おやすみ人類   作:トクサン

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地獄の口

 掃除も無事終わり、昼食を食べた後は午後の基礎訓練。ピカピカになった廊下を歩くのは気分が良い、紬達も頑張って教室を磨き上げたので少なくない達成感がある。

 掃除の時間は座学を潰すだけで、本分である基礎訓練と操縦訓練はいつも通り行われるらしい。どうせなら基礎訓練の時間に掃除をしたかったとボヤてみるものの、そういう考えが生徒にあるから座学の時間に清掃を行うのだろう。

 悲しいかな、世の中そんなものである。

 

 いつも通り体育館に集まった操縦科の面々、最早慣れたもので開始五分前には整列して静流教官を待つばかり。皆で今日も走り込み辛いなぁと言い合いながら教官を待っていると、体育館の入り口から鉄扉を引く音が鳴り響いた。

 反射的に背筋を伸ばして前を向く、全員が姿勢正しく待機の姿勢。しかし何やらガチャガチャと時折金属同士のぶつかる音が響き、思わず横目に体育館の入り口を見る。

 すると静流教官と堂島教官が何やら各々大きな背嚢を背負って此方に歩いて来ていた。非常に嫌な予感がする、この手の紬の予感は嫌と言う程当たった。

 

「……なぁ紬、すンげぇ嫌な予感がするんだけどよ」

「……奇遇だね、俺もだよ」

 

 杉田と紬は互いに引き攣った笑みを零し、大谷に至っては未来が見えているのか魂が抜けかけている。背負った大荷物を地面に降ろした両教官は紬達の前に立ち、いつも通りの号令を行った。

 第四〇六速成機甲兵部隊総員五名、事故なし、現在員五名、集合終わり――。

 号令を終えた静流教官はこれまた良い笑顔で紬達を見る。背後の堂島教官が心なしか非常に可哀想な連中を見る様な目で此方を見ているが、努めて気付かないふりをした。そして静流教官は大荷物を一瞥し、それから弾んだ口調で告げる。

 

「宜しい、では今日の基礎訓練を始めます、そろそろ皆さんも普通の持久走では物足りなくなってきたでしょう――そうですよね、藤堂生徒?」

「いえ、現状で十二分過ぎる程に満足していますッ!」

「そうですか、やはり物足りませんか、えぇ、えぇ、分かっていますとも」

 

 ですよね、何となく分かっていました。

 

「その為に今日からは通常の持久走に『重り』を加えます、本来の訓練生ならば対ポーン兵装を担いで走って貰うのですが……貴方達は騎兵、間違っても生身で連中と戦ってはいけません、ですので今回はバトルドレスに搭載されている緊急脱出兵装を身に着けた状態で走って貰います、状況の想定としてはバトルドレスが撃破され脱出後、友軍の前哨基地に向かう道中とでもしておきましょう」

 

 そう言って背嚢の結び目を解き、中身を全員の前に晒す静流教官。背嚢の中には見た事のないプロテクターの様なモノや小さなポーチが入っていた。堂島教官と静流教官が丁寧に全員の前に装備を並べ、計五人分の緊急脱出兵装が背嚢から取り出される。

 

「内容は見ての通りです、武装はサバイバルキットに入っているナイフとSTFのみ、このSTFは実銃ではありませんが重さは大して変わりません、ポーチの弾倉二つは対ポーン用のショック弾です、殺傷ではなく足止めを目的としています、残りは高低差のある地形で移動する為の小型アンカーショット、サバイバルキットには二日分のカロリーブロックと給水パック、陸兵の背負う装備に比べれば軽い内容ですが決して楽だとは考えないで下さい」

 

 プロテクターは実際にバトルドレスに搭乗する際に着用するバトルスーツの代わりらしい、紬達は静流教官の指示を受けプロテクターを身に着けると片足のホルスターに拳銃――実際はプラスチック製の模造品――を差し込みポーチを背負った。アンカーショットはポーチの脇にぶら下げて持ち運ぶ形だ、そうするとズッシリとした重量が両足を伝って思わず冷汗が流れる。

