよ。そこでだ、操縦手であるお前に頼むんだよ」

 

「はぁ・・・・・で?どうすんだ?」

 

「まずは合図を決めなきゃな。西住たちに気付かれない合図を。それから・・

 

ーーーーー

 

ーーーー

 

ーーー

 

ーー

 

 

「全てあいつの計画通りだったってことよ。だけど掴みかかることに関しては俺も知らなかった。あいつのことだ、シークレットミッション(この作戦)をしなくても済むようにしたかったのかもな」

 

 全ての真相を聞かされたかほは、宗谷の気持ちを汲み取れなかったことを後悔した。無理をせず、大人しく動けば良かったのだ。

 

「私、隊長失格だね・・・・・宗谷くんよりも状況判断が甘かったし」

 

「いや、救助しようとした判断は間違いじゃない。ただ状況的にマズかっただけさ。あいつも、お前の気持ちを分かっているはずだぜ?」

 

 福田に優しい言葉を掛けられ、かほは少し気が楽になった気がした。そして、福田がポケットから何かを取り出してかほに近づける。それは、拳銃とホルスターだった。

 

「ちょっ、何これ?」

 

「あいつが愛用してる、南部(なんぶ)14(じゅうよ)年式拳銃さ。腰に2つホルスター付けてるの見たことねぇか?」

 

 そう言われてみれば、宗谷は出撃前に必ずホルスターを2つ付けていた。いや、そんなことは良い、何故その銃を手渡したのかが分からない。

 

「どういうつもり?これで従姉ちゃんに対抗しろってこと?」

 

「そうじゃねぇよ。あいつがこの銃を1つ預けるときは、預けたやつに対してのお守り代わりさ。だからその銃は弾を抜いてある」

 

 そう言って弾が入っている弾倉(だんそう)(マガジンのこと)を外して見せた。確かに弾はない。

 

「あいつはこう言ってた、『この2丁は、離れた者同士を引き付けてくれる』って。俺も渡されて、無事に合流出来た。こいつには、何か不思議な力があるみたいなんだよな。ほら」

 

 銃を寄せる福田、かほは少し抵抗があったが、宗谷の思いが込められた銃を受け取った。そして、腰にホルスターを付け、銃をしまった。

 

「それじゃあ、俺の役目はここまでだ。あとは俺たちが合流するまで、フラッグ車と一騎討ちしてくれ」

 

 そう言い残すと、走ってチリ改の元に戻っていった、と思ったら一瞬立ち止まり、大声を上げた。

 

「冷ぜーい!気絶させた詫びは後でするからなぁー!頑張れよぉー!!」

 

 それだけを言うと、走って行ってしまった。七海は思わず顔を赤くした。

 

「この試合が終わったら・・・・・あいつぶん殴ってやる」

 

「どぉどぉ、あとで高いスイーツでも奢ってもらったら?」

 

 栞がどうにか宥め、かほが4号に乗り込む。

 

「エンジン始動!スポット364に向けて、前進!!」

 

ーー

 

 

 一方、履帯を外され、消耗戦をしている旭日。主砲弾は残り31発、流石にこれ以上応戦するのはキツくなっていた。もうやられるのか、と思ったとき、突然攻撃が止んだ。

 夏海から新たに指示が出されたのだが、マリカは納得が出来ずに反論している。

 

「何でチリ改を撃破してはならないのですか!?目の前にいて行動不能、撃破するチャンスだって言うのに!」

 

「言っただろう?動けない敵を撃破するだけ時間の無駄だと。それに、いまだに撃破できていないということは、苦戦しているということだ。苦戦するほどの敵に費やすほどの時間はない。それに、履帯をはめ直すだけで30分以上掛かる。すぐに動くはずがない」

 

「くっ・・・・・分かりました、今すぐ動きます。攻撃中止!移動するよ!」

 

 目の前の敵を逃がすのは惜しいが、命令ならば仕方がない。流石のマリカも大人しく引いた。敵が引いていったところを見て、水谷と北沢は「ガシャッ」と音を立てながら機銃を下ろした。

 

「っはぁ・・・・・やっと下がったかぁ・・・・・」

 

「これ以上消耗戦はごめんだぜ・・・・・どれだけ俺たちを動かせば気が済むんだよ・・・・・で?次はどうする宗谷」

 

「履帯をはめ直すに決まってるだろ。急がないと、西住たちに遅れを取る」

 

