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―――――我らの民族に伝わる物語。これは、民族の危機に駆け付けた、無銘の英雄の物語だ。
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我ら民族は、とある地方の小さな国の山の麓にて暮らしている。我ら民族は代々眼が紅い。男も女も肌の色素が生まれつき薄く、白い肌であった。
血の影響か、男共はみんな力が弱く争い事には滅法弱い。女共は線が細くなりがちなので、美しかった。
力の弱い民族が争い事を行える訳が無く、元々平和主義者の我らが先祖は山の麓に住処を移し、他の者との交流を一切絶っていた。しばらくは平和な日々が続いていた
…のだが。野蛮な多民族によって、我らの平和な生活は終わりを告げた。その民族が、我らの村に襲撃を仕掛けてきたのだ。
どうやら、その民族間では「真っ白な肌をした女の生き血を飲むと、どんな病気でも治る」という迷信があり、ちょうどこの頃は重度の感染症が流行っていたようだった。
勿論、外の者との交流を絶っていた我らには知る由は無い。まぁ、知ったとしてもどうしようもない事態なのだが。
山の麓に紅い眼を持つ色白の民族がいる、という噂を聞いた彼らは偵察にて確認しに来た後、男たちで攻めてきたらしい。
「他の民族が攻めてきた」。その知らせを聞いた時にはもう既に遅し。敵はすぐ目の前に迫っていた。誰もが「もう助からない」と嘆き、悲しみ、涙した。
我らには腕力はなく、特別な文化や能力があるなんてこともない。しかし、わずかな可能性でもいい。他民族を追い払うべく、男たちは戦うことを決意する。無論、武器など持っているはずもない。人々は鍬や包丁、鎌を持って戦った。ある者は叫び、ある者は咆哮し、ある者は怒鳴って敵に向かっていく。村を守るために。仲間を、家族を、死なせないために。
…我らは惨敗した。
向こうは屈強な戦士たち。こちらは非力な男たち。勝負になるはずもなくあっさりと負けてしまったのだ。我らは自らの非力さを呪った。我らは、運命を呪った。
「神よ、我らに救いを与えてください…」不意に口にした言葉。その言葉が引き起こしたのだろうか。本当に、神様が救いの手を差し伸べてくれたのだろうか。真意はわからない。
「他人の命を奪って病気を治そうとする。そんな事が許されていいはずがない」
―――――刹那。
一人の男が突如現れた。赤い髪に白髪が混じる頭に、燃え盛るような赤の射籠手の左腕。黒いズボンに白のマントを羽織る男。
その琥珀色の瞳には、揺るがない信念と怒りが宿っていたという。
突如彼の周りに電撃が走ったかと思えば、いつの間にか無数の剣が作り出されていた。我らは自らの目を疑ったが、今目の前で起きているのが夢でも幻でもないということを知ると、こう思わざるを得なかった。「彼は、神からの使者に違いない…!」と。
その光景に怯んだ敵の男共は、次々に気絶させられた。痛がる素振りもなく、何故自分の視界が揺らいだのか。それすらも気づけなかったようだ。まさに神業とも言えよう。一瞬で敵の懐に飛び込み、みぞおちを突き上げる。いつの間にか、赤の男以外には立っている者がいなかった。彼の手にはもう、刀が握られていなかった。
赤の男は敵のリーダー格の者に歩み寄り、口を開く。
「今回は命を奪わない。でもまた、同じように攻撃を仕掛けてくるのなら容赦はしない。村に伝えろ。正義の味方を名乗る者が『病気に見舞われたことには同情するが、人の命を奪っていい理由はない。赤の他人の命を奪ったら自分の病気が治るだなんてありえない。次に何かするのであれば、正義の味方が許さない』と言っていたと」
そう言い終わった男は他民族の者たちを村へと返し、命を奪わなかった。「我々は救われたのだ!神の使いによって!」という声が何処からともなく挙がり、村の民が彼を囲って騒ぎ、崇め始めた。彼の戦闘は常人のものとは大きくかけ離れていたのだから、神の使いと勘違いするのも仕方がないと言えるかもしれない。
「神の使い」と呼ばれた青年は苦笑いしながら、
「俺は神の使いみたいな凄い人間じゃないぞ。理不尽な理由で死にそうな人がいた。だから勝手に助けただけだ。」なんて言う。
村の者を代表し、村長である私が前に出る。
「この度の手助け、感謝してもしきれません。貴方がなんと言ったとしても、貴方は我々にとっての“英雄”です。私どもに出来ることは少ないですが、遠慮せずに仰ってください。出来る限りのお礼はさせて欲しいのです」
「俺は報酬を受け取りたくて助けたんじゃない。強いていうなら、自己満足みたいなもんだ。皆を助けられて俺は安心したし、皆からは感謝もされた。これ以上は贅沢だ」
「しかし…」
「皆の怪我は大丈夫みたいだな…。よし、俺はもうそろそろ旅に出るよ」
「本当に何も要らないのですか…?」
彼は無言で頷く。彼の瞳には一切の曇りは無く、嘘を一切ついていないのがわかった。
「そうですか…。では、せめて名前だけでも教えてください」
そう言って、私は彼に頭を下げる。我々の窮地に駆けつけて下さった恩人の名前だけでも知りたい。せめて、彼の名前だけでも後世に語り継ぎたい。そう思っての発言だった。
「えっと…。そう言われても、俺は名乗るようなもんじゃないぞ。」
そう言いながら、苦笑する青年。彼は踵を返し、歩きながら
「…そうだな。“無銘”だ」
とだけ言い残し、いつの間にか消えていたのだった。
我々は無銘の英雄に救われた。彼は、アーサー王やジャンヌ・ダルクの様な英雄とは比べられる事が無いほど無名で、小さな存在だったのかもしれない。
それでも、我々の正義の味方には変わらない。
我々は語り継いでいく。
ノッブ「さぁさぁ始まったのじゃ!織田信長の野望!」
沖田「織田信奈の野望ですよノッブ。それじゃあ某ゲームの作品と被っちゃいますし…」
ノッブ「いいんだよ細かいことはノリで。…次の話から戦国の世に飛び込んでくるのじゃろ?」
沖田「多分そうだと思いますよ。筆者の気分次第ですけど」
ノッブ「メタ発言キタァァァァァァ!!」
沖田「…何はともあれ、次回もお楽しみに!幕末最強剣士の沖田さんと」
ノッブ「この作品のメインヒロイン、織田信長でお送りしたのじゃ!」