無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~   作:虎上 神依

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Chapter2-29 隠された災厄の真実

「グギャオオオオオオオオオ――ッ!!」

 

 

 丸々と太った大きなお腹をタプンタプンと揺らしながら蒼色の大蜥蜴は長さ6メートルはある蒼い尻尾を横にゆっくりと薙ぎ払う。

 その尻尾はあまりの太さと長さ故に、周りのブルーリザードまで巻き込んでいた。

 しかしそんな事は一切気にせず俺達だけに標的を定め、その尻尾をぶつけようとしていた。

 

「チッ、仲間巻き込むとか、王の風格はどこ行ったんだよッ!!」

 

 その尻尾のあまりの太さに避けられないと判断した俺は反魔法を何重にも張った双剣でその尻尾を受け止める。

 

 

 ガキイィィィンッ!!!

 

 

 力は俺のほうが上、だが凄まじい衝撃波と共に黄色い火花が炸裂する様子は大蜥蜴の馬鹿力の強さをしっかりと現していた。

 

「今だッ、ウルナ!」

 

「了解、ハアアアアッ!!!」

 

 俺が尻尾を弾き返すと同時にウルナは多重魔法陣を遥か上空に展開して邪悪な炎を纏いながら燃える巨石を蒼色の大蜥蜴の頭上に出現させた。

 だが――大蜥蜴は体勢を崩しているのにも関わらずそれを物ともしない顔でその巨石――エビルメテオに向けて口を開ける。

 魔法陣が展開、口に膨大な魔力が凝縮されていき、それは業火から金赤色の炎、そして純粋な火魔力のエネルギーとなる。

 

 

「グオオオオオオオオ――――ッ!!」

 

 

 金赤色に輝く灼熱の炎が口から解き放たれ凄まじいエネルギーとなってメテオに直撃、あっさりと貫通させては紅き奔流に飲み込ませると一瞬で根本となる魔素まで溶かし、蒸発させた。

 

「あ、あれって――」

 

 ウルナが例によって身体をプルプルと震わせながらその魔法を見て言った。

 威力は俺のよりも低いがそれは間違いなく――

 

 

「フレイムショット、火系魔法で最高レベルの放出系魔法だ」

 

 

 なにせ相手はレベル300なのだ、それぐらい出来ても文句はない。ただ――そんな蒼い身体で平然と火魔法を使われても困るな、初見じゃ誰だって固定観念から得意分野が氷魔法だと思ってしまうだろうし。

 

 

「こりゃ、中々面白そうだな。腕が鳴るぜ」

 

「で、ですね……。こんな強敵、初めてですけど――不思議と怖くない、寧ろイケる気がする」

 

「ふっ、熱血パワーのおかげだな」

 

「それは無いと思います」

 

 

 俺は全力でオオトカゲを目掛け、駆け出し飛び上がる。

『オーバーテンション』のおかげで身体がさっきと違って軽い、流石は俺のエクストラスキルッ!

 

 

 

「グウゥゥゥ…………、ガアァッ!!!」

 

 

 

 再び口から灼熱の炎を吐き出し、俺を灰すら残さず燃やそうとする。

 だが残念ながら――相手はこのレベル999の俺なのだ、そんな魔法、通じるとでも?

 

 灼熱の炎に向かって長剣を斜め下から斜め上に斬り上げると同時に空気をも凍てつかせる様なブリザードを発生させる。

 竜巻となったブリザードは灼熱の炎を一瞬で飲み込んで凍らす、そしてその勢いを留めぬまま大蜥蜴に衝突し、全身の至る場所を凍結させた。

 

 

「グガアアアアアアッ!!!」

 

 

 悲鳴とも取れる叫び声は草原一帯に響き渡り、大蜥蜴はじわじわと広がっているであろう苦痛に地団駄を踏み暴れ始めた。

 俺は後ろでスタンバイしているウルナに対して目で合図を送る。

 ウルナは無言で「分かった」という表情を顔に露わにすると――右足で地面を蹴り飛び上がった。

 

 空中で俺の地獄耳でも一言一句正確には聞き取れないほどの速さで想像詠唱し、ステッキで空を薙ぎ払う。

 すると、それの先の軌跡に青と黒の光を宿らした氷の刃を幾つも出現した。その鮮やかかつ素早い動きからして、彼女のステッキはもう体の一部と成りつつあるようだ。

 

 

「行ってッ!!」

 