 これでも対ポーン完全兵装の陸兵には遠く及ばないと言うが――体感では十キロ近い重量、正に重りという表現が相応しい。

 

「実際の緊急脱出兵装はもう少し軽量になりますが、訓練時には毎回その重量で走ります、今日の目標周回は――そうですね、今日は重量に慣れる事を重視して二十周としましょう」

「二十……」

 

 この重量の装備を背負って二十周、とてもじゃないが出来る気がしない。背負った装備がズシリと重さを増した様な気がした。隣を見れば死にそうな表情をした大谷、杉田は額に冷汗を流している。

 

「いつも通り私が最後尾をゆっくり走っていきます、追い抜かれた生徒はペナルティとして追加で一周、二度追い抜かれたら二周と増えていきます、ただし今回は初回ですから休憩時間を設けましょう、五周につき一分の休憩を認めます、私も五周した場合一分間休憩を行いますのでペナルティは変わりません」

 

 静流教官は優し気な笑みを浮かべて告げる、五周に一分の休憩、無いよりはマシなのだが休憩など挟んだら二度と立ち上がれないのではと言う確信に近い予感がある。善意からの言葉だろうか? いや、そんな筈はない。

 紬が戦々恐々としていると、静流教官も紬達と同じ装備――ではなく陸兵の対ナイト用重火器兵装を担いで告げた。

 

「それでは今日も張り切って走りましょう――良いですね?」

「はいッ!」

 

 返事は大きな声で――尤も、今だけだろが。

 

 

「連続歩調! 歩調、歩調、数えッ! イチッ!」

「そーれッ!」

「ニッ!」

「そーれッ!」

「サンッ!」

「そーれッ!」

 

 途轍もなく暑い、背負ったポーチが肩に食い込んで痛い。背嚢よりも小さく軽い筈なのに何故こんなにも重く感じるのか。紬は両手を必死に振りながら走り、背後の掛け声に合わせて声を張り上げる。そうは言っても最初の頃に比べれば大分声も小さくなり、隣に居た大谷はいつの間にか消え前を走る風香ばかりを見ていた。

 自分はふらふらで体力も尽きかけだというのに――全く以て敵わない、コイツの体力は底なしなのだろうか。いや、良く見れば風香も大量の汗を掻き息も上がっている。風香だって一杯一杯なのだ、十キロという重量は思った以上に自身の体力を奪う。

 

「どうしました藤堂生徒、足が進んでいませんよ」

「ッ、くぅ……!」

 

 予想以上に食い込むポーチのベルト、重量による関節の負荷。気付けば歩幅が狭くなって直ぐ後ろに静流教官が張り付いていた。既に杉田も大谷も恋も、静流教官に抜かされている。

 別に教官が意地悪をしている訳ではない、単純に紬達の足が鈍り始めているのだ。もう一周追加なんて苦行はごめん被ると底を尽きかけた体力を振り絞って加速するも、無理な走行など直ぐに限界が来る。

 じわりじわりと距離を詰められた紬は遂に静流教官の後ろへと流れた。

 

「藤堂生徒、ペナルティとして一周追加です」

「っ、はッ、く、っそ」

 

 自分の横を悠々と駆けて行く教官、その背中に恨めしい視線を飛ばす。

 自分達より重い装備、それこそ三十や四十キロの装備を担いでいるというのに全く疲れが見えない。額に汗こそ掻いているものの息は乱れていないし足取りも確りしている、一体どんな体力をしているんだと思った。

 

「はぁ、ハッ、あぁ、駄目だ…ぅ……」

 

 教官に抜かされたという事実が紬の上に圧し掛かり、そのままゆっくりと速度が落ちて早歩き程度の歩幅で駆ける。現状走り続けられる速度がこのレベルであり、数日間の基礎訓練を耐えてきた太腿がカクカクと笑っていた。

 

「はぁ、ハァ、ハッ、み、水……水分、補給」

 

