無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~   作:虎上 神依

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Chapter1-3 その美少女は迷い人なり

 少女を救出してから数時間。

 未だに彼女の意識は戻らないものの呼吸はハッキリしたものに変わっていて体温も人間一般的な値にまで下がっていた。

 

「珍しいデスね、いつも人間の悪口ばかりおっしゃっているご主人様が倒れている子を助けるだナンテ」

 

「ああ……、そうだな」

 

 15年間以上、俺は師匠以外の人間との関わりを絶って生きてきたのだ。

 無職無能という不名誉な称号を背負って世界で生きていくのはもう耐えられなかったからだ。だから――俺はこの樹海に来た。

 元は自害するためだった。だが師匠のおかげでその考えは変わり、強さを求めるようになった。

 職業がなくても、天恵がなくても人間は強くなれることを証明するため、今まで俺を蔑んできた奴らをなんとしても見返すため、俺は今までを生きてきた。

 

 だから……、そろそろ潮時なのかもしれないな。

 もしかしたらこれは神が指し示したお告げなのかもしれない――宿命の元、世界に出ろという。

 

「ご主人様はこれからどうされますカ?」

 

「俺はひとまずこの子が起きるまでそばに居る事にする、様態が急変したら大変だからね」

 

「分かりました、ではご飯はコチラに持ってきますネ」

 

 言ってミスリルの身体を月の光で輝かせながらチビミは部屋を出ていった。

 そう言えば……、もうこんな時間か。回復魔法やら水を飲ませたりなどなんやかんやしていたらいつの間にか相当な時間が経っていたみたいだな。

 それにしてもチビミは何から何まで完璧だな……、これ以上の従魔は中々居ないだろうに――

 

 俺はベッドで寝ている少女に目を落とす。

 一応全身汗だくだったため身体を拭いてやったりとか氷を取り替えたりとかもしたから大丈夫だとは思うけどね。

 

 でも流石に服を取り替えるまではやらなかった……。いや、そもそも見知らぬ女性の体を拭く時点で結構マズいものがある気がするけど。

 幾ら命の恩人とは言え一線超えたらそこで人生終了だからな。

 

 不意に少女の豊かな胸に目がいきそうになり、気を紛らわすため窓から覗く月を見た。

 ――しかし、思っていたよりは柔らかかった事は真実……、いやもうよそう。

 

「ご主人様、お食事デス」

 

「ありがとう。所でチビミはもう寝るのか?」

 

「そうですね……、宜しければ代わりにその子を見てあげマスガ」

 

「いや問題ない。徹夜は慣れているから」

 

「分かりました、ではお休みなさい」

 

 ミスリル製の鋏でお辞儀のポーズを取るなり、チビミは一階へと降りていった。所でサソリの寝ている姿って意外と可愛いんだよね。

 そんな事を思うのは世界を探しても多分俺しかいないと思うけど……。

 

 俺はいい感じに温められている晩飯を食べながら彼女を軽く観察してみる。

 

 紫色の長髪で、会った時一瞬だけ見せた黒色の双眸、服の上からでも確かに分かる程度に胸の膨らみがあり、相当細身でスタイルも抜群な少女。

 外見からも体重の軽さが窺えるその身体は実際に持ってみても相当軽かった。

 背は俺よりも拳3つ分低く、容姿もどことなくあどけなかった、だがその一方で輝く宝石の様な端麗さも醸し出していて、すれ違う人々を振り向かせる程に美しくもある。

 その上に若干露出の多い魔道士用の服に、すらりと伸びている脚を魅せるような短い半ズボンを履いている。健全な男性なら見ただけでもドキリとしそうな見た目だ。

 

 それにしても不思議だな……、何でこんな美少女がこんな樹海に迷い込んだのだろうか。

 俺みたいに自殺を考えるのならまだしも服装からも魔力からも伺えるに彼女は間違いなくかなりの実力を持っていた。

 

 もしかして自分の実力を確かめるために入ったのか? それは傍から見ても無謀極まりない行為だと思うが……。まさか彼女がこの樹海のことを知らなかった訳あるまいし。

 

「……、考えても無駄だな」

 

 晩御飯を終えた俺は月明かりに照らされながら静かに本を読み始めた。

 

 

 

 

 

「……、ハッ!?」

 

 窓から差し込む光を見て俺は飛び起きる。太陽の位置からしてかなりの時間、寝てしまっていた様だ。熱血男たる俺が何という失態……。

 美少女ちゃんの方は――まだ起きてないな。

 俺は朝の挨拶をするために部屋を後にし、一階へと向かう。

 

「おはよ、チビミ」

 

「おはよう御座いマス、朝ご飯なら既に出来ていマスヨ」

 

「サンキュ」

 

「ところで人間の女性のご容態は?」

 

