試作品集   作:ひきがやもとまち
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少し前から仲の良いユーザー様とのやり取りの中で生まれてたセレニアのオリジナル百合物語です。「ジャンヌISはガールズラブじゃなくない?」との指摘を受けて今作のことも纏めて思い出しましたので折角ですから投稿させて頂きます。
大好きな作品「やがて君になる。」の影響を受けてはいますが、たぶん全然似てませんねぇコレ。


言霊ガールズラブストーリー

「好きとか嫌いとか、最初に言いだしたのは誰なのかしら?」

 

 ・・・昔、そんなフレーズではじまる恋愛ゲームをプレイした事があります。

 この質問に対する答えを今の私は持ち合わせておりませんが、今の私にも答えられる関連事項と言えるべきものが存在しています。

 

 それは――――

 

 

「私、貴女のことが好きです! 私とお付き合いしてください!」

 

 

 ――好きとか嫌いとか、私に最初に言ってきたのは入学したばかりの高校二日目、放課後の校舎裏で待たされてた相手。

 学校一の才女と噂の生徒会長『深山夕凪』先輩だったと言うことだけです・・・・・・。

 

 

「・・・・・・はい?」

 

 

 しょっぱなから初対面の相手に愛の告白されるという、とんでもない始まり方で私と深山先輩の物語は幕を開けるのでした・・・・・・。

 

 

 

 

「・・・・・・あ~・・・・・・」

 

 翌日。午後の放課後、学校正門前。校門の門扉を背にして鞄を持って立っていた深山先輩がこちらを見つけ、満面の笑顔を浮かべると右手をブンブン振って「私はここにいるよ! 貴女を待ってるよ!」アピールを初めてくれやがりました。

 別に早くもなく遅くもない、帰宅部特有の予定決めずにウダウダしながら帰り道を行く下校時間に、生徒たちは一定数校門の前にも集まっており、人目を引く優れた容姿の持ち主が子供っぽく無邪気な笑顔で主人を見つけた犬の尻尾みたいに手を振ってたら嫌でも目立ちまくります。

 不本意であろうとなかろうと、ここは返事をしておかないと色々不味くなるパターンです。最悪、気づいてもらえてないと思い込んで余計に状況を悪化させてくれかねません。

 発生してしまった問題は無かったことにするよりも、それ以上の被害拡大を防ぐため対処しに向かった方がマシな結果に終わるものなのです。少なくとも経営学ではね?

 

「・・・何をしてらっしゃるんですか? 貴女は・・・」

「えー、恋人がくるのを待って一緒に下校とか、女の子なら誰でも一度は憧れるものじゃない?」

「・・・・・・よくは知りませんが、相手からの了承得てからじゃないとストーカーと大して変わらないような気がしますけども?」

「そ、そんなことはない! ・・・・・・のかなぁ?」

「いや、聞かれても」

 

 慌てて否定しかけてから、急に首をかしげて悩み始める深山先輩。周囲からの評価である「完璧な優等生」とは懸け離れた立ち居振る舞いに頭痛を感じさせられながら。

 それでも私は言うべきことは言っておくことを忘れたりはいたしません。

 

「とゆーか、恋人じゃないです。昨日はそちらから一方的に言ってきた後、返事するいとまも与えてくれずに猛スピードで帰宅されていったでしょう、貴女」

「う゛」

 

 痛いところを突かれた、と言いたそうな表情をされて黙り込んだ深山先輩は深々とため息をつくと、長い黒髪の毛先を指でいじりながらばつが悪そうに返事をなされます。

 

「・・・仕方なかったんだよ、あれは・・・。自分から告白なんて生まれて初めての経験だったし、いつも自分がされる方の側だったしで勝手が分からないうえに混乱してたし・・・。

 そう! だからあれは不可抗力!!」

「普通に事故起こした加害者の言い分のようにしか感じられないんですけどね・・・」

 

