ガールズ&パンツァー ~伝説の機甲旅団~   作:タンク

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新年明けましておめでとうございます!

前回のあらすじは、前章の『小休憩!』で紹介しましたので、今回はそのまま本編にいきます!ではどうぞ!!


missionTEN 緊急指令(エマージェンシー)戦闘捜索救難活動(コンバット・サーチ&レスキュー)を実行せよ!

森林エリア

 

「西住先輩!応答してください!先輩!応答してください!」

 

 森林エリアに逃げ込んだM3とパンターは、茂みの中に隠れていた。

 今はM3の車長、澤あいかが通信を試みていたが、逃走しているにアンテナを破壊されたので、全く連絡が取れない状態にいた

 

「いくら呼び掛けても無駄よ。お互いにアンテナ壊されたんだから」

 

 佐武は半分諦めているようだった、パンターもアンテナを破壊されているようで、通信半径が極端に狭まってしまったのだ。いくら呼び掛けても、相手の受信機に電波は届かない。

 

「無駄じゃないわ!もしかしたら繋がるかもしれないじゃない!」

 

 あいかは希望を捨てまいと、必死に呼び掛けている。その様子を見ていた佐武は、遠くを見つめながら溜め息を付いた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

市街地エリア

 

 市街地エリアに無事侵入出来た本隊は、倉庫の中に身を潜めてはぐれてしまったM3、パンターに通信を試みて10分経過していたが、一向に返信が来ない状態だった。

 そこで少人数の捜索隊を編成して、森林エリアに戻って彼女らを捜索する作戦を実行することになっていた。

 

 しかし、今以上に戦車を減らして戦力を削ぐ訳にはいかないので、赤坂(マガジン)に「捜索任務の経験がある生徒はいないか」と尋ねると、2人いると言う。

 早速呼んで貰ったのだが、連れてきたのは羽田(ラントミーネ)(ゲヴェア)だった。

 

「マガジン殿?この2人しかいないのか?」

 

 太鳳が彼らを見て心配そうに赤坂(マガジン)に尋ねた。太鳳だけではない、ルリエーもサティーも本当に大丈夫なのかと言う目で見ている。

 

「訓練を受けているのはこいつらしかいない。でもPSCの対抗訓練では1位2位を争う成績を残している、任務はきちんと済ませるさ」

 

 赤坂(マガジン)はそう言ったが、大半は心配そうにしている。その目を見て察したのか、羽田(ラントミーネ)がこう言った。

 

「俺たちじゃ心配になるよな、無理もねぇさ。行くぞゲヴェア」

 

 羽田(ラントミーネ)がそう言うと、(ゲヴェア)と共に歩き始めた。

 

「ま、待ってください!」

 

 戻ろうとする2人をかほが呼び止める。呼び止められた2人はその場で止まり、目線だけをかほに向けた。

 

「あなたたちなら、必ず連れ戻せるんですよね?」

 

 かほがそう訪ねると、(ゲヴェア)が自信なさげに答えた。

 

「悪いが、保証は出来ないぞ。成績はそこそこだったが、実戦経験はない。無事に連れて帰れるかどうか」

 

「それでも構いません。あのM3には、私の大切な仲間が乗っているんです!お願いします!」

 

 かほが突然頭を下げたので、羽田(ラントミーネ)が「頭を上げてくれよ」と言いながら駆け寄った。その様子を見ていた夏海が、2人にこう言った。

 

「私からもお願いしたい。せめてどっちかだけでも、連れて帰ってくれ」

 

 かほが必死に頼む姿を見たからか、この2人に捜索を任せることにしたようだ。その姿を見て、宗谷が赤坂(マガジン)に訪ねる。

 

「って言ってるけどどうする?コマンダー・マガジン」

 

 かほと夏海が頼んでいる姿を見た赤坂(マガジン)は、PSCの方を向いて命令を下す。

 

「ラントミーネ!ゲヴェア!今すぐに出発して、M3とパンターを探せ!1輌だけでも生き残っていたら必ず連れ戻すんだ!」

 

「「サー!イエッサー!!!」」

 

 命令を受けた2人は、大急ぎで救難物資をバックパックに纏めていく。準備が整うと、バックパックを背負って入り口の前に立った。

 羽田(ラントミーネ)が、不安そうにしているかほに、明るい声でこう言った。

 

