廃科の危機に立たされていた大洗女子学園戦車道科を救うため、立ち上がった陸の男たちがいた。その男たちは、かつて存在していた学校、『近衛機甲学校』の生徒たちだった。
彼らは『5式中戦車チリ』を使用し、大洗女子学園と共に勝利へと導いた。1度は解散となったが、再び再結成され、正式に大洗女子学園戦車道科の生徒となった。
正式に生徒となり、平穏に戦車道と向き合う宗谷たち。しかし平穏になった大洗に、暗い影が墜ちようとしていた・・・
mission1 平穏が崩れるとき
場所は大洗町にある、森の中。現在、大洗女子学園戦車道科の練習試合が行われているところだった。対戦内容は、旭日機甲旅団と大洗女子学園の殲滅戦。
そして今回は、大洗女子学園だけでなく、もう1つの高校も合同チームとして参加している。宗谷が先行した偵察隊に通信を試みていた。
「
〔こちら
〔こちら
陸王、カ号から報告を受け、地図を眺める。現在潜伏している場所は、木々が生い茂るスポット261。今は茂みに裏に隠れて様子を見ているところだ。
福田たちにはその付近で、敵戦車が潜伏していないか調査してもらうために行かせている。現在チリ改に残っているのは、宗谷、岩山、柳川、北沢の4人で、宗谷が車長兼操縦を担当している。
宗谷はバインダーに挟んでいる地図に、ペンで赤丸印を付ける。連絡を受けたスポットに、敵戦車がいなかったことを分かりやすくするためだ。すると、別の戦車から連絡が入ってきた。
〔宗谷!!こんなの聞いてねぇぞ!!!〕
通信が入るなり怒鳴り声が響く。通信相手は、宗谷たちと同じ、元近衛機甲学校の生徒だった男からだ。
「何だよ
〔あいつら実弾でバカバカ撃ってくるぞ!!殺す気か!?〕
「最初に言ったろ。撃ってる砲弾は『安全弾』で、戦車に当たっても乗ってる乗員には問題ないって」
〔問題ないにしてもだ!容赦無さすぎだろ!今の俺たちはただの
宗谷は頭を手に置き、やれやれと思いながら頭を振る。
「あのなぁ、俺は事前に聞いたぞ?
〔あー、確かに言ってたぜ。それなのにマガジンのやつ、ろくに話聞かねぇで承諾しやがってよ〕
赤坂以外の呆れた声が聞こえてきた。実は赤坂以外に、あと3人いるのだ。しかし、赤坂が言うように、今はただの寄せ集め、その上、誰も戦車に乗ったことがないのだ。
〔余計なこと言うな!それから昔のニックネームで呼ぶんじゃない!ガトリング!!〕
〔お前もニックネーム使ってんじゃねぇか〕
〔敵襲!!〕
『ドォーン!!!』
爆発した音が聞こえてきた。通信機越しでも分かるほど、近くで爆発したようだ。
「おい、大丈夫か?」
〔・・・・・・・・・・あのやろぉー!!!ぜってぇー倒してやらぁー!!!〕
〔あー、こっちは大丈夫だ。至近弾が近くで爆発した、あとマガジンがキレた〕
「・・・それ、大丈夫なのか?」
「宗谷!4時の方向から敵戦車多数!」
ガンポートから外を見ていた岩山から報告を受け、操縦席のハッチを開けて外の様子を見る。接近しているのは4号、ヘッツァー、ポルシェティーガーの3輌だ。
「ドイツ組か・・・仕方ない、総員戦闘に備えろ!スカウトチームはそのまま偵察を続行!赤坂たちは・・・そっちに任せる!」
〔〔了解!〕〕
〔おう!コテンパンにしてやらぁ!!!〕
〔落ち着けよコマンダー・・・コテンパンなんてカッコ悪ぃぞ〕
「行動開始!!!」
止めていたエンジンを再始動し、敵の目を気にせずに走り出す。急加速したため、かほたちに存在を知られる結果になってしまったが、そんなことは気にしていられない。
「かほさん!チリ改です!」
照準器を覗いていた藍がかほに向かって叫ぶ。かほは頭を外に出してチリ改を確認する。
「亀さん、レオポンさん!チリ改を追い掛けます!亀さんが先回りしてください!」
「オッケー!」
ヘッツァーが別行動を取り、チリ改の前に出ようとする。そしてかほは別の戦車に連絡を取る。
「みなさん!今回旭日側で参加している98式軽戦車以外に、別動隊がいると思われます!陸だけじゃなく、空も警戒してください!」
「何で別動隊がいるって思うの?」
栞には別動隊がいると思えないようだ。それだけでなく、『陸、空を警戒しろ』というのはどういうことなのだろうか?
