UQ HOLDER! ~闇の福音と空虚の不死人   作:瑠璃色伽瑠摩@氷蓮雪乃
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今回は謎の不死人の登場です!


拾弍: 最高傑作の不死人

披露会に区切りをつけた桂香達は、シスターの女性: 春日(かすが)美柑(みかん)に案内され貧民街の道を歩いていた。 都の建物よりもかなりボロい建物ばかりが並んでいるが、それでもどこか活気が溢れているように感じる場所だ。

 

「それにしても驚きましたよ、夏凛さん。 僕は上から来たから、話にしか聞いたことがなかったけど。 都の周りにこんな大きな貧民街(スラム)が広がっているなんて」

 

「・・・そうね。 塔が完成した2020年代にはピカピカだったこの都も、2050年代の混乱期を経て周辺部に貧民街(スラム)が拡大。 2056年の現在では新東京(しんとうきょう)貧民街(スラム)の人口は200万人を超えるとも言われているわ」

 

「200万も!?」

 

「・・・そんなに驚くことじゃない。 今どき、何処も彼処もこんなもんだ」

 

子供達に群がられ適当にあしらっていた桂香が九郎丸の方を振り返る告げ、再び子供達の相手に戻る。

 

「・・・そうえば、現在の状況はどうなんだ?」

 

「へぇ、実は・・・私らこの辺り一帯の土地の権利をもってましてね。 それを売れ売れって強面の兄ちゃん達が連日連夜、まーうるさいのなんの。 それで、断り続けてたら、実力行使に出てきたもんで、こりゃいけねってことで懇意のホルダーさんに頼んだって寸法で」

 

「・・・要するに人様の土地を無理矢理奪いに来たというわけか。 なら、この教会ごと移転すればいいんじゃないのか?」

 

「それがそういうわけにも・・・」

 

と、そのタイミングでもう一人のシスターの女性がお玉と鍋を手に歩くのが見えた。 その女性は手に持つお玉で鍋を強く叩いて、叫ぶ。

 

「おぉーら、ガキどもー! メシの時間だよーッ!! 早いモン勝ち! 余りはないからねーッ!!」

 

すると、壊れた壁から、子供が1人、2人とどんどんと顔を出してくる。 約何10人程の子供達が数人のシスターの元へと集まる。

 

「・・・かなり子供達の面倒を見ているようだな」

 

桂香はスープを子供達に配っている光景を眺めながら呟く。 普通ならばこの数の子供達を面倒見ることは大変だ。 経済面でも生活面でもだ。 それなのに子供達を助けるあたりが彼女たちの優しさなのだろう。

 

「よくやるよなー、何も得なことねーだろうに。 真似できねーよ」

 

「・・・何してる、刀太」

 

「ん? このスープうめぇぞ。 お前も貰ってこいよ」

 

「・・・そうえば、詳しく説明していなかったが、今回の仕事は子供達の今ある生活を守ることだ」

 

桂香は群がる子供達にスープを貰いに行くよう促して、壁にもたれかかり、告げる。 その内容に刀太はスープの空き皿を置き、宣言する。

 

「OKだぜ、桂香! こんなうまいもん食わしてもらったからには、この土地、何からでも守ってやろうじゃねぇか!!」

 

「・・・そうしてもらわなければ困る。 それに・・・敵のお出ましだ」

 

「え?」

 

桂香は教会を指さして呟くと、途端、教会の一部が見えない何かで破壊された。 それはまるで暴風だ。 そして、殺戮の風。 人に当たれば即死レベルだ。 その風の砲弾が続けざまに桂香達のいる地面を数箇所ほど抉る。

 

「・・・あそこか」

 

桂香は全ての風の砲弾を躱し、それが飛んできた方角から姿を現した髪の毛はなくおでこにバーコードが記された男の眼前に移動し、鳩尾へと捻りを込めた拳を放つ。 刹那、視界の外から放たれた雷の槍が桂香の体を貫き、吹き飛ばした。 桂香は雷の槍を引き抜き、放たれた方面を見やる。そこにいたのは、フードで全身を隠した小柄な誰か。 その誰かの顔がチラッと覗く。それは、紅い瞳だ。 戦いを、殺しを、楽しんでいるような瞳。