 

 ウルナの掛け声と共にその氷の刃はくるくると回転しながら大蜥蜴のあらゆる部分に突き刺さってはドリルの如く穴を開けた。

 唯の氷の刃ならともかくあれは破壊成分をたっぷり含んだ悍ましい武器、それに加えてウルナの魔力はレベル250程の一般的な魔法使いと同等かそれ以上はある。

 

 

 ――効かない訳がない。

 

 

 

 

「ガアアアアッ!!! ガアアアアッ!!! グガアアアアアッ!!!」

 

 

 

 大蜥蜴は更に暴れまわり、炎を辺りに撒き散らしながらドスンドスンと足踏みしては地面を揺らし、尻尾を地面に叩きつけて痛がっている。

 ここまで暴れるとはな……、何かちょっと滑稽に見えてきたぞ。

 

 

「これでも食らいなッ!!」

 

 

 俺は左手に持つ青い輝きを放つ刀を大蜥蜴の足元に向かって投げつける。

 刹那――辺りの地面は一瞬の内に凍りつき、滑りやすくなる。

 言うまでもなく、その場で暴れていた大蜥蜴は突如凍った地面に足を捕らわれ、体勢を崩して尻もちを付いた。

 

 

 

「グギャオオオオオオオオオ――ッ!!!」

 

 

 

 自らの醜態を辺りに晒し、屈辱で遂に堪忍袋の尾が切れ、怒りを爆発させる大蜥蜴。

 口を大きく開け、今までとは比べ物にならない程の膨大な魔力を集中させていく。

 

 

「うわっ、ありゃさっきのよりもヤバい奴来るぞッ!!」

 

「ちょっ、えっ、ど、どうするんですかッ!!」

 

「お、落ち着けってウルナッ!! フレイムショット如きで一々暴れんなってッ!!」

 

「だ、だってトラウマなんだもんッ!! 誰かさんのせいでッ!!」

 

「慌てすぎだっ、ちゃんと作戦はあるから――、ちょっと聞いてくれ」

 

「こ、こんな時に!?」

 

「ああ、早口で話すからよく聞け」

 

 

 俺は念の為ウルナに思念会話で作戦を伝える。

 

 

「危険だが……、出来るか?」

 

「……、分かりました。やります」

 

 決意を露わにしたウルナは力強く頷き左掌を前に出す。

 俺も自分の持つ双剣を構え、心の奥から煮えたぎって来る興奮を全て『オーバーテンション』――気持ちの高ぶりを力に変えるスキル――に注ぐ。

 

 魔力が、恐ろしいほどのエネルギーが集まってきては凝縮され赤く光り輝く魔弾となっていく。

 桁違いの魔力が大気を揺るがし、言葉にできない圧力がピリピリと肌に伝わってきていた。

 

 刹那――それは照射された。

 業火としてではなく純粋なエネルギーとして、白い極光、極太光線となって俺達に牙を剥き、襲い掛かってくる。

 その威力は今までの火の球や灼熱の炎よりも遥かに強く、原型は勿論、火系魔法の本来の効果――対象を燃やす事――すら発揮させずに破壊の超エネルギーとして大蜥蜴の口から照射されたのだった。それはもう、大蜥蜴にとっては一か八かの渾身の一撃である。

 

 

「エビルウェーブッ!!」

 

「零度氷結斬りッ!!」

 

 

 ウルナの左掌からは黒い稲妻を周りや中に駆け巡らせた極太の水鉄砲が、俺の剣からは全てを凍てつかせ斬り裂く白き衝撃波が発せられた。

 この攻撃はなんとしても耐えなければならないッ! 次の作戦へと繋げるためにもなぁ!!

 

 大蜥蜴が放った高音の不協和音を奏でながら迫る極光と、邪悪なるエネルギーの水鉄砲、凍てつく衝撃波が両者の中央で激突した。

 凄まじい衝撃波を放ちながら中央でぶつかりあった膨大なる魔力はエネルギーの流れがグニャリと変えて、その場で爆散する。

 

 

「……、今だ。行くぞッ!!」

 

「分かりましたッ!!」

 

 

 爆風が爆発による煙を払った所で二人は頷き会うと息ピッタリのコンビネーションで地を蹴っては同じスピードで走り始めた。

 ウルナの魔力残量から考えてもこれが最後の『共同技術(タッグアーツ)』になる、なんとしても決めなければッ!!

