無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~   作:虎上 神依

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Chapter2 最強双剣士、冒険者になる
Chapter2-1 旅立ちの時


「よし、それじゃ出発ッ!」

 

「おーッ!! ……ってこの樹海をどう抜けるおつもりなんですか?」

 

 ウルナは心配そうな表情を浮かべながら首を傾げる。

 ったく、折角冒険への第一歩を踏み出したと言うのにノリの悪いやつだな。

 

「言ったろ? 俺にはこんな樹海、庭みたいな物だと」

 

「だけど一応、私この樹海で3日くらい迷った覚えが……、そもそもファスタットまでの方角分かるの?」

 

「ハハハッ、簡単な話ではないか」

 

 俺は左手を腰に当てながらビシッ、とどこまでも広がる雲一つない青空を指差す。

 

 

「空だ」

 

 

「はぁ……、空ですねぇ」

 

「空と言えば――?」

 

「空と言えば……? ハッ、まさか――」

 

 ポンと相槌を打ってウルナは納得した表情を見せる。ふぅ、ようやく分かってくれたようだな。

 

「ゼルさん、空中歩行できるんですね」

 

「はぁ!?」

 

「えっ……? だって空と言えば――空中歩行じゃない。私はもちのろんで不可能だけど確かにゼルさんなら出来そうね」

 

「いや……やろうとすれば出来るけど何でそんな面倒な事しなきゃいけないんだよ。大体、ウルナはどうやって付いてくるつもりだよ」

 

「えっ? 肩車やお姫様抱っことかで運んでくれるんじゃないんですか? あっ――でもちょっと恥ずかしいかも……」

 

 ウルナは自分で仕掛けた爆弾を踏んで自爆したのか一人顔を赤くしてモジモジし始めた。

 ――なんだコイツ……、ちょっと天然過ぎにも程が有るんじゃないか?

 

 

「はぁ……、こうすんだよ」

 

 

 そう言って俺は爪で右掌を軽く引っかき、少しだけ出血させる。

 

「えっ!? ちょっ、何してるの!?」

 

「うるせーよッ! ちょっと静かに見てろって」

 

 突然自虐し始めた俺に驚いたのか慌て始めるウルナをよそに俺はその血を右手の指に付けた。

 そして右手をパーの形に広げると、魔力を込めながら地面に思いっきり叩きつける。

 

「召喚ッ!! 天空の支配者――ホウオウッ!!」

 

 地面に複雑かつ繊細な魔法陣が描かれると俺達の目の前に全長4メートル程の巨大な鳥が現れる。

 しかも――羽は7色に輝き、目が潰れるぐらいの眩い光を放っている。

 だが実際よく見ると多くの羽が赤色の輝きを放っていて元々は赤色の鳥であったことを窺えるような容姿だ。

 嘴は黄色く、胴体はスラリとしていて如何にも威厳のある様な雰囲気を醸し出していた。

 

 

「お呼びですか? 我が主、ゼルファ様」

 

 

 どこぞの女神様の様な優しい声で思念会話の如く喋るホウオウは翼を器用に使って俺にお辞儀をした。

 まっ、ホウオウは元々から知能が高くて人の言葉を平然と喋る魔獣だからな。そんなに違和感はないけど――

 

「へっ!? ちょっ、ゼルさんなにこれぇっ!?」

 

「なにこれも何もちょいっとホウオウを召喚しただけよ」

 

「何そのちょっと遊びに行ってくるみたいな感覚で伝説の鳥召喚しちゃってるの!? 何者なんですか貴方!?」

 

 と言いつつも目の前に急に現れ、虹色に輝く美しい羽を広げるホウオウに見とれるウルナ。

 まぁ、ホウオウは幸せを呼ぶ鳥として有名だからな、きっと拝めて嬉しいのだろう。

 

「ところで、今回はどんな御用で私を?」

 

「あー、ちょっとこのお嬢ちゃんがファスタット行きたいて喚いているからそこまで連れて行ってくれないかな?」

 

「喚いてなんかいませんッ!!」

 

「御意。では私の背中にお乗り下さい」

 

 言ってホウオウは嫌がる素振りすら見せずその場にしゃがみ込む。

 そして俺は近所に停めてある船に乗るような感覚でホウオウの背中に飛び乗るとホウオウを見て固まっているウルナを見下ろした。

 

「あ? そんな所で何してんの、ウルナ。早く乗れよ」

 

「早く乗れって……、ホウオウにですか?」

 

「当たり前だろ? 空と言えば――飛ぶッ! それぐらい思いつけよな」

 

「えっ、えぇっ!? そ、それ、大丈夫なんですか? 落ちたりとか……、しませんよねぇ!?」

 

「落ちねぇよ……、しっかりと掴まっていたらな。でも心配ならホウオウに鷲掴みしてもらう?」

 

「その方が危険ですよッ!!! えー……、ど、どうしようっ?」

 

 一人その場で駄々をこねるウルナを横目に俺はホウオウに目で合図を出す。

 するとホウオウは嘴でウルナの服を咥え、ヒョイッと背中の上に放り投げた。

 