「チリ改の動きがいつもと違うように見えるの。福田くんなら急旋回したり、急ブレーキを掛けたりするけど、今は一切そんな動きが全く無い。つまり、今チリ改を操縦しているのは宗谷くん。福田くんは陸王の操縦をしているはず、それに空からプロペラの音がずっと聞こえているから、カ号も一緒に飛んでいるってことだよ!」
かほの推理は当たっていた。宗谷はその事に気づくことなく、逃げるためにアクセル全開で走っていた。岩山と柳川は、ガンポートから戦車が来ていないか見張っている。操縦席からの視界は悪いため、今はこの2人が唯一の『目』となっているのだ。
「宗谷!ヘッツァーが右についた!」
柳川が叫び、宗谷が頭を出して外を見る。木々の間をすり抜けながら、何とか前に出ようとしている。
「岩山、ヘッツァーが前に出た瞬間を仕留められるか?」
「やってみるぜ!」
岩山は張り切って砲撃手の席に座り、照準器を覗く。
「柳!弾込めろ!」
「略すな!!」
揺れる車内の中で砲弾を弾薬庫から取り出し、よろけながら装填する。
「装填完了!」
「よっしゃ!あとは撃ち抜くだけだ!」
岩山は撃つ気満々だが、ヘッツァーは一向に前に出てこない。砲搭を旋回させようにも木の間隔が狭いので、旋回させたら砲身が木に当たる。
「宗谷!
「そうだな。攻撃は後回しだ!左に避けるぞ!」
ヘッツァーと逆方向に向かって操縦レバーを倒し、急旋回気味で左に曲がっていく。ヘッツァーはすぐに曲がれず、ポルシェティーガーと4号だけで追跡することになった。
偵察に出ている福田は、何も考えずに走っていた。偵察が目的なのだが、敵が全くいないために暇だったのだ。
(ハァー、そのまま偵察を続行しろって言われたけど・・・敵がいないんじゃあなぁ・・・・・)
福田は陸王を停め、休憩することにした。エンジンを切り、草の上に寝転ぶ。木の間から見える空は蒼く、心地よい風が福田を通り抜ける。
「・・・大洗女子学園の正式な生徒になって3ヶ月、か。何も気にすることなく戦車道が出来ているのは嬉しいことだが・・・・・何か、嫌な予感がするな・・・このまま静かに行くとは思えない」
と独り言を呟いていると、別の日本戦車が現れた!戦車は97式中戦車、その戦車の砲搭には大洗ではない、別の校章が描かれていた。
その学校は、『知波単学園』。数ある女子学園の中で、唯一日本軍の戦車を保有しているところだ。ボケッとしていた福田は慌てて起き上がる。
「うわヤッベ!」
バタバタと陸王に乗り、急いでエンジンを掛ける。その姿を見たのは、知波単の隊長、『
「お!敵がいたぞ!」
「隊長!ここは突撃ですよ!相手は
「そうだな!よし!突撃だ!」
サイドカー相手に突撃していく知波単。福田は戦車6輌に追われる羽目になってしまった。
「嘘だろおい!!攻撃力が無いからって言っても圧倒的に俺が不利だろぉー!!!」
「おー、中々面白い展開になってるねぇ」
場所は変わって観戦席。干し芋を頬張る杏率いる大洗の指導員たちと、知波単学園現科長の絹代が試合を見ていた。38年経っても、大和撫子の風貌はそのままだ。黒髪の長髪をなびかせ、凛とした佇まいは相変わらずだった。
「杏科長、本日は私たちの申し出を受け入れてくれたことに感謝する。太鳳たちにとっては、良い練習試合になる」
「まぁ、試合が終わってから暇になっちゃってたからね。でも、そっちから誘ってくれたことは私も感謝してるよ。干し芋食べる?」
杏が干し芋を薦めていると、桃がため息を付きながら話しかける。
「角谷科長・・・?どうして男子を4人受け入れたんですか?」
