ガールズ&パンツァー ~伝説の機甲旅団~   作:タンク

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前回のあらすじ

機動力が低いトータスに速度を合わせて動いていたからか、予定よりかなり遅れていたエレキ・シェル小隊。しかしその遅れを利用して敵に攻撃出来るのではと考え、残骸を使ってトータスに擬装を施して道の真ん中に停めて敵を迎え撃った。
敵を撃破する事に成功した小隊は、偵察行動に出ていたパスタ・キャット小隊から救援要請を受け取って合流。黒江琴羽たちから『大型の重駆逐戦車を見つけた』と報告を受ける。半信半疑の田所(ラハティ)たちは他の小隊から目撃情報を集めてその戦車の予想を立てた。
相手はE-100の車体を流用した駆逐戦車で主砲は17㎝と推測し、どう対処すべきか検討し、『ヤークトE-100』と命名して作戦を開始する。
初めにトータスがヤークトE-100の攻撃を受けた後に軽戦車と歩兵を展開させ、相手の動きを翻弄する。その間にポルシェティーガーが例の加速装置『M(モーター)B(ブースト)』を使って急速接近して攻撃をして撃破、という流れだった。
作戦実行中に想定外のトラブルに見回れたりしたが、見事なチームプレーでヤークトE-100の完全撃破を達成することが出来た。そして今、アンコウ・タイガー小隊が敵を迎え撃つ作戦を実行しようとしていた。



mission19 敵陣の激戦!

 現在、アンコウ・タイガー小隊はエリアCとDの境界線付近にいた。この境界線で敵を迎え撃つ作戦だ。Ⅳ号戦車とティーガーⅠは角で敵が来るのを待っていた。相手は厄介な戦車ばかりなので、こうして奇襲を仕掛けるようにしなければ勝ち目はないのだ。

 

・・敵戦車接近、距離50・・・いや45メートルだ。M26が3輌、警戒されたし」

 

 アンコウ・タイガー小隊の歩兵、青山(メディック)が敵の接近を知らせた。報告を聞いたⅣ号戦車の通信手(ラジオ・オペレーター)の武部栞が応答した。

 

「・・・M26ね。了解」

 

 武部はヘッドセットの片方を離して西住かほに報告する。

 

「今メディックから報告で、敵戦車が接近してるって。形式はM26って言ってた」

 

 報告を聞いた装填手(ローダー)の秋山由香は、ソワソワした目付きで呟くように言った。

 

「M26は厄介であります。ティーガーと戦うために造られた戦車でありますから、走・攻・守が高いスペックで構成されています。真っ向勝負は不利であります」

 

 不安そうにしている秋山に対して、かほはとても落ち着いていた。いや、今いるⅣ号戦車の乗員の中で1番落ち着いているかもしれない。

 

「西住さん。何故あなたはそんなに落ち着いているんですか?怖く無いんですか?」

 

 砲手(ガンナー)の五十鈴藍はかほにそう聞いた。何故そこまで平常心を保っていられるのか不思議に思ったのだろう。かほは顔を向けずに答えた。

 

「五十鈴さん・・・私だって本当は怖いよ。さっきあんな目に遭ったんだから・・・でも、今はやるしかないんだよ」

 

 五十鈴はこんなに真剣なかほを見たことはなかった。その目の奥に、微かな闘士の炎が見えたように感じた。

 

「かほ、敵戦車の音が聞こえてきたぞ」

 

 ティーガーⅠの車長、西住夏海がかほに連絡してきた。同時に戦車が走る音が聞こえ、角から報告で聞いたM26が確認出来た。

 

「攻撃用意!」

 

 かほが指示を出し、砲手(ガンナー)が敵に狙いを定める。狙う場所は車体下部だ。

 

「撃て!」

 

 攻撃指示を確認した砲手(ガンナー)が攻撃を開始する。撃った弾は下部ではなく上部に当たってしまったので弾かれてしまい、五十鈴は焦った。

 

「弾かれました!次弾装填中に攻撃を受けます!」

 