「それは良いけどよ、どうやって外れた履帯をここまで持ってくるんだよ。あれだけで何100キロとあるんだぞ」

 

 いくらなんでも人力では厳しい。ただでさえ数メートル離れていると言うのに、どうやって持ってくれば良いのだろうか。

 

「・・・・・ワイヤーあるか?」

 

 宗谷が何か閃いたようだ。起動輪にワイヤーを絡ませ、もう一方を離れた位置にある履帯に付けた。エンジンを始動させ、操縦レバーを倒す。ワイヤーは起動輪に巻き付き、履帯が引っ張られてチリ改のもとに帰ってきた。

 

 不幸中の幸いか、履帯は踏まれておらず、これならはめ直しても問題は無さそうだ。

 

「よし、早速作業に入るぞ。そういえば、福田はまだか?」

 

「まだみたいだぜ。撃破されたって言われてねぇから大丈夫だろ」

 

 宗谷は4号を連れて脱出した福田を心配していた。いや、福田もそうだが何よりも気がかりなのは4号だ。通信するほどの余裕は無いため、状況は全く分からない。今は無事であってほしいと願うしかない。

 

ーー

 

 

 観戦席では、チリ改の復元作業に取り掛かっている姿が映っていた。みほたちはその様子を心配そうに見ていた。履帯をはめ直す作業は、ベテランでも最短で25分ぐらいは掛かると言われいる。

 それも道具が揃っていればのことで、まともなもの1つ無い状態でやって、25分では終わらない。せめて決着が付くまでには動かせるようになってほしいものだが、そこまでいけるかどうかは宗谷たちの腕次第だ。

 

「旭日の快進撃もここまでってとこかしら?でも、初戦でこんなに活躍出来ているのは凄いわね」

 

 珍しく褒めるカチューシャに続いて、ダージリンも褒めるようにポツリと一言溢した。

 

「彼らは私たちとは180°違う戦い方で来てましたけど、私でもそこまで考えることは無いでしょうね。カチューシャさんが言うように、彼らは凄いと思いますよ」

 

 みほには2人の会話が全く聞こえていなかった。心の中で、チリ改の復帰を願っていたからだ。

 

(お願い宗谷くん。今の大洗には、あなたたちの協力が必要なの。急いで!)

 

ーー

 

 

 一方4号は、スポット364に向けて快調に飛ばしていた。その中で、かほは夏海にどう対抗しようか考えていた。

 去年の1回戦で一騎討ちになったときは、全ての動きを読まれていた感じで、全く歯が立たなかった。そして何よりも怖いのは、去年のデータと今年の決勝戦までのデータを合わせ、更に上の対抗策を考えている可能性があるということ。

 夏海は相手の癖、動き方などの観察が得意で、それが電子戦に活きている。去年よりも対抗が難しくなるとかほは考えていた。

 そして、気が付くとスポット364に着いていた。目の前にはティーガー1がフラッグを棚引かせて止まっていた。夏海が砲搭のハッチから上半身を出して、ジッと4号を見ていた。かほが頭を出すと、夏海が話し掛ける。

 

「ここまで来れたか。正直、お前がここに来れる確率は50%と低かったのだが、運が味方しているようだな」

 

「運なんかじゃない。私は、みんなの力でここまで来れた。宗谷くんが言ってた、『もう1つの西住流』があったから。だから・・・・・だから夏海従姉ちゃんには、この『もう1つの西住流』で勝つ!」

 

「『もう1つの西住流』何て物はない。お前はあいつの言葉に騙されているだけだ。私が証明してやる」

 

 そう言うと砲搭の中に入っていった。この行動を取るときは、戦闘を開始する時、とかほは察した。癖なのか、かほと1対1になると必ず何か一言言ってから戦闘に入るのだ。

 

 小学生のときから、そうだった。今までは「私が勝つ!」、「絶対に負けない!」といった他愛もない会話を交わしていた。それなのに、中学生に上がった頃から態度が変わったしまった。『西住流』を引き継ぐ者として、厳しくされてきたのだろう。

 一言交わすときも、「お前の戦いは西住流に対してほど遠い」などと言った、冷たい言葉を掛けられた記憶しかない。中学生だった頃のかほは思った、『西住流が、従姉ちゃんを変えたんだ』、と。

 

 去年の試合の時も、今までと同じように言葉を交わしあった。夏海からは、「お前の戦い方は甘すぎる。それでは私たちには勝てない」と言われ、その通りになった。かほは、「私は甘いのだろうか」と悲観し、当時はみほの過去のことが脳裏を過っていたこともあり、戦車道に身が入らなかった。

 それから1年、宗谷や新しい仲間と共に成長し、今こうして夏海の前にいる。今は、どんな状況であれ、負ける気がしない。

 

「前進!!」

 

 かほの指示で4号が走り出す。同時にティーガー1も動きだし、互いに砲を向ける!