 数分程惰性で走って体育館前のスタート地点、これで確か十周目だったか。一分の休憩を行うという名目で水道まで歩き、水を口に含む。このぎらつく太陽の下で飲む水は最高に美味しく感じた。しかし呑み過ぎるのは良くない、胃まで重くしたら本格的に走れなくなってしまう。

 紬は口に向けていた蛇口をそのままに、頭に水を被って汗を流した。未だに水を要求する喉を黙らせ荒い呼吸を何とか整えようとする。肺が熱を持って体が焼けている様だった。

 

「はぁ……ふぅ、はっ……はっ」

「……大分、お疲れの様ですね」

「ん……ふっ、ハッ……恋ちゃん?」

 

 額に張り付いた髪を払ってその場に座り込むと、隣から聞き覚えのある声が聞こえてくる。声の方向に視線を向ければ直ぐ隣に恋が座っていた。紬と同じ汗だくで、先程水分を口にしたのか手の甲と口の端が濡れている。

 全く気付かなかった、疲労のせいだろうか。

 

「汗、凄いですよ、顔も真っ赤ですし」

「そりゃあ、あれだけ走ればなっ……ふぅ、恋ちゃんは、こんな所で休んでいて良いのか?」

「私はもうペナルティで二周追加です、自分のペースで走っていますから」

 

 額に汗を掻きながらも努めて何でもない様にすまし顔でそう答える恋。確かに大きく肩を上下させながら息を繰り返す己と比べると余裕がある様に見える。どうやら彼女は最初から教官のペースに流される事を嫌って自身の限界一歩手前で体力を維持していたらしい、賢い選択だと紬は思った。同時にそんなやり方があるのかと感心する。

 

「……後で教官に怒られそうな走り方だな」

「倒れて動けなくなるよりマシです」

 

 紬の言葉に恋はそっぽを向いて吐き捨てた。確かに動けなくなって搬送されるよりはマシか、今日は特に日差しが強い、熱中症にでも罹ったら笑えない。

 

「ふぅ……休み過ぎてもアレですし、私はもう行きます」

「了解……俺も一分後位に行くよ」

「はい」

 

 早々に会話を切り上げた恋はそう言って立ち上がろうとして――すとんとその場に尻餅をついた。ぱちくりと目を見開く恋、隣にいた紬も一体どうしたんだと驚きの表情を浮かべる。自身のペースで走って体力を温存していたのではないのか。

 

「……恋ちゃん?」

「……私はどちらかというと体力より足の方が先に限界が来たんです、昨日までの訓練で筋肉痛だっていうのに、正直立つのも辛いんですよ」

「……膝がガクガクしているけれど」

「えぇ、けれど平気です」

 

 見れば恋の膝が凄まじい勢いで震えている。恋の表情は相変わらず能面の如く微動だにしないが、下半身だけは力強く彼女の現在状況を表していた。明らかに平気じゃない、これは限界スレスレの状態だ。

 膝が笑うという表現があるが、実際に「フフフ」と笑っていそうな震え方だ。というか少々震え過ぎではないだろうか、ぶっちゃけ怖い。

 

「手、貸すよ……?」

「……お願いします」

 

 助け合いは大事だ、何事も。

 

 

 ☆

 

 

「お……わ、った」

 

 地獄の装備付き持久走を終えた紬達は全員体育館の入り口前でコンクリートに横たわり、荒い息を繰り返しながらひんやりと冷たい地面に頬ずりする。自身の汗を拭きとったタオルはずぶ濡れで、絞れば汗が染み出そうな程。

 地獄だった、本当に地獄だった……! 

