織田信奈と正義の味方   作:零〜ゼロ〜

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 お久しぶりです。現状報告や遅れた原因については後書きにて書かせていただきます。まずは、執筆が遅れてしまい本当にすみませんでした。
 ではどうぞ。


夢、黒い太陽

 気がつけば、見知らぬ土地で立っていた。周りを見渡してみれば、今までに見たことのないほどの数の建物が並び続け、それらは全て木造建築でないことが一目で見て取れる。空気は淀み、普段と比べると少し臭いように感じられた。

 

「ここは、一体…?」

 

 急激な展開に頭がついてこないが、落ち着かなければ。そう考えながら長秀は、一人坂道を歩く。

 少し落ち着けば理解できるかもしれない、そう考えていたのだが、舗装された道を歩くこと数分。時間が経てば経つほど謎が深まってしまう。恐らくは石に近い、いや、石よりも頑丈な物質によって造られた高い家。道を馬と同じような速度で走る、未来的な乗り物。それは絡繰にしてはあまりにも大きく、あまりにも多すぎる。また、服装も自分たちとは明らかに違いすぎた。和服を着た人間など一度も見かけることがなく、南蛮人が来ている「洋服」に身をつつんでいる。良晴と全く同じ服装の若者も数人見かけた。それ以外にも色々おかしな点が挙げられるのだが、挙げ始めたなら切りがないので割愛しよう。むしろ、彼女が生活している世界の名残が全く感じられない。

 

「…信じられませんが、つまり、ここは。未来、ということでしょうか」

 

 幸いなことなのかはわからないものの、どうやら長秀の姿は視認されていないらしく、彼女がいくら挙動不審な動きをしたとしても怪しまれずに済んでいる。

 だいぶ混乱が続いたが、何度か深呼吸したことで落ち着きを取り戻した長秀は改めて街を見渡してみた。清潔な道にはゴミがほとんど落ちておらず、土を何かしらの方法で舗装しているようである。すれ違う人々は皆笑顔で、争いなど味わったことがないように見てとれた。血生臭い雰囲気は全く感じられず、平和を体現したかのような暖かい雰囲気は、羨ましく思えてならない。

 

「姫さまの夢が実現すれば、戦乱の世が続く日ノ本も、いずれはこんな平和な世界になるんでしょうね」

 

 そう、平和な世を築き上げる。そのために戦っているのだ。人々が争いで命を奪い合うことなく、生涯を家族と一緒に歩む。なんて

美しいのだろう。なんて………希望溢れる未来なのだろう。

 目の前から歩いてくる親子。恐らくは父・母・息子なのだろうか。両親と両腕を繋ぎ、笑顔で歩く赤髪の少年。年齢は六つくらいだろうか。傍から見ても幸せだと見てとれる彼ら三人の歩く姿はなんとも微笑ましい。彼らとすれ違い、彼女はそのまま前に進もうとした。……したのだが。

 

(何故でしょう。あの家族が、なぜここまで気になるのでしょうか)

 

 足が前に進まない。どうしても、無理に足を運び出そうとしても一切動かないのである。それに気づいた瞬間、何故か震えが止まらなくなった。何故かわからない。それでも、振り向いた瞬間に後悔することが"直感的に"嫌でも理解出来た。いや、違う。理解させられたのだろう。彼らの笑顔を思い返すたびに脳が拒絶反応を示してしまう。

 震える足を無理矢理方向転換させ、前を見据える。大丈夫です、そう信じながら。そう祈りながら。

 

 

 

 振り返った先にあったのは「地獄」だった。

 

 

 

 

 先ほどまでの平和な街は見る影もなく、視界を覆うように塞ぐ、激しい炎。地を這うように走り、空を覆うかの如く立ち昇る炎を前に、呆然と立ち竦むのが精一杯だ。あれほど頑丈に見えた建物は崩れ、ところどころに禍々しく地を彩る紅い花を咲かせている。逃げ遅れ、そのまま潰されたのだろうか。突発的な地震なのか、それとも雷なのか、この現状が引き起こされた原因、それすらも理解出来ない。

 自然と身体が動いた。さっきの少年を探さなければ。死んでほしくない、助かって欲しい。まだ彼は幼いではないか。さっきまではあんなにも幸せそうだったではないか。何故、どうして死ななければならない。