 

「撃て!!」

 

「撃て!!」

 

 同時に射撃し、砲弾が砲搭をかすっていく。2輌の戦車は互いに回りながら砲撃していた。かほはこの狭い場所で決着を付けるのは不利だと判断し、一旦引くことを考えた。左前の道に逃げれば少し時間が稼げる。

 

「冷泉さん!左前の道に入って!」

 

 冷泉はすぐに進路を変え、逃げる態勢を取ったが、突然目の前に着弾した!冷泉は慌ててブレーキを掛け、次の攻撃を避けるためにすぐに動き始める。

 

 しかし、ティーガー1がすぐに進路を塞ぎ、攻撃に移った!4号のシュルツェンが弾き飛ばされ、「ガシャン!」と音を立てて地面を転がった。夏海はタブレットをいじりながら、ポツリとぼやいた。

 

「いつもの癖だ。不利だと思うといつも逃げる態勢を取る。そして、目の前の道に入ろうとする。そんな状態だから、お前は甘いんだ」

 

ーー

 

 

 旭日は履帯のはめ直しに苦戦していた。焦りと緊張のせいか、上手く作業が進まない。ジャッキを使って車体を上げるまでは良かったが、履帯をはめる段階で止まっていた。

 重いので、付けようとしても誘導輪まで上げられない。あの手この手を使ってやろうとしてみるが、全く上手くいかない。宗谷が滝のように流れる汗を拭っていると、福田が帰ってきた。

 

「福田!西住たちはどうなった!?」

 

「心配すんなよ、ちゃんと送り届けた。今ごろ一騎討ちでもしてるだろ」

 

「そうか。なら急がないと!」

 

 そう言うと履帯を持ち上げようと手を掛けるが、履帯は上がらない。その光景を見ていた福田が指を指しながらこう言った。

 

「起動輪と履帯をワイヤーで繋いで、誘導輪側から引っ張ったらどうだ?そうすれば勝手に履帯が上がって、上手く行けば簡単にはめられるだろ?」

 

 岩山が手をポンと叩きながら納得した表情を見せた。

 

「そうか!何で気づかなかったんだ!じゃあ早くワイヤーを繋ぐぞ!」

 

 急いでワイヤーを繋ぎ直し、片方を起動輪に繋ぐ。引き上げ作業を開始したとき、宗谷は遠くを見つめた。見つめる先は、かほと夏海が対決しているスポット364だ。この状況で言えたことではないが、心配だった。

 

「おい宗谷!そっち持ってくれ!」

 

 水谷に呼ばれ、慌てて駆け寄っていった。チリ改が行動不能に陥り、20分が経とうとしていた。

 

ーー

 

 

「に、西住殿・・・・・全然・・・・・敵わないであります」

 

「いくら攻撃しても、簡単に防がれてしまいます。何か別の対策を立てないと」

 

「もう!強すぎる!全然隙を見せないし、攻撃正確すぎるし!」

 

「今は逃げた方が、身のためだと思うぞ・・・・・西住」

 

 かなり激しい戦闘で、4号はボロボロになっていた。撤退に失敗したあと、接近戦に持ち込んで撃破しようと考えていたが、接近はおろか攻撃すらままならず、攻撃を受けすぎてシュルツェンが砲搭右後部の一部しか残っていない。

 かほはもうどうすれば良いのか、分からなくなっていた。どう攻撃しても、相手は怯まない。どう避けても、正確に射撃をしてくる。手は震え、額には冷や汗が流れている。

 

(・・・・・どうしたら良いの?夏海従姉ちゃんにどうやって対抗したら良いの?)

 

 震える手は、左に付けているホルスターに向かって伸びた。左手は福田から渡された南部14年を握った。銃は少し傷があるが、綺麗に磨かれて光っている。かほは両手で握りしめ、目をつぶった。

 

(宗谷くん・・・・・!私、どうしたら良いの?それにこの拳銃は、離れた者同士を引き付けてくれるんじゃなかったの!?一体何をしているの!?早く来て!!)

