無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~   作:虎上 神依

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Chapter2-22 死闘(服選び)

「むむむ……」

 

 俺の隣で眉にしわを寄せながら唸るウルナ。

 男性用の服売り場にてウルナが多彩な服と真剣勝負を繰り広げていた。

 売り場を見回しては豊かな胸の下で腕を組みつついつとなく真剣その物な表情で服を一枚一枚吟味していた。

 ――ウルナでこんなに苦戦するとか俺だったらどうなるんだろうか……、考えるだけでも恐ろしい。

 

「ゼルさん、ちょっとこっちを向いて下さい」

 

「お、おぅ……」

 

 ウルナは右手を顎に当てながら俺の全身を見ては、幾多の服を見比べていた。

 何か相手に集中して見られるのって恥ずかしいな。

 そんな俺は自然とウルナから目線をそらしてしまっていた。

 

「……こんな時に何照れてるんですか?」

 

「照れてねぇ」

 

「ふふっ、安心してください、ちゃんと選んであげますから」

 

 ちゃんと選ばれたら選ばれたで後々のプレッシャーが半端じゃなく重くなってしまうから止めてくれ。

 ウルナはその後も服屋の中をぐるぐると回っては色々な服を見て回っていた。

 そして――俺の私服を探し始めてから30分。

 

「よしっ、これで完璧っ!」

 

 可愛くガッツポーズを決めるとウルナは俺に駆け寄ってきてその華奢な手に持っている服を渡してきた。

 

「どうですか? 似合ってると思いますけど……」

 

 俺はウルナが30分掛けて選び、持ってきてくれた服を見る。

 上は俺の髪の毛と似ている深緑を基調としたミリタリーシャツで、藍色のチェックが入った物である。

 そしてズボンはグレーのスリムパンツで特に目立つ感じもなく、深緑といい相性となっている。

 私服としては申し分ないほど良い組み合わせだと思った。

 

「凄くいいと思う、良くこんなに凄い組み合わせ見つけ出してきたな……」

 

「そうですか。良かった……、ゼルさんに喜んでもらえて」

 

「ああ、凄く嬉しいんだが……何でだ? 素直に喜べない俺がいるぞ……」

 

 こんなに可愛い子に服を選んで貰えたのだ、一人の男としてこれ以上に嬉しいことは無い。

 だが――待ち受ける強大な試練のせいで顔が引きつっていた。

 心臓の動悸が早くなって、身体が火照ってきて、緊張でどうにかなってしまいそうなそんな状態だった。

 

「で、でもありがとな。これ大事にするわ」

 

 俺は今できる精一杯の笑顔でウルナに感謝の気持ちを伝えた。これぐらいしなければ男として失格である。

 さて――ここからが問題だ。

 

 

「じゃあ、次はゼルさんが服を選ぶ番ですね」

 

「離脱してぇ!! 今すぐにでもこの場から離脱してぇ!!」

 

「そんな事したら条件を破ったという事で許しませんからね」

 

 ウルナは美少女が持つ最強の武器、可愛い笑顔でそう言った。だが――その武器は本来の効力を発揮していない、しかし俺は別の意味でしっかりと大ダメージを食らっている。

 

「……分かった、全身全霊を使ってウルナの服を選ぶわ」

 

「――物理的な意味では絶対に使わないでね?」

 

「あ、当たり前だろ? 服屋をふっ飛ばして何の得があるってんだっ!」

 

「……私、意識せずにその凄みのある覇気とオーラを放っているゼルさんがとても怖いです」

 

 

 

 

 

 

 難儀だ、俺にとっては難儀すぎる課題だ。

 ここは俺の熱血パワーで……、どうにか出来るものじゃねぇな。

 俺は魔力感知が自動発動するぐらいに鋭い眼光で売り場全体を見回す。

 

「……欲しいのは戦闘服だよな?」

 

「はいっ、ですがそこまで防御力が高くなくても大丈夫ですよ」

 

「分かった、死ぬ気で探してくる」

 

「――死なないで下さいね」

 

 そして俺は全精神力を使って女性用の防具売り場を駆け回った。

 ウルナに合うもの……、それを探せば良い。

 ひたすら防具を着ているウルナを姿を想像しては消去することを繰り返し、売り場を彼女と同じように何回も何回も回った。

 しかし――30分経っても尚、良い服を選べる気がしなかった。

 

 選択出来るものは既に決まっている、つまり……この中でマシなものを決めるつもりで選んだ方が妥当だ。

 だが――それが遥かに難しい。

 服選びって難しい、俺はそう確信した。

 よりによって異性の仲間のものとなると尚更である。

 

「……幾らなんでも難題過ぎるって」

 

「ゼルさん、何か良いもの見つかりました?」

 

 彼女は期待した様な笑みで俺の真剣その物の顔を覗き込んでくる。コイツ……、面倒事を押し付けたかっただけじゃないのか?

