作者はマリオのファイアボールを出そうと本気で練習してました
前回の騒動からしばらく後、時は昼休み。学園内の食堂にて、いつも通りの仏頂面をしている少女が1人…
(一夏め…一体なんだというのだ、あの女子は…)
意中の人にやたらキレのあるミドルキックを放ったあの女子はいったい何者なのだと考えているのは、織斑君の幼馴染であり、最近、織斑君と話すきっかけをつくろうとスマブラを始めた剣道女子、篠ノ之箒その人であった。ちなみにキャラはネスを使っている。
そして、同じようなことで頭を悩ませている女子がまた1人…
(一体、何なんですのあの方は?一夏さんと随分親しそうでしたが…)
長いブロンドヘアをなびかせ、これまた先程のツインテールは何なのだと考えているのは、イギリス代表候補生であり、この方の振る舞う料理には騎士道精神を試すものがあると、かつて英国貴族に恐れられた、誇りある英国魂をもつ女傑、セシリア・オルコット女史であった。
そして、そんな彼女らの悩みの原因となっている。織斑一夏くんはと言えば…
「いやだから、南斗水鳥拳って腕がこうなってこうなるんだろうよ」
「バカお前、それ敵は全て下郎の構えだろうが織斑お前バカ。あれ腕をそんな上げないでもうちょい、こんな感じで水平にだな」
「アホかよ晴明それアミバじゃんか、アッホ晴明、このアミバ」
「誰がアミバだ」
((…何を話しているのだろう(でしょう)か?))
彼女らが男子2人の会話を盗み聞きして、まず真っ先に思ったのがこの疑問だ。それもそのはずであろう。彼女らにしてみれば、大真面目にマンガの話をするなどまずないことなのだ。それ以前にまず元ネタを知らなければ、一体何の会話をしているのかすら見当もつかないだろう。
「あいっかわらずそーいうの好きねえ、アンタら…もっと他に話すことないわけ?」
そう言って、ラーメンののったトレイをもって、雑談をしている2人の前に現れたのは、彼らとは知己の間柄である、凰鈴音であった。
「あ、鈴」
「なあ凰様よ、南斗水鳥拳ってこんな感じだったもんな?」
「いや知らないわよ。私、マンガ読まないもん」
「「えー…」」
「何よその露骨にがっかりした態度は!アンタらこそもっと有意義なこと話しなさいよ!」
「何なんだよお前の言う有意義ってのは?その痩せこけた双丘を耕すことk」
「マジ殺すわよ?」
「ハイスイマセン」
「晴明、いくら何でも酷いだろ。そういうのは本当のことでも言っちゃダメだろ」
「マジ殺すわ」
「アッスイマセン」
そう言いながらも、彼らのテーブルに同席する鈴音。中学時代は、このような会話が彼らの日常だった。ここにはいないが彼らには五反田弾という同級生がもう1人いる。基本的に弾と晴明が鈴や、弾の妹である蘭をおちょくり、その度に心優しい一夏がフォローするも、持ち前のデリカシーのなさで余計女性の怒りを買う…それが彼らの中学生活の常であった。
「…一夏、そろそろ彼女とどういう関係か教えて欲しいのだが」
「そうですわ!もしかしてどちらかが、この方とつ…付き合ってますの?」
しびれを切らして、3人の関係性を問う箒とセシリア。ちなみに、少し離れた場所で聞き耳を立てていた相川もそれに反応し、うんうんと首肯していた。
「は!?べ、べべ…別に付き合ってなんか…」
「お前のそれ、上にチーズ乗っかってんの?」
「ああ、うまいぞこれ。晴明も食うか?」
「あ、食う食う」
「アンタらはなに早々と飽きてんのよ!」
女性たちの話も聞かずに、食堂のご飯に舌鼓を打つ一夏たち。ちなみに一夏が食べているのはハンバーグであり、上にアツアツのチーズが乗っかっている。人気メニューの1つだ。
「聞け一夏!どうなんだ一体!」
「うま、これ、うま…ん、いや別に、幼馴染ってだけだぞ」
「……」
「どうしたんだよ鈴?麺伸びるぞ」
「…分かってるわよ」
意中の人に即座に否定され、不機嫌になる鈴。ブスッとした表情のまま、黙って麺をすすりだした。
「えっと…では晴明さんと?」
「え?いや違うけど?」
自分が不機嫌になったくせに、先程の一夏と同様に素で即座に否定する鈴。彼女も一応、晴明のことは異性として意識していないわけではないのだが、普段のやりとりのせいか、どうにも恋愛対象にはなりえない。あくまで、彼女にとって彼は、弾と同様の気の許せる友達で、恋の相手は一夏なのだ。
