無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~   作:虎上 神依

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Chapter2-8 双剣士、素材を売る

 受付嬢のアイラがハンター証明書を作成し、カウンターの奥の部屋から戻ってくるまでは然程時間は掛からなかった。

 そして俺達はアイラからありきたりな証明書とありきたりなバッジを貰った。バッジにはCとだけ書かれている。

 取り敢えず、目立つと俺の都合上面倒なのでマントを外して、戦闘服であるシャツの裾部分にでも付けておく。

 

「これで晴れて冒険者ですね!」

 

「あぁ、そうだな」

 

 嬉しそうに跳ねているウルナと話しているとアイラが申し訳なかったと言わんばかりに頭を下げてきた。

 

「この度、非礼なる振る舞いをお詫びさせて頂きます!」

 

「あ? アイラさんなんかしたか?」

 

「あっ、えっと……、その、実――」

 

「別にアイラさんは何もやっていないから謝る必要無いと思うぞ」

 

 大方、先程の轟音が俺のだと分かったから怖気づいたのだろう。

 本来なら「許すかバーカァーッ!」とか言っている所だがその美しい容貌に免じて許すとしますか、心の中でね。

 

「まっ、無職の扱いなんてこんなもんさ。だが――世の中例外もいることは知っておけよ。例えば、世間から見放されたが故に復讐心だけで成り上がった奴とかね」

 

「は、はいっ!」

 

 アイラは声を強張らせながら何度も頷いてきた。流石にこれ以上虐めるのは可哀想だからここらで止めておくとしよう。

 

「だがちょっと訓練場吹っ飛ばすのはやり過ぎたな、本当に申し訳ない」

 

「本当ですよ……、ゼルさんは手加減という言葉を知らないんですか?」

 

「お前が本気出せって言ったんだろーがよ」

 

「あ、あれは……、ゼルさんが弱い人だって思われるのが……、嫌だったから……」

 

 あ? 俺が弱い人だって?

 そんな事、別に本気を出さなくとも証明できるぞ。元々から的は跡形もなく破壊する予定だったし。

 

「と、とにかくっ! これからは気をつけて下さい!」

 

「はいはい、分かりましたよ」

 

 本気を出せやら、手加減しろやらよく分からない奴だな、ちょっと理不尽すぎやしないかそれ。

 それならどれ位の威力の魔法を撃って欲しいのかもう少しハッキリと教えて欲しいね。

 

「そう言えばアイラさん、ここでは素材の買い取りも承ってくれるのか?」

 

「はいっ、勿論構いませんよ」

 

 アイラの対応が先程までと違って明らかに軽くなっていることを噛み締めながら俺は空間魔法による収納から一つの魔石と水晶を取り出した。

 その瞬間、ウルナとアイラは勿論後ろに並んでいた冒険者達の視線が魔石に集まって……。

 

 

 

「「「……はぁ?」」」

 

 

 

 ギルドの空気が一変し、凍りついてしまった。

 

「ちょっと待って下さい。それ何ですか?」

 

「何って、魔石だよ。見たら分かるだろ?」

 

「えっとぉ……、ゼルさん? す、すごく大きいですけどその石が魔石だと? 確かに魔石っぽいですけど」

 

「あのな、魔石っぽいもなにも正真正銘の魔石だぞ」

 

 俺は石ころでも投げる感覚でその直径50センチ程の魔石をアイラに渡す。

 

「で、ですがこんな大きさは……」

 

「キラーシャドゥパンサーズの変異体の魔石だ。中々大きいだろ」

 

「中々大きい? 『中々』って言葉の意味間違っていませんかねぇゼルさん?」

 

いや……、別に間違ってはいないと思うが。

仮に俺でも驚くほど大きい魔石があったとして、それを俺がみすみす売り払うとでも?

