無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~   作:虎上 神依

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Chapter1-5 最強の無職無能と無能大賢者

「そ……そんな事が……あり得るというの?」

 

 今まで石化していたウルナはそのステータスを何度も見て震えながら言葉を放った。

 だが現にあり得てしまうからこの世の中は面白い。

 

 999(暫定)

 ――何ともまあ面白い響きだ、唯でさえ999というあり得ない値を表示しているのにもかかわらず(暫定)という言葉で更なる追い打ちを掛ける。

 この(暫定)という文字列は即ち、値として表示することが出来ないからとりあえず999と表示しますね、という意味合いだった。

 だから実際は俺のレベルは999ではない、恐らくそれよりももっと上だ。現に俺がこの境地にたどり着いたのは数ヶ月前、だから俺はもう既に――レベルを4桁で現すのであれば――1100はゆうに越えているであろう。

 

「無職……なんですよね?」

 

 ウルナは確認するかのようにそう言った。

 俺はまた面倒くさそうにステータスを弄って名前も職業もユニークスキルも公開する。

 

 

 名前:ゼルファ・ガイアール

 職業:無職

 レベル:999(暫定)

 ユニークスキル:なし

 

 

「な、何奴……」

 

「無論、書いてある通り落ちこぼれ貴族のゼルファ・ガイアールだぞ」

 

「それの落ちこぼれ貴族ってのも初耳なんだけどそれ以前に……、歴代最高レベル到達者を軽く越えてますよね?」

 

「歴代……? あー、そんな奴居たねぇ」

 

 確かかつての歴代最高レベル到達者は前代勇者だったはずだ。

 別名伝説の勇者と言われたその男のレベルは382、だったと思われる。

 だがその程度のレベルで歴代最高レベルと言うのもおかしな話だ、現に俺はそれを軽く凌駕できる境地まで到達したし、あの師匠だって確かレベル400は越えていたはずだ。

 

「まっ、つまり世界は広いってこった」

 

「世界は広いで済むようなお話ではないと思いますよそれ……、しかも同レベルの魔獣でも遥かに不利な戦いを強いられてしまう無職かつ無能の人が――」

 

「ただ単に見せつけてやりたかっただけさ。無職無能でも――強くなれるってことをな」

 

 右手に握り拳を作りながら俺は言った。

 

「……レベル999の無職かぁ。そっかぁ……、改めて考えると私の悩みなんてちっぽけな物なんだなぁ――」

 

「悩み……?」

 

「うん。私こう見えても――無能大賢者って言われていたのよ」

 

 ウルナは寂しそうな微笑みを浮かべながら自分の手を見つめていた。

 

「大賢者の癖にユニークスキルがないなんて駄目賢者だなって、皆にバカにされていたの。それに邪魔法に関しても皆から気持ち悪いって言われることが多かった。悔しかったし、悲しかった、特に無能だからって駄目賢者って決めつけられるのが。だから――私が住んでいた教会を抜け出してここまできちゃったわ、冒険者になるために。だから――無職無能の貴方がここまでたどり着けるんだから私にも出来るかなぁって……」

 

「ほぉ。つまり君の邪魔法も――」

 

「そう紛れもなくエクストラスキルよ、レベル25で取得したね……。だから私嬉しかったのよ、ゼルさんに凄いって褒められて――気持ち悪いって言われなくて安心しちゃった」

 

「当たり前だろ? 力がある分マシってもんさ」

 

「――そうね、アハハッ」

 

 玄関の前に腰を下ろしながら彼女は可愛らしい顔を綻ばせて笑った。この世界のあらゆる男を惚れさせ、落とす事の出来る最高の笑顔。

 それを見て俺は不思議と安心感を得た。

 恐らく、無職無能として差別されることを内心怖がっていたのだろう。

 

「でも改めて考えても凄すぎますね、一体どんな事したらそんな境地に至れるの?」

 

「――努力だな」

 

「努力……っ!?」

 

「そうだ、日々積み重ねる努力は絶対に裏切らねぇ、絶対にだ」

 

 俺は今まで文字通り死ぬ程努力をしてきた。

 まず、戦士や僧侶などの職業であれば始めから幾らか戦闘用のスキルを覚えている、だが村人などの非戦闘職、言うまでもなく無職は何もスキルのないゼロの状態から始まる。

 加えて個別に職業に沿って貰える――場合によっては相当強力な力を得ることのできるユニークスキル、それですら神から貰えなかったのだ。

 そう、何もない正真正銘のゼロの状態から俺の全ては始まった。

 師匠にあらゆる剣術や魔法、体術などを教えられては物にして幾多の強力な魔獣に立ち向かっては毎日、血だらけになるまで戦い抜き、強くなっていった。

 全ては――強くなるためだけに。

 かつて目の前で失った大切な人を守り抜けるような力を手に入れるために……

 

「なるほど――つまり簡単に纏めると熱血戦闘狂ということですねッ!」

 

「なぜそうなる、まあ否定は出来ないから何ともいいようがないけど。――でこれからウルナはどうすんの?」

 

「そうねぇ……、どうしましょ?」

 

 ウルナはその場であざとく首を傾げながら俺に聞き返した。

 

「俺に聞かれても困る。だけど確かウルナは冒険者目指してたんだっけ? んじゃ、ファスタットまで送ればいいか?」

 

「送ってくれるんですか?」

 

「当たり前だろ、この樹海は俺にとって庭みたいな物だから。それにファスタット位の近場なら多分今日中にでも着くぞ」

 

「ほ、本当に!? 良かったー、一瞬ここで暮らすんじゃないかって覚悟しちゃいました」

 

「ふっ、そもそも今の君には無理だ、諦めろ」

 

「何でそれを面と向かって言うの!? 地味に傷つきましたよ、グサッて!!」

 

 ナイフで心臓を刺すようなジェスチャーをしながら彼女は必死に訴えてきた。

 やっていることは一体全体全く意味が分からないが、傷ついたことはしっかりと伝わってきた。でもしようがないだろ?

