無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~   作:虎上 神依

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Chapter2-17 未踏破ダンジョン『亡者の執念谷』VS骸骨の王編

 ガタガタガタッ――

 

 骸骨の王は玉座からゆっくりと立ち上がる、その姿は他のスケルトンと違って堂々たる物で推奨レベル差は10と言え、雑魚とは違うことをハッキリと示していた。

 

「『アッタクアッパー』『ディフェアッパー』『マジックアッパー』『マジックデフアッパー』」

 

 俺は早口で攻撃、防御、魔力、魔防上昇のバフ魔法を詠唱し、ウルナにかける。

 魔法の名前をただ読む一般的な基本詠唱だが、問題なく彼女のステータスを上昇させる、そして――

 

「【風よ、我らの身体を軽くし、疾風の如く素早くしたまえ】」

 

 想像詠唱で俺達の敏捷力を上昇させる。

 因みに魔法の基本詠唱は過去の偉人が研究して創り出した魔法陣を描くため、魔力の必要量、威力、効果など予め決められてしまうが想像詠唱だと自分の想像する通りの威力、効果を発動することが出来る、しかし、その代わりに魔力消費の割合も洗練された基本詠唱よりも多い。

 魔法学者が洗練された技術で魔法を放つなら話は別だが基本素人の想像魔法は魔法陣に無駄が結構あり、魔力の消費量が多くなってしまうのだ。

 俺とて魔法陣の技術は人一倍あるものの、数秒想像しただけで無駄なき魔法陣を描くことは不可能だ。偉人の傑作を更に効率化することは出来るが……。

 その為どういった場面で基本詠唱か想像詠唱か、はたまた想像力だけで行う詠唱無しの想像無詠唱のどれかである。

 

 また、自らが編み出した想像魔法に技名をつけて基本詠唱化する事は出来る――が、洗練されていない事に変わりはないため理論的には想像魔法と同じである。

 

 

「ありがと、でもあのちょっとデカい奴だけなんて案外楽ですね」

 

「まっ、まてウルナッ! 油断するなッ!!」

 

 ウルナが骸骨の王に向かって走り始めた時――王は骨を歪め、軋ませて「カタカタ」と笑うと王笏の石突でカンカンと地面を叩いた。

 すると次の瞬間、地面に無数の魔法陣が出現し幾多のクレヴァスケルトンが地面の下から這い上がってきて姿を現す。

 

「えっ、ちょっ、ヤアアァァッ!!」

 

 その悍ましい光景を見て走り始めたばかりのウルナは踵を返すと顔を真っ青にしながら逃げ帰ってきた。

 這い上がってきたスケルトン、その数は魔力感知で数えても100は下らない。しかも1階層にいた雑魚と同じで各々が武器を持っており、構えていた。

 

「流石は王キングだ、一筋縄ではいかないってか。こりゃ心が踊って燃え上がりますね」

 

「嘘でしょ! どんだけいるのよアイツら!」

 

「――デバフ弱めてちょっと無双するしかねぇな。ともかく攻めて攻めて、王キングの前まで行くんだ!」

 

「クッ……、やるしかないですねっ! 行きます!」

 

 俺とウルナは共に剣を抜くとスケルトンの軍勢に突っ込んでいった。

 

 まずは前衛の片手剣、そして中衛の槍と斧の処理だなっ!

 刀と長剣を交互かつ的確に振り回しながら俺はスケルトンを切り刻んでいった。

 無理な力の出し惜しみをして余裕ぶっている場合ではない、こんな数の奴らに襲われたら幾らデバフでステータス3分の1のレベル999でも一溜りもないだろう。

 

 肋骨を長剣で薙ぎ払い、刀で頭蓋骨を叩き割りとスケルトンを圧倒しつつも俺は着実に王

に近づく。

 その一方でウルナも片手剣で近くに近づいてきたスケルトンを倒しつつもステッキを薙ぎ払い漆黒の魔弾を神話の武器、マシンガンの如く放ち、地道にスケルトンの数を減らしていく。

 

 しかしそれを見て黙っている王ではなかった。

 再び骸骨の王はカンカンと地面を叩き、幾多のスケルトンを出現させる。

 

「ま、またぁ!?」

 

「コイツ……、無限召喚か? キリがねぇな」

 

 片手剣をクルクルと回し逆手に持ち変え俺は構えた、手前にいるスケルトンがそれを見てチャンスだと思ったのか一斉に攻撃にかかる。

 

 

 ――掛かったな、やはり貧弱脳ッ!!

