脱線ばかりするIS   作:生カス

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私は最初、ドンキと聞いたらびっくりドンキーのことだと思ってました。


13話 とりあえずドンキ行っとこう感はある

--ちっふー視点

 

『クソ、何なのよコイツ! 凄く速い!』

 

『まあほとんどラスボスみたいなもんだしなアイツ……あ、あの黒い粒子飛ばしてきた。なっつかしぃーい』

 

「おいバッキャロ織斑、ノスタルジーに浸ってる場合じゃねえぞ。それ痛いから、シールドしろシールド」

 

『いやシールドねえんだよこれ……あやべ、ぶっほあッ!』

 

「あーあーもうだからそいつの壊した瓦礫を盾にすんだってば。もう白式貸せってー、俺がやっからー」

 

『ちょ、やだー。これ俺の専用機ー』

 

『真面目にやりなさいよアンタらぁ!』

 

 

 何なんだこの友達にボスの攻略法教えてもらってる感は……

 

「あの、どういうことなんですか、織斑先生? 佐丈君と織斑君、なんというかその、妙に緊張感がないように思えるのですが……やっぱり彼らはあの機体のことを知ってるのですか?」

 

「……いえ、知ってるというかなんというか……」

 

 非常に真剣な顔で私に聞いてくる山田君。しかし一夏と晴明のあの態度から、大体の事情を察してしまった私は、しかしだからこそその問いに答えられずにいた。絶対にふざけてると思われるしな。

 恐らくあれは、一夏が晴明の家に行ったときにやっていた、ゲームの敵キャラか何かなのだろう。

 一夏は中学の頃、よく晴明のうちにゲームをしに行ってた。うち64(ロクヨン)しかなかったしなあ……ごめんな一夏。今度の誕生日用にswitch予約したから、楽しみにしててな……

 

「……あの、晴明さん。さっき、篠ノ之博士がどうこうと言っておりませんでしたか? もしかしてあれは、篠ノ之博士に関係のあるものなのですか?」

 

 先程の言葉が気になったか、オルコットが晴明にそう聞いてくる。晴明が言うには、どうやらあれは束が造ったものであるというのだ。

 

「まあ、そう見て間違いないと思う。あのデカールの貼り方、篠ノ之博士のフェイスブックでよく見るから、しかもつや消し具合までそっくり」

 

 アイツ何してるんだろう? 束は確か人間嫌いだった気がするのだが……少なくともそんな風に喜々としてSNSを使うやつではなかったはずなのだが……

 まあいい、今はそれよりもやらねばいけないことがある

 

「……それで佐丈、その……ア○ビスといったか? あの機体にはどう対処するべきなんだ?」

 

「うーん……それが、さっき攻略法とか言っといてなんですけど、一番いい対処法は、織斑も凰もできないやつなんですよ」

 

「ええ!? そ、それじゃどうするんですか!?」

 

「落ち着いて山田先生。こういう時のは大体負けイベか、時間経過でなあなあに終わるイベントって相場が決まってますから」

 

「負けちゃダメじゃないですか!? それになあなあって!」

 

 晴明の言葉に翻弄され、山田君は慌てふためいている。そしてそれを見て晴明は少しほくそ笑んでいる。ホンット性格悪いなアイツ……

 

「いい加減にしろこの非常時に。それより、結局どうするんだ?」

 

「まあマジメな話、一応ダメージを与えることはできると思います。決定打にはならないと思いますが」

 

「それでいい、佐丈は引き続き、織斑たちに指示をだせ」

 

「でもさっき言ったみたいに、倒せるかどうかは……」

 

「時間稼ぎで構わん。とにかく、織斑と凰の被害を最小限に抑えるようにするんだ」

 

「はいよ。でもその後は?」

 

「これは篠ノ之博士がやったことなのだろう? なら、本人に止めさせるさ」

 

 全くアイツは何を考えているのだ……どれだけ人に迷惑をかければ気が済むのだ。今回の騒動のせいで間違いなく今夜は残業だ。今度会ったらしめてやる

 