「大洗の西住隊長!安心しな!俺たちが迷子になった子猫ちゃんたちを必ず連れ戻すぜ!」

 

「バカ!カッコつけてねぇで行くぞ!」

 

 (ゲヴェア)が急かすと、羽田(ラントミーネ)は少し笑いながらついていった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

森林エリア

 

「先輩、応答してください・・・・・せんぱい・・・・・」

 

 あいかは応答がないことに心細くなってきたのか、今にも泣き出しそうだった。

 そばにいた佐武が見かねて、あいかに話し掛ける。

 

「ねぇ、周波数教えて。パンターの通信機の方が大きいから、アンテナが無くても何とか繋がるかもしれないわ」

 

 さっきまで否定的だった佐武の提案に、あいかは目を丸くした。ずっと否定的だった佐武が、繋がるか分からないのに呼び掛けてみようと言ったのだ。

 確かにパンター指揮戦車型の通信機の方が大きいが、それで繋がるかは分からない。

 

「・・・・・繋がるかな」

 

「分からないけど、信じよう」

 

 そう言って通信機の電源を入れると、宗谷たちに向けて呼び掛けを始めた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

市街地エリア

 

 PSCの2人が出発した数分後、4号の無線機が信号を受信した。そばにいた武部が受信したことを伝える。

 

「みんな!通信機が信号を受信したよ!」

 

 報告を聞いた宗谷たちが4号の周りに集まると、武部が通信機の感度を調節しながら呼び掛ける。

 

「澤ちゃん!?こちら4号!応答して!」

 

〔こち・・・・・たー指揮せん・・・・・たけ・・・とうして!〕

 

 通信感度があまり良くないのか、通信機からは途切れ途切れで聞こえてくる。何とか通信を繋ぐために細かく調節していく。

 

〔こちら・・・・・き戦車型しゃ・・・・・佐武!応答し・・・・・〕

 

 武部が上手く調節しているので、少しずつではあるが通信がはっきりと聞こえるようになってきた。相手はパンターの佐武だ。

 

「佐武さん!?何があったの!?応答して!」

 

〔敵のしゅ・・・・・ってアンテナを・・・・・れたの。今・・・・・通じて・・・・・〕

 

 電波の調子があまり良くないので聞き取りづらかったが、武部は増援を向かわせたことを佐武に伝えた。

 

「佐武さん!そっちにラントミーネさんとゲヴェアさんを向かわせたの!彼らと一緒に戻ってきて!」

 

〔了か・・・・・っちからも合図を・・・・・き襲!敵襲よ!早く・・・・・(ザ・・・・・・・・・・)〕

 

 今いるところから離れてしまったのか、通信は完全に繋がらなくなってしまった。武部が何度も呼び掛けたが、佐武の声が聞こえてくることは無かった。

 後はPSCの2人が見つけてくれることを祈るしかない。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

森林エリア

 

 PSCの2人は、森林エリアに入ってM3とパンターがいると予想される地点に向かっていた。

 茂みの中を進んでいる中、羽田(ラントミーネ)が話し掛ける。

 

「なぁ、何で茂みの中を通るんだよ?」

 

「戦車がいる可能性が低いからだ。これだけ背の高い雑草だらけじゃ、地面がぬかるんでいても気付きにくいだろ?」

 

「あー、確かにそんなこと聞いたな。でもさ、これだけ木が生い茂っているんだから、普通に歩いていても気付れないんじゃね?」

 

「リスクは極力最低限に止める、そう教わっただろ」

 

「まぁそうだけどさ・・・・・やべ!」

 

 羽田(ラントミーネ)が突然(ゲヴェア)の頭を掴んで地面に伏せた。(ゲヴェア)は顔に付いた泥を落としながら問い詰める。

 

「お前!急に何するん・・・・・」

 

「しっ!戦車だ」

 

 そう言われて正面を見ると、そこには戦車の影があった。エンジン音すら聞こえなかったので、敵を待ち伏せているのかもしれない。

 

「い、良いかラントミーネ。1(ワン)2(ツー)3(スリー)で一気に距離を詰めるぞ」

 

 手順を確認すると小銃を構え、一気に前に出る!が、その戦車を見た羽田(ラントミーネ)は拍子抜けした。

 

「・・・・・あれ?何か思ってた以上にちっちぇな」

 

 良く見てみるとかなり旧式の軽戦車で、ハッチを開けて乗員の有無を確認したが、車内は無人だった。

 

