はぐれてしまったM3と無事に合流出来た宗谷達の前に、「信じられないほどの大きさの戦車」が姿を見せた。
それは陸上戦艦「ラーテ」、計画された戦車の中では史実上世界一大きさと攻撃力を誇る戦車だ。始めは陸上戦艦の猛攻に苦戦したが、西住かほが思い付いた作戦でラーテの撃破に成功する。
ラーテを撃破した後の合同チームの目の前に、敵の隊長車であるヤークトティーガーが現れた。合同チームは全車でヤークトティーガーを追いかけ、行き止まりに追い込んで撃破に成功する。
行き止まりから動こうとしたとき、謎の破裂音と共に煙が戦車の周りに蔓延して視界を遮った!辺りが全く見えない状態にも関わらず敵からの攻撃が合同チームを襲った!
戦闘が終わると、隊長車以外ほぼ全滅していた。その光景を見ていたしほは、過去のことを思い出していた。
「・・・・・あの時と同じだわ。私が初めて種島と試合をしたときに・・・・・」
画面に写し出された異常事態を目の当たりにしたしほがポツリと呟き、過去の事を思い出していた。種島小百合と初めて試合をした時の事を・・・・・
「宜しくお願いします。天明女子学園戦車道科3年生、隊長の西住しほです」
「こちらこそ宜しくお願いします。東京機甲大学校3年生、隊長の種島小百合です」
互いに挨拶を交わす西住しほと種島小百合。この日はしほが在学している
『撃てば必中、守りは固く進む姿に乱れなし。鉄の掟、鋼の心』の西住流、『如何なる犠牲を払っても勝利し、勝利のためなら戦車、戦闘員は最高峰のものを揃える』の種島流、この試合を見に来た観客は過去最多である1万人を越えていた。
しほが在学している天明は生徒数200名であり、戦車道を初めて履修科目にした学園だ。保有している戦車は210輛と戦車道を履修科目にしている学園の中では2番目に多い。
主な戦車はイギリス製が多く、世界初の戦車であるMK.I戦車雄型だけで100輛あった。戦車道を履修科目にした当初から試合では連戦連勝と一切負けたことがなく、「戦車狩りの天明」と他校の生徒から恐れられていた。
小百合が在学している東京機甲大学校は生徒数267名であり、全国で唯一の戦車道専門学校だ。
創立した学園の中ではまだ新しかったのでその名はあまり知られていなかった。
戦車の保有数は300輛と学園の中では1番多く、イギリスのMK.I戦車が150輛、ドイツのA7V突撃戦車が100輛、LKII軽戦車が25輛、残りは日本や旧ソ連の戦車が占めている。
開校して半年後の初試合で勝利してから連勝し続けているらしく、小百合を初めとする在校生は優秀生ばかりだったので、地元では「エースの東甲」と呼ばれているそうだ。
試合形式は主流となっている殲滅戦、制限時間は5時間、舞台は市街地、天明も東甲も得意としている舞台だ。出撃出来る戦車は1920年までに採用されたものだけに限られている。
天明が出撃させる戦車はイギリスのMK.I戦車雄型5輛、MK.V戦車雄型4輛、隊長車のMK.VIII戦車1輛の計9輛。東甲が出撃させる戦車はドイツのA7V突撃戦車5輛、内1輛を隊長車としているLKII軽戦車5輛の計9輛だ。
天明陣は試合開始前の戦車の最終点検をしていた。他校では搭乗員とは別に整備員と呼ばれている生徒が点検をするのだが、天明はしほの指示で最終点検はその戦車に乗る搭乗員がすると決めていた。
「自分で乗る戦車は他人の目に任せず自分の目で見て判断する」、それがしほの口癖だった。しほが油まみれになりながらエンジンを点検していると、天明3年の副隊長
「西住さん、東甲の種島隊長が呼んでるわよ。改めて挨拶がしたいって言ってる」
「種島さんが?分かったわ、今行くからちょっと待ってもらって」
「分かったわ、そう伝えておく」
姫戸は言われた事を種島に伝えに行き、しほは手に付いた油を拭き取ってから小百合のもとへ早足で向かった。
姫戸に言われたところに着くと、小百合と東甲の副隊長が辺りを見渡しながら待っていた。しほが小百合を呼んだ。
「種島隊長、お待たせしました。姫戸から改めて挨拶がしたいと伺っていますが」
呼ばれた種島が振り向き、笑顔でしほの手を取った。
「ええ、お互いに今年で最後の戦車道ですから良い試合をしたいと思いまして」
しほと小百合は3年生だ、この試合が終われば戦車道科を後輩に譲り、新しい進路に向けて勉学に励むのだ。挨拶が済むとしほが小百合に気になっていた事を聞いた。
「ところで、何故私達天明女子学園に試合を申し込んだんですか?東京にも戦車道を履修科目にしている学園はあるのに、何故熊本まで足を運んだんです?」
「簡単な話ですよ。最後の戦車道になりますから、戦車狩りの天明の実力を体感したいと思いまして」
