無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~   作:虎上 神依

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Chapter2-6 双剣士、ギルドに舐められる

 一応字は書けるので、俺は自分でハンター登録に必要な情報を書き綴っていった。

 名前、性別までスラスラと記入し、ついにその項目がやってくる。別に無職がハンターになることは違反事項ではない、しかし嫌な顔をされることは間違いないだろう。

 だが――俺は恐れること無く職業の欄に『なし』と記入した。

 今の俺は過去のような弱者ではない、堂々と無職無能と言い張った所で何ら問題はないはずだからだ。

 ユニークスキルに関しても敢えて『なし』と書いてやった、持っていないのは事実だし、こうした方が後々の反応が楽しめる。

 

 アイラは俺達から用紙を受け取ると記入された項目を一つずつ目で確認していった。そして――予想通り俺の紙で手が止まる。

 

「……、ゼルファさんは――無職無能なのですか?」

 

 そら来た、絶対来ると思った。

 俺は用意していたかのようにステータス画面を指で滑らせ、頭上のカーソルに職業とユニークスキルの欄を表示してやった。

 

「何か……、問題でも?」

 

「いえ――規則上問題はありません。ですが、死の危険が人一倍高いかと」

 

「……そうですか。ですがコチラにも少々事情がありまして――」

 

「分かりました」

 

 彼女は俺の事を憐れんだような目で見るなり書類を整理し始めた。

 あっ、もうこれ完全に舐められましたね。これだから差別する人間は……。

 大方――すぐに死んじゃうんだろうなぁ、とか思ってんだろ? 分かってるんだからな。

 女性相手だが過去の苦痛が頭に浮かび、ぶん殴りたい衝動にかられながらも俺は自然を保ちつつアンナの話に耳を傾ける。

 

「では、ウルナさん、ゼルファさん。これからハンター証明書を発行するにあたってテストを行います。言わば、初期段階におけるハンターランクを測るテストですね、魔法型と武術型、二通りのテストがございますがどちらを希望しますか?」

 

 ほぉ、まさかのテストスタートとはギルドも中々便利になったものだな。師匠に聞かされていた話によるとテストの様な物は存在しないとか言っていたし。

 やはり時代に連れて変わるものなのだなぁ……。

 

「私は魔法型で……」

 

「んじゃ俺も」

 

 というか別にどちらでもいいんだが……

 

「予めお伝えして置きますが、このテストは悪く言えば加入試験みたいな物です。基本この試験に落ちるものはいませんが万が一・・・、今後の成長、功績が見込めないと判断した場合は証明書発行を許可できない場合がございますのでご了承下さい」

 

 へぇ……、なるほど、無能をギルドに入れないシステムですか。

 こんなに堂々とレベル999の異端者――自分で言うのもなんだが――に喧嘩を売ってくるとは貴方も中々ですねぇ。

 無論、その喧嘩買わせてもらう、その目にものを見せてやるよ。

 

 そしてアイラは別の職員とバトンタッチをし、俺らはその職員に「こちらです」と促されるままにギルドの奥に通され、何やら訓練場の様な場所に連れてこられる。

 

 そこにはかつて本を読んだ時に出てきた『射撃場』を連想するような構造で、部屋の奥には金属で出来た丸い大きな的のような物が用意されている。

 もう、だいたい把握できたな。あの的に向かって魔法を発動すればいいのだろう。

 だが……、あの的見た目からして脆そうだな。壊れないかとても心配だね。

 

「ではあちらに立って頂いて、あの的をめがけて魔法を3回撃ってください。必ずしも真ん中に当てなくてもいいですが、精度が高いほうが高ランクになりやすいですね。また、3回とも届かないとなると申し訳ありませんが、不合格となります」

 

 あっ、なるほど。つまりあのアイラさんっていう受付嬢は俺の魔法があの的に届かないだろうと言いたかったわけですね。

 あの距離5メートルしかない的に当たらないってか? ふざけんなやッ! あれぐらい目を瞑って横になりながらでも普通に届くわ。

 

 まず最初にウルナが指示された位置に立つ。

 

「では、どんな魔法でもいいのであの的を攻撃して下さい」

 

「わ、分かりましたっ!」

 

 職員の指示に従い、ウルナは魔法の詠唱を始めた。

 そして威力を弱めにした直径30センチ程の火球を的に向けた放つ。火球は少しもブレること無く的の中心に命中した。

 どうせなら邪魔法でやって欲しかったが彼女自身、嫌がられることを怖がっていたので仕方ないだろう。

 

 その後もウルナは詠唱を2回繰り返し、的の中心に火球を当てた。

 3回とも中心に命中――自他共認める完璧な結果だ。

 

「素晴らしいですね! 流石は大賢者様です、今後の活躍に期待できますね。では次――ゼルファさん……、お願いします」

 

 なんで憐れんだような目で俺を見るかなぁ……。俺そんなに可哀想に見えますかねぇ。

 

 俺は指示された位置に立ち、構える。

 問題なく当たるは当たるのだが――初っ端から的を壊したらなんか因縁つけられそうだな。じゃあ、まずはギリギリ程度でいくか。

 

 精神を集中させ右掌を的に向け俺は魔法を――放った。

 

 

 ――超小さい火の球を。

 

 

 

「はぇ……?」

 

 ――あっ、やべ。手加減しようと思ったら手加減しすぎたぁ!!

