エリアDで戦闘をするアンコウ・タイガー小隊は、歩兵役の
敵の動きに翻弄されながらも何とか生き残って来たが、歩兵2名の疲労はピークに達し、銃弾も底を付く一歩寸前だった。しかし敵は待ってくれず、アンコウ・タイガー小隊を徐々に追い詰めていった。
撤退を開始した小隊は、隊長車のレーヴェと遭遇した。退路を塞ぐレーヴェから降りてきた種島優衣は、「これ以上の戦闘は無意味というものでは?今なら逃がしても良い」とかほに提案をした。しかしかほは「あなたみたいな人に絶対負けない」と言い返して交渉決裂となった。
現時点の状況では勝利の道筋はほぼ無いに等しい状況下だったが、救援要請を受け取ったカ号とE1ー1と陸王が合流。アンコウ・タイガー小隊、反撃の時!
現在、アンコウ・タイガー小隊がいる場所はエリアDの中央。小隊は合流したPSCと陸王、カ号と共同して敵の隊長車レーヴェに攻撃を仕掛けていた。E1ー1はレーヴェに向かって突進していく。
「ゲヴェア!レーヴェに向かって突っ込むぞ!射撃宜しく!」
「ちょっと待て!装填手無しで戦ってんだぞ!」
しかし本来5人で動かすところをたった2人で動かしているので、互いに大きな負担が掛かっていた。
「ゲヴェア!捕まれ!!」
「結局突進かよぉー!!」
その甲斐あってか、レーヴェの主砲の位置を無理やり変えたので味方のⅣ号を砲撃から守ることが出来る。レーヴェは主砲が固定されたのでこの束縛を振り切ろうとしてきたので、
「ゲヴェア!早く攻撃しろ!今なら主砲を潰せる!」
「無茶言うな!距離が近すぎる!」
E1ー1の主砲はレーヴェの砲塔に砲身を引っ掛かっているので、撃っても砲弾は別の方向に飛んでいってしまう。しかし距離を離せば砲塔の束縛を解くことになり、相手に攻撃のチャンスを与えてしまう事になる。
「メディック!ガトリング!こっちに来い!戦車の操縦を手伝ってくれ!」
「分かった!あとメディックって呼ぶな!!」
「今そっちに行く!」
2人は機銃掃射を中止し、駆け足で近付いて急いで砲塔に入りこんだ。砲塔内に侵入したことを確認すると、
「メディック!俺代わりに操縦を頼む!ガトリングは装填だ!装填の方法はゲヴェアに教えてもらえ!俺はあいつを何とかする!」
一方レーヴェの車内は想定外の突進攻撃に困惑していた。砲撃ではなく車体ごと突っ込ませるという、まさに自滅とも受け取れる無謀な攻撃だった。
「何やってるの!早く振り切って!振り切ったらⅣ号戦車に照準を合わせるのよ!」
レーヴェの車長である種島は真正面に突っ込んだE1-1を振り切るように指示していたが下がれば近付き、進めば下がるという付かず離れずの動きで翻弄されていた。
機動力は重戦車というだけあってかなり低く、走・攻・守のバランスに優れている相手では味方の援護無しに振り切ることは不可能であった。
攻撃をしようにも砲口はやや斜めに傾き、E1ー1の砲塔の真横にあるので距離を離さなければ当てることが出来ないのだ。痺れを切らした種島は
「いつまで遊んでるの!