どうやら戦車狩りの天明の噂は東京まで広まっているらしい。わざわざ遠いところから足を運んで貰ったのだから相手に失礼の無いような試合にしよう、としほは気持ちを引き締めた。
試合開始5分前になったので軽く頭を下げて自分の戦車に戻った。別れる時、しほは小百合が不適な笑みを浮かべていたことに気付かなかった。
しほが戻ると戦車の点検は全て完了したようで、エンジンの暖機運転をしていた。しほが搭乗するMK.VIIIの操縦手2年の
「隊長、戦車の点検は完了しました。火器類、駆動系に異常はありません」
「ご苦労様、宜しく頼むわ」
しほが労いの言葉をかけたが、天草は浮かない顔をしている。しほが心配して天草に話掛ける。
「天草、どうしたの?具合でも悪いの?」
「いえ・・・・・東甲の噂が気になっていただけです」
「東甲の噂?」
「東京にいる親友から聞いた話なんですけど、東甲と試合をした学園の生徒が次々と戦車道科を辞めているらしいんです。
どういうことなのって聞いたら、東甲にトラウマを植え付けられて戦車道が出来なくなったって言うんです。
わざわざ熊本まで足を運んだのは私達天明の実力を知りたいんじゃなくて、東京には戦車道の試合が出来る学園が残っていないからじゃないかって」
天草が言うように、最近は「高校の戦車道科の生徒が激減している」とニュースになっていた。
一気に50人も辞めてしまった学園もあり、全国的に問題になっていた。
教師のパワハラや授業に大きな問題があったのではないかと憶測が飛び交っていたが、戦車道協会が調査しても授業には特に大きな問題はなく、教師のパワハラがあったという事実も無かったと発表している。
調査で分かっていることは、辞めた生徒には「戦車道に対して大きな恐怖を感じている」という共通点があるだけで、何故なのかは教師にも戦車道協会にも分からなかった。
しほは全く気にしていなかったが、もし天草が言っていることが本当なら今まで以上に警戒しなければならない。
しかしあくまでもただの噂なので、天草には「噂に流されないで集中しなさい」と軽く注意したあと戦車に乗り込んだ。
乗り込んで数秒後、試合開始のホイッスルが会場全体に響き渡った。しほは無線連絡で前進せよ!と大声で叫んだ。
戦車に関しては少し改良が加えられているがMK.Iの操縦性の悪さはあまり改善されていなかった。当時の構造をほぼそのまま再現しているので、操縦だけで4人も必要になる。
1人はプライマリー・ギアボックス前進2段後進1段を操作する
左右別々になっているセカンダリー・ギアボックス(変速2段)の操作を行う変速手(ギアーズ・マン)でMK.Iを動かすのだ。
このギア操作がとても難しく、操縦手が前進2段までギアを入れた後は変速手の操作に委ねることになるので、連携が上手く取れないとエンストが発生しエンジンを再始動しなければならない。
当時のMK.Iには車内無線と言った気の効いたものは無く、エンジンが発する轟音と、射撃した後に発生する煙のせいで視界が奪われるという劣悪な環境下で連携を取らなければならなかったが、天明のMK.Iは車内無線通話を採用して連携を取りやすくしている。
しかしMK.Iに乗って参加している1年生はギアチェンジのしづらさに慣れておらず、先に行ってしまう先輩たちに付いていくだけで精一杯だった。
市街地では有利になるポジションを敵より先に陣取っておかなければならないので移動に時間を掛けたくない、しほは1年生に「周囲に警戒しながら後に続いて、私達は先に行くから」と言い残し、1年生が搭乗しているMK.Iを置いて先に進んで行った。
20分後、天明側が予定していたポジションを押さえ、敵に対して待ち伏せ攻撃をするためにエンジンを止めて待機していた。
そこへ遅れてきた1年生が合流し、予定していたポジションを押さえてエンジンを止めた。
しほが搭乗しているMK.VIIIは後方を監視するため、味方が向けている位置と逆方向に車体を向けて停車している。
エンジン再始動には時間が掛かるが、こうすれば敵に気付かれること無く奇襲攻撃が出来る。
この位置は事前に東甲の試合を見て、どんな感じで進行してくるのかを予測した所だ。これまでもこの戦法で勝利してきたこと、そして今まで一度も失敗したことがなかったので、しほはこの作戦は絶対成功するという自信があった。
ポジションを押さえて30分が経ったが、敵は一向に姿を見せなかった。
敵の進行具合からしてもうこのルート通っているはず、しかし戦車のエンジン音はおろか影すら見えない。
しほはあと10分待っても敵が現れなかったらポジションを変更しようと考えていた、その時天草が叫んだ!
