レーヴェと遭遇したアンコウ・タイガー小隊は、救援信号を受け取ったPSCの2名が操縦するスーパーパーシングE1ー1と、福田が操縦する陸王と共に現状を打破する。
戦闘の最中、ティーガーⅠが履帯を損傷したので、休息を兼ねてエリアCの倉庫に身を隠した。修理をしている間、大量の古雑誌があったので、暇潰しがてら開いてみた。そこでとんでもない事実を目にする。
今から57年前、大洗と東京機甲大学校の試合で大洗が地雷を使用したという濡れ衣を着せられ、無期限の戦車道活動を禁止されていた・・・
「・・・私たちは、何のために戦ってるの?」
項垂れている武部栞に西住かほたちは答えれば良いのか分からなかった。言葉を詰まらせていると、
「何のためにって、宗谷を引き込むことを諦めさせるためだろ。そのために俺たちはここまで来たんじゃないのか?」
「・・・そうだよ。そうだけど、私たちがこの試合で知ったことは大洗が濡れ衣を着せられて悪者にされたって事実だけだよ!種島はこんな汚い手を使っていたんだよ!」
種島にされたことに腹を立てているのか、珍しく怒りを露にしている。Ⅳ号の乗員が宥めたがそれでも収まらない。
「落ち着けよ。あいつがしたことは許されない事だが57年前だぞ。俺たちでどうこう出来ることじゃない」
「でもあいつは地雷使って私たちを危険な目にあわせたんだよ!57年前と同じ方法で!」
室内に声が隅々まで響き渡り、木霊した。
「確かに・・・俺たちって、何の為に戦っているんだろうな」
その疑問を口にしたのは
「俺たちが戦う理由はマガジンが言った通りだ。そして大洗のみんなはその信じがたい事実を知った・・・笑い話にもならねぇよ。それと今更だが、何で俺たち元歩兵をチームに加えた?戦車1輌と同じに頭数にするなら、戦車の方が良かったんじゃないか?」
「そんなこと無いですよ。あなたたちには色々と助けられました」
かほは歩兵科の参加を擁護するように宥めたが、歩兵たちは
「やめろバカ!ここまで来たのに戦意を削ぐような発言をするな!」
チーム内で疑問の声が出始めた時、外を監視していた黒江琴羽が叫んだ。
「車輌接近!戦闘体勢!!」
呼号を聞いた歩兵たちは出口付近に集合し、かほたちは戦車に乗り込んだ。
「戦車の種類は?何処にいる?」
「分からないよ。エンジン音しか聞こえて来ないし」
「・・・ディーゼルの音だな。相手にディーゼル車残ってたか?」
「残っていなかったと思うけど・・・もしかして、チリ改とホハが来たのかな」
そう言った直後、その音の正体が姿を表した。チリ改と行動している筈のホハが1台だけで現れた。2人はその光景を見て思わず声を上げた。
「え!?ホハだけ!?」
「ドライバー!何でお前だけなんだ!?」
2人がホハに駆け寄ると、
「弾の補給に来たんだ。中に入れてくれ」
「え、あぁ・・・いやその前に、宗谷はどうした!?」
「それは後で説明するから中に入れてくれよ。ここで棒立ちはまずいだろ」
弾薬の補給で合流したというので、
「・・・何かあったのか?」
微妙な空気を感じ取ったのだろう。そう聞かれた
過去に種島流と西住流が試合をしたこと。種島は勝利に固執するあまり、卑怯で危険なことに手を出したこと。
「俺がいない間に色々あったということか」
「あぁ・・・色々と、な」
2人が会話をしていると、秋山優香子がその間に入って質問を投げ掛ける。
「ドライバーさん。今まで何処にいたんですか?全然連絡がなかったので心配してたんですよ」
「こっちもこっちで色々あったんだよ」
20分前。チリ改とホハは各エリアを跨ぐように走り回っていた。敵の目を欺くためかと考えていたが、宗谷は向かう場所を決めていたらしく、小隊が到着した場所はエリアEの境界線だった。
何故ここに来たのか、
「宗谷。偵察に向かったPSCのラントミーネから敵の戦車を奪って逃走中って連絡があったぞ」
「戦車を奪った?何やってんだあいつら・・・で、他には?」
「敵戦車を何輌か見つけたらしい。その中にレーヴェもいたってさ」
報告を聞いていた
侵入して5分後、敵を発見したと報告があった建物の前に着いた。宗谷が下車して、大穴が空いている壁から侵入して中を覗いた。室内に戦車は残っておらず、静まりかえっている。