 

 その時、『カサッ』と何かが足元に落ちた。拾ってみると、ただの紙切れだった。恐らくホルスターの中に入っていた物だろう。広げてみると、文字が書かれていた。どうやら、ただの紙切れというわけでは無さそうだ。

 

『これを見ていると言うことは、恐らく危機的状況に陥っていると思う。この紙には、定かではないが、今のティーガー1の弱点を書いている。やつの弱点は・・

 

「・・・・・五十鈴さん!相手の砲搭の周りを狙って撃って!!」

 

 五十鈴はかほの指示に戸惑った。砲身辺りならまだしも、()()を狙えと言い出した。装甲が厚いので周りを狙ってもほぼ無意味だ。それなのに周りを撃つように指示をする。

 もちろんかほも無意味であることは察していた。しかし、宗谷からのメッセージを頼りに、相手の弱点を探ろうと思ったのだ。

 

 ・・やつの弱点は、恐らく砲搭だ。砲搭だけは守ろうとする素振りを見せている。何処かは分からないが、撃ち続けていれば弱点を見つけられるかもしれない』

 

『撃ち続ければ』、そう書かれていたが、無駄撃ちだけは避けたい。かほはなるべく的を絞って探してみようと考えた。

 

 左右前面部、中心部、後部の3つに分けて撃ってと藍に指示し、かほ自身は頭を出して音を聞くことにした。何か異常があるなら当たったときの音が変わっているのでは?と睨んだのだ。

 ティーガー1の周りを走りながら、藍が言われた通りに射撃する。局所的な攻撃に夏海はついに諦めたかと思ったが、砲搭を狙い撃ちしてきたことに違和感を感じた。

 

(何故砲搭を狙う?4号の火力では貫通出来るはずがない。いや待て・・・・・まさか・・・・・気づいているのか!?)

 

「車体旋回!『例の場所』を狙わせるな!!」

 

 ティーガー1が突然旋回を始める。宗谷の狙いは当たっていたようだ。かほはティーガー1の旋回方向を見て、左側を守っているように見えた。そこで、左側を集中的に狙らわせようとした。

 

「冷泉さん!相手の左側に急接近して!五十鈴さんは左側に着いたら撃ちまくって!!」

 

 狙いは定まった。あとは弱点を見つけるだけだ!4号は素早く回り込み、砲搭に向かって砲弾を撃ちまくった!

 

『ガイン!ガイン!』

 

 金属音だけしかしない。変わった音1つ無く、弾は弾かれていく。いや、何処かにあるはずだ。諦めず撃ち続けさせたが、何も変わったことはない。撃っていると、ティーガー1の砲搭が旋回し始めた。

 かほは一旦引き、また別の方から撃ってみようと試みたが、警戒しているのか中々そうはいかせてくれない。逃げようとする4号に、ティーガー1の1発がかほたちを襲った!

 

「ガァーン!!」と打撃音が響き、4号は一瞬スピンし、壁にギリギリぶつからずに停車した。車体後部に命中し、大きくへこんだがエンジンは無事だった。だが夏海の警戒が強まり、車体を真正面に向けている。もう同じ手は通用しない。

 

(場所は分かった・・・・・けど、どうしよう・・・・・あれだけ警戒されたら、私たちだけじゃ太刀打ち出来ない。応援を呼びたいけど、今は来れない・・・・・残り砲弾数はあと、43発・・・・・)

 

ーー

 

 

「よし繋げたぞ!福田!回せ!!」

 

 履帯をはめ直し、試験的に動かしてみた。空回りさせて問題が無いか試してみたのだ。高速で回してみたが、特に問題は無かった。

 

「大丈夫だ!これなら何とか走れる!だけど応急処置だから、無茶は出来ねぇぞ」

 

「十分だ、最悪走れればいい。とにかく今は、西住たちのもとに向かっていくしかない!急ぐぞ!搭乗開始!」

 

 すぐにジャッキを外し、一斉にチリ改に乗り込んだ。エンジン音を響かせ、車体を真っ直ぐに立て直す。

 

「よぉーし。福田、目的地は分かってるな?」

 

「ああ、スポット364だろ?て言うかそこしかねぇしな」

 

「やっとこの88ミリ砲をぶっぱなせるってこったな」

 

「だけど砲弾はあと31発しかねぇぞ。こっから移動するだけでどれだけ敵にぶち当たるか」

 

「そんときは俺たちが何とかするさ。副砲(こっち)の方がまだ砲弾残ってるからな」

 