 道を歩けば歩くほど心を蝕んでいく絶望。生きている人間を必死に探しても、誰一人として息をしている者はいない。それどころか、人としての原型を留めている人間すらほとんどいなかった。炎によって燃え尽きた、小さく縮こまっている死体。建物の崩壊に巻き込まれ、頭が丸ごとない死体。我が子を炎から護ろうと、胸に抱いて必死に庇い焼死したと推測される親子の死体。少し見ただけでも叫びたくなるような光景をひたすらに走り続ける。どうにか助けたくても、今の長秀は物に触れることが出来ない。まだ若干呼吸のある人を見つけても、死を見守ることすら出来やしなかった。

 ひたすら走り続けて、何度も転んで、必死に声を上げて、彼女は少年を探す。胸には絶望を抱きながら、それでも一握の希望を頼りに。死が蔓延したこの場所には人が焼けたときの独特な異臭が広まり、視覚情報によって気が狂いそうになりながら。

 

 

 

 

 

 

 やがて、彼女は遂に少年を見つけた。あちこちに転がっている死体──いや、最早死体とすら呼ぶことのできない状態のモノ──を踏み越え、耳を塞ぎ、涙を流しながらもなお歩き続ける少年を。

 長秀は必死に手を伸ばし、胸に抱こうと少年を手繰り寄せたのだが、彼に触れることは叶わない。この世界で長秀が物事に干渉することなど出来ず、そんな事をわかっていても、必死に彼を想うことは止めなかった。

 突如止まる足。彼自身、もう限界はとっくに超えていた。父親が建物に押し潰され、母親は炎の中に消えてしまっても足を動かし続けた。救いを求める断末魔。母を探し求めて泣き狂う赤ん坊。最後に水を求めて縋ってくる女性。どんなに救おうと思っても、彼らの願いや祈りを叶えるにはあまりにも無力過ぎたのだ。

 そんな彼の心を圧し折るかの如く降りかかる災難。眼には何の感情も宿しておらず、まさに亡霊のようだ。そんな彼も限界を迎え、そのまま仰向けに倒れる。

 

(彼は先程まで、幸せだったのです。何故ですか、何故こんな目に合わなければならないのですか…!)

 

 全てを諦めたかのような絶望を感じさせる表情。彼女は徐々に呼吸するのもままならない少年に対して何も出来ず、必死に救いの声を上げ続けた。自分が干渉出来ないのは知っている。この場に生存者などいないことも薄々気がついている。それでも足掻くことは止められなかった。

 

 ただひたすら祈り続け、長秀が諦めかけそうになっていた刹那、男の声が周囲に響き渡り、その男は少年の元へ駆け出していく。

 

「良かった…。本当に、生きていてくれて…!」

 

 瓦礫から少年を見つけ出し、その小さな手を大事そうに握る男。

 

「ありがとう…!ありがとう…!」

 

 一人の子どもを救けたはずの男はまるで救われたかのように感謝の言葉を重ね続け、涙を流し続けている。

 

 

 

 

 

 そんな異様な光景で。

 

「お前は、この光景を見て何を思う。何を感じる」

 

 ────今までいなかったはずの人間が、突如隣に現れたのだ。

 今までいなかったはずの人物が何故現れたのか、それについては全くわからない。また、その人物の顔を見ようとしても、何故かぼやけてしまう。

 

(いえ、見ているときは顔が判るのです。しかし…)

 

 色々と考えてみたものの、結論は一つ。顔を見て得た情報が即座に消去されている。

 得体の知れない男について彼女は訝しみつつもその問いには答えず、問に問で返した。

 

「……彼は、救われるのでしょうか」

 

するとどうだろう、男は返答を聞くや否や乾いた笑い声を上げ、こちらに振り向く。無機質な目に背筋が凍るような感覚が奔るのを全身で感じた。

 

「本来死ぬはずだったはずの少年はあの男によって病院に運ばれ、一命を取り留める。命という点においては救われたことになるだろうな」

 

「……そうですか」

 

 『命という点においては救われた』という言葉に喜びの感情や悲しみの感情は一切感じられず、そこから相手の考えを推測するのは不可能。こういった言い方であれば、この後平穏な生活を送れた、という線は消えてしまう。それは…ただただ悲しい。

