無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~   作:虎上 神依

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Chapter2-12 夜のお楽しみ(?)

「だぁーっ! 疲れたぁ! 初日から何でこんな疲れんだよコンチクショーッ!!」

 

「仕方ないじゃない、樹海から抜け出してファスタット来て、ハンター登録して、あのクズ野郎をボコボコにしたんですから」

 

 あの後、俺は死にかけていたザーラを治療してやって決闘を終えた。

 ザーラは傷が治って俺を見た瞬間怯え、どこかの誰かさんのように「ごめんなさい」を連呼していた。

 あそこまで力の大差を見せつけてやったのだ、怯えたって致し方あるまい。だが今後二度と無職や無能を差別してくれるなと深く釘を刺しておいたがな。

 そして決闘を見て感動した色々な冒険者に囲まれそうになった所を一気に掻い潜って、ウルナとともに初の依頼を受けた後、ギルドを逃げ出してきたのだった。

 本当であれば――カゲヨさん辺りと話をしてみたかったのだが、それ以前に「力の秘訣を教えてくれぇ!」って冒険者が我こそはと襲い掛かってきたのでウルナを抱えながら『スプリントラッシュ』で逃げてやった。

 本当に『スプリントラッシュ』は使い心地のいいスキルだ、本来なら戦闘スキルなのにもはや生活スキルと化している。

 

 因みにまだ依頼の方はこなしていない、が内容からして大したことは無さそうだ。明日、朝早くちゃちゃっと終わらせて次の依頼に移るとしよう。

 

 それで俺らは夜ご飯を適当な場所で済ませ、適当な宿屋を取って、今に至るという訳だ。

 部屋の中は一般的な宿と言ってよいくらいの設備でまあまあ充実していた。

 何とか二人部屋は取れたが、流石に二部屋までは取れなかった。つまり俺とウルナは同じ部屋で過ごすことになる。ベッドは幸い二つに別れているが、だからと言って許させる行為ではないだろう。

 

「はぁ、それにしても何で二人部屋……」

 

「仕方ないじゃないですか、空いていなかったんですから……。こんな美少女と泊まれるんだからラッキーって思ってしまえば気が楽になりますよ」

 

「自分で美少女とかいうなや……」

 

「それにゼルさんの話によれば今朝だって同じ部屋で――」

 

「あれは看病しててつい寝ちゃっただけだ! ノーカウントだろ、ノーカウント! 全く、年頃の女子と同じ部屋って色々と問題ありまくりだろ……」

 

「あれ……? まさか、ゼルさんそんなハレンチな事考えてたんですか!? エッチッ! 変態ッ! 人でなしッ!」

 

 ウルナがニヤニヤと笑いながら煽るかのように枕を俺に投げつけてきた。俺はそれを仏頂面のまま片手でキャッチするや否やシレッと投げ返してやる。

 

「意味がわからないことを言うな。そんな事期待するわけがなかろう」

 

「そんな事言って……、本当は期待してるんでしょ?」

 

「期待してない」

 

「してるー、絶対してるーっ!」

 

「うっせ、そんな事考えられるかっての」

 

 増してやこんな美少女とあんな事やこんな事――考えるだけでも恐れ多いわ。

 というかこういう時って大抵女性の方が緊張するはずなのに大の男である俺が物凄い緊張している。なんか情けなくない?

 とりあえず、緊張の原因はウルナが美少女だからって事にしておこう。うん、そうしよう。

 結論、俺はなにも悪くない。

 

「でも久しぶりにスカッとしましたねぇ! この爽快感やみつきになりそうです!」

 

「だろ? あのザーラの引きつった顔はマジで笑えた。いやぁ、あそこまでボコし甲斐のある奴は中々いねぇよな」

 

「ホント、ホント! それに業火正拳突き――カッコよかったですよー、ガンガスさんやカゲヨさんが『スゲェッ!』って感動してました。私も、惚れそうになっちゃいました……」

 

 

 一人顔を赤らめながら俯いているウルナに対して俺は疑問を抱く。

 あんなカスみたいな技のどこがカッコいいのかと――

 

 

「ん? なに言ってんだ、フレイムショットの方がカッコいいだろ」

 

「――あれは二度と使わないで下さい、本当に……」

 

「わかった、今度はあれの上位互換フレイムバーストで街一つ吹き飛ばしてやる」

 

「マジで、止めて下さい」

 

 うわ、ウルナたんの真顔マジで怖い……。

 だが正直俺もあれは流石にやりすぎたと自覚している。だから今後は誰も居ないかまたは本当に撃たなければいけないかをしっかりと見極めた上で撃つことにしよう。

 あの火魔法究極奥義は――下手したら小さな都市一つ消し飛びかねないからね。

 樹海の中は樹海その物が異常な再生力を持っていたから別に何発撃った所で何も問題は無かったが。

 

 ふと俺は宿の窓の外から覗く月を眺めた。そう、あの時と同じ満月――

 あの地獄絵図の様な悲劇を生んだ夜と同じ月。俺の中の物語が始まった日と同じ月。

 

『超無能が生意気な口聞いてんじゃねぇよ!!』

 

 

『人間風情が調子に乗るな、この世界を支配するのはこの魔族なんだからな!!』

 

 

『魔族は悪! よって人間の敵! 兎に角魔族はひとり残らず殺せぇ!』

 