 

「・・・夏凛、そいつは頼む。 俺はあいつを殺す」

 

桂香は詠唱しながら、夏凛に声をかける。 その言葉に彼女はイエスもハイもいわずに舌打ちをして、バーコードの男に襲いかかった。 桂香はそれを確認し終え、魔法を放つ。

 

「-- 星屑(グラディネラ)()彗剣(スパーダ)

 

(ヤクラーティオ-)()投擲(フルゴリース)

 

片や幾千の星屑で形成された一振りの大剣。

 

片や莫大な魔力で形成された雷の槍。

 

刹那、それがぶつかる。 とてつもないほどの爆発音と砂煙が舞い、大地が震える。

 

桂香は続け様に幾千本もの片手剣や大剣、細剣に短剣、刀に槍が出現し、射出される。対するフードの誰かは、炎の剣や水の矢、雷の槍に氷の杭、風の刃が現れ、放たれる。 互いに射出を繰り返し、全ての刃は使用者に届かずにすべて相殺される。 それは既に分かりきっている事だ。 桂香は即座に自身の体に魔力の力を込めて、突撃する。 それを悟ったのか、フードの『誰か』も自身に魔力を込め、接近する。 右拳と左拳がぶつかり、再び先程とまではいかないがそれでもかなり高い爆発音が響き渡った。 彼らが踏みしめていた大地が砕ける。 そして、そこからは常人には追いつけない速さでの化物同士の殴り合いだ。 顔面を殴れば、顎を打ち抜かれ、鳩尾に拳を叩き込めば、右肩を砕かれ、逆に左腕を砕けば、脇腹に蹴りが叩き込まれ、息がむせかえる。 普通の人であれば即死するレベルの打撃音と威力。 それにより、桂香はフードの『誰か』が不死人であると予想する。そうであるならば、力を抜く必要は無い。 全力全開の本気の魔力でフードの『誰か』を倒すしかない。 桂香は右拳に最大力の魔力を集めていく。 しかし、それを許すほど相手も優しくはない。 フードの『誰か』はそれに気づいたのか右腕を砕こうと襲いかかる。

 

桂香はその攻撃を躱し、時に弾いて、右拳に魔力を溜めていく。 最大限まで残り約2分。

フードの『誰か』は、人間離れした速さで桂香の顎を真下から打ち抜く。 それにより、脳が揺さぶられ、吐きそうになる。 だが、それを何とか堪えて、腹部に膝を叩き込み、更に左拳で後頭部を叩く。 ガドッという音が響き、フードの『誰か』が地にめり込む。

 

「-- とどめだ」

 

そして、魔力の込められた右拳をフードの『誰か』のがら空きの背中を貫いた。 が、手応えを感じない。 砂煙が消え、砕けたその場に見えたのは、フードだけだ。肉体はない。 桂香はフードを投げ捨て、背後を振り返る。

 

そこにいたのは、黒色の髪に、紅い瞳。 小柄で華奢な体躯をした少女が、瓦礫の山に立っていた。 そして、その少女は鈴の音にも似たとても透き通るような美しい声音で告げる。

 

「創造主に造られし出来損ないの欠陥品。私の劣化版。 私の兄さん」

 

「・・・兄さん? 俺の妹はアイツだけだ」

 

桂香は剣を構えて、怒りに顔を歪める。 しかし、対する少女は淡々とした口調で告げる。

 

「あなたは私の劣化版。 私はあなたとも姉さんとも違う。 私は最高傑作の不死人。 けど、まだうまく扱えない。だから、今日はここまでにする。 さよなら、兄さん」

 

少女は魔法を使う素振りも見せずに、というか元々幻影だったかのように少女は姿を消した。

 

「--逃げたか」

 

桂香は剣を霧散させ、呟く。 そして、夏凛達の方を見れば、全裸で、バーコードの男にかかと落としを叩き込み倒した所だった。 それから、桂香達はそのバーコードの男を捕縛し、貧民街の人達と共に壊れた建物の修復を開始した。

 

 




次話からは原作沿いで当分進みます。

と言っても、メインは桂香です。

それでは、また次回に!!







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