応接間で先生から赤紙を受け取った後の記憶がない。
何か詳しい説明を受けた様な気もするし、ただ無意味に突っ立っていただけの様な気もする。ただ気付けば自分は自分の家に帰宅しており、ベッドの上に転がって天井を眺めていた。アレは質の悪い冗談か、もしくは夢なんじゃないかと思って横を見るけれど、例の赤紙は綺麗に折り畳まれて部屋の机の上に置いてある。
夢なんかじゃないし、確かに自分は徴兵令状を受け取った。その証がちゃんと視界の中に存在している。
「……徴兵」
口に出して再度天井に視線を移すけれど、実感なんてものは欠片も湧いてこない。だって自分は田舎町に住む、ただ有り触れた日常を享受するだけの一学生に過ぎないのだから。中二病はとっくの昔に卒業しているし、己の体に秘めたる特別な力があるとも思っていない。
そんな自分が兵士になって、戦う?
少々、笑えない冗談だ。
もっと相応しい人が居るんじゃないのか、何故自分なんだ、そんな理不尽に対する怒りとも悲しみとも言えない感情が湧き上がって来るけれど、答える者は居ない。
今更何を喚いた所で国防軍学校に入校する未来は変わらないし、他にも同じ境遇の生徒が日本内に居る事を聞いている。
徴兵拒否は許されない、それは赤紙にも記載されていた事だ。けれどすんなり納得出来るかと言えれば――そんな筈も無く。
「命を懸けて戦うなんて、そんなの……敵さえ、良く知らないのに」
戦うのは同じ地球上に何処かの国じゃなくて、もっと得体の知れない何か。火星人か、月人か、宇宙の果てか、遠い遠い場所から地球を侵略しにやってきた怪物。そんな連中と戦わなければならない。恐ろしい、恐怖を感じる。
けれど此処で燻った所で国防軍が、国が、この決定を取り消してくれる事は無い。
なら――泣き喚いてでも、前に進まなければならない。
軍学校に入る、その未来は確定している。ならば停滞は即ち死を意味した、生きている内に戦争に備えなければ、待っているのは絶望のみ。
生きてまた、この場所に帰って来る。
紬の周囲は宇宙人に対して全く興味を抱いていなかった。
家族然り、学校の友人然り、前線から遠く離れた極東の北側。その片田舎に住む一学生が前線の兵士と同等の知識、或は危機感を抱ける筈が無い。
故に紬は国防軍学校に入学するにあたり、自主的に宇宙人の情報を集め始めた。
入学を拒否する事は出来ず、紬の将来は兵士である事は確定している。それは既に覆しようのない未来で、赤紙によると紬は対宇宙人用の兵器に対して高い適正があるらしい。
学生という身分でありながら拒否権の存在しない徴兵が行われた理由はソレだ。
戦場に行って殺し合いをする以上敵の事を知らないのは拙いと紬は思った。未だ胸中は複雑だし納得も理解もしていないが、現実から目を背けて駄々を捏ねる程紬は子どもではない。
インターネット上にはある程度規制はされているものの、宇宙人の詳しい情報が所々に散見された。ニュースよりも幾段か深く突っ込み、その種類や名称までは把握できる。どうにも連中には宇宙人ではない、キチンとした名称が存在するらしい。幾つか種類によって名前は異なるが、一つの括りとして付けられた名称は『ジャガーノート』――巨大な力、万物の破壊という意味を持つらしかった。
取り敢えず紬は調べられる範囲でジャガーノートについての知識を蓄え、入学までの三日間を過ごした。何かをしていないと、余計な事を考えそうで怖かったのだ。
既に母校から国防軍学校への移籍は済んでおり、友人に別れを告げる時間すら無い。赤紙を受け取った時から紬の身柄は国防軍預かりとなり、下校時には黒塗りの車が迎えに来た。
紬が徴兵された事は秘匿され、クラスには単純に一身上の都合により転校したとだけ告げられると聞いた。恐らく皆は疑問にも思わないだろう、また戦争で誰かが引っ越した、そんな感想しか抱かない。
或は今まで転校して行った生徒は全て国防軍に徴兵――いや、そんな考えはよそう。
パイロットとなる人間の情報はなるべく外部に漏らさないように、周囲には出来る限り秘匿されるらしい。紬にはその理由が分からなかったが、自分一人が騒いだ所でどうにもならないと理解していた為に異論を挟む事は無かった。
あの紙は学校と、そして家にも届けられていた。
父と母は息子が徴兵されると聞き、涙を流して怒りに震えた。父は徴兵するならば自分を先に連れて行けと軍学校の関係者に掴み掛ったが、父にはパイロット適正が認められないとの事で国防軍学校への入学は不可能らしかった。
そもそも、国防軍学校は紬の様な学生を兵士に仕立てる為の場所。仮に父が徴兵されるとしても、それは恐らく国防軍学校の少年兵ではなく、歩兵として駐屯地に集められる義勇兵だろう。