「隊長!戦車のエンジン音です!敵が接近しています!」
その報告を聞いたしほは味方に戦闘に備えろ!と指示を出し、指示を受けた味方は主砲に砲弾を装填し砲を正面に向けた。
エンジンは始動させない、ここまで来て敵に気付かれてしまっては作戦は失敗に終わってしまうからだ。
全ての準備が整った、後は奇襲を仕掛けるだけ。しかし、しほはここでおかしなことに気付いた。
MK.VIIIは他の味方と反対方向に車体を向けている、にも関わらず最初に気付いたのは操縦手の天草だ。天草が最初に気付くことはあり得ない、つまり敵は今・・・・・
「エンジンを再始動して!ここから移動するわよ!」
しほは突然エンジン再始動を指示した、味方は突然の作戦変更に戸惑いを隠せない。
「西住隊長!?本当に始動して良いんですか!?」
「良いから指示に従いなさい!!敵は
しほがそう叫んだ直後敵のA7VがMK.VIIIの目の前に姿を見せた!まだエンジンの再始動は出来ていない!そこでしほは主砲で反撃することにした。
「射撃用意!目標A7V!撃て!!」
砲手は無我夢中で主砲の
エンジン部に当たったようで車体上部から白旗が上がった。同時にエンジンが再始動したのですぐにその場を離れた。
ここまでしてしまった以上、敵の増援が来る前にここを離れた方が良い。天明陣は別のポジションを取るために移動を始めた。移動の最中に天草がしほに質問を投げ掛けた。
「敵はどうして私達の位置を知ったんでしょうか?あのポジションなら敵に気付かれるはずがないのに」
「黙って操縦して、別の作戦を考えているの」
「あ、すみません」
しほは少し苛ついていた、完璧だったはずの作戦が失敗したことが納得出来なかったのだ。
東甲に天明の動きは知らないはずなのに全く警戒していなかった後方から回り込んできたのだ。
しほが立てた作戦に漏れは無かったはずだったが、遅れてきたMK.Iが見つかって後を付けられたという可能性があるので、今度は移動中に敵に見つからないようにするために纏まって行動し、周囲の警戒を徹底することにした。
その最中、しほはA7Vが1輌だけで動いていたという事を頭に入れて作戦を練り直していた。
移動を始めて10分後、新しい作戦を思い付いた。敵が移動しながらこちらの動きを探っているのなら、こっちも同じように動いて敵を探すという作戦だ。
さっきのA7Vの動きを見て、敵は独立して行動していると考えられるので、移動中に遭遇した場合はその場で反撃して撃破する。
そうすれば別に行動している敵に位置を知られても問題なく行動出来る。しほは「各個撃破作戦」と命名し、後方に警戒しながら前に進むように指示した。
この作戦は当たりだったようで、敵が後方から来ることが無くなり正面から突っ込んできた1輌のLKIIを見事撃破することに成功した。
これなら勝てるとしほは確信し、他の生徒の敵を撃破したことで士気も上がり始めたので、このまま天明が勝利すると誰もが確信していた。
新しい作戦を実行してから3時間が経過したが戦況には全く変化が無く、ただ市街地の中をぐるぐると回っているだけで敵に遭遇することもなく、回り込まれることもなく、待ち伏せすらなかった。
しほも代わり映えしない景色にもいい加減飽き始めていた。時間も残り僅かになってきたので、また待ち伏せでもして敵を撃破しようかと考えていた。
「隊長!1年生が搭乗しているMK.I86号車から敵の隊長車のLKIIが目の前を走行していると報告がありました!」
天草から報告を聞いたしほは思わず大声で叫んだ。
「確かなの!?」
「はい!間違いないそうです!隊長車が掲げる青い旗も確認していると言っています!」
全く戦況に変化が無かった中で、天明に絶好のチャンスが巡ってきた。ここで隊長車を叩けば指揮系統は混乱し、敵を一気に殲滅することが出来る。しほは興奮気味に新しい指示を出した。
「作戦を変更するわ!全車であの隊長車を追いなさい!絶対に逃がさないで!」
天明は目の前にいる敵の隊長車を撃破するために全速力で後を追った。
LKIIは天明の攻撃を避けながら逃げ続けていたが、攻撃が当たる度に少しずつ速度を落とし始めた。追跡を始めて10分後、LKIIが突然停車した。