「篠ノ之、すまんがお前の携帯を貸してくれないか? 私のにはアイツのアドレスが入ってないん……」

 

 と、篠ノ之の方を振り向いてみると、篠ノ之はがっくりとうなだれていた。

 

「姉さん……あなたという人は……ウウッ……」

 

「……オルコット、篠ノ之のポケットかどこかに携帯ないか?」

 

「あ、はい。し、失礼しますわ、箒さん。ええと……あ、ありました」

 

「よし、それをこっちに渡してくれ」

 

 オルコットに携帯を渡してもらい、急いでアドレス帳を開いて確認する。勝手に人の携帯を見る罪悪感はあったが、状況が状況なので許してほしい。

 アドレス帳を確認してると、『姉さん』という文字が出てきた。どうやらこれのようだ。コールボタンを押し、携帯を耳にあてる

 

(出てくれ……早く……)

 

プルルルッと、呼び出し中を示す音がひとしきり鳴った後、電話に出てくれたのか、ガチャッという音が、携帯から小さく響いた。

 

「おい束。貴様一体何のつもりで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

『ドンドンドン、ドン~キ~♪ ドンキ~、ホ~テ~♪』

 

 

「おい待て!? お前今ドンキいるの!? ウソ!?」

 

「織斑先生!?」

 

 普段出さないような口調で大声を出してしまったからか、山田君が私を見て驚愕していた。しかし多分私の方がびっくりしている。まったく予想してなかったメロディーが流れたのだから。

 え? というかなんでドンキにいるんだアイツ? 絶対ドンキ行くキャラじゃないだろ。どっちかっていうとドンキに行く人を見て嘲笑うタイプの人間だろアイツ

 

『もすもすひねもす~? お、その声はちーちゃんだね! あ、そうだ、あたりめも切れてたんだ……』

 

「束! 貴様あの機体はどういうつもり……え、というかホントにドンキにいるのかお前? うそ? 何買ってんの?」

 

『うんそうだよ~、なかなか良い品揃えだし。この雑多な感じも趣が……お、チーカマ安いじゃん』

 

「おいなにつまみ買ってるんだ。さてはお前その近くに住んでるな?」

 

『ん? ちがうよ。買いだめしてるだけ、引きこもり体質ならけちけちしないで、一回の外出でたくさん食べ物買った方がいいってはるるんが……』

 

「またお前かはるあ…いや佐丈ェ!」

 

 どうやら束が今激安の殿堂にいるのは、晴明のせいらしい。アイツは私の周りに悪影響を与えないと気が済まんのか?

 というかなんで束は晴明の言うことは素直に聞くんだ? アイツも最初は、晴明のことはその他大勢としか、いやそうとすら見てなかったはずだが

 

「うわ、なんすかいきなり。てか攻略法わかりました?」

 

 ハッ!そうだ、すっかり忘れてた

 

「束、あの機体は何なんだ。お前の差し金なのだろう?」

 

『あ、そっちに来たんだね? ねえねえすごいでしょあのクオリティ。特に脚部分のマスキングなんて会心の出来でさ』

 

「見えん! びゅんびゅん飛んでてマスキング部分さっぱり見えんわ! てそうじゃない、あれは一体どういうつもりなんだ。というか何がしたいんだお前ホントに!」

 

『なにって……自慢だけど?』

 

「あ?」

 

『そ、そんなマジトーンで"あ?"とか言わないでよ、コワイなちーちゃん……ジョークだよ、束さんジョーク』

 

「お前そのジョークで私また残業コースだからな? しかもこの学園残業手当出ないんだからな? お前ホントふざけるなよ?」

 

『ご、ゴメンって、やりすぎたよ……ね、許してにゃん♪』

 

「お前いい年して恥ずかしくないのか? ……はあ、もういいすぐに止めろ」

 

 

 

 

 

『ん? それはいやだよ?』

 

 

 

 

 

「……は?」

 

『だってー、何なのさあのチャイナ娘、名前覚えてないけど。いっくんにしっぽふるどころか、はるるんにもすり寄ってくるんだよ? 中学の頃からさぁー。逆ハーなの? 逆ハー乙女ゲーの主人公気取りなのあのビッチ?』

 

「……は?」

 

 思わず2回言ってしまったが、そうなるのも無理はないと言ってほしい。コイツなんて言った? つまりあれか? 最初っから凰を狙ってやったと、そう言っているのか?