父は余り体が丈夫とは言えない、戦争何かに行ったら直ぐに死んでしまう。紬はそれを理解していた為、殴り掛かる父を必死で抑えた。
家族がこんなに必死になる姿を見て、それだけで十分だと思った。
自分は父と母に愛されていた、大切にされていた、それが分かっただけでも恵まれている。
戦場に送り出されると言われた時、確かに自分じゃ無理だ、死んでしまうと思ったが、同時に家族が戦場送りになるよりは何倍もマシだと思った。自分が死ぬなら良い、いや、本当は良くないけれど、父や母が死んでしまう事を考えれば自分である方が何倍もマシだった。それにまだ死ぬと決まった訳でもない、父や母が戦場に行くより、己が戦場に行って生き残る確率の方が多少なりとも高いだろう。
何より自分はパイロットらしい、何のパイロットかは知らないけれど、一応軍属の中ではエリート扱いになるとの事。
何せパイロット適正が無ければ搭乗すら出来ない兵器だ、限られた才覚を持つ者には相応の階級と報酬を。父と母には徴兵の対価として少なくない金銭が支払われた。それなりに贅沢が出来る金額だ、紬は金で全てが解決できるとは思っていないが、多少なりとも慰めにはなると思っていた。
そうして藤堂紬は悔いもやり残しも消費しきれないまま、赤紙を手渡された三日後、七月十一日――国防軍学校に一等兵長として入校する事となった。
家を出るときの、違和感の残る国防軍の指定制服を身に纏った自身を見る両親の目はどこまでも悲し気だった。恐らく紬は二人のその眼を一生忘れないだろう。息子を戦場に送ると理解しながら、何も出来ない無力感を二人に与えてしまった。
せめて生きて帰って来よう、そう強く思った。
国防軍学校がある場所は沖縄、日本が国外派兵する際に拠点となっている場所。輸送ヘリに揺られながら己の新しい学び舎へと向かう紬の心境は、御世辞にも良いものとは言えなかった。
「見えて来ましたよ、藤堂さん」
東北から沖縄本土まで民間航空機で二時間足らず、そこから軍用ヘリに詰め込まれて十数分。シートベルトに締め付けられたまま、監視兼案内役の陸兵が眼下を指差す。未だ二十に満たない年齢の子どもにそんな言葉遣いは不要だと思うものの、結局言い出す勇気も無く釣られて窓から下を覗く。
其処には透明な海のど真ん中に建てられた、小さな学校が見えた。
周囲の海は宛ら天然の檻か、コンクリートで補強され白い浜を侵す『H』のマークにゆっくりと降下を開始するヘリ。徐々に下がる高度、露わになる新しい学び舎の全容。形は一般的な学校と大して変わらず、グラウンドは存在しないが体育館の様なモノはあった、校舎は三階建てで建物同士を繋ぐ道路もある。
見る限り国防軍学校、その名らしい物々しさは感じられない。
ぼうっと外観を眺めていると、ガコンとヘリが一度大きく揺れ、着陸を終えたのが分かった。
「ヘリポート到着です、ベルトを外して降りて下さい、積み込んだ荷物は後から我々が寮の方に運びます」
「分かりました」
腰と肩を固定するベルトの金具を弾いて立ち上がり、紬は陸兵に続いてヘリを降りる。風圧で髪がふわっと起き上がり、潮風と混じって思わず顔を顰めた。故郷とは違う匂い、此処は自分の知る海ではない。僅かに凝った肩を回しながら風で流れる髪を払っていると、数人の出迎えが紬の前に立った。
身長は紬より高く、体格も良い。恰好は隣に座っていた陸兵と同じもの、彼等も陸兵だろうと紬は思った。深く被った緑帽は太陽光の影に隠れて良く見えない、しかし酷く冷たい視線である事だけは分かった。
休めの姿勢で正面に立つ彼らは紬と対峙し、抑揚のない声色で告げる。
「藤堂紬生徒、貴官の着任を歓迎する」
「………はぁ」
どうも。
紬は伏し目がちに小さく礼をする、歓迎も何も、来たくて来た訳でも無いのだ、歓迎されても困るだけろうに。そう思ったが紬は声に出す事無く無難に対応し、着慣れない士官服の肩に下がったエンブレムを指先で擦った。
そうだ、此処に来たらもう藤堂紬としては見て貰えない。
階級がモノを言って、もう元の生活には戻れない。紬はそれを強く実感した。
目の前の陸兵は紬の態度が気に食わなかったのか、その眉間に皴が寄る。
「……今は良いが、態度の矯正も必要だな――宜しい、藤堂生徒、この国防軍速成学校には入学式などと言うモノはない、入隊式もな、早速だが既にクラス編成が成されている、貴官の所属するクラスは機甲兵操縦科だ、急ぎクラスに向かえ」
「えっ、もうですか?」
紬は陸兵の告げた内容に驚きを見せる。入学式が無いのは構わないが、まさか到着して直ぐに学校生活がスタートするとは思わなかった。荷物の整理すら終わっていないのにと文句を言おうとして、しかし陸兵の「何か文句があるのかね」という言葉に口を噤んだ。