「うん?赤坂君たちのこと?何でって言われてもねぇ、宗谷君から頼まれたからとしか」
「今回だけと言っても、彼らも男子ですよ!?宗谷たちの時もそうですけど、何でそんなにあっさりと引き受けるんですか!!」
桃は男子が増えたことに納得がいかないらしい。そもそも、女子学園に男子がいると言うことに抵抗があるのだろう。
「彼らも戦車道に出たいって意志があったからね。それに、宗谷くんたちには
「う・・・・・」
大きな貸し。そう言われた桃は、何も言い返せなかった。2ヶ月程前、杏の元に一通の手紙が届き、それから3週間もしなかった時に宗谷たちが現れた。
その時の宗谷は、戦車道科が危機に陥っていることを察していたため、『戦車道科を危機から救うために、戦車道に出させてほしい。見返りは求めない』と杏に頼み込んだ。杏自身も、宗谷たちは信用し難い存在だった。
しかし、戦車道に出場した旭日機甲旅団はかつて戦車道に出場していたみほたちを驚かせるような活躍を見せた。ただ、
それでも最後は4号と共に、チリ改で勝利を飾った。戦車道で優勝した大洗は、戦車道科の廃科を撤廃。旭日も1度は解散となったが、会長であるしほの計らいで再結成し、大洗女子学園の編入を認められた。
色々あったが、今はこうして戦車道が出来ている。「かほ率いる大洗戦車道科の生徒たちの頑張りがあってこその結果だ」という人もいるが、杏は旭日の存在が1番大きかったと思っている。誰よりも、旭日に感謝していた。
98式軽戦は、迫りくる敵戦車に苦戦していた。主砲は37ミリ、同じ日本の戦車なら対応出来る。しかし、迫っているのは3号突撃砲、B1、M3と言った装甲が厚い戦車ばかり。三方向から攻めてくる戦車たちに苦戦を強いらていた。
車内はとても慌ただしかった。
「マガジン!4時に敵だぞ!」
「チッ、ガトリング!砲搭を4時の方向にブン回せ!メディック!弾込めろ!」
「メディックって呼ぶな!俺には龍っていう名前があるんだ!!」
メディックが装填を済ませ、ガトリングがトリガーを引いて砲弾を撃ち出す。砲弾は3号に当たるが、空しく弾かれてしまった。
このままでは不利だ。
「ドライバー!6時の方向に転進!別の奴等と合流するぞ!」
「イエッサー、掴まってろ」
ドライバーは冷静に操縦レバーを操作し、すぐに転進した。大洗組は98式軽戦を追うが、上手く隙を突いて走るので追い付けない。98式軽戦は隙間を潜り抜けて逃走を計る。
B1の秋子がM3に乗っているあいかに、向かって叫んだ。
「あいかさん!そっちに逃げたわ!」
「え?あ!撃て撃て!」
反応が遅れ、迎撃が間に合わなかった。98式軽戦は、エンジン音を響かせて逃げていく。
「追うぞ!やつらはまだ近くにいる!必ず仕留めるぞ!」
3突の美幸が指揮を取り、3突が先陣を切って追いかけていく。M3とB1も、迎撃するために98式軽戦の後を追っていく。装填を担当しているメディックは、外を見て慌てた。
「うわぁ・・・マガジン、ヤベーぞ。あいつらピラニア並みに諦めが悪ぃ」
「そこはスッポンだろ?まぁどっちでもいいが、あいつらは戦車道の全国大会に出て優勝してる学校だ。それに敵は俺たちだけ、全滅したら終わる試合だから、俺たちは格好の的ってとこだな」
「冗談じゃねぇぞおい。散々撃ってきたくせにまだ来るのか?」
「合流出来ればこっちのもんだ。ドライバー!飛ばせ!」
チリ改は後ろからの攻撃を避けながら市街地の前に来ていた。砲搭を後ろに向けて応戦しているが、1対3はさすがにキツイ。
あと少しで市街地に入ると言うところで、横から陸王が飛び出してきた!