レーヴェが少しずつ押し始め、操縦席に座っている
Ⅳ号とティーガーⅠは後ろを塞いでいたM26を攻撃して退路を確保し、福田は合流した陸王と共に周囲の警戒をしていた。この戦闘中に別の第三者からの横槍が入ることは避けなければならないからだ。
「近付いてる。この辺りで戦闘している味方はいないし・・・そろそろ移動しないとヤバイな。全車に緊急連絡!敵が接近してる!直ちに戦闘を中止、離脱するぞ!」
連絡を受けたかほと夏海は「直ぐに離脱する」と応答し、離脱態勢に入った。E1ー1はレーヴェを押さえたまま、
一方
「聞こえるか?今レーヴェに仕掛けた爆雷を作動させる!メディック、脱出の用意をしておけ!」
撃ち出された砲弾はE1ー1の砲塔を掠め、ティーガーⅠの右側の履帯を切断されたので車体が大きく右に傾いた。この緊急事態に車内は軽いパニック状態に陥った。
「履帯切断!走行不能です!」
「このままでは撃破されます!どうしますか!?」
「敵戦車、味方を押しながら接近しています!」
「砲塔を旋回して応戦しましょう!」
「車長!指示を!!」
これまで味わってきた恐怖を思い出しているのか、車内は夏海に意見を求める声で溢れた。そんな乗員たちに対し夏海は、
「落ち着くんだ!!まだやられた訳じゃない!しっかりしろ!」
と怒号を上げた。その怒号でパニック状態だった車内は鎮静化した。夏海自身まだ混乱していたが、今は落ち着いた対応をすべきだと思っていた。
「まだ稼働する履帯で旋回して、車体正面を敵戦車に向けて!我々でアンコウたちの撤退を援護する!」
夏海の指示通り、ティーガーⅠはまだ稼働する左側の履帯で旋回し、車体正面をレーヴェに向けて攻撃態勢を整えた。
「かほ。我々が盾になる!その間にラントミーネたちと撤退しろ!」
「そんな!まだ戦えるのに!」
「分かってる!だがⅣ号ではティーガーⅠを引くことは出来ないだろう・・・気にするな!早く逃げるんだ!」
夏海は自ら犠牲になることも視野に入れていた。かほたちの助けになればそれでいい、そう考えていた。どのみちティーガーⅠを牽引して撤退することは出来ないのだ。
「出来ないかは分からないじゃない!私は諦めないよ!」
かほは夏海の指示に従わず、Ⅳ号をティーガーⅠの後ろに付けさせて車体側面に搭載していた牽引用のワイヤーを手に取った。
そしてシャックルで戦車同士を接続して車内に戻った。
「冷泉さん!前進してください!」
「了解・・・前進する」
冷泉はアクセルペダルを目一杯踏み込んで前進を開始した。ワイヤーが張り詰め、今にも切れそうになる。今まで牽引したことの無い重量に、Ⅳ号が悲鳴を上げた。
「・・・このままだとエンジンか履帯が壊れる。そうなると離脱どころじゃなくなるぞ」
冷泉は外から聞こえるⅣ号の声を聞いてかほに警告を促した。エンジンが急速に加熱し、履帯はスリップして地面を削ってしまっている。
Ⅳ号の馬力ではティーガーⅠを牽引することが不可能であることは分かっていたが一緒に退却したいのだ。このまま放置して逃げるなんて出来るわけがない。
「待ってろ!今俺たちもそっちに行く!」
少しの間だけエンジンから黒い煙が上がっていたが直ぐに消火されてしまった。
「今のうちに脱出だ!Ⅳ号とワイヤーで接続!2輌で掛かれば牽引出来るはずだ!」
種島は煙幕で視界が遮られたことに焦りは無い。爆破で動けなくなったが、敵の位置はある程度把握している。ハッチを開けて頭を外に出し、
「砲塔を動かさないで、あいつらはまだ同じ場所にいるはずよ」
煙幕で1メートル先も見えない状態だが、聞こえて来る音を便りに敵の位置を探った。
「撃てぇ!!」
種島の射撃指示を受け取り、
「種島隊長。援軍が私たちの攻撃を受けて撃破されたと報告が・・・」
「はぁ!?何言ってるの!そんなわけないでしょ!」
「本当です。やられた味方の位置はレーヴェの砲口の向きに対して直線上にいます」
煙幕が少しだけ晴れたときに見えた光景は、味方のM26が煙と白旗を上げて止まっていた。予測に関しては絶対の自身を持っていた種島には信じられない光景だった。
「・・・どうだ?敵は撃ったか?」
「あぁ。味方の戦車を俺たちと思って撃ったみたいだ」