 

『やっとどっかいったと思ったら、またIS学園に入ってさ、懲りずにいっくんとはるるん両方もってこうとするしー。だから頭来ちゃったから、半殺しにしてわからせてやるの』

 

「き、貴様……!」

 

 クソしまった! コイツのサイコパス具合を甘く見ていた。どんなにぐーたらになろうとそこは変わらないか……

 

『大丈夫。いっくんにはそこまで危険な攻撃しないし、あのチャイナ娘も殺しはしないから。ま、五体満足でいられるかはわからないけどねー』

 

「なんだと…!」

 

「織斑先生、凰さんのシールドエネルギーが50%切りました。流石にこれ以上は危険です!」

 

 モニターを見ていた山田君がそう叫ぶ、それは私を焦燥に駆るには十分だった

 くそ!なんてことだ……どうする? オルコットにも出てもらうか? いや駄目だ、奴は強い。それに生徒をこれ以上危険にさらすわけにはいかん。

 ……かくなる上は、私が出て……

 

「……先生、なんかわかりました?」

 

「!……佐丈」

 

 そうだ、晴明に束が止めるように言わせるのはどうだ? 束はアイツの言うことには何故か妙に素直だ。もしかしたら、止めてくれるかもしれん

 ……いや、それでも束はこういう時は非常に頑固だ。止めれるかどうか……

 

「……佐丈、今束と電話がつながっている。あの機体を止めるように言ってみてくれないか?」

 

「え? ああ、はい……もしもし」

 

 携帯の通話をスピーカに切り替え、束の声が聞こえるようにして、晴明に携帯を渡した。携帯を取り、晴明は束と話し始めた。その様子を、私も含めた他のメンバーが固唾をのみ込んで見守っている。

 頼むぞ晴明、お前にかかっている……

 

『あ、はるるん! はろはろ~』

 

「束さん、そろそろちょっとシャレになってないんで、あのア○ビス止めてくれませんか?」

 

『なに言ってんの? いやに決まってんじゃん。いくらはるるんでも今回は口出しさせないよ? それにこれはいっくんとはるるんのためでもあるんだから』

 

 電話から聞こえたのは、聞きたくなかった、拒絶の声だった

 ……やはり、ダメか……

 

『よーしじゃあ気を取り直してア○ビス! あのチャイナ娘を半殺s』

 

 

 

 

 

 

「止めないともうブラッドボーンの攻略手伝いませんよ?」

 

 

 

 

 

 

「……あ、不明機体、急上昇……あ、学園からものすごい勢いで離れていきました……ええと、お、終わったみたいです……」

 

 

 

……ああ、なんか今日は疲れたなあ……

 

 

 

 

 

--さーたん視点

 

 

 かくして、所属不明機体(笑)の襲撃事件は無事に収束し、学園に再び平和が訪れた

 織斑と凰は、先の戦いでのダメージは大したものではないが、一応不明機(笑)との戦闘ということもあり、念のため医務室で安静にするよう言われていた。ちなみに俺はそのお見舞いに行く途中である。

 

(織斑にはジャンプでいいよな……? 凰様にはまあ、きのこの山でいいか)

 

 タケノコ派だったらどうしようと、至極どうでもいいことを考えていると、医務室に着いた。しかし扉を開けようとると、中で声がしているのに気づいた。どうやら2人で話しているようだ。

 

(……もしかして、いい雰囲気かね?)

 

 そう思い、ドアから手を放し、代わりに壁に耳を当てた。もしかしたら、凰の(ついでに俺の)これまでの苦労が報われるかもしれないのだ

 

「……なあ鈴」

 

「なによ」

 

「その、悪かったよ、色々と……」

 

「……別に、いいわよ。私もムキになって悪かったわね……」

 

 おおっと、これはホントにいい感じではないか? もしかしてこのまま上手くいけば、無事ゴールインってことも……

 

「あ、なあ鈴、そう言えば、お前の言ってた、料理が上達したら、毎日私の酢豚を食べてくれるかって言う、話だけどさ」

 

「う、うん……」

 

 おお! これはもしかしてもしかするとか!?