 報告を受けたかほは冷泉に回避行動を指示する。

 

「急速後退して攻撃を避けます!冷泉さん!」

 

「急速後退・・・了解」

 

 冷泉朝子の素早い行動でⅣ号は攻撃を回避出来たが、ティーガーⅠは回避出来ず被弾してしまった。しかし被弾したと言っても砲弾は掠めただけのようだ。かほが心配して確認したが、夏海は「大丈夫だ」と返答した。

 特に異常は見られないようなので、夏海は「このまま戦闘を続行する」と言った。しかし砲弾の再装填中に敵が一気に距離を詰めたので、2輌は接近戦を強いられることになってしまった。本来なら慌ててもおかしくないところだが、かほは平常心を保っている。

 

「メディックさん!ガトリングさん!支援攻撃をお願いします!」

 

「俺はメディックじゃねぇ!」

 

「任せろ!俺たちで敵を蹴散らしてやるぜ!」

 

 別れて行動していた青山(メディック)(ガトリング)が銃を構えて後ろから攻撃する体制を取った。青山(メディック)は38式歩兵銃を、(ガトリング)は肩掛けが出来るようにベルトを付ける改良した92式重機関銃を持って攻撃を開始する。

 しかし2人の武器では手応えがなく、撃った弾は装甲を貫通することなく弾かれていく。

 

「くそったれ!貫通どころか傷すら入れられねぇぞ!」

 

 青山(メディック)が弾かれていく弾を見てそう言うと、(ガトリング)がニヤリと笑いながら何かを取り出した。

 

「おい・・・まさかそれって」

 

 愕然としている青山(メディック)をよそに、(ガトリング)は作戦を説明する。その手には99式破甲爆雷が握られていた。

 

「良いか?敵は味方の方に気が向いている!接近してこの吸着地雷をあいつらの後部に取り付けて爆破するぞ!」

 

「『爆破するぞ』じゃねぇよ!なんでお前が吸着地雷を持ってんだ!」

 

「ラントミーネから3発貰ったんだよ!軽くレクチャーしてもらったから扱いは大丈夫!行くぞ!」

 

 (ガトリング)たちは攻撃しているM26に向かって駆け寄り、車体の後部の側面や後部に取り付けた。後は爆破するだけ・・・のはずが何故か、(ガトリング)は爆発の手順を実行しない。それどころか「あれ?えっと・・・」と不安を煽るような小言を呟いている。

 

「何やってんだ早くしろ!」

 

 青山(メディック)が早く爆破するように急かしたが、(ガトリング)は冷や汗をかきながら言った。

 

「メディック・・・こいつどうやって爆破するんだっけ?」

 

「はぁ!?俺が知るわけねぇだろ!レクチャーしてもらったんじゃねぇのかよ!」

 

「いやそうなんだけど・・・完全にド忘れした」

 

「ド忘れしたじゃねぇだろ!!マジでどうすんだお前!!て言うか爆雷ならピンがあるだろ!それ探せば良いんじゃないのか!?」

 

「いや、今から探すと時間が無くなる・・・こうなったら銃使って起爆するしかねぇな!離れろ!爆破するぞ!」

 

「地雷処理か!でも仕方ねぇ。下がるぞ!」

 

 2人は爆破しても安全な位置まで距離を取り、(ガトリング)の機銃掃射で地雷を爆破して戦車2輌の撃破に成功。

 そして最後の1輌を撃破するために機銃を撃ったが地雷を付けた位置が左側面だったので少し車体を傾けただけで狙えなくなってしまった。

 (ガトリング)たちには見えなくなったが、かほたちにはその地雷を確認することが出来たので、藍がその地雷を狙い撃って爆破し、撃破に成功した。撃破を確認すると2人は急いで戦車に乗った。青山(メディック)はⅣ号に、(ガトリング)はティーガーⅠに乗り込み、(ガトリング)が合図する。

 

「よし乗ったぞ!早く出せ!」

 