「ハァー・・・・・こいつは敵じゃねぇ、味方でもないけどな」

 

「どういうことだ?敵でも味方でも無いなら、こいつは何なんだよ」

 

「これは※試製中戦車チニっていう旧日本軍の試作車だ。こいつは戦車の出撃名簿に載ってなかった」

 

「じゃあ・・・・・こいつはここに放置されてるってことか」

 

 車内を確認してみると、放置されているとは思えないほど綺麗で、動かしても支障は無いように思えた。

 操縦席の方に視線を変えると、今から約4年前の日付、そして『東京パンツァーカレッジ』の学校名と、元乗員の物か定かではないが名前が3つ書かれている。

 こうして名前を残すほど、大事にしてきた戦車なのだろう。

 

「無駄な時間を使ったな。行くぞラントミーネ」

 

 (ゲヴェア)が呼んだが、羽田(ラントミーネ)は離れようとしない。

 

「おい、何ボーッと突っ立ってんだ」

 

「ゲヴェア、こいつに乗っていこうぜ!」

 

「はぁ!?何言ってんだ!いつから放置されてるか分からない戦車だぞ!」

 

「車内もエンジンも放置されてた割には綺麗だし、燃料もオイルもまだ残ってる!こいつはまだ使えるさ!」

 

「俺たちの任務は戦闘捜索救難活動(コンバット・サーチ&レスキュー)で、旧式戦車を探しに来たんじゃない!」

 

「だけど、万が一敵戦車と会敵したときには戦力になれる!使わない手はないぜ!」

 

 羽田(ラントミーネ)があまりに必死なので、反対していた(ゲヴェア)が折れ、「エンジンが始動出来れば乗っていこう」と言ってくれた。

 羽田(ラントミーネ)が操縦席からクランクハンドルを取り出し、エンジンが掛かるまで勢い良くハンドルを回し続ける。

 

『ガコガコガコガコ・・・・・ドン!ドッドッド』

 

「やった!動いた!こいつはまだ動くぞ!」

 

 森の中で眠っていたチニが数年ぶりに目覚め、エンジンを高らかに響かせる。久しぶりの出撃に喜んでいるようだ。

 

「乗れゲヴェア!出撃だぜ!」

 

 羽田(ラントミーネ)が操縦席、(ゲヴェア)が戦闘室に入る。搭乗を確認すると、アクセル全開で茂みの中を走っていく。

 暫くの間放置されていたとは思えないほど、チニは軽快に走った。

 

「ほらな!言った通りだろ!?でも戦車道に出場する戦車って、エンジンスターター付けてなかったっけか?」

 

「そんなことは良いから全速力で行くぞ!飛ばせ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 敵の襲撃にあったM3とパンターは、更に遠い所まで退避していた。逃げるときはパンターが自ら盾となってM3を守りながら動いたので、車体は目も当てられないほどボロボロになっている。

 

「佐武さん、大丈夫なんですか?」

 

「あんたが心配するほど被害は甚大じゃないわ。他人より自分の心配したらどうなの?」

 

 心配させまいと思ってか、大したことはないと答える佐武だが、今のパンターはこれ以上の戦闘は不可能に近い状態だった。

 転輪は外れ、正面装甲は凹み、砲塔は右に35°程傾いたままで止まっている。ターレットリングが故障して旋回出来なくなったのだ。

 

 このパンターはもう戦うことは出来ない、その事はここにいる生徒全員が分かっていた。しかし佐武はそれでも守るために動こうとしている。

 罪滅ぼしのためか、それとも佐武の中にある良心がそうさせているのかは分からない。そうこうしていると、佐武が新たに指示を出した。

 

「行くわよ。M3は私たちの後ろについて、その方が安全よ」

 

「待って、今度は私たちが前に出る。もうあなたのパンターは戦えないでしょ?」

 

 佐武の意見に待ったを掛けるあいか、今度はこっちが守る番だと言い張った。

 

「ダメよ。M3は正面装甲が薄いから、パーシングの攻撃受けたら1発でやられるわ」

 

「それを言ったらあなたのパンターもかなり危ない状態じゃない!今度は私たちが守る!」

 

「パンターはまだ戦えるわ!あと数発ぐらいならなんとか・・・」

 

「っ!敵襲!正面から来るわ!」

 

 M3の操縦手、坂口梨恵が指を指す先には、先程から追っていたM26がこちらに向かって迫ってくる!慌てて戦車に乗り込んで迎撃体制を取るが、今度はM3が前に出た。

 

「澤さん!何やってるの!?早く後ろに隠れて!」

 

「嫌!今度は私たちが守る番!だって私たちは・・・・・『重戦車キラー』の娘よ!!」

 

 迫る敵に向かって攻撃するM3、しかし敵はその攻撃を跳ね返しながら接近してくる。

 敵の砲身がM3に向いたその瞬間!横槍を入れるように砲弾が履帯を切断した!