「俺とこいつはただの腐れ縁だよ」
「ま、そんなところね…ていうか、アンタらこそ何なのよ、一体?」
「箸を向けんな箸を、行儀悪い」
「うるさいわよ晴明。アンタ普段は適当なくせに変なところ細かいわよね」
「…私と一夏は幼馴染だ」
「幼馴染ぃ?」
そう言って、鈴は一夏の方を見る。それは"どういうことだ?"と質問しているのを暗に示していた。
「あーそっか、箒と鈴って面識ないんだもんな。鈴が引っ越してきたのが小5くらいだろ?でもその前に、箒が小4の頃に別の場所に引っ越しちゃったんだよ。だからまあ、入れ違いだな」
「…ふうん?そうなんだ…初めまして、よろしく」
「…ああ、こちらこそ」
面白くない。まさに2人の表情はそう言っていた。自分だけが独占していたと思っていた幼馴染のポジションに、実はもう1人いたともなれば、そうもなるだろう
「ンンッ!わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわ。中国代表候補生、
「…あ、はい、初めまして…」
「…あなた、もしかしてわたくしのこと知らないんですの?」
「う、うん…なんかごめんね?凄いしたり顔でかっこつけてくれたのにね…」
「あのすいません。それ以上言うのやめてくださります、ホントに?」
「うんごめん。それで…アンタは?」
そう聞かれ、セシリアは気を取り直し、優雅な立ち振る舞いで自己紹介を再開した。
「…フフ、私はイギリス代表候補生のセシリア・オルコッt」
「クフッ…」
「今あなた笑ったでしょう?…ねえちょっと、ちょっと?」
「あ、えーッと…と、ところで一夏!あんたクラス代表なんだって?」
これ以上は本気でキレそうだなと思い、話題を転換させる鈴。セシリアもなんか釈然としなかったが、これ以上この話を長びかせるのもなんだかなと思い、諦めた。そもそも本題はそこではないのだ
「ん?まあ、成り行きでな…」
「あ、あのさ…ISの操縦、見てあげてもいいけど?」
「本当か?そりゃ助か」
バンッと、一夏が言葉を終える前に、テーブルが勢いよく叩かれる。叩いたのはもちろん、箒とセシリア
「必要ない。一夏に教えるのは、私だ。そう本人に頼まれたのだからな」
「あなたは2組でしょう?敵の施しは受けませんわ」
「あたしは一夏に言ってんの。関係ない人は引っ込んでてよ」
「か、関係ならあるぞ!私は一夏に直々に頼まれたのだからな!」
「あなたこそ、あとから出てきて図々しいことを言うのはやめてくださる?」
「あとからじゃないけどね。私のほうが一夏との付き合いが長いんだし」
「そ、それを言うなら私の方が長いぞ!」
やいのやいのと、1人の男性を巡って争う女子3人。ここまでされるのは所謂男冥利に尽きるというものであろうか。
「それに、一夏は何度もうちで食事をしている間柄だ!付き合いはそれなりに深いぞ」
「そんなこと言うならうちだってそうよ。ねえ一夏…あれ一夏?あれどこ行った?」
しかしその渦中にいる男はと言うと…
「いやだから天翔十字鳳がこうじゃん?南斗水鳥拳はそれをちょっと、こうして…」
「だからお前のそれアミバじゃんって。あれこう腕を前に出して…」
「お前それ原型とどめてねえじゃん。ジャギかよ」
「誰がジャギだよ」
そう言いながら、彼らはスタスタと食堂から去ろうと…
「勝手に帰ろうとしてんじゃないわよ!」テーレッテー
「どぉえへぷ!?」
「うわらば!?」
そうして、鈴にKOを喰らった一夏は、なんやかんやで箒とセシリアに連行された。晴明は放置された。
--閑話休題、さーたん視点
「いってー…まだ蹴られたとこヒリヒリするや…」
「自業自得だよ晴明君」
時は少し進み、現在は放課後。俺は清香さんと一緒に帰路についていた。ちなみに清香さん、今日はハンドボール部は休みらしい。
「でも意外だなー。晴明君の昔馴染みに、あんなカワイイ女の子がいるなんて…」
「そうね。ちょっとびっくりかも…」
「うわっかなりんさん…」
「いつの間に…」
いつの間にかかなりんさんが俺の隣に居り、会話に参加していた。なに?ゼロシフトでも持ってんのこの人?…本音さんも近くに居たりしないだろうな?