 

 だがその小さい火の球は問題なく、的のど真ん中に当たり消滅する。

 一応――条件は満たしているよな。ならこれでいいか。

 

「あ……、当たりましたね。見事です」

 

 職員は驚いた表情を見せながら頷いた。そして手に持っているノートに何かを書き始める。俺のテストの結果を計算しているだろうか。

 いや……、でもこれで通るのなら敢えて能ある鷹は爪を隠すの原理でいいんじゃないのか? 俺にとっては逆に的を壊さないほうが難しそうだし。

 

 

 ――と思ったその時だった。

 

 

 

「ちょっと、ゼルさんッ!!」

 

「は、はいっ!? こ、こんな時になんでございましょうか……?」

 

 恐る恐る後ろを見るとそこには腰に手を当ててかなり怒っているウルナがいた。彼女の怒号に職員も驚いてコチラを見ている。

 

「なんで本気出さないんですか!?」

 

「は、はあ?」

 

「なぜ本気をださなかったのかと聞いているんです!!」

 

「えっ、だって……、ねえ。的壊したらマズいかと――」

 

「ねぇ、勿論別に的を壊しても問題ないですよね?」

 

 ウルナは怒りの勢いを殺さぬまま職員にまで食い掛かる。

 

「え、えーと、はい。別に問題は無いと思いますが……」

 

「ほら、今の聞いたでしょ? だから本気出しなさいよっ!」

 

「……ああもう分かったよ、言っておくけどどうなっても知らないからなッ!!」

 

 言いながら俺は再び指定された位置に立ち、構える。

 集中力を高めながら静かに横を見やると、先程まで憐れんで俺を見ていた職員の瞳に少し怪訝さが入り交じっていた。

 当初の予定じゃ、一発目弱くして職員を油断させた所で次の強めの一発で的破壊して一気にどん底に落とすつもりでいたが――本気を出せと怒られたのなら仕方ないな。

 ウルナの望みどおり、本気で目にものを見せてやるよぉ!!

 これが――秘技熱血開放術じゃあ!!

 

 

 

「――『オーバーテンション』」

 

 

 

 全身に力を込めた俺は心底に眠っている力を解放した。

 地面に直径4メートルにも及ぶ魔法陣が描かれていき、俺の体は紫色の光で包まれる。

 刹那――凄まじい爆風が俺を中心として巻き起こり、訓練場愚かギルド全体をも揺るがす様な衝撃波を発した。

 

「ひっ、えっ、えぇっ!? きゃっ……!」

 

「ちょっ、ゼル……、さんっ!?」

 

 二人の悲鳴を無視しつつ俺は目の前にある的に再び右掌を向け、溢れんばかりの魔力を使って魔法を構築し始める。

 

「……所でお二人さん、そんな所にいたら――余波で大怪我しますよ?」

 

「ひゃいっ!? は、はいぃっ!」

 

「はい……? も、もうっ! 貴方に中間は無いの!?」

 

 ――中間って、本気を出せと言ったのはお前だろうがよ。

 俺は二人が怯えた表情を浮かべながらも範囲外に待避したのを見計らって手に集まった膨大な魔力を開放する。

 

 

「見せてやるよ、火魔法の真髄ってやつをなぁ!!」

 

 

 空気中の魔素の流れが一瞬にして変わり俺の前に飛んでもなく大きく複雑な魔法陣が現れる。

 次の瞬間――魔法陣は高速回転を始め、中心に魔力を集めていった。

 中央に鎮座する赤色の魔力の塊は徐々に凝縮されていき、火花をちらつかせていた。

 

 

「フレイム……ショットオォォ――ッ!!」

 

 

 俺が叫ぶのと同時に魔法陣の中央に鎮座する魔力は――火の原型を持たず、純粋な赤いエネルギーの塊となって照射された。

 レーザービームの如く放たれた俺の魔法は極光で辺りを眩しく照らしながら――的を破壊。

 いや、的だけではなかった。俺の右掌から放たれた魔力の射線上にある物はほぼ全て破壊された。

 無論、訓練場の奥には民家など建造物が石塀以外ない事を確かめた上での行為だ。問題ないだろう。

 

 

 刹那――爆炎が舞い上がると共に轟音が鳴り響き、人が立っていられるか怪しいほどの地震を起こした。爆風で髪は一瞬にして乱れ、壁の破片が俺の顔の横を音速と同じぐらいのスピードで通過していく。

 

 

「ふぅー、スッキリしたー」

 

 

 余波が収まった後手をパンパンと叩きながら後ろを見た。

 するとそこには驚愕の表情だけを浮かべて石化している人の姿が二人ほど見受けられたのだった。

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