無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~ 作:虎上 神依
「あれ……、二人共どうしたの?」
腰を抜かして、驚愕の表情を浮かべながら石化しているウルナと職員を見かねて声をかける。
「あ、あぁ……、もう無理……」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
持っていたであろう両手杖を手放し、上の空を見ているような放心状態のウルナ。
職員に至っては何故か「ごめんなさい」を幾度も連呼している情緒不安定な極めて危険な状態となっていた。
「レイア、今物凄い轟音が聞こえ――な、なんじゃこりゃあ!!」
音を聞きつけた他のギルド職員が一体何の騒ぎかと訓練場に駆け込んできて――訓練場を始点としてできた放物線状のクレーターを見て腰を抜かす。
本気を出せと言われたから火魔法の究極奥義――魔力を数十倍にも凝縮してレーザーの如く放つというフレイムショットを補正なしで撃ったのだが、予想以上の被害だなこれは……。ギルドが円形であるこの街の端の方だったのが幸いだけど。
訓練場に設置した的は勿論、ファスタットの石塀も貫通して、奥の森も一瞬で焼き払っちゃったみたいだし……。
俺は直ぐ様ステータス画面を捜査して討伐リスト――自分が倒した魔獣などを自動記載するもの――を確認する、どうやら人までは殺していないようだな。
一応念入りに確認し、大丈夫という確証ありでやったんだけどね――余裕で魔力感知範囲外まで到達しちゃったよ。今度から気をつけるとしよう。
「……これは、君がやったのかね?」
「あ、はい」
不意に後ろからごっつい男に声を掛けられ考える間もなく即答する。
「おっと、申し遅れましたが私はガンガス。このギルドの長を担っているものであります」
その男は見かけによらず丁寧な態度で頭を下げてきたので俺も出来るだけ礼儀正しく頭を下げておく。
「あー、そのー、なんかごめんなさいっ! やり過ぎちゃいましたっ! 直ぐに直しますんで!」
流石にこの訓練場含め、射線上に出来た巨大なクレーターは地面の一部が蒸発して溶けていたり、ガラス状になっていたりと悲惨すぎる事になっているため、俺は出来る範囲で修繕魔法を起動させ、元通りにする。
「も、元に戻った……」
ガンガスは呆れたような顔をしてその一部始終を見つめていた。別に余計なことはしていないと思うのだが、何か変なことしただろうか。
「あいつ何者なんだよっ!? 一体、どうなってるんだ?」
「わ、私……幻覚見てるのかなぁ?」
「コホンッ! えー、職員の皆さんは各自仕事に戻って下さい! また、今の轟音についてハンター達にも随時説明しておくように!」
見物に来たギルド職員を解散すべく、ガンガスは咳き込んだ後、威厳のある野太い声を出した。
そして――騒然としていた場から人はいなくなり、俺とウルナ、元いた職員――レイアというらしい――、ガンガスの4人だけとなる。
なんかお騒がせして申し訳ございませんねぇ。
「所で、レイアさん、ガンガスさん。今のでギルド加入試験は合格ですよね」
「あ、え、えーと……」
困っているレイアをガンガスは制すと落ち着いた表情で前に出てくる。
……、あっこれ、また因縁つけられるパターンか?