「うわ!福田か!?何でここにいるんだ!?」
「悪りぃ!偵察しくじった!市街地に行けば合流出来ると思ってな!」
〔福田!お前もか!?〕
今度は空からカ号が現れ、水谷が笑いながら通信してきた。
「偵察しようにも敵がいねぇから合流しようと思ってこっちに来た。マズかったか?」
「バカ!只でさえ目立つんだから気を付けないと敵が・・」
〔98式軽戦合流!!〕
そして最後に98式軽戦が合流し、後ろから敵がぞろぞろと進軍していた。カ号は別だが、チリ改も陸王も98式軽戦も追われていたので敵が勢揃いするという最悪の事態に陥ってしまった。
「・・・・・あー!!しょうがねぇ!!市街地に入ったら再び散開!福田と水谷はチリ改に戻れ!コマンダー・マガジン!こっちのメンバーが全員集まるまで敵を引き留めていてくれ!」
「は!?お前この戦車の性能分かってんのか!!この戦車砲じゃ軽戦車すら倒せないんだぞ!」
「陽動作戦だよ!頼むぞ!」
宗谷は赤坂の答えを待たず、市街地に侵入と同時にすぐに離れた。陸王とカ号もチリ改に続いていってしまった。
「あ!おい!ちょ・・・くそっ!仕方ない!ガトリング、敵の隊列に向かって攻撃しろ!こっちに寄せるぞ!」
ガトリングは言われた通り、敵の隊列に向かって攻撃する。砲弾は先頭を走っていた3突に命中した。
「西住!敵がいた!例の軽戦車だ!」
美幸からの報告を受け、かほが頭を出して外を見る。98式軽戦が攻撃しながら後退していた。その様子を見たかほは、罠である可能性も視野に入れて、隊列を分けることにした。
「かばさんチームとうさぎさんチームで98式を追ってください。私たちはチリ改を探します」
かほの指示で隊列が分かれ、98式軽戦は2輌の戦車に攻撃されながら逃走しようとする。赤坂が宗谷に状況報告をする。
「宗谷!戦車2輌が俺たちの方に来た!ドイツの砲戦車とアメリカの多砲塔戦車だ!」
「名前覚えろよ。分かった、こっちもすぐに集める。暫く持ち堪えてくれ」
宗谷はエンジンを止め、福田と水谷の合流を待った。周りを警戒していると、すぐに2人が走ってきた。
「悪いな!こうもあっさりとバレる何て思わなくてさ」
「良いから早く乗れ!敵に見つかるぞ!」
2人はバタバタと車内に入り、福田がエンジンを再起動させる。
「全搭乗員、搭乗完了!!」
福田が準備完了を伝え、宗谷が改めて指示を出す。
「よし!まずは赤坂たちと合流する!全速前進!!」
福田がエンジンを再始動させ、建物の影から飛び出す。北沢が通信機を操作し、98式と交信する。
「コマンダー・マガジン、そっちの現在位置を知りたい。状況報せ!」
〔今はスポット224のエリアCだ!!早く来てくれ!これ以上は持ちこたえられない!!」
この報告のやり方は、スポットの何処にいるのかを明確にするために1つのスポットを3から4のブロックに分け、エリア○とすることにしたのだ。報告を受けると、すぐに宗谷に報せる。
「宗谷!あいつらはエリアCにいるそうだ!」
「了解。福田!エリアAを抜けてCに行くぞ!このエリアを抜けた方が早い!」
「早いかもしれないが隠れる場所が無さすぎる。障害物が無い代わりに、敵に見つかったら猛攻撃を受けるぞ!」
「速度はこっちの方が有利だ。攻撃されても反撃せずにエリアを抜ける!」
「分かったよ!だけど安全は保証しねぇからな!!」
アクセルを全開にし、徐々に速度が上がっていく。車内はエンジンの轟音が響き、各自が戦闘態勢を取っている。
エリアAに侵入すると、先に来ていた大洗合同チームから攻撃を受けた。近くで砲弾が爆発し、35トンもある巨体は大きく揺れた。ヘッツァーの穂香ははしゃいでいた。
「来た来たぁー!!ようやく姿見せたね!撃ちまくれー!!」
砲口が全てチリ改に向き、チリ改は砲弾の嵐の中を全速力で進んでいく。反撃したいところだが反撃はしない、ここで弾を使えば後々の戦いで影響してくるからだ。
全く反撃しないチリ改に対して、知波単の生徒たちは太鳳に接近戦に変えるために突っ込んで行くことを提案した。
「隊長!ここは突貫であります!いくら防御が出来ると言っても、接近戦に持ち込めれば勝ち目はあります!」
知波単は「突貫で戦う」ことが伝統的な戦い方で、性能面で圧倒的に差があっても突っ込んで接近戦に持ち込むのだ。だがこの戦い方は、全車で一気に突っ込んで行くため、すぐに全滅してしまうという最悪の結果を招くことが非常に多い。そのため、太鳳は少し迷いを見せた。
「だが、流石に接近はしない方が良いと思うが・・・」
「いえ!ここは突貫ですよ!!行きましょう!!」
と、太鳳の判断を待たずに2輌突っ込んで行ってしまった。よりによって、チリ改の目の前に出て突っ込んで行く!
