無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~ 作:虎上 神依
「あらら。本命に目つけられちゃった……」
俺は目の前に立っている青いデカブツを静かに見上げる。
本来であればアルティメットブルーリザードを2体倒して防御を柔らかくしてから突っ込もうと思ったが、まさかそちらから来るとはな。
これはつまり――この真蒼の大蜥蜴、アルティメットオリゴンファッツは自分が動かないといけない程、俺らに対して恐怖心を抱いていることになる。
仲間が殺られる前に、俺らを真っ先に潰す。なるほど、流石は親玉、王者らしい風格と気品出しているじゃねぇか。
「ギャアオオオオオオオオオオオオオ――――ッ!!!」
再び地を揺らす咆哮が爆音となって俺らの頭上から浴びせられた。
そして咆哮が止むと、真蒼の大蜥蜴は見るものを殺すかのような目で俺らを見下ろし睨みつけてくる。
どうやら、俺達を食らおうという確固たる意思はしっかりと持ち合わせているようだ。
「さて……、完全に親玉にロックオンされましたけど、いかがなさいます?」
「――それってもう殺るしか選択肢残されていませんよね?」
「だな……、ここまでの風格を持つ魔獣は中々いねぇ、久しぶりに燃えてきたな」
「ゼルさんはいつも燃えていると思うんですが――」
「いや、これは強者に対する燃えだッ! 普段の熱血や燃えとは訳が違うッ!」
「私たまにゼルさんとの意思疎通が出来なくなるんですけど……これって私のせいですかね?」
何意味の分からないことを言っている、熱血や燃えに種類があるのは当たり前の事だろう?
俺はウルナの冷酷なジト目を回避しつつ、真蒼の大蜥蜴を見上げた。
そう、動かないで睨んでいる所を見ると怒り狂っているとは言え彼だって怯えているのだろう、自分の渾身の咆哮を怖がらない俺達に――
「なぁ、ザイル」
「ああー? なんだよゼルファ」
「ちょっと周りの雑魚とアルティメットブルーリザード一体片付けてくれねぇかな? 俺達はこの元凶倒すからさ」
「――大丈夫なのか?」
何故か一瞬、心が綺麗なザイルに戻った。
「あぁ、熱血パワーで何とかする」
「熱血パワーでどうにか出来る問題ではないと思うけど……。ともかく分かった、ゼルファくんとウルナちゃんを信じることにするよ。それじゃ――行くぜぇ、クソ蜥蜴共ォ――ッ!! ヒャッハーッ!!」
ザイルは再び闇を纏った斧を振り回し、ブルーリザード達を蹂躙しにかかる。
さてと――もうやる以外の選択肢は存在しなくなりましたね。
「『オーバーテンション』」
いつも通り俺は全身に力を込めて、心底に眠っている力を解放する。刹那――凄まじい爆風が俺を中心として巻き起こり、大蜥蜴の咆哮と同じような地を揺るがす衝撃波を発した。
ひとまずは『オーバーテンション』でやりくりするしかないだろうな……、次のステージは本当に心の奥底から気分が高揚して燃え上がった時しか発動できないから……。
そう――残念ながらあの力はこの『オーバーテンション』の状態で本当に心の奥底からテンションマックスにならないと発揮できないのだ。こればかりは致し方ない。
「ゼルさん……、本気で行くんですね?」
「敵がレベル300超えたら『オーバーテンション』発動しないと少々ヤバいからな、それでウルナこそどうなんだ? 心の準備は――」
「いつでも大丈夫です、ゼルさんとは断じて同じではありませんが私も心底から滾っていますから」
「同じって言って欲しかったなぁ……、ともかく行こうかウルナッ!」
「はい、ゼルさんッ!」
二人は地を蹴り、大きく口を開けて尻尾を振るい、二足歩行により退化した手を上げて雄叫びを上げる父なる真蒼の大蜥蜴――アルティメットアルゴンファッツへと立ち向かっていった。
《Point of view : Anna》
「ふっ――!」
私は爪を振り下ろしてくるオリゴングレードの横に素早く周り込み、腹を剣一振りで切り開いた。
そして――止めと言わんばかりに怯むオリゴングレードの目に向けて槍を突き刺し、奥にある脳を破壊する。
目の前にはグロい光景が広がっているが、こんなのを気にしている様じゃ全くやっていけない。
もっと一杯倒さなければ――街を守ることは出来ないッ!