「無論合格だッ!! 君のような天才を採用しないわけがなかろう!!」
ガンガスは目を輝かせながら俺の両肩にガシッと掴むと力強く言った。
「的を破壊、いやそれ以上にあの反魔法が張られている対魔獣用の石塀まで破壊したのだ。これは今までにない逸材だ、素晴らしいっ!!」
「で、ですがガンガスさん……、彼は一体どうやって今の魔法を?」
「ああん? そんなの彼の職業が凄いか、はたまたユニークスキルが――」
「彼は――無職無能ですよ」
「はあ!?」
ガンガスは驚いた表情で俺を見つめてきた。
止めて……、そんな近距離で俺の事を見つめないで下さい。
「ほ、本当なのかね……?」
「はい、無職無能ですよ。――レベル999のね」
軽快な指さばきでステータス画面を操作するとカーソルに今まで表示していた職業とユニークスキルに加えてレベルも表示させてやる。
その見たこともない異常な数値を目にした、レイアとガンガスは石化するのであった。
「まさかこんな実力を持った存在がいたとはな……、恐ろしい奴もいたもんだ」
「いやいや、恐れ多い限りですねぇ」
俺は口では謙遜しながらも心の中では「ほれ見たか、ざまあみろぉ!」と歓声を上げていた。
「ですがこんな事が本当にあり得るのですか!? そのレベルって今のSSSランク5人衆を遥かに凌駕しているじゃないですか! 大体、レベルをカンストした事例なんて過去に一度も……」
「だが、ステータスカーソルがそのあり得ない真実をしっかりと物語っているだろう? 幾ら我々が疑った所で現実は変わらんよ」
「もしかしたらステータスを偽装するユニークスキルなんじゃ――」
「それはあり得ないね」
比較的冷静な口調で俺はレイアの言葉を否定した。
「な、なぜです!?」
「ステータスは神に創られし絶対なるシステムだ、それを偽装する手段など存在するわけがないだろ? いや、偽装する魔獣なら一種類だけ知っている。だが、それは本来ステータスカーソルを持たない魔獣が自身に偽装したステータスカーソルをつけるという類の物で、かつその偽装したステータスカーソルはこの世に存在するものから写し取ったもので無ければならないんだよ」
「で、でもっ!」
「もう止せ、レイア。大体君は間近で見たのだろう? 彼が石塀ごと、この訓練場を破壊する所を。それが動かぬ証拠だ。ともかく、君は仕事に戻っていてくれ、俺はこの有望な子達と話をしたいと思う」
そんなこんなで、波乱のギルド加入試験は無事終了し、俺とウルナはギルド長室へと連れて行かれることになった。
一体、何を言われるのだろうか。
「さてと……、では早速本題に入ろうか」
ガンガスは腕を組みながら俺とウルナを交互に見やる。
「……ウルナさんだったかな? 君は先程の試験で過去に事例のないほどの素晴らしい結果を残した、よって初心者では異例のCランクスタートだ」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます」
「良かったじゃねぇか、ウルナ」
「はい! これからこのギルドに貢献できるように頑張りたいと思いますっ!」
ウルナは満足そうな表情でガンガスに何度もお礼を言った。
だが――それぐらいの事であればカウンターの受付嬢でも対応出来るだろう。
もう思い当たりがあり過ぎて困るぐらいなのだが……、この流れ上呼び出されたのは明らかに俺が原因だな。
「さて……、問題はゼルファさんの方だが……」
ガンガスは困ったように手を組みながら唸り声を上げた。
「もし、ランク的に評価するのであればこの場合どうなんですか?」
「あぁ。現在人族最強のハンターが『大勇者』のサイ、レベル352だ。そのサイのレベルの3倍もあるのだから、君は今後数年以内で間違いなくSSSランクトップまで上り詰めるだろうな。それに先程の試験で放った魔法の威力からしてもSランクは既に凌駕している、だからここは人族ギルド協会に連絡して超異例のSSランクスタート――」
「SSランクスタート!? す、凄すぎる……」
ウルナが可愛らしく口に手を当てながら驚き、隣に立つ俺を見てくる。
……確かにSSランクスタートも悪くないけど、でもそれ以上に一緒に旅しているウルナに申し訳ないな。
「だったら面倒なんで、ウルナと同じランクからでお願いしますわ」
「「えっ!?」」
……何だ何だ? そんな驚くことでもなかろうに。
どうせSSSまで上がるって分かってるんだったら、ウルナと一緒に上がりたいって思うのはフツーだろうが。
「だ、だが君の実力は」
「んな事どーでもいいんだよ。それにこっちとしては自分が弱く見えた方が無職無能っぽくて好都合なんで」
「……それってただ単に見下す人をぶっ飛ばしたいだけですよね?」
「いやぁ? それ以外にも理由はあるけど……」
だがこの場で言うのはどうも気恥ずかしいからなぁ……、敢えて伏せておくことにしよう。
「分かりました、何か事情があるのでしょう。では――今日から貴方達をCランクハンターとして認めます。これからも世界の平和の為精進して下さい!」
「「はい!!」」
世界平和か、人族と魔族が対立している以上そんな物は一生来ないと思うんですけどね。