 銃で装甲を叩いて合図すると、その場所から急いで撤退した。その移動中、武部が味方の小隊の連絡を受けた。

 

「かほちゃん、他の小隊から通信が入ったよ。えっと、アメリカ・ヒノマル小隊がT28とT29を撃破。シベリア小隊がKV-3とKV-4を撃破、それと私たちが3輌撃破したからこれで通算7輌撃破ってことになるのかな」

 

 報告を聞いたかほはリストに戦車の名前と撃破数を記録し、武部に質問した。

 

「宗谷くんたちから何か連絡は?」

 

「宗谷くんからは全く。陸王の福田くんはPSCのラントミーネくんが奪った・・・『改造パーシング』?っていう戦車と一緒に行動、カ号の水谷くんと北沢くんからも特に新しい情報は入っていないね」

 

「分かったわ。それじゃあ安全圏まで待避できたら休憩しよう。ガトリングさんたちも疲れているだろうし、少し休ませないと」

 

 かほは次の行動を夏海に知らせ、無線連絡で青山(メディック)(ガトリング)にもそう知らせた。その直後だった。

 

「おい、ちょっと止まれ」

 

 青山(メディック)が何かを察したのか戦車を止めた。(ガトリング)が話し掛ける。

 

「メディック?どうした、何かあったか?」

 

「メディックって呼ぶな。この先に戦車の気配がするんだ」

 

 現在の位置は先程の境界線からDエリアに侵入し、少し進んだ辺りの2車線道路、青山(メディック)が指を指す方向は交差点の角の辺りだ。「排気ガスの臭いがする」と青山(メディック)は言った。

 まさかとは思ったが、さっき撃破したM26の乗員が味方に連絡してその情報を便りに先回りしている可能性もある。

 念のために2人は戦車から降りて前路哨戒と称して偵察をすることにした。銃を構えて慎重に進んでいき、角の辺りに着くと鏡を使って待ち伏せしていないか確認してみた。しかし何もいなかった。

 

「あ?何もいない・・・?」

 

 青山(メディック)は何もいなかったことに不信感を持ったのか、敵がいないということに納得が出来ていない。対して(ガトリング)は何とも思っていない。

 

「どうした?何も無いんならさっさと戻ろうぜ」

 

「何も無いのが問題なんだよ。さっきまでここにいた筈だ。見ろ」

 

 青山(メディック)の視線の先には、そこまで戦車が居たと示すように履帯の跡が残っていた。跡は4本、つまり戦車2輌分という事になる。辺りを詳しく調べている時、青山(メディック)がポツリと呟いた。

 

「・・・待てよ。この先の道はどうなってる?」

 

「この先?この道を通って右に曲がれば、今Ⅳ号戦車たちがいる場所に繋がって・・・まさか!?」

 

 2人は事の重大さに気付き、慌てて味方の所へ戻った。(ガトリング)がインカムのマイクに向かって叫んだ。

 

「おい!後ろだ!後ろに敵がいるぞ!!」

 

 敵がいると聞いたかほはすぐに後ろを確認した。2人の予想通り、敵戦車が背後を取って攻撃を仕掛けようとしている!かほは敵の存在を確認すると攻撃を指示した。

 

「秋山さん砲弾を装填して!五十鈴さんは装填を確認次第攻撃!冷泉さんは車体前方を敵の方に向けて!早く!」

 

 車体前部を前に向けるのはエンジン部を撃たせないためで、冷泉はかほの指示が終わる前に車体の旋回を始めていた。その間に敵が攻撃してきたが、対応が遅れたのか初弾を外した。

 車体旋回が終わると五十鈴は隙を作る事なく砲弾を撃ち込んだ。砲弾は車体に当たらず、やや右に反れて履帯を切断した。

 

「外しました!秋山さん再装填を!」

 

「待ってください!砲塔内の弾が切れました!車体下部の弾薬庫から引っ張り出します!」

 

「急いで下さい!攻撃が来ます!!」

 

 そう聞いて秋山は急いで引っ張り出そうとしたが車体下部の弾薬庫はかなりいりくんでいるので中々引っ張り出せない。武部も協力してくれているが上手くいかない。漸く砲弾を引っ張り出した時には、敵戦車がⅣ号に狙いを定めていた!