「何とかするは良いけど無駄撃ちすんなよ?副砲弾まで無くなったら機銃で応戦するしかなくなるぞ」

 

「大丈夫だって。余裕はあるけど、無駄撃ちはしねぇよ」

 

「よし行くぞ!俺たちの戦車道は、まだ終わっていないんだ!全速前進!目標地点、スポット364!!」

 

 福田がアクセルを全開に踏み込み、マフラーから一瞬アフターファイヤーが出る。エンジン回転速度は最大に上がっている。

 

「よっしゃ行くぞぉー!!しっかり掴まってろ!!」

 

 最大速度で走るチリ改、隠れるなんてことはしない。今はかほたちの応援に向かうため、余計な戦闘は一切しない気でいた。しかし、敵にはその情報がすでに出回っていた。

 

ーー

 

 

 一方、観戦席は盛り上がっていた。チリ改が全速力で走る姿が映っているからだ。宗谷たちはベテラン並の35分で履帯をはめ直したのだ。まほもこの早さには驚きを隠せない。

 

「早い。私たちでも40分は掛かったと言うのに、35分でやりきるとは」

 

 まほはそう言うが、しほは鼻で笑っていた。

 

「ふん。最短ではめ直せたとはからと言って、勝利と決まった訳じゃない。ここからどうやって逆転するのか、そこが重要だ」

 

ーー

 

 

 

 一方、『チリ改が高速で移動している』という情報がマリカに届いていた。乗員は意見具志を試みる。

 

「マリカ副隊長、ここは西住隊長の指示を仰いだ方が良いと思います。我々の考えが通用する相手とは思えません」

 

「大丈夫よ。私たちだけで何とかなるわ。それに、西住隊長は戦闘中に返信してこないじゃない。ここでチリ改(やつ)を倒せば、黒森峰の実力を思い知らせられる。行くわよ!全車続いて!!」

 

 マリカを先頭にチリ改撃破作戦を決行することとなった。しかし、他の乗員はこれで良いのだろうかと不安になっていた。今まで夏海から指示を受けた上で動いていたのに、自己判断で動くのは如何なものかと感じていた。

 それでも、隊長の夏海が指示を出せないときは副隊長であるマリカが指示を出すことになっている。そして作戦決行のため、バラバラになった。

 

ーー

 

 

 スポット364に向かうチリ改。最短で向かいたいため、近道を走っていた。あと6分程度で着くところで、目の前に敵が現れた!すぐに避けたが、その次の角を曲がったときまた敵がいた。

 応戦せずに逃げているが、福田は敵の出方が気になっていた。

 

「なぁ宗谷。なんか嫌な予感がしてんだが」

 

「包囲しようとしてんだろ。最後はティーガー2でとどめ刺そうって言ったとこだろ」

 

「まじかよ。どうする?今なら別ルートを選択する余地はあるぜ?」

 

「・・・・・いや、ここはやつらの作戦を利用しよう。上手くいけば一層出来るはずだ。北沢、残った味方向けて一斉通信だ。周波数を合わせろ」

 

 北沢が周波数を合わせ、テストがてら通信を試みてみる。

 

「こちらチリ改。大洗チーム、応答せよ。応答せよ」

 

〔お?その声は北沢くんかな?良かったぁ、そっちはまだ無事なんだね?〕

 

「角谷さんですか!?良かった!全然通信繋がらなかったから心配してたんですよ!」

 

 〔アハハ、ごめんね。何せ敵の攻撃が凄いのなんので、戦闘に集中してたから全然気づかなかったんだよ〕

 

「謝らなくて良いですよ。声が聞けただけで十分です。あ、宗谷に変わりますね」

 

 北沢が宗谷に通信機を渡す。宗谷も声が聞けたことに喜んでいた。

 

「角谷さん?無事だと聞いて安心しましたよ。で、早速で悪いんですけど、あと何輌残ってます?」

 

「えーっと。私たちと、レオポン(ポルシェティーガー)でしょ?あとは、ルクスと4号だから後5輌だよ。でも西住ちゃんと黒江さんとは連絡取れないから、3輌だけだね」

 

「じゃあ俺たちも抜けますから2輌ですね」

 

「てことは、宗谷くんたちは西住ちゃんの応援に行くんだね?それで、私たちに何をしてほしいの?」

 

「今スポット359を走行しています。今考えてる作戦は、恐らく361で決行できると思いますので、残ったポルシェティーガーと一緒に待機してください」

 