 

『生意気な口聞きやがって、お前らクソ無職は奴隷が一番お似合いなんだよぉ!!』

 

 

 ――本当に馬鹿らしいんだよね。そういうの。

 結局は皆やっていることは変わらないのだ。だからこそ俺はそいつらが嫌いだ。

 俺を無職無能だからと言って虐げ、ストレス発散の道具としたそいつらが。

 魔族を共通の敵と認識している人間が。

 もしくは人間を共通の敵と認識している魔族が。

 そして人間という枠組みの中でも種族や職業という絶対障壁を使って醜く荒らそう奴らが。

 

 種族や職業なんてどうでもいいって改めて思った。

 無職無能になってみて初めて分かる事、初めて見えてくる世界。

 俺が望むは生きとして生けるもの全てが平和に暮らす世界。

 何にも縛られず、全てが自由となる世界。

 矛盾しているかもしれないが――俺はその為に戦う。

 この腐り切った世界を、縛られた運命を、システムという名の束縛を――ぶっ壊す。そして暗躍する第三の敵も『真実』も――

 

「どうしたの? そんなに月をじ~っと見て……。もしかして考え事?」

 

「ああ、まあな……。」

 

 ウルナに向かって俺は静かに微笑んだ。

 ――あの時、あの場所で出会った、あの少女。その姿と被って俺の鼓動は早くなる。

 彼女もまた同じ無能、俺と同じではないが少なくとも同じ経験をした者なのだ。

 

 その時――俺の感情にあるものが芽生えた。

 

 彼女を守りたい、いや守らなければならない気がした。

 ――彼女との出会いが自分の行路を決める運命であるような気がしたのだ。

 

「所でゼルさん。幾つか聞きたいことがあるんですが……、いいですか?」

 

「質問の内容にもよるけど、別にいいぞ」

 

 ウルナは一息つくと真剣な表情で俺の顔を見つめる、そしてその可愛らしく艶やかな唇を開いた。

 

 

 

「どうやったらゼルさんのような境地までたどり着けるんですか?」

 

 

 

 彼女の顔は真剣その物だった。

 今まで俺の規格外な強さを目にしては呆れているようなウルナが……? 一体どういった風の吹き回しだ?

 

「質問を質問で返すのは悪いと思うがどうしてそれが聞きたいんだ?」

 

「……、私、強くなりたいんです」

 

「ほぉ……」

 

 ウルナは真剣な表情を崩さず続けた。

 

「私は幼い頃――駄目賢者だって皆にバカにされた、バカにされただけじゃない蔑まれもしたわ、邪魔法を習得してもその差別は続けられた。寧ろどんどん酷くなっていって――気づいたら死のうとしてた。崖から転落死しようとしてた。でもそんな時にとある魔族が助けてくれたの――君は死ぬべきじゃないって」

 

「魔族……にか?」

 

「はい、その人は一人暮らしでそこで暫く匿ってもらったいました。ですが……、ある日その魔族は強力な魔獣に襲われて死んでしまいました、未熟な私の前で。――守れなかったんです私はその人を……。だから強く決心したんです私は誰かを守れる位に強くなるって……。その後、私は神父様に引き取られて教会で住み始めたんです。それで――神父様に許可を貰って冒険者になる旅に」

 

「なるほどねぇ」

 

 その真剣な表情からこれは紛れもない彼女の真実の過去であることはピリピリと伝わってきた。

 そう彼女と俺はレベルは違うが、ほぼ同じ人生を歩んできていた。似た者同士だった。

 

「そうか……、よしじゃあ俺も面白い話をしてやるとしよう――」

 

 俺はウルナに俺自身が経験した壮絶な過去を語った、魔族の少女やシステムの穴、俺が師匠に出会うまでの全ての全容を――

 

 

 

 

 

「そっか……、そうだったんだ……。だからゼルさんは」

 

「そうだ。あの出来事が俺の全てを狂わせたと言っても過言ではないな」

 

 あの時――目の前で殺された、あの魔族の少女。彼女の引きつった顔は今でも鮮明に頭のなかにこびりついている。

 

「……似た者同士なんだね、私達」

 

「ふっ、そういうこったな」

 

「でもまさかレベルアップにそんな謎があっただなんて――なんで今まで気づかなかったんでしょう?」

 

「さあな、でも知っていた所で早々やる気にはならないだろうよ。余りにも過酷すぎて――」

 

「そうですね……、『努力』で強くなったって意味はようやく分かった気がします」

 

「その名の通り死ぬ位まで努力したよ」

 

 何というか、不思議な感覚だな。

 まだ会ってから一日しか経っていないというのにここまで打ち解けあえるなんて――やはり運命には抗えないのかな。

 

「よしじゃあ、明日から誠心誠意と燃え上がる熱血パワーを持って俺の力の秘密とやらを伝授してやろう。そんでもって強くなれるよう特訓してやるよ」

 

「ほ、本当ですか!? ゼルさんの熱血指導……き、厳しそうだけど頑張りますね!」

 

「はっ、どんと任せやがれ。直ぐにでもSSSにしてフレイムショット撃たせてやるからな」

 

「――それは伝授しなくて構いません」

 

 やはりウルナは今日のテストでフレイムショットが嫌いになってしまったようだ。

 

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