「宗谷!戦車2輌、真正面だ!」
「そのまま突っ込め!弾き飛ばして先に進む!」
突っ込んで行く2輌の戦車には目もくれず、互いに向かい合わせで衝突した!突っ込んできた97式中戦は、チリ改の突進に負けて転がってしまった。
福田は転がっていった戦車を見て呆れた。
「あいつらも考えねぇなぁ・・・こんなデカ物が突っ込んたら負けるぐらい分かるだろ」
「前見ろ福田。今はやつらと合流するのが先だ」
「宗谷、マガジンから通信だ」
北沢が着信を知らせ、宗谷がインカムの周波数を変えた。
「赤坂どうした?」
「どうしたじゃねぇよ!いつ合流出来るんだ!!こっちは反撃がまともに出来てない状態なんだぞ!」
正確に言えば、『反撃はしているが全く効いていない』と言った方が良いだろう。武装は37ミリ戦車砲、外国産の戦車には全く歯が立たない武装だ。
ガトリングが何度も当てているが、装甲が貫通出来ずに弾かれる始末、結局持ち前の速さで逃げることしか出来なかった。
「今エリアAを抜ける!もう少し踏ん張れ!」
「くっそ!
「分かったから落ち着けって。じゃ頼むぞ」
宗谷から通信を切られ、ハッチを開けて外を見た。3突とM3が攻撃しながら迫っている。流石にこれ以上持ち堪えるのは難しいだろう、そこでそばにあった機関銃に目を向けた。
「ドライバー!
「それは良いが、お前はどうする気だ?コマンダー」
「俺はこの機銃を使って奴等を驚かせてやる。乗員は殺らないから心配すんな。よし、行くグエ!!」
勢いよく飛び出そうとする赤坂をガトリングが服を引っ張って止めた。何をしに行くかは分かっていたからだ。赤坂はその反動で後ろによろけた。
「やめとけバカ!死ぬぞ!」
「ゲホッ、お前服引っ張んなよ」
「マガジン!
ドライバーが叫んだ。チリ改がようやく来たのだ。
「赤坂!98式を退けろ!」
岩山が指示し、赤坂が左に避けるように指示を出す。98式軽戦が避けて射線が開き、岩山がタイミングを合わせてトリガーを引く!『ドォーン!!』と砲撃音が車内に響き、放たれた砲弾は3突に命中した!
3突は転がり、車体側面から白旗が上がった。続けてM3も、とは行かず、上手く避けて後ろから迫っている味方と合流した。チリ改と98式軽戦は横並びで停まり、その周りを大洗合同チームが逃げ道を塞いだ。後ろは壁、逃げ道はない。
「おーい宗谷、これ詰んだってやつじゃねぇか?」
赤坂の質問に、宗谷は冷静に返した。
「ああ、詰んだな」
「詰んだなじゃねぇだろ!!!どうすんだ!!!」
戦車は残り13輌、1輌ずつ片付けても間に合わない。1輌撃破して逃げ道を造ったところで敵の追撃が来ることは目に見えている。かほたちからしてみれば、絶好のチャンスだ。それなのに、かほは攻撃を指示しない。
「西住殿?何故撃たないのですか?」
太鳳が何故攻撃しないのか尋ねる。かほは少し間を置いて答える。
「宗谷くんのことだから、後ろの壁が崩れるのを狙っていると思うの。逃げ道は後ろしかないからね。このまま待っていたらその内前に出るはず、そしたら私たちが一斉攻撃で仕留める」
かほの予想は当たっていた。壁を後ろにして停まったのは逃げ道を造ってもらうため、しかしかほに考えを読まれてしまっているため逃げ道が出来ない。
壁は分厚いため、少し加速しないと壊すことは出来ない。宗谷がどうするか考えていると、赤坂が提案してきた。
「おい、逃げ道を造る方法を見つけたんだが、実行しても良いか?」
「何だ?突っ込んで行くとかじゃねぇだろうな」
「すこーし前に出た方が良いかも知れねぇな」
そう言われ、2輌は少し前に出た。赤坂がハッチを開けて何かを壁に向かって放り投げる。すると、『バァーン!!!』と激しい爆発と共に、壁が崩れ始めた!