「くそっ。もう行っちまったか」
舌打ちをしている宗谷を横目に、岩山が壁に空いた大穴を見ながら喫驚している。
「うわぁ、何だこの穴。戦車が突っ込んだのか。それに敵は・・・いないみたいだな」
「PSCのラントミーネが戦車奪ったって言ってたから、それを追い掛けていった可能性があるな」
「じゃあこのエリアから出ていったかもしれないぜ。どうする?」
「勿論追尾する。連中の機動力は低いし、今から追い掛ければエリアDで追い付けるだろ」
2人は周囲を軽く見渡した後、早足でチリ改に戻り、敵戦車の物と思われる履帯跡を辿って追跡を始めた。追跡中の最中、チリ改の後ろを付いていく
今回の試合は戦車を全て撃破した方が勝利する『殲滅戦』、現状を考慮すれば敵の数を減らしていった方が良い筈だ。隊長車の撃破が無意味という訳ではないが、その1輌に拘ったところで敵の数は減らない。
「ドライバー、周囲の警戒を怠るな。連中はどんな手を使って来るか分からないからな。それとレーヴェを見つけたらすぐに報告してくれ。今はレーヴェが最優先だ」
「なぁ、他の戦車は狙わないのか?」
「他の戦車は後回しだ」
他の敵はどうするのかと聞いてみたが、考えは変わらないようだ。もし別の敵が現れたらどう対応するつもりなのだろうか。
現在のチリ改は操縦手の福田、副砲砲手の水谷、副砲装填手兼通信手の北沢が別の任務に付いているので、残っているのは車長の宗谷、主砲砲手の岩山、装填手の柳川である。
人員配置は宗谷が車長兼操縦手、岩山が主砲の砲手兼装填手、柳川は副砲砲手兼装填手、そして通信手も兼任している。
この状態では満足に戦闘出来ないことは目に見えていたが、主砲には半自動装填装置が付いているので1人でも何とかなる。また副砲も37㎜と小口径なので1人で装填してからの攻撃も可能だ。
問題なのは操縦で手一杯となっている車長である。本来車長は砲手か装填手を兼任する事が多いのだが、岩山と柳川は車両の操縦が出来ないので宗谷が兼任している。
操縦席からの視界は非常に狭く、死角に入られたら対応出来なくなるので周囲の警戒を重要視している。エリアEから離脱する寸前、チリ改の目の前を砲弾が通過した。
「敵の攻撃だ!近くにいるぞ!」
宗谷はチリ改を近くの壁に寄せて停車させ、頭を出して周囲の音に耳を傾けた。岩山と柳川は砲手席で攻撃準備に入り、
敵の姿が見えない以上、居場所を悟られる事だけは避けなければならない。息を潜めて待機していると突然壁が崩壊し、瓦礫がチリ改に降り掛った。主砲手席に座っている岩山がガンポート越しに外を見る。
「あいつら居場所を探るために壁をぶち抜きやがった!丸見えだぞ!」
「いやチャンスだ!岩山、砲塔を回して壁をぶち抜け!まだ近くにいる筈だ!」
宗谷の指示を受けて岩山は直ぐに砲塔を旋回させ、試射を兼ねて予想地点に撃ち込んだ。壁越し撃ったが敵戦車の履帯を切断に成功し、身動き出来ない所に1発撃ち込んで撃破することが出来た。
「撃破したのは何だ!?レーヴェか!?」
何を撃破したのか食い気味に尋ねられた岩山は少し戸惑いながら黒い煙が上がっている方を見て答えた。
「いや、レーヴェじゃない。あれはM26だ」
「・・・そうか。ご苦労だったな」
敵を撃破したと言うのに、少し残念そうな声を出した。どういう訳か分からないが、今は隊長車を撃破したいらしい。
「隊長。あいつらにエリアDに行くことを悟られた可能性が高いから、一旦引き返して暫く隠れよう」
宗谷はエンジンを止めて下車すると、深呼吸をしたあと地面に座り込んでしまった。1人で操縦して指示も出していたので疲れているのだろう。
「隊長、ちょっと良いか?」
座り込んでいる宗谷に
「あぁ、何だ?」
「ずっと気になってたんだが、何故敵の隊長車に拘る?この試合は相手の戦車を全滅させた方が勝利だと聞いてる。それなら他の敵でも良いじゃないか」
「いや、レーヴェじゃなきゃダメなんだ。他の戦車が大量に押し寄せて来たとしても、俺はレーヴェを狙う」
敵隊長車だけを狙うと言う言葉に、
「あくまで俺の推測何だが、狙っている理由はレーヴェだからじゃなくて、種島が乗っているから早めに倒したいのか?」