 

「……そもそも一体どこから出したんです?」

 

「空間魔法だ」

 

「も、もう一度お願いでしますか?」

 

 俺の返答を聞いて、顔を引きつらせながらアイラが再度質問する。

 

「空間魔法だ」

 

 平然とした俺の返答に遂にアイラは頭を抱え始めた。

 

「空間魔法……? あれって神話の魔法じゃ……、百歩譲ってウルナさんが身につけているような次元袋なら分かりますが、空間魔法って――」

 

「次元袋……、なにそれ?」

 

「ゼルさん知らないんですか!? これですよ、見た目はコンパクトですが中は次元が歪んでいて沢山の物を入れられるんです。限度はありますが」

 

「はっ、物の大きさによってMPの最大値を一時消費し、異次元に収納できる空間魔法の方が圧倒的に便利だな」

 

「そ、そうですねぇ! それを使える人間がまず貴方しか存在しないと思いますけどぉ!」

 

 ウルナは眉をピクピクさせながら愛想笑いを浮かべて言った。

 空間魔法を使える人間が俺だけ? まさか、そんな訳無いだろ。冗談も程々にしやがれ。

 

「ちょ、ちょっとお預かりしても宜しいでしょうか? 直ぐに調べるので……」

 

「あ、ちょっと待って。この水晶も売りたいんだけど」

 

「す、水晶ですか……?」

 

 俺はアンナにとても綺麗な紫色の大きさ10センチ程の水晶を差し出す、それは不思議な色合いで奇妙なオーラを放ちつつも宝石と同様の輝きを放っていた。

 よくよく見ると水晶の中には幾多の歯車の様な物が描かれていて、よりミステリアスさを引き立てている。

 

「うわぁ~、きれ~いっ!」

 

「す、凄えっ! こんな水晶見るの初めてだ!」

 

「一体こんなのどこで見つけてきたんだ?」

 

 ウルナを初めとし、並んでいた冒険者までもがその綺麗な水晶を一目見ようと覗き込んできた。

 因みにこの綺麗な紫水晶は、やろうとすればいつでも採取できるという代物だ。……ちょっと荒っぽい手段を使わなければいけないがな。

 

「こ、この水晶は一体……?」

 

「コイツはだな、次元龍の背びれについている時空に関するある物質が結晶化したものだ、名を『時の結晶石』と言う」

 

 

 

「「「……はぁ?」」」

 

 

 

 ようやく溶けてきたと思われたギルドの空気が再び凍りつく。

 

「えーとですね、次元龍って伝説の魔獣と呼ばれたあの?」

 

「そうだぞ」

 

「そ、そのですね、幾ら何でもそれは信じられないのですが……」

 

「別に信じなくてもいいよ、鑑定してもらうだけで十分だから」

 

「そうですか、分かりました。ではお預かりさせて頂きますね」

 

 言い終えるとアイラは魔石と水晶を持って小走りでカウンターの奥の部屋へと入っていった。

 

「ゼルさん……、幾ら何でも嘘はいけないかと」

 

「お前まで信じてないのかよっ! 全く、そんな事言うなら次元龍ここに召喚して――」

 

「それだけは止めて下さいお願いします」

 

 咄嗟に次元龍を召喚しようとした俺をウルナが懇願するかのように止めに掛かる。

 何だよ、どうせだから証言させてやろうと思ったのに……。

 だが、彼女の言うとおりあの伝説の魔獣の中で一番訳の分からないアイツ、召喚したら事態の収拾がつかないようなややこしい展開になりそうだな。

 いや待てよ、それなら武力行使で秒殺した後に脅して従わせれば――

 

「素材の鑑定終わりましたぁ!」

 

 そこに魔石と水晶を大事そうに抱えたアイラが小走りで戻ってくる。

 

「魔石はサイズ、純度共に最高レベル。よって鑑定金額は500万エンドです……、また水晶に関しては成分がどの様な宝石系素材とも合致しませんでしたので即ち未確認鉱石であることが判明……、この場では値段のつけようが無いので後日、研究者らにお渡しし再度じっくりと鑑定した後に競売にかけられる事になりました。よって結果が出次第、ハンター銀行に振り込みたいと思います」

 

 そのアイラの言葉を側で聞いていた冒険者達は驚きの余り、目を見開き、顎が外れそうな程あんぐりと口を開けていた。

 

「え、えぇっ!? 本当ですかアイラさんっ!?」

 

「はい……、今までに持ち込まれた事のないサイズだと、ギルド長も――」

 

「なるほど……、このギルドには銀行システムもあるのか、驚いたな」

 

「驚くところそこじゃなくない!?」

 

 そんな騒ぎを経ながらも俺達は何とか初めての素材の売却を終える。

 初っ端から金貨5枚分のお金が手に入るとは思わなかったが、これで数ヶ月分の生活は心配しなくとも良さそうだ。

 ふぅ、財産難で冒険者人生『エンド』にならなくてよかった、よかった。

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