 結局紬は目標の二十周にプラス三周を加えた二十三周をやり終えた。静流教官は宣言通り決して早くはない速度で紬達を追っていた訳だが――後半は最早全員が教官を追う形になっていたが便宜上こう言わせて貰う――あの風香ですらペナルティ二周を喰らったと言えばその過酷さが分かるだろう。

 兎角静流教官はペースを落とさない、早くもならないし遅くもならない、機械的な正確さで淡々と走っていた。

 最も周回ペナルティを食らったのは大谷のプラス六周、流石に遅れ過ぎたと思ったが今にも死にそうな大谷を見ているとそんな言葉も引っ込んでしまう。ただですらクソ広い校内、十キロの重りを付けて走り回る体力は今の紬達には無かった。

 

「も…僕……む、理、です、立て、ません」

「やべぇ、目が……回る」

「うへぇー……恋、だいじょうぶー…?」

「……大丈夫、だい、じょうぶ」

「……それ、大丈夫、って、言わ、ないよ」

 

 全員が全員地面に伏せて総崩れ、最早恰好を取り繕う余裕さえも無い。そんな紬達の醜態を静流教官は眺め満足そうに頷いていた。分かっていた事だがこの人はドSだ、後ろの堂島教官でさえ同情的な視線だと言うのに。

 

「宜しい、全員ペナルティ分を含め走り切った様ですね、訓練開始から一週間と経っていない内に少々無謀かと思っていましたが――どうやら認識を改める必要があるようです」

 

 改めなくて良い、これは無謀だ。

 全員が視線でそう訴えかけるものの教官はどこ吹く風、気にした様子も見せず「さぁ、まだ訓練は終わっていません、整列するまでが訓練です」と遠足の様な事を言い出した。疲労でふらつく体に鞭打って立ち上がり、右へ左へフラフラしながら整列する。そして半ばやけっぱちになりながら声を張り上げ訓練終了宣言。

 

 しかし、悪夢はそれで終わらなかった。

 

「お疲れ様です――さて、この後はいつも通り腕立て伏せと上体起こしのメニューを……と言いたい所ですが、今日は少々内容を変更します」

「エッ」

「堂島さん」

「はい」

 

 紬の疑問の声を無視し、静流教官は緑色のボックスを堂島教官から受け取った。それを地面に置き、紬達一人一人を見つめながら口を開く。全員の視線は静流教官とそのボックスに集中していた。

 

「これから簡単ではありますが武器の貸与式を行います、貴方達騎兵には本来の陸兵が扱う突撃銃ではなく機内に持ち込む拳銃を貸与します、脱落防止措置、分解整備については授業で触れたと思いますが、各々管理を怠らぬように」

 

 武器の貸与式。

 貸与、という聞き慣れない言葉に一瞬疑問を覚えたが、要するに銃を渡すと言う事なのだろうか。プラスチック製の玩具ではない本物の銃を? 紬は地面に降ろしたポーチの中にあるプラスチック製の銃を脳裏に描いた。

 けれど、実際に出てきた銃はそんなちゃっちなモノではなく。

 

「さて、では藤堂生徒、前へ」

「え、あ、は、ハイ!」

 

 名前を呼ばれ疲れた体に鞭打ち慌てて静流教官の前に立つ。

 そして綺麗に階層を作り分けられたボックスの中から取り出された――拳銃。確か授業で習った、現在のパイロットが最も利用する小型の銃。名前は『バグ』――何やら小難しいアルファベットと番号で表示されていた覚えもあるが、既に紬の記憶からは抜け落ちていた。

 バトルドレスを操る操縦者が機内に持ち込む事が出来、尚且つある程度の実用性を持たせる為に作られた拳銃。弾倉も特殊で対人用の9mmパラベラムからポーン足止めのSH弾まで使用出来る。

 紬が授業で習って憶えているのはそれ位、実際にプロジェクターで見た拳銃と実物は天と地ほどの差があった。黒光りしていて、重厚で、何というか存在感がある。静流教官はそれの銃口付近を握って紬に差し出し、「銃番号、四〇六一四七」と告げた

 次いで小さな声で、「復唱して下さい」とも。紬は慌てて静流教官に続いた。

 

「えっと、銃番号、四〇六一四……最後、何でしたっけ」

「四〇六一四七です」

「よ、四〇六一四七!」

「宜しい」

 