色々考えてみたがこの推理が1番しっくり来る。それ以外で思い付く答えはない。そう言われた宗谷は拳を握りしめ、険しい顔つきになった。推理は間違っていないらしい。
「やっぱりそうか。出発する時からレーヴェを探すぞ何て言うから、まさかと思ってたけど」
何で種島に拘るんだと質問すると、宗谷は深い溜め息を吐いて話し始めた。
「あいつを逃せば逃すほど、西住たちが追い詰められていく。体力的に、そして精神的にな。だから早めに倒しておきたいんだ」
「早めに倒しておきたい気持ちは分かるが、今は隊長車よりも他の敵を掃討して数を減らした方が得策じゃないのか?」
「・・・ドライバーの言う通りだ。現状を打破するには敵を撃破していく方が良いんだがな。本当はこんな状況になる前殲滅するつもりだったんだが」
「分かってたのか。あいつがこうすることを」
「この試合の前に、パンツァーカレッジの試合を見返していたときだった。始めの内は敵味方ともに激しい攻防戦を繰り広げていたんだが、途中からパンツァーカレッジ側が優勢になっていったんだ。どの試合を見ても全く同じ流れになったから、何か裏があると思って調べたんだ」
そう言われた
市街地エリアでラーテを撃破した後、こっちの様子を伺っている隊長車だったヤークトティーガーがいた。気付かれたと察したのか直ぐに逃走を始め、本隊はそれを追い掛けた。
ここで1つの疑問が脳裏を過った。何故隊長車が敵の目の前に出てきたのかと言うことだ。隊長車は全体の指揮を取らなければならないにも関わらず、護衛無しの1輌のだけで現れた。
そして誘い込むように行き止まりで止まり、撃破された。このままなら勝てると誰もが思っていたその時、仕掛けられていた煙幕展開用の地雷が作動、白い煙が辺りを包み込んで視界が遮られる事態になった。
その状態で敵の攻撃が本隊を襲い、大混乱状態となって味方は壊滅。そこでもう1つ疑問が思い浮かんだ。
互いに視界が遮られているのに、何故正確に攻撃が出来たのか。行き止まりに入った時、他に敵戦車はいなかった。仮にヤークトティーガーが位置を教えたとしても、視認範囲がほぼ零の状態では多かれ少なかれ誤差が出る筈だ。
「どの試合を見ても必ず囮が存在して、煙幕が展開される。そして晴れた後味方は全滅・・・それも全国大会のような大規模な大会じゃなく、練習試合のような小規模な試合の時だけな」
「でも煙幕なんて珍しくないだろ。射撃の正確さには驚いたが」
「あいつらは射撃をしていない。いや、1発だけ撃っているが正確か」
1発だけ撃っている、その言葉を理解する事は出来なかった。敵は本隊の全滅を狙っている筈なのに、1発しか撃っていないと言うことはあり得ない。味方を殲滅すると言わんばかりの弾幕が飛び交っていたのだから。
「・・・俺の聞き間違いじゃなければ『1発だけ』と聞こえたんだが?」
「あの時の猛攻は敵の猛攻と錯覚した味方の誤射だ。行き止まりは背が高い建物が囲って、音が反響しやすい状態だった。小口径砲でも場合によっては大口径砲の音に聞こえる・・・しかも煙幕で視界が遮られた状況だったんだ。敵か味方かなんて区別する余裕なんて無かっただろ」
その説明を聞いて
そして背が高い建物に囲まれていたので、自然の風や砲撃で煙幕をはらうのは困難だった。
「市街地でこの作戦を実行していたから警戒していたんだが・・・隊長車として出場していたヤークトティーガーが目の前に出て来たかと思ったら、最初から隊長車と思わせる為の囮だったなんてな」
「こんな状態になった理由が分かっていたんなら、何でみんなに言わなかった」
「・・・味方の誤射で壊滅寸前に追い込まれた何て言えると思うか?あの状況なら仕方ないと言われるかもしれない。でも自分で自分の首を締めたことは事実・・・俺の判断ミスだ」
そう言うと視線を落として大きな溜め息を吐いた。隊長として判断を誤ってしまった事を悔やんでいるようだった。
「で?わざわざ小隊ごとに区分けして、俺たちはレーヴェを捜索していた、と言うことか」
「あいつは俺を狙ってくると思って、こっちが別行動をすればレーヴェだけでも食い付くと考えたんだ。そうすれば西住たちに迷惑を掛けなくて済む」
「迷惑・・・か」
宗谷の言葉に