「アンナ団長ッ!!」
「こんな時になにかしら? 副団長さん」
「元凶、アルティメットオリゴンファッツの動向が変わりましたッ! 恐らく誰かと戦っている模様」
「誰かと……、戦っている?」
次々と襲い掛かってくるブルーリザードを蹴散らしながらも私は見上げるほどの蒼色の大蜥蜴の巨体を見た。
アルティメットオリゴンファッツは確かに咆哮を上げつつも何かと睨み合っている様に見えた。
間違いないあの3人の内誰かがあの包囲網を突破し、元凶にたどり着いたのだ。
現に魔力感知を使って観察してみると――あのレベル200の強敵アルティメットブルーリザードが一匹消え失せている。
「分かったわ、それなら――私はあそこにいるアルティメットブルーリザードを倒しに行きます」
「なっ……、一人でですか!? 幾らなんでも無茶としか――」
「でもやらなければ確実に街は崩壊してしまいます、それにあの一匹さえ倒せれば恐らくは――」
敵の動向を伺う限りだともう一匹のアルティメットブルーリザードも何者かと戦っている。
普通に考えるとしたら、元凶をゼルファとウルナ、そしてアルティメットブルーリザードをザイル。そうなるはずだ。
「ハァ――ッ!! 全く、多すぎるってんだよ、どこから湧いて出てきたんだコイツらは……」
オリゴングレードの群れに囲まれながらもカゲヨは冷静に剣を振るい、一匹ずつ確実に仕留めている。
彼女の得意な袈裟斬りを何度も繰り出しつつ、隙を作らぬよう的確に動いていた。
――そうね、もしかしなくともカゲヨなら……。
「カゲヨッ、ちょっといいかしら?」
「んあ? なんだよアンナ、今忙しいんだけどッ!」
「ここから右手側奥にいるアルティメットブルーリザードが見えるかしら?」
「……ああ、確かに見えるな。ってあれ? 何か一匹減ってないか?」
「カゲヨ、貴方はあれを倒してくれないかしら?」
「は、はぁ!? 一人でぇ!? そりゃアタシでも無理――」
「あそこでザイルが戦っているわ、多分――たった一人で」
「何っ……!?」
オリゴングレードの群れを殲滅し終えたカゲヨは直ぐ様私のもとに近づいてきて胸ぐらを掴んでくる。
「どういう事だっ! 説明しやがれっ!」
「……、慌てた時に胸ぐらをつかむ癖は相変わらずね」
「あっ……、すまねぇ、ちょっと苛立っちまった。それで? どういう事だ」
「そのままの意味よ、後衛のアルティメットブルーリザードが一匹あの3人に討伐されたから、ゼルファ&ウルナペアとザイルに分かれて元凶ともう一匹を倒すつもりなんでしょうね」
「あの野郎……、狂い始めたらいつも後先考えず行動するんだからぁ!!」
「仕方ないわよ、それがザイルなんだもの。ともかくカゲヨは速く行ってあげて、私は――手前を倒す」
ここから約500メートル離れた地点にいる巨大なアルティメットブルーリザード、私はそれを見つめながら言った。
私はレベル200、相手もレベル200、頑張れば何とかなるはず。
「手前……か、まさかアンタも無茶するつもりじゃ」
「無茶しなきゃ、街は守れないでしょ?」
「……そうだな。分かった、アタシはすぐあの馬鹿狂戦士の所行くから後は頼んだよッ!」
「ええ、任せてちょうだい」
そして私たちは別れた、各々の目的を達成させる為に……。