 

「あれって、もしかして違う意味が含まれているのか。その……俺の自意識過剰じゃなかったら、プロポーズ、みたいな感じで……」

 

 ウオオオ! ついにここまで来たか。凄いぞ織斑、よく言った。さあ、あとは凰様がうんと頷くだけだ。行け凰様! ここで思いをぶつけるんだ!

 

 

 

 

 

 

「な、なな何言ってんのよ! そんなわけないじゃない! だだ、誰かに食べてもらった方が上達するって思っただけよ!!」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

--場面転換

 

 

 少し後、いつもの人気のない廊下にて

 

「……お前さ」

 

「……だって」

 

「チャンスだったじゃん。千載一遇のチャンスだったじゃんあれ。なんでわざわざ否定しちゃうの」

 

「だって…だっで~……」

 

「あーもう泣くんじゃありません」

 

 なんということだ。まさかあのウルトラレア以上に確率が低い『織斑が察する』という一大チャンスを逃すとは……しかも思いっきり否定してしまったから、これからよりプロポーズに結びつけるのは困難になってしまっただろう。結局、織斑の攻略難易度をより跳ね上げてしまっただけだ。

 

「……晴明」

 

「なんだよ、泣いたってもう俺にしてやれることなんて」

 

「ごめんね……」

 

「……あら?」

 

 意外や意外、なんと素直に謝られてしまった。

 

「ごめんね、せっかく手伝ってくれたのに、頑張ってくれたのに、ごめんなさい……」

 

 ……うんなんだろう、てっきりまた『しょうがないじゃない』ってかんしゃく起こして八つ当たりすると思ってたのにな。いきなり泣いて謝られるとか、かえってやりにくい。これならかんしゃく起こしてくれた方がまだよかった

 

「……あーうん、まあ、いきなりだったんだ。しょうがないよな」

 

「でも……」

 

「ま、かえって良かったんじゃねーの? いきなり付き合うことになってもお互い困惑するだろうし。もしかしたら、時間をかけてゆっくりと、近づいてからの方がいいんじゃね?」

 

「……そうかな?」

 

「多分な」

 

「……そっか」

 

そう言うと、凰はごしごしと涙をぬぐい、スッと立ち上がった。そこには、いつもの明るい顔があった

 

「またこれから、新しい方法考えないとね」

 

「もう俺は手伝わねーぞ?」

 

「やーよ、手伝って」

 

 冗談じゃねえ……そんなことを考えながら、俺は凰の顔を見る。コイツはどこまでもめげないで、真っ直ぐだなと、そう思った。

 

「はー、泣いたらお腹すいた。まだ学食やってるわよね? 晴明、ご飯食べに行くわよ。付き合いなさい」

 

「へーへー仰せのままに、お姫様」

 

 そしてどこまでもわがままだ。正直、将来コイツの夫になるであろう織斑は大変だなと、まだそうなるとも決まっていない織斑の未来を憐れんだ

 

 

 

「……ねえ晴明」

 

「なんね?」

 

「もし、もしよ? 私が一夏にフラれたら……」

 

「……フラれたら?」

 

 

 

 

 

 

「アンタが私と、付き合わない?」

 

 

 

 

 

 

「……あ?」

 

「…ふふん、なーんてね、冗談よ。ほら、はやく行くわよ」

 

「あ、ああ……そうだな……」

 

 そう言って、アイツはいたずらっぽい笑みを浮かべて、俺の前を歩く

 

 

 

(……コイツも、大人になっていくんだな……)

 

 

 

 今まで見せたことがないような、女の子っぽい顔をした腐れ縁の女友達を見て、俺はふと、そんなことを思ってしまったのだった……

 

 

 

 




ドンキ行ってる時の篠ノ之博士はジャージ&サンダル
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