 待ってましたと言わんばかりに狙う敵戦車の攻撃をティーガーⅠがⅣ号の前に出て防いだ!

 

「お姉ちゃん!大丈夫なの!?」

 

「大丈夫だ!虎の名前も伊達じゃないという事を見せてやる!」

 

 ティーガーⅠが先行して敵戦車に向けて攻撃を始め、Ⅳ号がその後ろをついていく。ティーガーⅠの正面装甲に砲弾が何発も命中したがお構いなしに突っ込んでいく。車体ごと突っ込ませて相手の動きを封じるのだ。

 車体を突っ込ませると金属同士で接触した事で火花が散り、もくろみ通り相手の動きは止まった。しかし相手の方がパワーがあるのか、ティーガーⅠが少しずつ押され始めていた。

 

「早く!相手の動きを封じている間にとどめをさせ!」

 

 夏海の声を聞いたかほは回り込んで車体側面を叩くように指示し、青山(メディック)(ガトリング)は敵の気を引くために機銃掃射を慣行した。

 五十鈴の正確な射撃で側面装甲を撃ち抜いてエンジンを破壊して1輌撃破し、もう1輌は(ガトリング)のが投げた手榴弾が履帯を切断し、ティーガーⅠが動けなくなったところを攻撃して撃破、ギリギリの勝利だった。

 

「チッこのエリアにどんだけ敵いるんだよ」

 

 青山(メディック)が舌打ちをして辺りを見渡した。一体何処から見られているのか、そればかりが気になってしまう。辺りを見渡していると、かほの呼号が聞こえた。

 

「メディックさん、ガトリングさん、移動しましょう。乗ってください」

 

「俺はメディックじゃ・・・いや何でもねぇ」

 

「今度こそ何処かで休めれば良いがなぁ」

 

 そんな事を言いながら2人は戦車に乗り込んだ。今度は青山(メディック)がティーガーⅠに、(ガトリング)がⅣ号に乗り込んで出発した。その間、夏海が砲塔に座っている青山(メディック)に嘆願した。

 

「メディック。何処か隠れられる場所を見つけたらで良いんだが、ドライバーが腕を打ってしまったみたいだから、診てくれないか?」

 

 夏海の頼みごとに青山(メディック)は、疲れきっているのか大きな溜め息を吐いて何も言わずに手でグッドと見せた。

 一方Ⅳ号の方はかほが機関銃の手入れをしている(ガトリング)に声を掛けていた。

 

「ガトリングさん。大丈夫ですか?重たそうな銃を持って走り回っていましたから」

 

「え?あぁ大丈夫だ。頭は悪いけど体力には自信あるんだ。俺より仲間の心配した方が良いぜ」

 

 余裕そうに振る舞っていたが、実際はかなり疲れている筈だ。かほは2人の体力を心配し、近くに建っているビルの陰で15分間停車するように指示した。

 陰に隠れてエンジンを切った後、青山(メディック)は腕を打ったと言うティーガーⅠの操縦手(ドライバー)を診た。「問題は無いがあまり無茶をするな」と言い、湿布と包帯を取り出して手当てをした。

 (ガトリング)は自分の武器である機関銃を軽く分解して油を挿した。分解整備(オーバーホール)をする時間は無いので、こうするしかない。そしてこの小隊でも大きな問題に直面していた。弾が無いのだ。(ガトリング)青山(メディック)と一緒に弾数の確認をした。

 

「あっちゃぁー・・・戦車相手に撃ち過ぎたかぁ」

 

 頭を掻きながら呟く(ガトリング)に続き、青山(メディック)も深く息を吐いて言った。

 

「こっちもだ。もう互いに弾倉(マガジン)残ってねぇし、ホハに弾薬持ってきて貰わねぇとどうしようもねぇぞ」

 