「作戦ねぇ・・・・・今の私たちに出来る?もうこのヘッツァーはボロボロだよ?」

 

「大丈夫です。相手の作戦の裏を付くつもりなので、砲弾が残っていれば問題ありません。では、『逆包囲作戦』、決行します!」

 

 穂香は早速美優に通信し、宗谷から言われたことを伝え、スポット361に向かっていく。一体何をしろというのか。

 

ーー

 

 

 敵を避けつつ、スポット361に着いた宗谷たち。相変わらず敵に進路を妨害されている。そして、宗谷が考えた作戦は穂香と美優に伝わり、準備万端の状態で待機している。

 

 避けるに避けて、狭い路地に逃げ込んだ。そしてその先では、宗谷が予測してた通りティーガー2が構えていた。

 

「あー・・・・・これマジで突破すんのか?」

 

「道は1つ、この道しかないんだ!前進!!」

 

 さらに速度を上げてティーガー2に接近する。マリカは早く撃破するよう指示を出すが、命中しない。チリ改からも砲弾が飛ぶが、ティーガー2の横の壁に当たってばかりで、肝心の本体に全く当たっていない。

 

「やつもまともに狙えなくなってるみたいね、今がチャンスよ!至近距離で吹っ飛ばしなさい!」

 

 照準がチリ改の砲搭に合わさり、砲手がトリガーに指を掛ける。トリガーを引こうとしたその時だ!チリ改が突然右に避け、壁を破壊しながらティーガー2に迫ってくる!

 

「ヤバイ!マジでヤバイって!!こんな突破方法ありか!?」

 

「もうすぐティーガー2に接触するぞ!衝撃に備え!!」

 

 チリ改の履帯がティーガー2の車体を掴み、片輪走行状態で強行突破した!通りすぎるとすぐに立て直し、全速力で逃げた。

 

「あいつら!追いかけるわよ!全車続いて!」

 

〔逸見副隊長!敵です!敵に後ろを取られて対処が・・・・・うわ!後ろ・・・・・〕

 

〔包囲されました!スポット361を脱出するルートは全て塞がっています!!〕

 

 他の乗員から「包囲された」という情報が入り始めた。マリカには何がどうなっているのかさっぱり分からない。

 

 ちょうどその頃、敵の包囲に成功した穂香と美優は、敵の殲滅に掛かっていた。逃げ場を失えばこっちのものだ。

 

「宗谷くん?作戦はほぼ成功って感じだよ。全車ではないだろうけど、大半がこのスポット361に掛かったよ」

 

「ありがとうございます。全車撃破までいかなくても大丈夫です。最低でも足止めが出来れば、敵のフラッグ車の撃破までの時間が稼げます」

 

「名前通り、『逆包囲』だね。これなら楽に敵を倒せるよ。さぁ行って!ここは私たちに任せて!」

 

 ヘッツァーとポルシェティーガーの2輌による攻撃で、少しずつ戦力を削っていく。その隙にチリ改がスポット364に向かっていく。

 

「宗谷くん!そっちに箱形のやつが1輌行ったよ!」

 

 美優から情報が届き、目の前にラングの名称で知られる『4号駆逐戦車』が現れた!福田がブレーキを掛けるが速度は落ちない!

 

「福田くん!そのまま前進して!」

 

 穂香の声がしたかと思うと、ラングから白旗が上がった!そして、その横にヘッツァーが付いた。

 

「あー・・・・・角谷会長?まさか・・・・・?」

 

「そのまさかだよ!飛び越えて!!」

 

「えぇー!!踏み台にして飛べって言うんですか!?」

 

「戻る時間は無い!仕方ない、このまま飛び越えるぞ!」

 

「いや待て 待て!35トンの巨体が飛べんのかよ!」

 

「空砲弾1発後ろに撃てば行けるさ!それにこの速度を維持すれば、行けるはずだ!そのまま飛ばせぇー!!」

 

 チリ改は速度を維持しながらヘッツァーに迫る!砲搭を旋回させ、履帯が車体を捉える!

 

「その勢いに乗って、飛び越えるぞ!!撃てぇ!!」

 




※解説

南部14年式拳銃

武器開発者である、南部麒次郎(きじろう)が設計した日本初のオートマチック拳銃である、『南部式大型自動拳銃』の派生型。28万丁製造され、後に警察にも配備された。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

何とか復活出来たチリ改、かほたちと無事に合流出来るのか!?

感想、評価、お待ちしています。


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