 詰まったが言えた、そして差し出された銃を受け取る。銃というのはずっしりと重いモノだと勝手に思っていたが、差し出されたそれは存外に軽く、しかし握った感触が人を殺せるものだぞと叫んでいるみたいだった。一度二度拳を握って銃の感触を確かめ、安全装置が掛かっている事を確認する。

 

「次、大谷生徒」

 

 大谷の名前を呼ばれ、紬は後がつっかえると急ぎ足で列に戻った。手に持った拳銃は何となくぶら下げるのは不格好だと思い、胸に抱く様にして両手で確りと持った。やがて杉田、風香、恋と拳銃が手渡され各々が表情に陰りを見せる。

 拳銃を手に取って、凄いとか、格好良いとか、そんな事は微塵も思わなかった。

 だって人を殺す道具だ――今はジャガーノートを殺す為の道具だけれど。

 どうかこれを人に向ける事は来ないで欲しいと、心からそう思う。

 

「一月程度は基礎体力の底上げを目的とした自重トレーニング、ランニングに励む――私は初日に皆さんに対してそう言いました、本来であればコレの通り進む筈だったのですが……」

 

 ボックスの蓋を閉めながら静流教官は淡々と語る、何となく空気が張り詰めて見えない棘が肌を刺すようだった。静流教官の鋭い目線が紬を射抜き、一拍心臓が高鳴った。

 

「……恐らく既に聞き及んでいるでしょう、中国の防衛拠点である上海が陥落しました、海岸沿いの重要拠点陥落により日本領内にビショップ、飛行型が侵入する可能性があります」

「!」

 

 それは恐らく今日一番、紬が聞きたくなかった言葉だろう。ついに来た、思っていた以上に、想像以上に早くその時が。静流教官の言い方ではまるで自分達が戦う可能性があると、そう言っている様で。持っていた拳銃のグリップを強く握って紬は歯を食いしばった。見えない恐怖心に打ち勝とうとしたのだ。

 

「速成部隊である我が第四〇六速成機甲兵部隊が戦闘に加わるとは思えませんが――何があるか分からない、それが戦争と言うものです、何度でも繰り返しますが機甲兵を動かせる人間は希少です、貴方達の代わりは居ない、万が一撃墜された場合是が非でも前線基地まで戻って来て貰う必要があります」

 

 その為に今日これから、生身での撤退演習を行います。

 紬はその言葉に唖然とし、膝が震え出した。出撃するかもしれない恐怖? 銃を持ったことによる重圧? 違う、恐怖もプレッシャーも膝の震えには繋がらない。

 

「きょ、教官……一つ、一つだけ、質問宜しいでしょうか」

「えぇ、大谷生徒、何でしょう?」

 

 紬と同じく膝を震わせた大谷が手を挙げて発言許可を求める。静流教官はそんな大谷の言葉に頷き、その続きを促した。彼の表情は真っ青だ、最早白くなっている。

 

「生身での撤退戦演習、それを――【今】からですか……?」

「えぇ、【今】からです」

 

 その言葉に大谷は崩れ落ちそうになった。それを杉田と紬が慌てて支える。

 気持ちは痛いほどに理解出来た、今から、そう、今から演習とやらが始まるのだ。たった今何故目の前の静流教官が銃を貸与したのかを理解する、とどのつまりその演習をやる為に必要だったからだろう。

 或はリアリティを増す為か。

 しかしもう紬達の体はボロボロだ、緊急脱出兵装とやらを担いで二十三周、それだけで両の足は粉砕骨折したが如く震えている。もう歩けない、走りたくない、寧ろこのままベッドに寝かせて欲しい。

 そうは思うのだけれど。

 

「貴方達に貸与した銃のマガジン、弾倉には空砲が入っています、指示有るまでは安全装置を解除しないように、それでは全員脱出兵装を装備し演習場に向かいましょう」

「………はい」

 

 上官の指示には逆らえない。

 紬は自分が予想以上に軍人に染まっていたのだと自覚した。

 

 

 

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