 2人がそんな会話をしている時、戦車の状態を確認しているかほのもとに夏海が近付いてきた。次の作戦をどうするか話し合うためだろう。

 

「かほ。もう私たちだけで戦い続けるのは無理だ、このエリアDは想像していた以上に敵がいる。メディックとガトリングは疲弊しているし、戦車もボロボロだ。一旦安全圏まで下がろう」

 

 夏海は現在の状況を整理してかほに警告した。かほ自身もこのエリアでの戦闘は不利だという事は察していた。しかし戦闘を続行すれば敵の足止めをし、他の小隊への負担を減らすことが出来る。

 

「いや、ここは出来る限り粘ってみようよ。敵の出方は甘いし、私たちだけでも何とかなるかも」

 

「粘るも何も、これ以上は危険だ。早くこのエリアから脱出して、他の小隊と合流したほうが良いだろう。歩兵の2人にもこれ以上負担は掛けられない」

 

 夏海はかほの意見に否定的だった。足止めをすれば味方にとって利益になるかもしれない。しかしそれは一時的なものであって、こちらがやられれば味方にとって数的不利な状況に立たされることは言うまでもない。

 かほは今どうすべきか、それを考えるだけで頭が一杯だった。合同チームは今も数的不利な状況に立たされているからか、余裕を持てなくなっていた。

 

「かほちゃん。ここは夏海さんの意見を聞こうよ。負担を掛けたくないのは分かるけど、私たちがここでやられたら皆に迷惑を掛けちゃう。宗谷くんだったら、きっと同じことを言うはずだよ」

 

 武部がかほにそう言った。余裕がないと心配してくれたのか、優しく宥めてくれた。かほは深く深呼吸をして言った。

 

「分かったわ。武部さん、別の小隊に合流するようにと伝えて。集まって作戦を立てよう」

 

 宥めて貰ったからか、かほの余裕が戻りつつあった。その時(ガトリング)の疾呼が聞こえてきた。

 

「長居しすぎた!敵が来るぞ!急げ!」

 

 耳を澄ませると戦車が走ってくる音が聞こえてくる。かほと夏海がすぐ動くように急かしたが間に合わなかった。戦車の音はすぐそこまで迫っている。青山(メディック)(ガトリング)は銃を構えて辺りを警戒した。

 

「くそっ何処から来る」

 

「前か後ろしかねぇだろ。上から飛んで来るとでも?」

 

「戦闘機じゃねぇんだからあり得ねぇだろ」

 

 2人は冗談を言い合っているが、敵が見えず音だけするときが一番恐怖を感じる。見えている方がまだマシだ。音はどんどん大きく、そして近付いている。

 

「後ろよ!!」

 

 かほが外にいる2人にも聞こえるぐらいの声量で呼号した。かほの予想通り、敵戦車1輌が後方から回り込む形で味方を狙っている!歩兵2人が機銃掃射で対抗する!

 

「ちっきしょぉ!来るなら来やがれ!!」

 

「近衛歩兵科をなめんじゃねぇぞぉ!弾切れても絶対に逃げねぇからなぁ!!」

 

 敵は歩兵2人の機銃の雨を受けながら真っ直ぐ前進してくる。敵は装填が終わっていないのか撃ってくる気配がない。五十鈴がスコープを覗きながら車体下部を狙い、「ファイヤー!」の掛け声で攻撃した。撃破とはならなかったが、砲弾が左の履帯を切断したことで車体を大きくずらした。これで退却する時間を稼げた、かほは通信機を使って2人に戻るように指示した。

 

「メディックさん!ガトリングさん!戻って下さい!退却します!」

 

「分かった!発煙筒を投げとく!ガトリング、攻撃中止!撃つと居場所がバレるぞ!!」

 

 青山(メディック)は胸ポケットにしまっていた発煙筒を3つ取り出し、ピンを抜いて敵戦車の前で転がした。煙幕を確認すると、小隊は全速力で退却した。しかしビルの陰から出たその時!目の前に重戦車が目の前で立ちはだかっていた!