 

 

 

「カウンターッ!」

 

 

 

 幾多の攻撃と魔法が一斉に弾かれ、周辺にいるスケルトンが吹っ飛んだ。俺はその瞬間を一切逃さない。

 構えていた片手剣を大振りで横に薙ぎ払い、空気の塊を周りのスケルトンに向けて放つ。

 そう――あの海竜を一撃で海の底に葬った剣技だ。

 

 

 

「ソニックブレード」

 

 

 

 超音波が凝縮された空気を伴って剣先から放たれ、スケルトンを一刀両断、一網打尽にする。

 そしてそれをチャンスと見たのか剣を素早く振っていたウルナが前に出て飛び上がる。

 

 

「タァッ!!」

 

 

 邪悪な魔力を帯びたステッキを持ったまま華麗に、横向きに一回転し、着地する。

 それと同時に凄まじい量の漆黒の魔弾がスケルトンの頭上から雨の様に降り注ぎ、あっという間に殲滅する。

 魔力を上昇させたとは言え、一度にあそこまでの邪魔法を発動させるとは――ステッキを使いこなしたも同然だな。

 

 

「一気に決めるぞッ!! 地割れ斬りッ!!」

 

 

「ええ!! 『エビルメテオ』ッ!!」

 

 

 舞台に亀裂を走らせながら放たれた地属性の斬撃。

 ステッキの先から放たれた火と地の混合魔法――メテオに邪魔法を付与したエビルメテオ。

 王の前のスケルトンの壁が消え去った瞬間を狙ってそれが同時に王へと襲いかかる。

 

 

 

 だが次の瞬間――

 

 

 

 王の目の前にスケルトンが出現し、俺の斬撃とウルナのメテオを防いだ。

 

 

「なっ、何それぇ!?」

 

「部下を盾にして自分を守るか……、えげつねえな」

 

 

 王は再び王笏をカンカンと鳴らして100体にも及ぶスケルトンを出現させる。

 もうこれではキリがない――やるなら一瞬で決めなければ。

 

 

「もぅ! 一体どうしろっていうのよぉ!」

 

「いや、まだ手はある……」

 

「えっ? 本当に? 秒速で攻撃するとかそういうのは無しだからね」

 

「ふっ――だがコイツは『共同技術(タッグアーツ)』と言って息を合わせなければ出来ないがな」

 

 

 ウルナが固唾を呑んで俺を事を静かに見た。

 まだ一緒に旅し始めて10日強だ、しかし――俺には彼女となら『共同技術』を成功させる自信があった。

 彼女――ウルナとなら出来る気がした。

 

 

「分かりました、それの作戦に乗ります」

 

「オッケイ、それじゃ早口で説明するからよく聞けよ?」

 

 

 俺は牽制の為に一度斬撃をスケルトンの足元に向けて放った後、ウルナの耳元で手短にその作戦を説明する。

 彼女はそれを聞いて静かに頷いた後、「やってみる」と言って剣とステッキを構えた。

 

 スケルトンが怯みから立ち直って襲い掛かってきた所で俺は素早く剣を振るい、スケルトンの攻撃を防ぎつつ――ソニックブレードを放った。

 そしてスケルトンが倒れたことによって出来た道を駆け抜けて王へと一気に距離を詰める。

 

 

「行くぞッ! 火炎斬ッ!」

 

 

 王の前まで迫り、俺は二本剣どちらにも火を纏わせ一気に横へと薙ぎ払った。

 だが、王笏のカンカンによって出現したスケルトンの壁によってその攻撃はスケルトンの命と対価に防がれてしまう。

 

 

「今だッ! 『スプリントラッシュ』ッ!!」

 

 

 俺は直ぐ様ワープするかのように素早く横に飛び退いた。

 そして――既に魔法の詠唱を終えているウルナに場を譲ったのだ。

 

 

「ハアァァッ!!」

 

 

 飛び退いた直後に放ったウルナの大きな漆黒の魔弾が道中のスケルトンを片っ端から破壊して王に迫る。

 しかし、それでも――

 

 

 

 王はスケルトンの壁によってウルナの魔弾を防いだのである。

 

 

 

「う、嘘っ!?」

 

 

 ウルナの顔が驚愕の色に染まる。

 王はカカカと笑った、自分には傷一つ付けられないと勝ち誇った。

 

 だがその一方で――驚きの表情をしている彼女の口角が静かに上がる。

 

 

 

「縮地ッ!!」

 

 

 

 王の目の前に突如俺が現れた。

 まさか俺が上空で待機しているとは思わなかった王は突然の出来事に慄き、体勢を崩す。それが――王の最期を決定付けた刹那だった。

 

「斬り上げッ!!」

 

 俺の長剣が下から上に向かって跳ね上げられる。

 剣先から巻き起こる風、それは王を上空高く吹き飛ばし、空中に舞わせた。

 

 

「ウルナッ!! 決めてやれぇ!!」

 

 

「ええっ!!」

 

 

 彼女の細い両手から直径3メートルはあるとても巨大な漆黒の魔弾が放たれた。

 王は何とか避けようと身体を拗じらせる、しかしその努力は儚く漆黒の魔弾は王に衝突。

 

 

 ガタタタタタタタタタタタタ……ッ!!

 

 

 刹那――黒い爆発がボス部屋の天井を埋め尽くした。

 荒れ狂う爆風、凄まじい衝撃波、それらは舞台のスケルトン全てを吹き飛ばし、奈落の底へと突き落とした。

 一方で俺達は互いに支え合いながらもその爆発の余波はやり過ごした。

 

 

「……へへっ、見たか俺らの『共同技術』、『トリプルシャドウムーブ』は!! 全く、骸骨は頭が弱くて可哀想だなぁ!!」

 

「やった……、やったッ!! 私達初めてボスに勝った!! しかも格上の!!」

 

「おうよ、ナイスだウルナッ!!」

 

「ゼルさんもさっすがっ!!」

 

 

 俺達は盛大にハイタッチしてキングクレヴァスケルトンに勝利した喜びを分かち合ったのだった。

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