目の前は行き止まりだったので何か罠があるのかと周りを警戒したが、敵がいるような気配は全く無かったので目の前で停車してくるLKIIを撃破した。
試合も後半に差し掛かった段階で隊長車を撃破出来たのは非常に大きい戦果だ、ここから一気に敵を殲滅出来ると慢心していた。
しほが下がって敵を殲滅するぞ!と士気を上げるように大声で叫び、天明の生徒はおぉー!と元気良く返事を返した。
敵を探すため、動き出そうとしたその時!パパパパ!と何かが破裂したような音が響き渡り、その直後に発生した白い煙が蔓延し、しほたちの視界を奪った。
突然起きた異常事態に天明はパニック状態に陥った。しほのヘッドホンからはパニックになっている味方の声が聞こえてくる。
「煙のせいで周りが見えません!現在位置の特定不能です!!」
「何なのよこれ!みんな何処にいるの!?」
「怖いよぉ!!隊長ぉ!どうすればいいんですかぁ!!」
何の前触れも無く突然視界が奪われることがこれほどまで恐怖感を煽ることになるとは思いもよらなかった、流石のしほでも身震いしてしまうほどだ。
しかし隊長として冷静でいなければならないというプライドが恐怖心を押さえ込み、パニック状態になっている味方を鎮めるために声を上げた。
「落ち着きなさい!!全車周囲に警戒しながら後退して!ここは行き止まり、後ろに下がれば脱出出来るわ!」
この異常事態に全く動じていないようにも感じられるが、しほも一杯一杯だった。
視界が遮られる恐怖から目を背けるには皆を落ち着かせることをする、しほはその事しか考えられなかったが、その効果はあったようだ。
パニックになっていた味方は冷静さを取り戻し、慎重に戦車を動かした。
この状態では敵からの攻撃はないだろうと西住は考えていた。今は煙のせいで視界が遮られている状態、プロの戦車乗りでも旧式戦車で正確に狙い撃つのは困難だ。
あと少しで脱出出来る、何事も無く順調に進んだのでほっと胸を撫で下ろした。しかし脱出直前になって敵からの砲撃を受け、MK.I86号車が履帯を切られて擱座してしまった!突然の攻撃に1年生は再びパニック状態に陥ってしまった!
「て、敵襲!!近くに敵がぁ!!!」
パニックになっている声を聞いた他の乗員も「敵が出口を塞いでいる」、「敵がすぐそばに来ている」と思い込んでしまい辺りを闇雲に撃ち始めた。
しほが落ち着かせようと声を上げるが、パニック状態の味方にその声は届かない。しほは旋回して出口付近を射撃してと指示したが、何処が出口なのか全く分からない。
旋回中に砲弾が車体側面に命中したので砲手は目の前に敵がいると思い、砲を正面に向けて撃ち込んだ!射撃後にドーン!と大きな爆発音が聞こえたので敵を倒したと砲手は感じた。
その直後、撃った方向からお返しと言わんばかりの攻撃がMK.VIIIを襲い、その内の1発がエンジン部に命中して擱座してしまった。
MK.VIIIが白旗を上げると、アナウンスが「天明女子学園全車戦闘不能!よって東京機甲大学校の勝利!」と、「戦車狩りの天明」の敗北を放送した。
しほはその放送が信じられず、戦車から降りて辺りを見渡した。視界を遮っていた煙は消えていて、擱座した味方の戦車だけが「敗北」を報せる白旗を上げていた。
その光景を見たしほはへたへたとその場に崩れ落ち、空から追い討ちをかけるように雨が降りだした。
天明の戦車が回収されていくなか、しほはその場から離れようとしなかった。傘もささず雨に打たれ続け、まるで服を着たまま川を泳いできたような格好になっていた。その姿を見かねて、副隊長の姫戸が傘をさして慰めるように声をかけた。
「西住さん。悔しいのは分かるけど、そろそろ行こうよ。皆心配してるよ」
声をかけられたしほは何も言わずに立ち上がり、姫戸が持ってきた傘を受け取って小さな声で「ありがとう」と言って傘をさした。名残惜しそうに辺りを見渡してその場を去ろうとした時、姫戸が地面を指差しながらしゃがんだ。
「あれ?何だろう、これ」
姫戸が指を指す所には直径50センチ弱の穴があり、小さな破片が散らばっている。姫戸は「何か爆発した跡かな?」と不思議そうに眺めていたが、しほはその跡を見ると突然叫んだ。
「姫戸!その破片を回収して!」