 最後ら辺で元気を取り戻した先輩と真逆に、後半のを聞かされてゲンナリする私。

 実に対照的な組み合わせですね。もし付き合うようなことになったら、さぞかしバランスの悪いカップルになることでしょう。

 おめでとうございます、お幸せに~(遠回しな「相手は自分じゃない」アピール中です)

 

 

 ・・・あの後、先輩は告白して右手を差し出してきておきながら、私があまりの事態にフリーズして答えを返せないでいると。

 

『う、うう、ううううううううぅぅぅっっ・・・・・・!!』

 

 と、うなり声を上げていくとともに身体全体を紅潮させて、結局最後は答えを待たずにお一人だけで全力逃走。残された私は昨日一晩モヤモヤしながらベッドに入ってなくてはならないという拷問を満喫させられたと言うわけです。

 

 

「大丈夫! 今日はもう心の準備を済ませてきたから。場所がどこで、誰に聞かれてようとも受け止める覚悟は出来てるの!!」

「・・・私の方は衆人環視の中で同性愛の告白に返事する覚悟も準備も出来てないんですけどねぇ・・・」

 

 つか、昨日自分が告白してきたときは誰もいない校舎裏で、告白の答えを要求してきた場所が大勢の人でごった返す校門前って卑怯じゃないの? これで正直に断れる人間もそう多くはないと思いますよ?

 

「改めて言います。・・・一年生の新入生、異住セレニアさん。貴女のことが好きです。大好きです。だからお付き合いを前提としたいけど、まずは友達からお願いします」

 

 ぺこりと頭を下げながらお願いされたのは、意外にもごく普通のお願い事(後半だけはですけどね?)昨日の今日で告白が友達願いに転科した理由が気になりました。

 

 だから聞きます。

 

「・・・意外と謙虚なんですね。昨日のアレでアレだった人と同一人物とは思えませんよ」

「アレって何!? 私、初恋の人からどんな風に思われる初対面だったのかな!?」

「それは置いておくとして、とりあえず理由を聞かせてもらえませんでしょうか? 昨日の今日で変心した理由についてご説明頂かなければ信用できません」

 

 冷たく切り捨てて言い切る私。告白に対するお返事中に『変心』という表現を用いるのは珍しいんだろうなーとは自分でも思うのですが、アッサリと手の平返す人はすぐまた裏切るのが定番ですのでね?

 恋愛云々は別としても、相手の人物評価を定める上では重要なポイントなので疎かにする訳にはいかんのですよ。実際のところ。

 

「・・・実は昨日、あなたに告白してから恥ずかしくなって家に逃げ帰って、部屋にこもって晩ご飯に呼ばれても出て行かないままずっと悩んでたの・・・・・・本当に言っちゃっても良かったのかな、って・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「それで・・・・・・じつは・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・振られるの怖くなっちゃったから安全策をとる方針に変更することにしました。だって、初恋が失恋で終わるとか嫌すぎるから・・・・・・」

 

 台無しだ! 色々な面で自分がお膳立てした雰囲気、自分で台無しにしましたよこの人は!

 

「その程度の想いと覚悟だったなら、言わなきゃ良かったじゃないですか告白なんて・・・」

「ううぅぅ・・・だって、気づいたら体が勝手に動いて、口をついて出ちゃってたんだもん・・・仕方ないじゃない・・・。なんて言うかこう―――脊髄反射的に相手を求めちゃった感じで?」

「本能で同性の後輩を求めるのはやめてください」

 

 変態ですか? この人は・・・。

 ・・・いや、普通に変態さんなのか。今の会話を聞くだけでも完全すぎるほどの立派な変態さん確定してましたね、確実に。

 

「そもそも、なんで私なんです? 貴女、生徒会長で評判よろしいのでしょう? わざわざ会って間もない新入生のチビを相手に緊張しながら告白しなきゃならなくなるほど相手に困っている訳でもないでしょうに・・・」

「うーん、そう言う面では君は確かにお子様なオチビちゃんなのかもしれないねぇ~」

 