レーヴェは味方に牽引されてその場を離れていったが、まだ敵がいる可能性を考慮して暫くこの場所で留まることにした。
留まること約10分。敵が見えなくなったのでエリアCまで撤退することにした。何処か隠れらる場所が無いか探索していると、エリアBで使っていた模擬戦車工場のような建物を発見した。
室内はとても広く、大量の段ボールが山積みされている。修理に使えそうな道具が無いか見渡したが、山積みされた段ボール以外は何も無い。
道具は無かったが戦車を隠すには充分な広さだったので、この中に入ることにした。
ティーガーⅠの壊れた転輪と外して予備の転輪につけ直し、外れた履帯は予備の履帯を組み合わせてはめ直した。
その間暇をもて余していた
「・・・何だこれ」
中には古雑誌が大量に詰め込まれていて、冊子には『マガジン
「何やってんだメディック・・・ん?お前、そう言う趣味だったのか」
ニヤニヤしながら覗き込んできた
「んなわけねぇだろ。段ボール開けたら出てきたんだ。数年前の古雑誌だよ」
「おぉ!これは戦車道の雑誌じゃないですか!」
「戦車道の雑誌?」
「知らないんですか?戦車道が始まった時から連載している有名な雑誌ですよ」
秋山は珍しそうに雑誌を眺めていたが、今日初めて戦車道を始めた
開いてみると、女子高生と戦車が一緒に写っている写真が大きく掲載され、十数行に渡って文章が書かれている。普通の雑誌と大差ないものだった。
こんな古雑誌が大量に保管されているということは、資料庫のような場所で破棄するにも費用が掛かるのでここに押し込んでいるのだろう。
秋山は奥に汚れが酷い段ボールを見つけた。より古いものが入っているのではないかと気になり、埃を払いながら中を覗いた。
「こ、これは・・・皆さん!ちょっと来てください!」
秋山が突然大声を上げた。何かとんでもないものでも見つけたのだろうか。呼ばれてかほが駆け寄った。
「秋山さん?どうしたの」
「に、西住殿!この表紙に写っている人を見てください!」
かほは渡された雑誌を受け取り、秋山が指を指す場所を見た。その場所を見たかほは目を見開いた。
「え、えぇ!?お婆ちゃん!?」
表紙に写っていたのはかほと夏海の祖母である、若き頃のしほだ。その表紙には『西住流と種島流の一騎討ち!』と大きく書かれた見出しに、しほと種島小百合が向き合うように編集された写真が載っている。
読んでみるとしほの母校である天明女子学院と、小百合の母校の東京機甲大学校の試合の様子が写し出されていた。最後のページには満面の笑みの小百合と、『種島流の逆転勝利!西住流、まさかの敗北!』という文章が大きく掲載されていた。
「お婆ちゃんも種島流と試合していたなんて・・・信じられない」
かほは驚きのあまり目の前の情報に疑念を抱いていたが、実際にあったことだ。そしてしほが負けてしまったということも、紛れもない事実だ。
「おい。この雑誌にも種島のことが載ってるぜ」
別の箱の中を開けて覗いてみると、種島のことは載っていなかったが、東京機甲に関連する記事が載っている雑誌ばかりだった。福田は呆れた顔で雑誌を眺めた。
「何じゃこりゃ・・・この学校に関連している記事ばっかりだな」
その雑誌を見ていた
「メディック!他の小隊を呼んで、この雑誌の山を調べ尽くすぞ!あいつが勝利にこだわる理由が分かるかも知れねぇ!」
「分かった!後メディックって呼ぶな!」
内容は東京機甲か種島流に関連しているものが殆どで発行された時期はバラバラ、残りの1割は他校に関連する記事が書かれている。
東京機甲大学校が連戦連勝という快挙を成し遂げている様子が記載されていたが大会での試合は無く、練習試合のようなものだった。
しかしその連戦連勝の強運も、闇に葬ってきた卑劣な戦いの上に成り立っている。
そしてもう1つ共通しているところがあった。どの雑誌にも必ず『試合中に正体不明の爆発と白い煙が上がった』という文章が記載されているのだ。『爆発』に『白い煙』、ついさっき合同チームが体験したことと全く同じことが過去にも起きていたのだ。
「うわっこれマジかよ!?皆!これ見てくれ!」
「え!?えぇ!?大洗が・・・地雷を仕掛けたってどういうこと!?」
武部はその記事を見て思わず大声を上げた。大洗の不正行為など信じられる筈がない。それはかほたちも同じだ。