 黒に塗装された車体、千鳥型転輪の足回り、そして丸みを帯びた砲塔。その姿を見た秋山が指を指しながら悲鳴を上げた。

 

「あ!あぁー!!レーヴェです!これがⅦ号戦車レーヴェです!!」

 

 秋山が恐れていた重戦車、レーヴェ。ドイツ語で『ライオン』という意味を持つ。まともに戦って勝つ見込みはない、かほはすぐに後退するように言ったが後ろは別の戦車が道を塞でしまい、前進も後退も出来なくなった。文字通り八方塞がりである。

 

「くそっどうするⅣ号の西住隊長!強引に突破するか!?」

 

 銃を構えて指示を待つ青山(メディック)に、かほは「待って」としか言えなかった。敵に囲まれてしまうという最悪の状況、どう考えても突破は不可能である。歯ぎしりをするかほに、何処からか通信を受けた武部が驚愕した表情で伝えた。

 

「か、かほちゃん。種島が・・・種島隊長が話をしたいから出てこいって」

 

「種島さんが?何で」

 

「分かんない。でも止めた方がいいよ!何するか分かんないんだから!」

 

 武部は種島の誘いに乗らないように警告した。今までも無茶苦茶な戦術で攻めてきたのだ。ただ話がしたいのか、それとも何か企んでいるのか・・・思い付くことはただ1つ、良からぬことを企んでいるに違いないということだけ。武部だけでなく、Ⅳ号の乗員全員が止めた。しかしかほは、

 

「武部さん、皆をお願い。私行ってくる」

 

「行くって何で!?止めた方が良いって!」

 

「武部さんは私が話している間に救援信号を発信して。五十鈴さんといつでも攻撃出来るように構えて。秋山さんは砲弾を車体下部の弾薬庫から砲塔内に移して、冷泉さんは砲塔にいる2人から外の状況を聞いて、逃走経路の確認を。出来る限り時間を稼ぐから」

 

 かほはそう言うとキュウポラのハッチを上げて外に出た。戦車から降りるとレーヴェの前まで歩いた。銃を構えていた(ガトリング)は驚愕していた。

 

「西住隊長!?何で出てるんだ!早く戻れ!」

 

「ガトリングさん、下がっていて下さい。私は種島隊長と話がしたいんです」

 

「話がしたいって・・・一体何を話すんだよ」

 

「分からない。でも話がしたいんです。後方で構えていて下さい、会話に集中出来ませんから」

 

「・・・分かった。ヤバいと思ったらすぐに戻れよ」

 

 (ガトリング)は言われた通り、後方まで下がって様子を伺った。歩兵がいなくなった事を確認したのか、レーヴェのキュウポラのハッチが開き、種島優衣が姿を見せた。

 種島は不適な笑みを浮かべつつ、レーヴェから降りてかほの前に来た。

 

「一体何の話がしたいんですか?」

 

 かほの方から質問を投げ掛けた。すると種島は後ろで控えているⅣ号戦車とティーガーⅠを見ながらこう言った。

 

「もうあなたたちの戦車はボロボロね。これ以上戦っても無意味という物じゃない?今ここで降伏すれば、あなたたちの戦車を撃破しないで上げるけど?」

 

 何を言うのかと思えば、降伏宣言を求めてきた。勿論降伏するつもりなどないが、一言で断ると話は一瞬で終わってしまう。かほは別の話をして時間を稼ごうと試みた。

 

「その前に質問させて下さい。あなたは何故宗谷くんを引き抜こうとするんです?」

 

 かほの質問に種島は首を傾げた。

 

「質問の意図が分からないんだけど?」

 

「宗谷くんはあなたの誘いを拒否しています。なのにどうしてしつこく付きまとうんです?迷惑がっているじゃないですか」

 

「あいつが私の誘いを断る理由が分からないのよねぇ。良い戦車を揃えてるし、設備も乗員も充実してるのよ。大洗と違ってね」

 