「で?レーヴェを見つけた後はどうするつもりなんだ」
「俺たちで対処するつもりだ。主砲は使えるし、上手く後ろに回り込めば何とかなる」
「レーヴェに護衛が付いていたら?」
「他は無視する。レーヴェを完全に撃破した後に対処する。その時にやられたら・・・後は西住たちに任せることしか出来ないが」
「お前バカか?隊長が先にやられたら誰が指揮を取るんだ」
「みんな各校の隊長ばかりだから大丈夫だ」
上手くやれるさ、そう言っている表情は微笑んでいるように見えるが、不安そうにも見えた。レーヴェを倒せなかったら、そんな事を思っているのだろう。
「何で迷惑だと思うんだ?」
「俺は自分の過去に決着を付けられなかった。そのせいで西住たちを巻き込んで、他の生徒たちにトラウマを植え付けた・・・これ以上迷惑は掛けられない、だったら俺たちで何とかするしかないだろ」
「でも何で
「みんなをこれ以上巻き込まない為だ。相討ちになったとしても、被害は戦車1輌だけで済む。もし敵と遭遇したら、お前は逃げてくれ。俺たちの事は気にしなくて良い」
自分が犠牲になるかもしれないにも関わらず、ホハを逃がそうとする宗谷に、
「お前が良くても、西住たちや俺たち歩兵には良くねぇよ!お前は皆に迷惑を掛けていると思ってるかもしれないが、俺たち歩兵団はそんな事を考えたことも無い!」
「おいおい!一体何の騒ぎだ?」
怒鳴り声を聞き付けて岩山と柳川が飛び出して来た。見てみると宗谷の胸ぐらを掴んでいるので止めに入る。
「何やってんだ!宗谷が気にくわない事でも言ったのかよ!」
「気にくわないのは態度だ!何で俺たちを頼らない?隊長だからって何でも出来る訳がねぇだろ!1人で解決しようとすんな!俺たちを頼れよ!!」
静かだった空間の隅々まで怒鳴り声が響き渡る。暫く息を荒くしながら掴んでいたが、ゆっくりと手を離した。宗谷は怒鳴られた事に驚いたのか、目を見開いている。
「掴みかかったのは悪いけど、ドライバーの言うとおりだぜ。初めて会った時からそうだったけど、1人で解決しようとしてばっかりじゃないか。お前はいつも大丈夫だって笑ってるけど、今回ばかりは大丈夫とは言えないだろ」
岩山が言った。その言葉を聞いた宗谷は、目に涙を溜めながら目線を上に向けて言った。
「岩山の言うとおりかもしれない、いや、その通りだ。みんなをこれ以上巻き込みたくなかったから離れたんだがな・・・」
「気にすることはない。今からでも頼れば良い。誰も迷惑何て思っていないさ。本当にそう思ってたら、誰もここまで付いてこないよ」
柳川が宥める。確かにその通りかもしれない。迷惑だと心の中で思っていたのなら、始めから試合に参加するなど言う筈がない。この試合に参加している誰もが、宗谷のためにと集まってくれたのだ。
「行こう。みんなが待ってる」
宗谷は立ち上がってチリ改の操縦席に座り、岩山たちも持ち場についた。チリ改とホハのエンジンが唸りを上げて、ゆっくりと進んでいく。この時、宗谷の心の中に焦りというものは無くなっていた。
「とまぁ、こんなとこかな。俺たちの小隊であったことと言えば」
弾薬箱を開けて弾倉を確認しながら
「宗谷が変わったって言ってたけど、結局単独行動してんじゃねぇか」
「この場所がばれないようにするために囮役を引き受けてくれただけだ。敵と遭遇したら逃げるって言ってた」
そうか、と
「待てよ。そっちの問題が解決出来ても、こっちの問題は解決出来てねぇぞ」
ここには向こうが仕掛けた地雷と、恐らく種島小百合の友人だったと思われる人物の直筆の日記がある。この2つを使って訴えることも出来るだろう。
「気持ちは分かるが、それは俺たちが決める事じゃない。大洗の連中がどうするか、そこは任せるしかないだろ。俺たちは部外者なんだから」
大洗のメンバーは種島に対してどうするべきか悩んでいた。大洗にに無実の罪を着せた事は事実だが、それは種島優衣本人がしたことではない。57年前の事を今更掘り返しても無意味だということは分かっている。しかしここで何かしら手を打たなければ、優衣は勝利に拘り続けるだろう。
「私たちは・・・一体どうすれば良いんでしょうか」