 

〔あっぶねぇー、間に合ったな!〕

 

〔おい!大丈夫か!?〕

 

 M3の通信機が電波を捉えた。近くに味方がいる、そう思いあいかが外を見ると、少し離れた位置に戦車が見えた。羽田(ラントミーネ)(ゲヴェア)が搭乗しているチニが到着したのだ!

 

「ゲヴェア!あいつらに接近するから至近距離で撃ち抜いてくれ!」

 

「ちょっと待て!チニ(この戦車)は装甲がめちゃくちゃ薄いから、命中したら穴が開くだけじゃすまえねぇぞ!」

 

「大丈夫だ!戦車道に出場する戦車は頑丈なカーボン装甲で覆われてるから大丈夫さ!使ってる燃料も軽油だから、引火の可能性も低い!一気に距離を詰めて、吹っ飛ばしてやれ!!」

 

 チニがアクセル全開で敵に向かって突っ込んでいく!しかし、敵がチニの接近に気付き、撃ち出された90ミリ砲弾が装甲板を掠めて車内は大きく揺れた。

 

「うへ~、軽戦車が大口径砲喰らうとえらいことになるな。ゲヴェア!射撃用意・・

 

「おい、()()()()()()()()()で覆われてるんだよな?こいつはどう説明するつもりだ?」

 

「は?何言って・・・・・えぇ!?」

 

 振り返って確認すると、(ゲヴェア)が指を指している装甲板に、穴が空いていた

 いくら軽戦車でも、頑丈なカーボン装甲で覆われているはずなので、穴が空くことはあり得ない。チニで戦闘するどころではなくなった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

観客席

 

 観客たちは映像を見て騒然となっていた。戦車道協会が『絶対安全』と提唱している戦車に穴が空いているのだ。その戦車を見ていた小百合がポツリと呟く。

 

「あら・・・・・あの戦車がまだいたなんて」

 

「種島!あなた知っているの!?」

 

「あのチニは、東京パンツァーカレッジの創立記念品として作った物ですわ。戦車道に出場することを想定していないので、中身は()()()()()()()()()ですのよ?」

 

「な!?すぐ試合を中断させて!」

 

「そんなことしなくても、彼らチニを捨てて脱出すると思いますわ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

森林エリア

 

 チニを操縦している羽田(ラントミーネ)は、戦車道向けに作られていないと気付いていた。しかし、その戦車を捨てようとはしない。

 

「ラントミーネ!この戦車から降りるぞ!このまま乗ってたら危険だ!」

 

「いや、俺はこいつで最後まで戦う!こいつは待っていたんだよ!人目のつかない森の中で、一緒に戦ってくれる仲間をな!だから、俺はこいつに花を持たせてやるんだ!」

 

 羽田(ラントミーネ)は真剣だった。せめて1輌だけでも撃破したいという意地だろうか、絶対に降りようとはしない。

 説得された(ゲヴェア)は、危険だと分かっていながら、その意地に最後まで付き合うことにした。

 

「・・・・・分かった!良いか!?敵の真後ろに付けろ!零距離射撃でM26(あいつ)のエンジン吹っ飛ばしてやる!!」

 

「オッケー任せろ!履帯切ったやつならすぐ付けるぞ!」

 

 チニは敵の間をすり抜けるように目標まで突っ込む。その間、M3とパンターが援護射撃で敵の注意を引いた。

 

 あと少しで後ろを取れそうだったが、エンジンに直撃弾を食らって火が上がった!軽油ではなく、エンジンオイルに火が付いたのだ!