 だって事実、敵を倒したと勘違いしてドヤ顔するような奴がこんな弱肉強食の世界で生きていくことなんて絶対に無理だ。

 チビミが二足歩行で歩けるようになるぐらい無理だわ。

 

「それじゃ、適当にファスタットの近くまで送るわ」

 

「あ、あのー、そのことで実はお願いがぁ……」

 

「ん? お願い?」

 

 ウルナは両手を豊かな胸の前でパシッと合わせると深々と頭を下げた。

 

「私と一緒に旅に来てくれませんか!?」

 

 顔を真っ赤にしながら彼女はそう頼み込んだのだ。

 

「えー、冒険面倒くさそう、この樹海で鍛錬した方が楽しい」

 

「そこを何とか……、お願いしますっ!! 」

 

「では俺のメリットを上げてみろ」

 

「私を守れること、私を鍛えることが出来ること、私の気持ち的に心強いこと」

 

「それは全て君のメリットだろ? 俺のメリットは何だと聞いているんだ」

 

「えーと……、可愛い美少女と旅できること?」

 

「――それはメリットなのか? 寧ろ厄介事に巻き込まれそうでデメリットにもなりかねないぞそれ。というか、自分で可愛い言うなや」

 

「ともかく……、お願いしますっ!! 」

 

 ウルナは更に頭を下げて丸で土下座をするかのようなポーズとなる、なぜ彼女がそこまで俺と旅することを望むのか正直全くと言ってもいいほど分からなかった。非常に見るに耐えない……。

 だがしかし、その一方でこれはいい機会だと俺は思った。

 最強の無職として君臨し力を世界に知らしめるチャンスなのではないかと――

 

 ……確かに面白そうだな。折角の機会だ、ここで世界に飛び出して思う存分暴れてやるとしようか。

 ゆくゆくはこの腐った世界をぶっ潰して改革でも起こしてやろうかな。

 魔族と人族が自分の誇りだけをかけて対立して不毛な争いをし合うこの世界を――ね。

 それにあれ・・も探さなければいけないし……。つまり潮時ってことだな。

 

「分かった、行くよ。だから顔上げろって」

 

「えっ、付いてきてくれるんですか!? マジの本当ですか!?」

 

「ああ、流石に美少女にそこまで頭下げられたらなぁ……、何か凄い惨めだったから」

 

「酷いっ! 私をそんな風に思ってたなんて――ッ!」

 

 言いつつ彼女は泣くフリをするが顔を隠す手の間から見える口角が少し上がっているのがバレバレだった。

 

 まっ、面倒くさそうだけど取り敢えずは守ってあげるとしますか。

 そんで――無能が故に何処かで苦しむ不幸な人々、能力という名のもとに縛り付けられている人々をいっちょ救ってやるとしよう。

 さて時は満ちた、今こそ――この世界に無職無能の力を見せつけてやろうじゃないか。

 

「んじゃ、適当に準備でも――」

 

「準備なら既に終えましたヨ、ご主人様」

 

「な、なんだとチビミ!? お前、速すぎるだろ!?」

 

「こうなることは私自身予測していましたので予め……」

 

 そう言ってチビミは俺の旅道具とウルナが持参していた荷物を手渡ししてきた。

 旅道具と言っても武器は既に持っているし、残るはちょっとした荷物袋と金貨袋だけだが……。

 因みに俺は所持品の殆どを空間魔法によって収納しているのでほぼ手ぶらでも十分なのだ。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 そう言って彼女はチビミから受け取った白を基調とした法衣を羽織り、ポシェットを肩からかけた。

 

「チビミも来るか?」

 

「いえいエ、私はこの家で留守番していマス。どちらにせよ、ご主人様ならどこにいようとも私を呼び出せるのですカラ」

 

「それもそうだな、んじゃ行ってくるわ。留守番とこの樹海の管理、しっかり頼んだぜ」

 

「承知しまシタ、行ってらっしゃいマセ、ご主人様」

 

 チビミはいつもより大袈裟に鋏と毒針を地面につけて俺にアピールした、恐らく内心では俺が居なくなることを寂しがっているのだろう。

 できれば5年間一緒に住んでいる仲だし、ついてきて欲しいのだが、彼女が危険な魔獣である以上どうすることも出来ないのは事実だ。仕方がない事である。

 

「えっ!? もう行くんですか!?」

 

「当たり前だろ? 善は急げだ、今すぐに出発するぞ!」

 

 俺は今まで住んできた家とチビミに手を振りながらウルナと共にこの樹海から始まる未知なる世界への旅へと出発したのだった。

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