五十鈴藍はかほたちに聞いた。どうすれば良いのか、その問いに答えがあるのか・・・と頭を悩ませていると、かほは自分が指揮を取るⅣ号に向かって歩き始めた。
「かほさん?」
藍が呼び止めると、かほはその足を止めて視線を藍たちの方に向けた。
「みんな。私たちも準備しないと。今は戦うしかないよ。どうするかは・・・後で考えよう」
かほの態度を見て、今はそうするしかないよねと言い合い、それぞれの持ち場についた。
Ⅳ号の操縦席に座った冷泉朝子は、隣で唸っている栞の方を見て言った。
「まだ怒っているのか?」
「当たり前じゃない。何であんな事が平然と出来るわけ?勝ちたいなら自分の実力で勝てば良いのに」
まだ収まらない怒りに声を震わせながら、何でかほちゃんは平然としていられるの、と呟く。
「西住だって心の中では怒っている。でも私情を挟んだら今後の戦闘に支障が出るかもしれない・・・だから落ち着いている、いやそうでもしないと上手く指揮が取れないんだろ」
「分かったような口聞かないでよ。こんな状態で落ち着いていられる方がおかしいんだから」
冷泉は大きく溜め息を吐いた。
東京パンツァーカレッジの陣営は、切られてしまったレーヴェの履帯の修理を行っていた。車体の半分をジャッキで上げて、外れてしまった履帯に予備の履帯を繋げ終わった。後は履帯の端と起動輪を繋いで引き上げるだけだ。
「種島隊長。後数分で履帯の修理が完了します」
レーヴェの
その印にはどの戦車と遭遇したのか、歩兵は何人だったのかまでを正確に記録している。
スポット335・歩兵2名と遭遇。スーパーパーシングE1ー1が強奪される。包囲網を敷くも突破された。
スポット332・M3、M4、ハ号、歩兵2名と戦闘。T28、T29撃破。
スポット333・KVー2、ISー2、改造されたヤークトパンターと戦闘。KVー3、KV-4撃破。
スポット333・トータス、ポルシェティーガー、歩兵2名と戦闘。T26E5パーシングジャンボ3輌撃破。
スポット334・トータス、ポルシェティーガー、セモヴェンテM41、Ⅱ号戦車ルクス、歩兵3名と戦闘。ヤークトEー100撃破。
スポット334・Ⅳ号戦車、ティーガーⅠ、スーパーパーシングE1ー1、カ号観測機、歩兵2名と戦闘。M26、6輌撃破、1輌相討ち、レーヴェ履帯、エンジン損傷。
スポット335・チリ改、ホハと戦闘。M26撃破。
改めて確認をしてみて分かった事は、味方の撃破された数が想定以上という事だった。敵が分散して動いていると報告を受けていたので、完全殲滅は時間の問題だろうとたかを括っていた。
しかし想定外の反撃にあったことで15輌を損失し、1輌は相討ちとという信じがたい状態に陥っている。最強の重戦車と最高の乗員を揃えたというのに、ここまで追い詰められた理由が分からない。敵の数を一気に減らし、敵の戦意やプライドをズタズタにしてやった筈なのに。
・・・いや、まだ何とかなる。こっちにはまだ敵の戦力を大きく上回る重戦車が残っている。歩兵が11人いるが、いずれ自分の武器である機銃弾は底を尽く。自分の武器が無くなれば、何にも出来ない。
「みんな。集まって頂戴」
優衣が声を掛けて、メンバーをレーヴェの前に集めた。全員が揃った事を確認すると、メンバーに視線を合わせるように話し始めた。
「良い?もう戦力の分散何てしない。この纏まった戦力で敵を一気に殲滅するわよ。どんな手を使ってでも、あいつらを殲滅するの。1輌も逃さないで」
説明を終えると、メンバーはビシッと敬礼をして答えた。表向きは了承したように見えるが、心の中では本当に殲滅出来るのかと疑問を抱いていた。
軽戦車、中戦車、駆逐戦車よりも重戦車の方が火力、防御力の面で優れていることは明らかだったが、僅か数十分の間に味方が15輌も撃破されるという状況に陥っている。殲滅されるのは自分達ではないのか、そんな考えが脳裏を過る。
準備を進めていると、レーヴェの履帯修理が終わった。種島は15分後に出発すると言った。
「今回の最後までの御愛読に感謝致します。作者のタンクです。まず最新話の更新が大幅に遅れてしまったことをお詫び致します。色々忙しかったので執筆が進みませんでした。次回はなるべく早く更新出来るように致します。今後も宜しくお願い致します」