 ここまでさらっと自己中心的な答えを言われると、寧ろ清々しさを感じる。表面的には東京パンツァーカレッジの方が上かも知れない。しかし宗谷が求めているのは、そんな誰もが良いと思うような事ではないとかほは分かっていた。

 

「宗谷くんは設備や戦車が良ければ良いなんて思ってません。彼は仲間という存在を第一に考えてるんですよ」

 

『仲間という存在』、戦車道以外でも必要になってくる要素だ。戦車に乗っている以上、決して外すことの出来ない重要な要素であるとかほは認識していた。「宗谷も同じことを言った筈」と思っていたが、種島の心には全く響いていなかった。

 

「仲間なんて意識する必要無いわ。私の言う通りに動いてくれればそれで良いのよ。そんなことより、さっさと決めて貰えないかしら?私待たされるのは嫌いなの」

 

 やや強めに回答を求めた種島に対し、かほは睨むような鋭い目付きで答えた。

 

「宗谷くんがあなたを嫌う理由が分かった気がする・・・あなたみたいな人に、屈したりしない!」

 

「そう。折角生き残らせてあげようと思ったのに。残念だわ」

 

 種島はそう答えると、颯爽とレーヴェに戻った。「戦闘が始まる」と察したかほも、急いでⅣ号に乗り込んだ。乗り込んでいる時、(ガトリング)が興味津々な顔で話し掛けた。

 

「お相手かなりご立腹のようだが、何て言ったんだ?」

 

「えっと、その・・・『あなたなんて大嫌い』って言ってやりました!」

 

 スッキリとした笑顔で質問に答えたかほに、(ガトリング)は高笑いした。

 

「ハハハ!そりゃ良いや!俺たちの心の中で思っていた事をそのまま言ってやったか!傑作だね!」

 

「笑ってる場合じゃねぇだろ!その一言で俺たちが生き残れる可能性がゼロになっちまったよ!」

 

 青山(メディック)の言う通り、時間を稼ぐどころか相手に喧嘩を売ってしまったのだ。敵は血に餓えた猛獣のように獲物を仕留めるまで追い掛けてくるだろう。

 そんなことを考えていると、前後を塞いでいた敵戦車の主砲が味方の戦車に狙いを定めた。歩兵の機銃ではどうしようも出来ない。援護も得られそうにない、そう思った時、プロペラが風を切りながら回る音が空から響いて来た。青山(メディック)が「上を見ろ!」と空に向かって指を指した。

 ビルの陰からオートジャイロのカ号が姿を見せた。パイロットを担当している水谷から通信が入る。

 

「武部から救援要請を受け取ったんだ!間に合ったみたいだな!後は俺たちに任せろ!福田!ラントミーネ!行け!」

 

 今度は角の陰から陸王とT26E1-1スーパーパーシングが飛び出してきた!

 陸王がサイドカーに取り付けた機関銃で攻撃し、スーパーパーシングが退路を塞いでいた敵戦車に向かって突っ込んでいく!かほが咽頭マイクに手を当てながら喊声を上げた。

 

「皆さん!合流した小隊の皆さんと共にこの場を乗り切ります!反撃を開始します!!」

 

 




「今回も愛読感謝するぜ!歩兵のガトリングと、」

「青山だ。て言うかおい、俺が前回報告した内容はどうなってんんだよ」

「あーそれに関しては次回に持ち越しだとよ。思っていたよりも話が長くなって収まらないってさ」

「なんじゃそりゃ・・・」

「本当だよな。俺たちも最後の挨拶に出れなかったしな」

「人数多すぎるのはマズいかなって思ったらしいが」

「内容気になるよな。なぁメディック、教えてくれよ」

「おいおい・・・何でラハティにボンベにウッドペッカーがいるんだよ。て言うか俺はメディックじゃねぇ!」

「いい加減メディックって呼ばれるぐらい慣れろよ。次回はいよいよこのシリーズが20話目になるな。最後まで頑張るぜ!感想と評価、良ければお気に入り登録も宜しく!」

「「「次回も宜しくな!」」」

「あぁ・・・早く帰って休もう・・・」
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