記事の続きを読み進めてみると、『発見された地雷に大洗のイニシャルである『
掲載されている写真に載っている地雷は、
そして大洗の校章入りの破片と記載されている写真には、大洗の校章の右下の部分に似ている絵が描かれいる。しかしそれが本物なのか確信に迫った文章は一切記載されていない。
つまり『確証は無いが、疑い深い物が出てきたから大洗が怪しいと見ている』と言うことになる。
その雑誌を眺めていた
「・・・57年前。確か大洗って20年間戦車道が廃止されてたよな。57年前・・・20年・・・もしかしたら!!」
突然叫んだかと思ったら大慌ててで雑誌の山を漁り始めた。かほたちには一体何が起こっているのか分からなかった。
暫く雑誌の山を漁っていた
拡げられた雑誌には、『大洗女子学園の不正!戦車道協会は大洗に対し、無期限の戦車道活動の休止処分を言い渡す』と記載されている。『無期限』・・・戦車道の活動再開は未定、何ヵ月経っても何年経っても再開出来るか分からない。
そして大洗は東京機甲との試合で、たったあれだけの証拠だけで不正行為を働いたとして戦車道の活動停止となってしまったのだ。
大洗の学生であるかほたちにとって信じがたい事だった。さっき体験したことを踏まえると、仕掛けたのは東京機甲だろう。
しかし当時の技術ではより詳しい精査が出来なかった事が災いし、このようなことになったのだろう。その時後ろから誰かの声が聞こえた。
「大洗が無期限の戦車道活動停止になって20年、どういうわけか知らないが復活を果たせた・・・という訳か」
振り返って見ると、連絡を受けて合流した他の小隊たちがいた。ポツリと呟いた
その話を聞いていた小隊メンバーたちの間では種島に対する罵声が響き渡った。彼女たちの会話を横目に、五十鈴が足元に落ちているノートの束を見つけた。
「これは、なんでしょう?」
拾い上げたノートは汚れが酷く、表紙のデザインもかなり古い。埃を払って開いて見ると、シャーペンで書いた文章が羅列している。
「あら、これは・・・日記帳?」
五十鈴はそう言うと、その日記を読み始めた。
『◯月△日。今日から東京機甲大学校で戦車道をすることになった。ずっと憧れていた学校に入学出来たんだ。頑張ろう』
『◯月×日。種島流という流派の跡取りという子が同期になった。人当たりも良いし、上手くやって行けそうだ』
『◯月□日。今日初めて戦車に乗った。操作はとても難しく、戸惑ってばかりだったけど種島さんが丁寧に教えてくれた。思った通り、とてもいい人だった』
『×月△日。初めての練習試合。私は種島さんとペアを組んで試合に望んだ。何とか最後まで生き残れたけど、最後の最後で逆転負けしてしまった。でも種島さんは気にしないでと言って慰めてくれた』
「・・・慰めてくれたって、これマジか?」
「しかも丁寧に教えてくれたって・・・」
福田と
『△月◯日。今日の種島さんは、何かに悩んでいるように見えた。もしかしたら流派の件で親から何か言われたのかも知れない』
『△月□日。何だか種島さんの様子が変わっていった。仲間云々より、どう勝利するかという事ばかり気にするようになった。味方がやられても、結果的に勝利すれば何でも良いという感じだ』
『□月▽日。今日は初めての他校との対抗試合。結果は私たちの敗北。種島さんは先輩たちから『種島流っていう流派の家系なのに何で負けたの?』と責め立てられていた。家系なんて関係ないと思うけど』
『□月×日。種島さんが突然先輩たちに、他校と練習試合をしたいと言い出した。何か策でもあるのだろうか?』
『□月□日。他校との試合中、種島さんはフラッグ車を囮にして敵を誘いだそうという作戦を立案した。当然先輩たちから反対されたけど、種島さんはそのまま押し通して作戦を実行した。
作戦実行中、見えない場所から突然爆発と白い煙が上がった。異常事態が発生したのかと心配になったが、何の音沙汰無しに試合は進んだ。結果は私たちの勝利だった』
『□月△日。私たちは3年生になった。隊長は勿論種島さん。種島さんは新入生たちに、『どんな犠牲を払ってでも勝利をもぎ取りなさい』と言っていた。戦車道って、そう言うものなのだろうか』