「フフ…本音は今日は、生徒会の仕事があるから、ちょっと遅くなるんだって」
ナチュラルに人の思考を読まないでくれませんかね、かなりんさんや?
「…ねえカナ。なんかさ、晴明君と妙に距離近くない?何かあったの?」
そう聞いてくる清香さんは、何だか不機嫌な様子だった。カナってのはもしかしなくても、かなりんさんのことだろう
「うん。さっきも話したじゃない?今朝廊下で会ったって。その時に、ちょっとね…晴明君、とってもゆったりして、魅力的な人ね」
「…ふーん、晴明君…ね…ふーん……」
俺のことを名前で呼んでることが気に入らなかったのか、さらに面白くないと言った顔をする清香さん。口をへの字にしたその表情は、どこか可愛らしいものであったけど、言ったら怒りそうなので黙っておく
「あ!いたいた。晴明!」
と、そんな空気を打ち破ってこちらに向かってきたのが、俺の中学時代の同級生であり、先程俺に有情破顔拳をおみまいした少女、凰であった。何やらひどくいらだっているようである
「ねえちょっと聞きなさいよ晴明…て何よアンタ、その女の子たち?ついにモテ期?」
「な!?」
「あらあら」
それぞれ異なった反応を見せる清香さんとかなりんさん。個性ってこういうところでも出るんだな
「…そうなの?」
「ち、違うし!」
「フフ…どうかしら?」
清香さんにはもろ否定された。フラグ立ってねえじゃんよ本音さんよ。あとかなりんさんは多分俺で遊んでる気がする
「ふうん…ま、いいわ。晴明、ちょっとこっち来なさい。話あるから」
「…へーへー、仰せのままに…わるい2人とも、先行っててくんない?」
「あ…うん…」
「…いってらっしゃい」
そう言って、俺は2人と別れ、凰についていった
どこか2人の表情に影が差したような気がしたけど、それは俺の自意識過剰による気のせいだろう。…はいそこ、『気持ち悪い』とか言わない、思春期の男子には良くあることなんだから、多分
--閑話休題
「…で、何よ?どーせ織斑のこったろーけど」
ある程度歩いた場所にある、人気のない場所、そこで俺たちは話すことにした
「…アンタのそういうとこ、ホンット嫌い…」
「そりゃどーも…で?」
「…一夏が…一夏に、約束のこと話したら、覚えてないって…」
「具体的には?」
「毎日酢豚を食べさせてあげるって約束したのに…アイツ…ただ飯食わせてくれるんだろうって…」
あーうん、それは織斑が悪いわ。でも凰、あの朴念仁にはそんな遠回しな表現は通用しないと思うよ?
「あー…そりゃあれだ。もうちょっとストレートに言ったほうが良かったかもな…」
「そんなこっと言ったって、一夏が悪いんだもん…」
「いやまあ、そうなんだけどさあ…」
「…だっであいづ…アイヅ…~~」
「あーもう泣くなって、もうしょうがないなー…」
凰は何故か中学時代から、辛いことがあると、泣きじゃくりながら俺に愚痴を言ってくる。そう言うのこそ織斑にしろよと思うけど、凰いわく"好きな人にこんなみっともない姿見せられない。アンタは
「んもー…ほら鼻かめほらティッシュ」
「…ありがど……」
…早く帰って寝たいんだがなあ…
「…落ち着いたか?」
「…ん」
ひとしきり泣ききった後、凰は俺が立っている隣に体育座りして、泣きつかれたのか、ただ黙っていた。まあ、あんだけ泣きながら愚痴言ってたらそうもなるよな。聞いてる俺もだいぶ疲れた
「…んで?用件は何だよ?まさか愚痴言うためだけに呼んだわけじゃねえだろ?」
「うるさいわね、いいじゃない別に…」
おいお前まさかホントに愚痴言うためだけに呼んだんじゃねえだろうな?ふざけんな外もう真っ暗じゃねえかチクショウ
「…アンタさ…私が一夏のこと好きなの知ってるわよね?」
「まあ、あんだけ露骨ならな…逆に気付いてない織斑がすごいくらいだ」
「…話ってのはね、晴明…」
「私と、付き合って」
「…は?」
コイツは一回寝たほうが良いんじゃないかと、そう思った。
(お鈴々とのフラグは)ないです。