 (ゲヴェア)はこれ以上の戦闘続行は不可能と判断し、羽田(ラントミーネ)に脱出をするように警告する。

 

「脱出するぞ!これ以上は本気(マジ)で危険だ!!おい聞いてんのか!?」

 

「聞いてるよ!こいつが爆発したらマズいから、あの川に突っ込ませるまで操縦するぜ!」

 

 爆発を避けるために大急ぎで川に向かっていく。その間にも火が回り始め、砲塔は熱を帯びて熱くなり始めていた。

 

「アチチ!は、早くしろ!このままだといつ弾薬庫に引火してもおかしくないぞ!!」

 

「あと少しだ!あと30秒で川だ!」

 

 敵も攻撃することを忘れ、黒い煙を上げながら川に向かっていくチニを見ている。

 あと10秒程で川に入りそうになった時、羽田(ラントミーネ)がチニにお礼を言った。

 

「粗っぽい使い方して悪かったな。修理されたら、また会おうぜ!」

 

「急げ!脱出だ!!」

 

 車体が水に浸かり始めた時、2人は荷物を両手に抱えてチニから飛び出した!

 

『ズドォーン!!!!』

 

 車体の半分以上が水に使っていたが、弾薬庫が熱せられたせいで大爆発を起こした。

 あいかたちの目線は川の中で燃えるチニに向き、彼らの姿を見るために回りを見渡したが、彼らの姿を確認することは出来ない。

 

「あ!あれ!」

 

 佐武が何かを見つけて指を指すと、川の中から2人の頭が見えた。無事に脱出出来たようだ。

 

「ブハッ!あっぶねぇ、まさかあんなに爆発するなんて」

 

「あれだけ熱せられていたんだから当然だろ!ほら行くぞ!」

 

 川から上がると、戦闘中の味方のもとに走っていく。向かっている最中に手榴弾型の発煙筒を投げて敵の視界を遮り、羽田(ラントミーネ)が敵に攻撃を、(ゲヴェア)が味方の安否を確認にいった。

 (ゲヴェア)がM3のハッチを開けて声をかける。

 

「おい!お前らがはぐれた戦車搭乗員か!?救援に来たぞ!」

 

「ふぇ・・・?き、救援に・・・・・うわぁーーーん!!!」

 

「え!?な、何だよ泣くなよ!!」

 

 今までの緊張が解れたからか、あいかたちは泣き出してしまい、(ゲヴェア)は突然泣かれたので焦っている。

 

「ゲヴェア!持ってきた破甲爆雷足りないから攻撃は中止だ!撃破は出来てないが、足止めは何とかなったから下がるぞ!!」

 

 味方と合流した羽田(ラントミーネ)はパンターの方へ安否確認に向かった。

 

「おい!助けに来たぞ!!」

 

「私たちは大丈夫よ。それよりM3を連れて帰って、私たちは帰れそうにないから」

 

「何言ってんだ!まだ諦めるのは早い・・・・・」

 

 羽田(ラントミーネ)は「諦めるな」と言いたかったが、パンターの損傷の酷さを見て、連れて帰るのは難しいと感じた。

 

「ここは私が食い止めるから、あなたたちは市街地に戻って戦いなさい」

 

「そ、そんな!一緒に戻ろうよ!」

 

「もう無理よ。履帯切られて、エンジンも満足に回らないし。でも足止めは出来る。さぁ行って!!せめてあなただけでも本隊に合流して戦って!!」

 

 敵の足止めをかって出た佐武に対して、あいかは「自ら盾となって戦ってくれた佐武を置いていくなんて出来ない、私も残る」と言い張った。

 しかし救援に来た2人が持ってきた武器は、必要最小限の物しかない。残っている戦車だけで対抗しても、焼け石に水だろう。

 

 赤坂(マガジン)からは「()()()()でも生き残っていたら連れて帰れ」と任を受けている。

 本心は2輌一緒にと言いたいが、今は自走出来るM3しか救出出来ない。2人は抵抗するあいかを強引にM3に乗せた。

 

「待ってください!パンターも・・・佐武さんも一緒に!!」

 

「残念だがパンターは連れていけねぇ!俺たちは1輌だけでも連れて帰れって言われてるんだ!早く逃げるぞ!」

 

 (ゲヴェア)が早く逃げるように促し、2人が乗り込んだことを確認すると、パンターを残してその場を離れた。

 少し離れた位置で停車してパンターを見ると、敵に囲まれながらも必死に抵抗していた。しかし砲塔旋回が出来ない戦車は、敵からしてみれば格好の的。

 