「きゃっ!? ちょっと、何するの!?」

 

「サンキュー、ホウちゃん。んじゃ、この娘が暴れる前にちゃっちゃと離陸しちゃおーぜ」

 

「御意、しっかりと掴まっていて下さい」

 

「え……、えっ! ちょっと、ストップストップストップッ!! まだ心の準備――キャアア――ッ!!」

 

 こうでもしないと多分乗らなかっただろうしな。

 と、俺は昼寝でもするかのようにホウオウの背中に寝っ転がると目の前にどこまでも広がる空を見た。

 やっぱりホウオウに乗ってみる空は格別だな、丸で違った世界を見ているみたいだぜ。

 

「いやあぁぁっ! 落ちちゃう落ちちゃう落ちちゃうぅ!!」

 

「うるせえな、静かにしとけ」

 

「何でそんな余裕ぶっこいていられるのよぉ!! あー、もう常識の範疇にし――きゃあああっ!!」

 

 ウルナはホウオウの身体が揺れる度に甲高い悲鳴を上げた。

 ――全くとんだ騒がしい奴が現れたもんだな。

 だが、彼女といて悪い気分はしない――寧ろ一緒に居て飽きなさそうで何よりだ。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ~、すごおぉぉい! こんなに高い所から世界を見下ろしたの初めてよ!」

 

 物凄い速さで飛ぶホウオウの背中でウルナは恐る恐る下を見下ろしては一面に広がる絶景に興奮し、はしゃいでいた。

 さっきまで「落ちちゃう」を連呼しては絶叫していたくせに気の変わりが早いやつだな。

 ――いや、それ以前に

 

 

「さっきからなんで俺にくっついてんだよっ!!」

 

「うぅ……、こうでもしないと怖いからぁっ!」

 

「いや訳わかんないッ! っておい! 密着すんなって!!」

 

 

 ウルナは先程から俺の肩をギュッと掴んでは抱き寄せるかのように体を寄せていたのだ。

 恐らく――高所が怖いがために俺にひっついているのだろうが、如何せん俺の背中に柔らかく温かい感触が伝わってくるから落ち着けなかった。

 落ち着く以前に……、心拍数がやたらと早まって顔から火が出そうだった。

 

 

「ふふっ、ゼルファ様にもようやく春が訪れたようで何よりです」

 

「いやこれは違うからな、ホウちゃんッ! 断じて違うからなッ!」

 

「それにしてもゼルファ様は初めてお会いした時と相変わらずね、さてそろそろ目的地に着きますよ」

 

「えっ……、本当っ? あっ、もしかしてあの街っ!?」

 

「はい、目立つとマズいので少し離れた所に着陸しますが……宜しいですか?」

 

「構わねぇ、はぁー、やっと開放されるよ」

 

「うわぁ~、ここから私達の冒険生活が始まるのね……、よーしっ、じわじわ滾ってきたぁ!」

 

 夢を見るかのように目を輝かせながら、可愛らしくガッツポーズを決めていた。

 ――不覚にも少しドキリとしてしまった。いや、俺みたいな熱血男がやったらただただ暑苦しそうなポーズなのに美少女がやるとこんなにも可愛く映えるんだね。

 それにしても私達……、か。冒険者として世界を旅するつもりなんてさらさら無かったけど……、ちょっとは楽しんでもいいかもな。

 

 俺は変わらず片手で俺の肩をガッシリと掴みながら下を見下ろすウルナの横顔を見た。

 その表情はどことなくあの魔族の子を彷彿とさせた。

 

 ――不意に目に焼き付けられたあの残酷な映像が脳裏によぎる。

 

 そうだな……、これ以上あんな辛い思いはしたくないし、彼女の夢を壊させるわけにはいかない。

 折角分かり合える人が出来たんだ――やれることはやるとしよう。

 

 俺は強くなった。

 あの時の俺とはもう違うんだ。

 だから――守ってみせる、何もかも。二度と過ちは繰り返さない。

 もう何も失いたくないから……。

 

「……どうしたの? もしかして私の顔になんかついてる?」

 

「いや――ちょっと不覚にも見とれていただけさ。気にしないでくれ」

 

「ふぇっ? ……そ、それって?」

 

「んで、掴まらなくてもいいのか? 着陸するぞ」

 

 俺はニヤリと口角を緩ませながらホウオウに合図を出す。

 ホウオウの方は既にやる気満々で聖なる鳥とは思えない、明らかに意地悪そうな笑顔を浮かべていた。

 

「では――急降下します。しっかりと掴まっていて下さいね」

 

「はぁ!? ちょっ、ちょっと! 何する気なの!?」

 

「垂直落下だよ垂直落下、楽しいぞー」

 

「はっ、えっ、イヤアアアアアッ!!」

 

 俺達は突如猛スピードで落下し始め全身がフワフワと浮いているような浮遊感に襲われる。

 まあ、言うまでもなくウルナは今までで最大級の絶叫を発していたが。

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