 なにやら含みのある言い方に、反感ではなく興味を覚え、私は相手の面白そうにしている顔を凝視して見返しました。

 相手の方は最初から私のことをまっすぐ見ていて、噛んで含めるように、もしくは自分が噛み締めるかのような口調で、自分たち以外には重要な部分は聞こえないよう注意しながらシッカリとした意思と想いを込めて、私との出会いの馴れ初めを語り出すのです。

 

 

「・・・入学式の時、在校生代表として壇上に立った私の目には新入生の皆が見えていた。

 ある人は将来の不安に怯えていて、別の人は期待に胸を膨らませていて、隣の子からは夢とか希望とかが満ちあふれた思いを感じて心楽しくさせられた。

 ――でも、その中で一人だけ別の色をまとっている子が混ざってた。空虚な瞳で何を考えてるのかサッパリ分からなくて、他の子たちのような光と影が見ただけだとまったく判別できない雰囲気をまとってた」

 

「気づいたら、その子が何を思っているのか興味を持ってる自分がいた。挨拶をしながら言ってる内容と無関係なその子のことについて考えている自分がいた。気づいたときには、その子のことで頭がいっぱいになってる自分がいた。今まで見たことのない自分自身を私は新発見してた」

 

「最初は恋なんかであるはずないと思った。脳の錯覚、ギャップ萌え、今まで会ったことないタイプの子と出会ったから特別視したいだけ。色々な理屈で説明は付けられた。その程度の感情に過ぎなかった。

 ――でも、どの理屈で納得しても、貴女のことを考えてしまう結果自体は変化しなかった。気になるままだった。考え続けるままだった。

 こんなにグダグダ考え続けて答えだけいっぱいに出ても何の解決にもならないなら、理屈とかどうでも良いことにして『もう恋でいいんじゃないのかな?』って想えるぐらいには思い煩うようになっちゃってました。・・・それが理由です。納得できたかな? セレニアちゃん」

 

 相手の長広舌を聞き終えた私の方でも空を見上げて思索に耽り、古今東西さまざまな恋愛物語で言われてたような恋愛理論を思い出し、頭の中で今の言葉と結びつけてみて出した結論は。

 

 

「・・・・・・正直、サッパリなのですが・・・」

「だろうねぇ~」

 

 理解不能。その一言だけという相手の要請全否定な私からの答えに対して、深山先輩は微苦笑を返しながら軽く笑い飛ばされて、小走りに近寄ってきて私の隣に並び立つのです。

 

「ま、ゆっくりと理解していってくれるよう努力し続けてくれると嬉しいかな?

 ――それよりも、最初の質問に対するお答えは? 友達になりましょうへのお返事。

 Yes or NO?」

「はぁ・・・試みに問うのですけど『友達だと誤解されたくないのでお断りしたいのですが?』って答えてみた場合は、どうなるのか教えて頂けませんでしょうか?」

「物理的には何も。ただ、これから高校三年間の生活がかなり息苦しいものになるかもしれないわね。私ってこれでも告白してきてくれた子が多いから、その逆のパターンで振った新入生の女の子なんかがいるって聞かされた日には何するか分からないし、人の口には戸を立てられないし。それぐらいだったら友達という部分だけでも既成事実化して身を守る障壁代わりに利用した方がお得だと思うよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・Yesで・・・・・・」

「毎度あり~♪」

 

 「ニコッ」っと言うよりかは「ニカッ」って感じの擬音が似合いそうな笑顔を浮かべられると生徒会長さん―――深山先輩は私の前に出てきて、片手を差し出してこられました。

 

 

「それじゃあ、これからよろしくねセレニアさん。私はいつでも貴女に受け入れてもらえる心の準備は出来てるから、覚悟しておいてね?

 後は貴女の胸先一つでいいとこのお嬢様が一人セレニアさんの色で染まりきる可能性大なんだから」

 

 

 もの凄い脅迫のような告白をされて、私の恋物語一日目のプロローグが終わりを迎え、二日目からの本編がスタートします。させられてしまいます。

 

 ――桜の木がない並木道で、桜色した私と彼女の間違いだらけな恋愛ストーリーはこうして始まる。


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