鯖対抗聖杯争奪戦争 作:なる竹
「エミヤ相談があるんだけど、いまいい?」
「なんだ、マスター。私は聖杯についてなら関わりたくないぞ」
「まま、そういわずに相談になってよ」
食堂で夕食の支度をしていたエミヤにマスターが声をかける。いつもなら相談に乗る面倒見のいいエミヤなのだが、カルデアで今一番アンタッチャブルな話題である聖杯についてなど関わりたくないため断りを入れる。
ただ、何度か頼みこむマスターに最終的には折れて相談に乗ってくれるのだから人の良さを再認識する結果となる。
「エミヤだって自分に聖杯貰えるかもとか考えない?」
「聖杯の数は限られている。たかが私程度の弓兵一人強化されたところで今のカルデアでは意味などないだろう」
「そんな意味なんて考えてたら聖杯なんて鑑賞用になっちゃうよ」
「実際、その方がいい。敵は弱いにこしたことはないに決まっている。
それに今のカルデアにいるサーヴァント達の質も悪くない。このさき、どんな敵が現れても打倒しえるほどに」
「そうかな?」
「ああ、だが、クラス別に見れば薄い層がある」
「そうだけに?」
「……一番薄いのはアーチャーだろう。先日強力なアーチャー、ニコラ・テスラの召喚により戦力は補強されたばかりだが数としては心もとない。べつに自分を売り込もうとしてる訳ではないぞ」
「わかってるよ。でも、それをいうならアサシンもじゃあない?粒揃いだけどアーチャーと同じくらいだよ」
「確かに。アサシンとして、それらしくないのが多いからな……」
鬼や皇帝の顔が浮かべる二人。アーチャーらしいアーチャーも珍しいがアサシンらしいアサシンもハサン以外は珍しい。
「そう思うならアサシンクラスの誰かに渡すつもりなのか?」
「戦力としてならそうなるかも。でも、戦力としては聖杯を使うほどではないことは確かだけどな……」
「煮え切らないな。聖杯をどうするかは君が決めることだ。渡す気がないならぐだ子に渡してしまえ」
「うーん」
はっきりしない彼にエミヤもイライラしてきたところに食堂へ誰か入ってきた。
「エミヤーいる?お菓子貰いたいんだけど。出来たら大きくて掴みやすいヤツ……」
「マスター?」
「……」
さきほどまで話していたマスター(?)がヤバイ、と気まずそうな顔をし、エミヤは入ってきたマスターに目を見張る。
入ってきたも自分がいることに驚くがすぐに誰なのか思いつく。
「て、燕星じゃん」
「なーんでいま出てくるかなおたくも」
マスター(?)だったの輪郭がボヤけ、別人__燕星の姿に戻る。
「イタズラもほどほどにね」
「いや、イタズラじゃあなくて……」
「なら、どうして?」
マスターが尋ねると燕星はなぜかエミヤを見た。なぜ私がとも思いながら助け船を出した。
「私が頼んだんだ。マスターの味の好みを聞きたくてね」
「エミヤが?それなら直接聞いてくれれば」
「ちょっとしたイタズラ心だよ。びっくりしてもらおうと思ってね」
「ふーん。そっか、わかったよ」
マスターはそれ以上尋ねず、いくつかの菓子とお茶を水筒に入れてもらい食堂を出ていった。
「マスターに気を使わせてしまった」
「話したくなかったのだろ?」
「まあ、そうだけどさぁ」
ブツブツ机にうなだれる燕星。エミヤはおぼんに急須と2つ湯呑みを乗せて燕星の向かい側に座った。
「で、なぜ聖杯について聞いてきた?」
「ああ、ばれてる?」
「バレてるもなにも自分から聞いてきたことだろ」
燕星の前に湯呑みが置かれる。
「まー別に深いわけはないぜ。
昔アンタはマスターをしたことがあったんだろ?参考までに聞きたくて、それだけだぜ」
「別に私は聖杯を手に入れた訳ではないのだがな。聖杯貰えるか気になったのか」
「そりゃあ、俺がカルデアに来たのはだいぶあとだがチャンスはゼロじゃあないだろ?アンタも気にしてないわけとはいわせないぜ?」
「……ずいぶんマスターのことを気に入ってるみたいだな」
「ああ、俺はマスターの助けになりたい」
「意外に熱い男なんだな、アンタは……私だって助けになりたいとは思っている。聖杯を貰えなくとも、だ。
だが、マスターがここまで聖杯を使わなかったのはなぜだが考えたことがあるか?」
「そりゃあサーヴァント間での不和を心配だろ」
「それとマスターの優柔不断な性格が一番の原因だろう。多くのサーヴァトン達と交流する上で柔軟な思考は不可欠だが、行き過ぎれば欠点だ。今の奇跡のようなバランスの中で一人を優遇したらどうなるか、想像するまでもないだろ」
「そうなると、このまま使わない可能性もあるな」
「ありえる」
あのマスターなら、と互い同意しあう。酷い言われようである。
「でも、収拾が付かないだろ、それじゃあ」
「ぐだ子ほどの思いきりのよさが半分でもあればよかったんだがな……」
ぐだ子は聖杯を使用できるようになった途端使い戦力を強化した。ぐだ男は保留にした。互いの性格の出る答えであった。
性格が極端に違う二人のマスターであったため衝突も少なく互いに補強しあえたのだろうが、戦力強化という大義名分がなくなった今はぐだ男の気持ちしだいになる今、大きな決断を迫られる。
「あの嬢ちゃんには驚かせされぱなしだからな、流石に俺の変装まで見破ることはなかったが……はじめて
「なにをやっている」
「マスターに止められなかったら確実にレアプリになってたぜ」
隣の芝生は青く見えるものだが彼女に呼ばれたらどうなっていたか、そんな話をしながら二人はマスターの前では興味のなさそうに、内心そわそわしながら答えを待っているのでした。