「赤坂!お前手榴弾投げたな!!」
「投げたけど敵には当たってねぇし、火薬は抑えているから大丈夫だ!さぁ行くぞ!そのまま後ろに下がれ!!!」
赤坂が指示を出し、98式軽戦が先に下がっていった。チリ改も98式軽戦に続いて下がっていく。かほはすぐに追い掛けるように言ったが、宗谷が発煙筒を投げて視界を塞いだため、どの方向に逃げたのか分からなくなってしまった。
かほは再び散開するよう指示し、各自で探すことになった。逃げ切れた宗谷たちは、まだスポット224を出ていなかった。エリアCから離れ、近くのエリアDに動いていた。
エリアDは建物が多く、隠れる場所が多い。そのため、待ち伏せされる危険性も高い。現在は戦車が2輌ほど入れる大きなガレージの中にいた。新しい作戦を立てるためだが、時間は掛けられない。
案として上がっているのは、建物を盾として相手の出方を見て攻撃する。待ち伏せをする、囮を使って一気に全滅させるなど、色々と案は出る。しかし、中々まとまらない。
却下された案は、手榴弾を使って敵を混乱させるという危険極まりない案だった。ちなみに提案したのは、赤坂である。案をまとめ、宗谷が改めて作戦を指示した。
「よし、良いか?まずは建物に隠れて、敵を待ち伏せする。それで仕留められなかった分は、98式軽戦を囮にして敵の後ろを取る陽動作戦に転じる。後ろが取れれば俺たちが攻撃して、敵を殲滅させる。あまり時間がないから、このエリアで勝負を付ける!」
「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」
指示を受けた乗員たちは火器の最終チェックを済ませ、戦車は予定の配置に付かせる。場所はエリアDに入る入り口の1つ、他の入り口よりは広いため隊列が一斉に攻められる場所はここしかない。
車体をなるべく出さないように砲を向け、待機すること2分。ガラガラ音が聞こえてきた。砲手がトリガーに指を掛け、射撃に備える。建物の陰から戦車が見えてきた。ヘッツァー、3突、ポルシェティーガーの3輌が先頭を走り、その後ろを他の戦車が付いてきているようだ。
「宗谷、発砲許可を!」
岩山が許可を求めたが、宗谷は了承しない。ジッと迫る戦車を見ている。
「宗谷、まだか!?」
岩山は焦り、許可を促す。98式軽戦に乗っている、ガトリングも同じだった。
「
「落ち着け、もう少し引き付ける。あと少し・・・・・」
戦車がどんどん近付いてくる、もうあと数メートルも無い。かほが頭を出したとき、潜伏している2輌の戦車に気づいた!
「見つけた!撃て!!」
「今だ!!全砲門を開け!!」
全車が一斉に射撃を始め、狭い通路は一気に戦場と化した。砲弾は壁、地面に当たり、砂埃や破片が飛び散った。ガトリングが思わず愚痴を溢す。
「くそ!だからもっと早くしろと言ったんだ!!このままだと押し込まれるぞ!!」
愚痴を溢すガトリングに対して、赤坂は冷静に機関銃を構えた。
「あいつにはきっと何か考えがあるんだ!このまま撃ち続けろ!」
赤坂はハッチを開けて掃射を行い、戦車砲からは砲弾が次々と撃ち出される。壁が少しずつ崩れ始めたとき、98式軽戦が放った砲弾が3突の装甲板に当たったときに弾道が変わり、壁に命中した。
すると壁が崩れ始め、近くにいた戦車が瓦礫に巻き込まれてしまった。敵戦車が5輌巻き込まれ、残りは8輌。少しずつではあるが、大洗合同チームが追い込まれ始めていた。
塞いだ道を見た宗谷は、すぐに指示を送る。今度は陽動作戦だ!
「後退だ!この道が塞がれたとなると、次はバラバラになってこのエリアに進入してくる!ここだとすぐに回り込まれるぞ!」
赤坂もガトリングたちに指示を出す。
「イエッサー!聞いたな野郎共!今すぐに下がって、プランBに移行するぞ!!」
「お前が指示出すな!指令を出すのは俺の仕事だぞ!」
宗谷と赤坂の言い合いに呆れながらチリ改を動かす福田。残る敵戦車は、後8輌!
場所は大洗の街が見える丘の上、1人の女子高生が立っていた。茶髪の長髪を靡かせ、仁王立ちで大洗を見下ろしていた。
「・・・・・いたいた。あの『孤独なエース』がこんな吹き溜まりにいるなんてね、早いとこ引き抜いてあげないと・・・あなたは、私のものよ。待っててね、宗谷佳♪」
新章はいかがでしたでしょうか。宗谷を引き抜こうとする女子高生、一体何者なのでしょうか?
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