「え!?回収してどうするの!?」
「良いから出来る限り回収して!回収したら協会役員に見せるの!」
雨が降る中、しほと姫戸はたった数センチしかない破片を回収していった。ある程度集めるとしほは姫戸と共に役員控え室に向かい、戦車道協会の女性役員に「話があります」と言って呼び止めた。役員はしほから破片を見せられ、首を傾げた。
「あの、これは何なの?わざわざ拾ってきたゴミを見せるために呼び止めたんじゃないわよね?」
「良く聞いて下さい。これはあくまでも私の推測ですが・・・・・これは
そばにいた姫戸は思わず「え!?」と大声で驚いた声を出してしまった。戦車道で戦車以外の兵器の使用は禁止となっている、もしこれが本当に地雷なら東甲は重大な規則違反を犯していると言うことになる。
しほは破片を指差して必死に「これは地雷の破片です!」と訴えたが、役員は全く信じようとしない。
「あのねぇ、いくらなんでもこれが地雷の破片だっていうのは無理があると思わない?どこを見てこれが地雷の破片だって言い切れるの?」
「この破片は爆発で空いたと思われる穴から見つけたんです!どう考えても地雷か、それに近い爆弾によるものです!だから調べて下さい!お願いします!」
しほは東甲の不正を暴きたかった。負けたことはショックだが、天明の敗北が相手の不正行為によるものなら納得出来るはずがない。
何より戦車道の試合には出来るはずがない跡まで残っていたのだ、しっかり調べて白黒付けて貰いたかった、しかし役員の答えは同じだった。
「これは地雷の破片だって断定出来ないわ。この悪天候じゃ爆発した跡も残っていないだろうし、調べようがないわ」
「せめてこの破片だけでも調べて下さい!お願いしま・・・・・」
「いい加減にして!そうまでして敗北を認めないつもり!?この破片も地雷の物かすら怪しいし、地雷なんて仕掛けるわけないでしょ!!」
役員はしほを怒鳴り付けると早足で控え室を出ていってしまった。
敗北を認めたくなかったわけではない、ただ白黒付けたかっただけなのに・・・・・そう考えると抑えていた感情が高ぶって涙が溢れ、足元にぽつりぽつりと落ちていった。
結局東甲の不正を暴けぬまま、最後の戦車道の試合は幕を閉じた。
試合を終えてから1週間後、気持ちが晴れない西住にさらに追い討ちを掛ける出来事が起きた。
天明戦車道科の1、2年生30人が戦車道科を去ったのだ、その中には西住と東甲の試合に参加した生徒も含まれている。
辞めた原因は、想定外過ぎる異常事態を体感したり目の当たりにしたことで戦車道に対して大きな恐怖感を抱いてしまったからだという、天草が言っていた東甲の噂は本当だった。
30人も辞めてしまったがこれからの試合に大きな影響はないらしいが、引退する3年生にはショックなことだった。
中には3年生の説得で思い止まった生徒もいたが、30人も辞めてしまったことは大きな痛手だった。
西住はもう引退した身なので余計な口出しをしないようにしようと考えていたが、本音はあの試合から目を背けたかったのだ。
天明に入学して初めて味わった敗北、視界を奪われた恐怖、思い出したくないことばかりだった。
その思い出から逃げ出したかったしほは、天明女子学園卒業後陸上自衛隊の機甲科に入隊。自衛隊なら改めて0から戦車のいろはを学べると思ったのだ。
しほが卒業して5年後、「天明女子学園」は「黒森峰女子学園」に改名し、保有する戦車もイギリス製からドイツ製に変更、制服も全て一新され天明女子学園は事実上廃校となった。
それから十数年後、西住まほとみほが黒森峰戦車道科に入学することになる。2人はこの黒森峰が、母であるしほが通っていた天明女子学園だったことは知らない。
「今回も最後まで読んで頂きありがとうございます!4号戦車装填手の秋山優香子であります!」
「同じく、操縦手の冷泉朝子だ。それにしても・・・・・あのしほさんにそんな過去があったとは、驚きね」
「本当ですねぇ。あ!て言うかそれどころじゃないですよぉ!一気に味方減っちゃったんですよ!これから私達どうなっちゃうんですかぁ!」
「私は何とかなると思うけど・・・・・あ、読者の皆さん、感想と評価宜しくお願いします。ではまた次回」