「まあまあ良好だ、まだ目は覚ましてないけどな」

 

 心配そうな表情をしているチビミから朝ご飯を受け取ると俺は少女が寝ている二階への階段を上がる。

 

「さて、後はいつ起きるかだな」

 

 そう言って俺は二階のドアを開ける。

 

 

 

「ふぇっ!? な、何奴!?」

 

 そこにはベッドから飛び起きたであろう美少女が木の棒を構えながら警戒心丸出しの状態で立っていた。

 

「なんだ……、起きてたのかよ」

 

「あ、貴方誰よ!? それにココはどこなの!? 私に何するつもりだったんですか!?」

 

「いや、何もしようとしていないんだが……」

 

「嘘っ! そんな事言って私の寝込みを襲って犯すつもりだったでしょ!? 私騙されませんからね」

 

いやいや考えがぶっ飛んでいるのは貴方の方だと思いますけど?

――大体、こんなコミュ障全開の男が見知らぬ女性の寝込みを襲うわけ無いだろ?

 

「犯すって……、そんな事するわけがないだろ? まあ、身体は拭いたかもしれないけど」

 

「身体を拭いたッ!? なるほど、自白しましたねこの変態ッ!」

 

「いやまあ、確かに傍からみたら変態的行為ではあるが……」

 

「どうせそんな事言ってABC全部したんでしょ!?」

 

「ABC以前に身体を拭く以外の行為はしていないんですけどっ! やれやれ……、命の恩人にそれはないんじゃないか……?」

 

「命の……、恩人? 私、貴方のような人に助けられた記憶なんて――」

 

「覚えてないのか? 君はこの『魔獣の巣』と呼ばれる恐るべき樹海のど真ん中に倒れていたんだぞ」

 

「倒れて――いた? 私がですか?」

 

 未だに警戒心をとかず木の棒を構える少女、だがそんな表情でも繊麗さを全く失わない少女に驚きながらも俺は食事を近くの棚の上に置くと事情を説明した。

 その少女は俺の話に耳を傾けながら「……そう言えば」と思い出したような素振りを見せてはへなへなとその場に座り込んだ。

 

「そっか……、私がこの樹海で迷っていた所を助けてくれたんだ……。はあー、警戒して損したー」

 

「無理もない、なぜなら見知らぬヒョロそうで小汚い男が急に現れたんだからな」

 

「――なんかごめんなさい。私、恩を仇で返すような事しちゃった……」

 

「ふっ、別に問題ない。俺は助けたいと思って助けただけだからな。それで俺が知りたいのは君がこの樹海に足を踏み入れた経緯だ、この樹海がどんな恐ろしい所なのか君は分かっているよな?」

 

「は、はい……、確か――」

 

 話を聞いてみる。

 どうやら彼女は冒険者になるため『始点の街』と呼ばれる街、ファスタットに向かう途中、行動を共にしていたパーティーの提案により近道をするためにこの樹海に足を踏み入れたそうだ。

 だがそのせいで彼女たちは大量の魔獣に襲われることになり、挙句の果てにはパーティーに裏切られ一人だけ樹海に取り残されたそうだ。

 ――この樹海にこんな可愛い少女を置いてきぼりにするとは……、何ともまあ酷いやつだな。

 

「なるほど相分かった、そう言えば自己紹介がまだだったな――俺はゼルファ・ガイアール、この樹海の番人――の代理だ」

 

 自称、樹海の番人と名乗っているのは師匠だからな。

 

「ふふっ、……代理なんだ。私はウルナ・ホメイロ、宜しくね」

 

「ウルナか、覚えておくとしよう」

 

「所で逆に聞きますけど、ゼルファさん――あっ言いにくいんでゼルさんにしますね。ゼルさんはどうしてこんな所に住んでいるの?」

 

「ゼルさん……。全然言いにくいとは思わないんだがまあいいだろう。俺はだな――強くなるためにここに住んでいる」

 

「強くなるため――ですか?」

 

「そうだ」

 

 この周辺には大量の魔獣が無限にポンポンと湧いて出てくる、その魔獣を外界に出さないために俺は師匠と共に毎日狂ったかのようにその湧いて出た魔獣をひたすら倒し続けているのだ。

 ――とは言っても、ここの魔獣が外界に出ることなんてあり得ないんだけどね。って師匠が言っていたけど。

 だから無職無能というこじ付け的な理由もあるとはいえ、実際は力だけを求めてここに住んでいると言っても過言ではない。

 

「初めて聞きました……、こんな樹海に人が住んでいるなん――」

 

「ご主人様ッ! 大変でス!!」

 

 突如二階ドアが開き、慌てているチビミが部屋の中に突撃してきた。この光景……、前も見た気がするんだが。

 

 

 

「ひっ……、き、キャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

 

 状況はちょっとばかし違うけどね。

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