 

「ごめんな、まだ見つからねぇ。もう少し待ってくれないか?」

 

 俺は先程のウルナ同様唸っては服を見比べる事を繰り返しす。当初はこんな事になる予定ではなかったのだが、パーティー崩壊を避けるためにもここで失敗する訳にはいかない。

 なんとしても見つけ出さなければ――

 

 俺は吟味に吟味を重ねつつも全神経を使ってウルナの服を探し回った。

 そして――とうとう一つの結論にたどり着く。

 

 持ってきたのはジャケット、服、スカート、そしてハイソックスだ。

 上はゆったりとした白と水色を基調とした服で露出はそこまでなく見た目がとてもほんわかとしている、そして白色のシルクのような肌触りのジャケット付きだ。下は仄かに青みがかった戦闘型の半ズボン、腿までありそうな丈の白色のハイソックスだ。

 無論、見た目は柔らかそうだが防御力も申し分ない、それに俺の加工も加えれば鎧すら上回る戦闘服が出来上がるだろう。

 

「これが……、いいと思うんですか? 」

 

「いいというか……、ウルナには似合うと思うんだ」

 

 俺は若干ウルナの顔色を伺いながらそう答えた。

 吟味を重ねたとは言え、所詮は俺の感覚でしか無い。だが俺としてはこの服はウルナには間違いなく似合っているとは思う。

 彼女が気に入ってくれるかどうかは別としてだ。

 

「そっか……、そうなんだ」

 

 ウルナは目を少し細めた後、その服をギュッと抱いた。

 俺から見たら不思議と彼女が笑っているように見えたのは気のせいだろうか? いや、単なる気の迷いだろうな。

 

「よしっ、合格です! ゼルさんにしては中々良い物を選べたんじゃないんですかね」

 

「なんで上から目線なんだよ……、ともかくあざっす」

 

「ふふっ、ゼルさんが時間を掛けてしっかりと選んでくれた服ですから――大切に使いますよ」

 

「はぁ……崩壊回避、食い尽くされずに済んだわ」

 

 ウルナに無事合格を貰った俺は影で安堵の息を吐いた。

 どうやら気に入ってくれたようだ……、危ない危ない、ここで変なものを選んだら冷酷な目で見られて関係が崩壊しそうだったからな。

 ともかくこれでまた一つ困難を乗り越えられたという訳だ、良かった良かった。

 

「それじゃ、買って着てきますね~」

 

「はっ? 今着るのかよ」

 

「当たり前じゃないですかっ、ほらさっさと来て」

 

 ウルナに連れられて俺は会計の方へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 俺は試着室の前でウルナが出てくるのを待っていた。

 別に着て帰る必要は無いと思うのだが……、彼女がそういうのであれば否定するつもりはない。

 

 

 

「お待たせしました」

 

 

 

 そう言って出てきたウルナに俺は不覚ながらも一瞬思考回路が停止してしまった。

 超可愛い、俺の想像以上の可愛さだ……。

 俺が頑張って決めたかいがあったのかは分からないが、服やズボン、ジャケットが唯でさえ可愛いウルナを更に際立たせていて今まで見たことが無いような魅力的な姿をしていた。

 今のウルナはこの世の美を集約した超絶美少女その物と言っても過言ではないだろう。

 

 

「うん、可愛いな。こっちまで照れそうだわ」

 

 

「そ、そうですか? え、エヘヘ……」

 

 

 ウルナは照れたかのように頭を掻きながら俺に近寄ってきた。

 って自然な流れで近づいてくんなよっ! 俺の心が暴走しちゃうだろ?

 

 

「その……、選んでくれてありがとうございます。……凄く嬉しいですっ!」

 

 

「は、ハハハ……、いいって事よ」

 

 ウルナに面と向かってお礼を言われ、遂に俺の照れが最高潮に達してしまう。

 俺は最終手段として魔力を使って自らの興奮し暴れる気持ちをググッと抑え込む、だがそれは逆に俺を冷静にさせすぎてしまいかえって不自然になってしまった。

 はぁ、もうどうすりゃいいんだよコレ……。こっちの方が服を選ぶより遥かに難儀な課題だよ。

 

「ふふっ、何照れてるんですか?」

 

「断じて照れてない!」

 

「えー、絶対照れてたでしょ?」

 

 ウルナはずいっと俺に近づいてくると顔を覗き込んできた。魔力で気持ちを抑え込んだのにも関わらず俺は一瞬ドキリとして、狼狽してしまう。ここまで覗き込まれてしまったら最早、照れ隠しの方法など残されていない。

 

「ま、まぁ、似合ってるってことよ……、その服が」

 

「ぷっ、アハハハっ! ゼルさんって面白いですね、これで直球攻撃された私の気持ちも分かったでしょ?」

 

「は、はぁ……?」

 

「アハハっ! 何でもないですよっ。さっ、折角の休暇なんだしいっぱい楽しみましょ!」

 

 ケラケラと笑うとウルナは丸で子供のようにはしゃぎながら店の入口へと駆けていった。

 見たことがない程、嬉しそうに笑う彼女を見て俺の口元も自然と緩む。

 

 ――そんなこんなで波乱の服選びは無事幕を閉じたのだった。

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