 

 

「行くぞッ、俺の肩を越えていけッ!」

 

「はいッ!」

 

 

 俺は素早くしゃがみ込んだ所でウルナが俺の肩の上に飛び乗った。

 次の瞬間俺は風魔法を使いながらも凄まじい力で空中に飛び上がりウルナを遥か空中に投げ出した。

 

 

 

「グゴアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 

 大蜥蜴はそのコンビネーションを見て怖気づいたのか、空を舞うウルナに向かって無数の火の球を飛ばし始める。

 

 

「【聖なる水よ、彼女を紅蓮の業火から守りたまえ】ッ!!」

 

 

 俺は一言一句噛まず早口で詠唱する。

 次の瞬間ウルナの周りに半透明の水が生成され、火の球を全て弾き返した。

 ウルナは火の球を気にすることなくあの破壊の稲妻を迸らせた漆黒の黒槍を左手に創り出し、渾身の一撃の準備を進めていた。

 

 大蜥蜴はその光景に生命の危機を感じたのか、遂に火の球ではなくフレイムショットを放とうとしていた。

 だが、そんな事――

 

 

「させるかよぉ!!」

 

 

 俺は作戦通り真紅の大蜥蜴の足元に上手く入り込むと、その太い二本の足を凍てついた双剣で薙ぎ払った。そして勢いを止めることなく何度も剣を振り回し大蜥蜴の皮膚を深く斬り裂いた。何度も何度も何度も蜥蜴肉を斬り刻み、大蜥蜴を絶叫させた。

 

 

 

「グギャアアアアアアアアアアア―――ッ!!!!」

 

 

 

 だが大蜥蜴は絶叫しながらもフレイムショットの溜めを止めることは無かった。

 しかし――もう遅い。遅すぎだ、トカゲさんよぉ!

 

 

「いっけええぇぇっ!! ウルナアアァァ――ッ!!」

 

 

「漆黒のエビルスピアァッ!!」

 

 

 虚空で華麗に舞いながらもウルナは渾身の一撃――既に漆黒の魔弾を吸収した黒槍を大蜥蜴の頭目掛けて投げた。

 放たれた槍は唸りを上げて虚空を突き進み、オオトカゲが溜めていた魔力を食らい、消し去るとそのまま奴の鋭い瞳孔に突き刺さった。

 

 

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――ッ!!!!」

 

 

 邪魔法により目をえぐり取られる衝撃と痛みに耐えられず大蜥蜴はその場に倒れると何とかその槍を抜こうともがき、あがき始めた。

 だが一度刺さった漆黒の槍は抜けること無くドリルの要領で眼球を完全に粉砕した後に眼孔の奥の肉をえぐり取ってはドンドン奥へと突き進んでいく。

 そして――その槍は生物にとって大切な器官、脳を破壊し、胴体を破壊し、大蜥蜴の原型すら分からなくなるほどまで蹂躙し尽くした。

 

 

 これが、突然変異して生まれた『災厄』の元凶の無残たる最期だった。

 

 

「いよっしゃぁあッ!! 勝ったぞおおぉぉッ!!!」

 

 

 俺は喜びの声を上げつつも空を華麗に舞いながら落ちてくるウルナを優しくキャッチする。

 

「……よくやったぞ。ウルナッ! 本当によくやったッ!」

 

「はいっ! ゼルさんッ!」

 

 ウルナは俺の腕の中で絶世の美少女に恥じないとても可愛らしい笑顔を見せてくれた。

 

 

 

 

 ――こうして今回の『災厄』の元凶であるアルティメットオリゴンファッツが倒れたことによりファスタットと『災厄』の戦いは無事決着がついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『困るなぁ、俺の計画を邪魔してもらっちゃあ』

 

 

 

 

 

 

 ズガアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 ――ソイツは現れた、遥か空中から。

 ――ソイツは現れた、凄まじい唸りを上げる地響きと共に。

 ――ソイツは現れた、人々に絶望を与えるために。

 

 

 

 

 ……終わってなんかいなかった。

 ……そう、まだ始まってすらもなかった。

 

 

 

『あーあー、折角のプレゼントをこんなグシャグシャにしちゃってぇ~、どうしてくれるんだーい? 俺、怒っちゃうよぉ?』

 

 

 

 俺達の目の前で――その巨大な人面蜘蛛が毒々しい牙をギラつかせながら不敵に笑っていた。

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