 数発撃っても命中せず、エンジンに直撃弾を受けてあっけなく撃破されてしまった。

 その一部始終を見ていたあいかは、自分の無力さに悲観したのか、鼻をすすりながら泣き出した。その様子を見た(ゲヴェア)があいかに詰め寄る。

 

「何泣いてんだ!撃破されただけだろうが!」

 

 いきなり怒鳴られたあいかは、涙声で上手く答えられない。

 

「だ、だって・・・・・私のせいで、佐武さんが・・・・・」

 

「だからっていちいち泣くな!お前車長だろ!?車長がメソメソしてたら士気が下がるだろうが!そんな調子じゃ、無事に合流出来ても満足に戦えねぇぞ!!」

 

「おいおい・・・・・そんくらいにしてやれよ、相手は女子高生だぞ」

 

 羽田(ラントミーネ)に止められ、流石の(ゲヴェア)も「言いすぎたか」と感じたようで申し訳なさそうな表情をしていたが、あいかはグッと涙を堪えて泣き止み、「市街地に向かって」と指示を出した。

 少々気まずい雰囲気の中、彼らを乗せたM3は静かに森の中を走っていった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

市街地エリア

 

 PSCによる戦闘捜索救難活動(コンバット・サーチ&レスキュー)が開始されて1時間半経とうとしていた。

 彼らから連絡が無いので、焦りと苛立ち、緊張感が漂っている。もう全滅しているかもしれない、誰もがそう思い始めていた矢先だった。

 

「戦車1輌接近!!」

 

 見張りとして立っていた遠井(スコープ)が接近を知らせると、焦りと苛立ちが無くなって一気に緊迫した空気が流れ出し、宗谷たちは迎撃体制を整えた。

 その直後、1輌の戦車が倉庫に入ってきた。捜索していたM3だ!

 

「澤さん!!無事だったの!?」

 

 かほがあいかに駆け寄っていった時、宗谷がPSCの2人に報告を聞くために近寄った。

 

「ご苦労だったな。それで・・・・・パンターは」

 

「それが・・・自走出来ないほど損傷していたから、足止めするって言って・・・・・」

 

「佐武は良い車長だった。敵のスパイだったことが本当に残念だ」

 

 2人は連れて帰れなかったことを悔やんでいたが、すぐに気持ちを入れ換えて次の作戦を聞いた。

 歩兵団員で周囲を偵察し、敵の有無を確認したのちに市街地に展開して戦闘するという。

 

 歩兵団のメンバーが装備を整え、偵察に出ようとしていた時だ。突然地鳴りが響きだし、目の前が急に暗くなった。

 何が起こったのかと思い、外を見ると壁が日の光を遮っている。それは、『あり得ないほどの大きさの戦車』だった。

 

「そ、宗谷くん・・・・・あれって、まさか・・・・・」

 

「そのまさかだ。あれは陸上戦艦ラーテ・・・・・計画された戦車の中で史上最大の超重戦車だ・・・・・!」

 




※解説

試製中戦車チニ

89式中戦車の代替えとして計画された中戦車。試案が纏まらず、第一案はチハ車、第二案はチニ車としてそれぞれ試作された。

結果は第一案のチハ車が採用され、後に97式中戦車と命名される。ちなみにチニ車は採用されることなく、計画も放棄された。

東京パンツァーカレッジが所有していたチニ車は、昭和11年に描かれた設計図をもとに製作されたので、試合に出るために必要とされている安全性は皆無であった。

余談

戦車兵が進行方向に泥濘がある場合、通っても大丈夫かどうかを確かめる方法がある。
人を背負って泥濘に立って沈むか確認する、こうやって少しでも沈んだら通れないと判断される。


旧日本軍の戦車がディーゼル車の理由

日本では軽油の方が安価なので燃料費が安く済むこと、引火点が高いのでタンクに当たっても火災が発生しにくい、馬力が高いという利点がある。
現在の自衛隊車両でも、大半がディーゼルエンジン搭載の車両を締めている。ちなみにガソリンの引火点は約-43度、軽油は約60度である。
ガソリンは極寒の地でも揮発するので、軽油を使うエンジンの方が安全なのが分かる。


「今回もご愛読ありがとうございます!作者のタンクです!突如宗谷たちの前に姿を見せた陸上戦艦!彼らの運命はどうなるのでしょうか!?感想、評価宜しくお願いします!」
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