『▽月◯日。私は東京機甲大学校を卒業した。種島さんは有名な大学に進学するのだという。私も大学に進学して、卒業した暁には戦車道協会の役員になるつもりだ』
『◯×月◯日。私は大学を卒業して協会役員になった。そこで私は種島さんと再会した。種島さんも覚えてくれていたみたいで、少し驚いた顔をしていた』
『◯×月△日。種島さんに今どんなことをしているのか聞いてみた。何でも、協会役員と東京機甲大学校の学園長を兼任しているのだという。『私たちの母校を無敵の学園にする』と意気込んでいる』
『◯△月◯日。東京機甲大学校が他校と対抗試合をすると聞いたので見学に行った。試合の最中、謎の爆発と白い煙が上がった。
あの時と同じ光景・・・私は万が一備えて試合を中断しようとしたが、種島さんに止められて試合はそのまま進んでしまった。結果は東京機甲大学校の勝利だった』
『◯△月×日。種島さんに何故試合中断を止めたのか迫ったが、種島さんは『特に問題無かったから続行した』と言った。
あの光景を見て問題ない筈がないと言ったが、種島さんは『問題なんて無かった』の一点張り。何か隠しているような、そんな気がした』
『◯△月□日。私は試合会場でとんでもないものを発見してしまった。地雷だ。誰でも造れそうな簡易的な構造、種島さんが隠していたのはきっとこれの事なのだろう。明日この地雷を見せて聞き出したいと思う』
『◯△月▽日。種島さんはこの地雷の存在を認めた。私は協会にこの事を報告すると言ったが、種島さんに脅されて何も言えなかった・・・』
『◯▽月◯日。今日は大洗と練習試合。その試合でもあの時の地雷が使われたようだ。しかし調査した協会側は、何を勘違いしたのか大洗が仕掛けたと結論付けた。
私は真実を知っていたが、種島さんに何をされるのか考えると怖くなって言い出せなかった。私は何て弱い人間なのだろうか』
『◯▽月×日。大洗の処分が決定した。『無期限の戦車道活動停止』だ。全く関係無い大洗が濡れ衣を着せられてしまった。
何で関係ない大洗が罪を背負わなければならないのだろうか・・・私がしっかり言えていれば・・・でも後悔しても仕方ない。私はすぐにでも大洗が活動再会出来るように計らうつもりだ』
『◯□月□日。漸く上の人間が処分を取り下げると言った。私はすぐ大洗に確認を取ったが、学園艦の維持費確保のために戦車を全て売ってしまったと言われた。
もっと早く意見が通せれば・・・しかし後悔しても意味がない。もう大洗が戦車道の活動を再会することは、無いのだから・・・』
「・・・これで全部です」
五十鈴は日記帳を閉じながら言った。この日記を書いていた人は、種島にとって良き友人だったのだろう。
その種島自身も、辛い思いをしてきたのだ。種島流に『敗北』の2文字は許されず、常に流派を気にしながら生きてきたのだろう。そして娘の優依も同じように育てたことで、勝利に貪欲になったかもしれない。
どんな卑怯な手を使っても、仲間が犠牲になっても結果的に勝利してしまえば良いのだ。
しかしどういう事情があったとしても危険な行為、卑怯な行為をしてもやむ無しとして見るのは擁護出来ない。こう言った行為が闇に葬られているのも、恐らく協会役員に根回ししているのだろう。
この問題は根本的に改善しなければならない。しかしこれまで『勝利』に固執してきた種島流を根本的に変えることなど出来るのだろうか。
「勝たなきゃダメってなんなのよぉ・・・こっちも今回の一見に関しては絶対負けられないし」
武部はどうすれば良いのか分からず項垂れてしまった。こちらが勝てば、種島は再び宗谷を引き込もうとするだろう。
しかしこちらが負ければ宗谷は行きたくない学校に行かなければならない。どちらに転んでも互いに良いことはない・・・
「・・・私たちって、何のために戦ってるの?」
武部は肩を落としてそう呟いた。『何のために戦うのか』、その問いには、誰も答えられなかった。
「今回も読んでくれてありがとう!Ⅳ号の通信手、武部栞と」
「砲手の五十鈴藍です。今回は種島さんがどうして勝利に拘るのかをしれた章でしたね」
「うん。種島さんにはとても辛い過去があったんだね。でもこのままで良いわけがないよ。私たちで何とかしよう!」
「ええ。絶対に負けません!次回も宜しくお願いします!感想、評価お待ちしています。」