 

「今話すべきことでは無かったか。まあいずれ知ることになるだろう、今回はここまでのようだ」

 

男がそう言った瞬間、突如として視界が歪み始め、脚に力が入らずに後ろへ倒れてしまう。

 既に男は立ち去ったようで、この場には長秀と男と少年のみ。長秀は地の底に吸い込まれるような感覚に襲われ、この世界から消えることをありありと自覚する。歪む視界にはこの火事を祝福するように爛々と照らす黒い太陽があり、吐き気を催した。

 

I am the bone of my sword.(身体は剣で出来ている )

 

 意識が遠のきこの世界から消滅する刹那、彼女の頭には何故かこの言葉が響き渡った────。

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢、でしたか。それにしても、なんて……」

 

……現実のような夢だったのだろう。

 彼女は目覚めると、安心したように。そして少し恐れるかのように、自身の部屋を見回して落ち着こうとする。未だに人が焼ける臭いがする気がした。

 あの光景は一体何だったのだろうか。夢にしてはあまりにも情報量が多すぎて、少し頭の整理が出来ていない。

 赤銅色の髪の少年と親子、あの未来的な建物や街、生き地獄を体現したかのような火災、黒い太陽、涙を流しながら少年の手を握った男性、正体不明の男、そして…………最後に聴こえた言葉。

 

「体は剣で出来ている、ですか…。意味はあまりわかりませんが、それは……」

 

 なんて悲しい言葉だろう。そう思わずにはいられない。

 そもそも当たり前のことだが、人間の体は剣ではない。刃物で容易く傷ついてしまうほど柔らかな肌であり、どれだけ鍛えたとしても刃が通らないなんてことは起こりえない。

 きっと、この言葉は心の在り方の話だ。

 身体が貧弱であっても、心を鋼にして。何度叩かれても折れない心。そんな心を持つのは難しく、そして…………非常に悲しい。人間であるならば、そんな絡繰のような考えを持ってしまうといつの日か破綻してしまうだろう。そんか結末なんて目に見えている。

 意識を思考によって奪われながらいつもの朝のように着替え、布団を畳み、朝食の準備をしようと台所へと向かったのだが、なんとなく胸騒ぎを感じていた。寝起きだからだろうか、それとも寝覚めが悪かったのだろうか。昨夜の記憶が朦朧としていた。

 

「お母様、衛宮どの、おはようございます」

 

「はい、おはようございます」

 

「あ、おはよう。長秀さん」

 

 母と士郎は笑顔を浮かべ、朝の挨拶を返してくれた。既に温かい料理が並べられており、起きたばかりではあるが料理の匂いが食欲を増進させる。

 

「お二人が朝食を作っている間、私はぐっすりと寝ていたのですね…。大変申し訳ありません」

 

「俺が進んでやったことだし、長秀さんに否は無いぞ?」

 

 お腹が減っていることを実感すると共に申し訳ない気持ちが自らを襲い、頭を下げた。二人は何事もないようにしてくれ、私にとっては大変ありがたい。

 

「では、冷えないうちにいただきましょうか。いただきます」

 

 母はそう言い、その言葉に釣られて私たちも手を合わせる。

 白米に焼き魚、漬物、お豆腐と大根の味噌汁。一般的な朝食ではあるが、家庭料理らしい温かな味わいが感じられ、三人は一言も話す間もなく食べ終えた。それはそれはとても平和的な光景である。

 

「士郎さんのお料理は大変美味しいですね。さすが長秀さんの婿候補です♡」

 

…………それも一瞬だったのだが。




 はい、簡単に半年間を説明するならば

一、浪人しました
ニ、勉強が忙しくて執筆する余裕がありませんでした
三、北海道の地震の被害を直接受けました

という感じです。今朝電気や水が復旧し、家族や親戚、友人たちの無事も確認できました。
 あまり長く語るのもアレですが、オール電化の家庭はガスコンロを用意すべきですよ。おかげさまでカロリーメイト生活が続きましたので。流石に飽きましたね。

 またいつ投稿できるかわかりませんが、僕としても努力していきますので温かく見守っていてくださると嬉しいです。よろしければコメントや高評価よろしくおねがいしますね!
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