威圧感を覚えたのもそうだが、まるで口答えするなら殺すといわんばかりの口調に尻込みしたのだ。まるで己の事を人間としてすら見ていない様な――酷く無機質な声だった。
「……いえ」
「ならば駆け足、橘一等兵士、先導を任せる」
「ハッ!」
ヘリで自分に付き添っていた陸兵が敬礼をし、「さぁ、藤堂さん、こっちです」と軽いマラソンの様な形で自分を先導した。最後まで対峙した陸士を見つめていた紬だが、渋々その背を追って駆け足を始める。
軍隊って、何か、嫌だな。
漠然とした感想だが、紬は心の中でそう思った。
☆
「さぁ、此処ですよ」
橘と呼ばれた陸兵の先導で校内をマラソンした紬は一分ほど走った末に教室前へと辿り着く。校内は比較的綺麗で、建築されたばかりと言われても信じそうだった。教室の近くには少ないが自販機と小さなテーブルがあった、恐らく休憩スペースだろう。後はトイレと多目的室、ただ必要な物だけを用意した機能美を校舎に感じた。
廊下側の窓から教室を覗き込むと、数人の生徒が既に机に座っている。教室は広いが、中に座す生徒は極端に少ない。その事から紬は、「まだ全員集まってないんですか?」と問いかける、恐らく自分が最後ではないのだろうとそう思ったのだ。見る限り教室の中には机が多く並んでいる、三十人分はありそうだ。だと言うのに教室の中には四人の生徒しか見えない。
「これは後程説明されますが……元々操縦適正を持つ方は少ないのです、徴兵拒否が認められない程ですから――現沖縄国防軍学校の機甲兵操縦科は藤堂さんを含めて五人のクラス編成となっています」
「たった五人……ですか?」
橘さんの申し訳無さそうな声に、紬は思わず言葉を漏らす。
紬の母校も大概田舎だったが、クラスが五人だけという程ではなかった。それだけパイロットが貴重なのか、それとも幾つかに分けてあるのか。紬には分からなかったが、兎角クラスと呼べるかどうかも怪しい五人だけのクラスが自分の新しい居場所らしかった。
「機甲兵操縦科は五名所属ですが、他の整備科や拠点支援科、医療科などの他の部署はある程度の人員が揃って居ます、訓練によっては合同になりますので学校全体ではそれなりの生徒数になるかと」
どうやらパイロットの他にも色々な部署なるものがあるらしい。軍関係の知識など微塵も持ち合わせていなかった紬だが、パイロット一人だけで兵器を動かせない事は知っていた。国防軍学校と言う名称なのだから、限りなく本物の軍に近い構成なのだろうと独り思う。
そうこうしていると橘さんが詳しくは後程と口にして教室の扉を静かに開けた。彼に目線で入室を促され、紬は色々聞きたい事を押し込め渋々教室の中に足を踏み入れる。
すると座っていた四人の生徒たちから視線を注がれ、まるで転校生になった気分になった。彼等とても今日入学したばかりの同じ境遇だと言うのに。
「……えっと、宜しく」
黙って席に座るのも何だか気が引けて、扉を潜ってから不愛想に挨拶を零す。全員机ひとつ分空けて座っており、男女比は男が二人に女が二人。パイロットに男女は関係無いと言う事なのだろう。
「おう、宜しく」
「宜しくお願いします」
「………」
「宜しくね~」
男二人は不愛想ながらも、普通に挨拶を帰してくれる。女は一人小さく頭を下げ、もう一人はヘラっと笑って手を挙げる。紬は小さく胸を撫で下ろして、良かった無視されなかったと喜んだ。どうにも軍そのものは冷徹で厳しい印象を与えるが招集された生徒達は普通と言うか、まだその色に染まっていない。
当然と言えば当然か、彼等もまた紬と同じ普通の学生だったのだから。
紬は少しだけ迷って、男二人の間にある空席に腰を下ろした。左には体格に優れた強面の男、右には適度な長さの髪に物腰柔らかそうな男。何とも対極に位置する様な二人だが、自分はその中間と言った所か。
女の方も似たようなモノだ、派手な金髪にヘラヘラと笑っている女、陰鬱とまでは言わないものの明らかに無口な女。アレはきっとソリが合わない。
「少し良いですか?」
他の面々を横目で観察していると、優し気な雰囲気を持つ男に声を掛けられる。突然の事に内心驚きながら、「あ、はい……じゃなくて、うん」と答えた。同じ位の年齢ならば敬語は不要だと思い、慌てて言い直す。
「僕は大谷傑と言います、京都の方から来ました、貴方は?」
「えっと、藤堂紬、俺は青森から招集されたよ」
傑と名乗った男は柔らかい笑みを浮かべたまま自己紹介を始める、紬は彼の自己紹介に喜々として答えた。彼はどうやら京都出身らしい、それにしては言葉遣いが随分標準的だ。いや、これは偏見か。
線の細い体に僅かに伸びた黒髪、言い方は悪いかもしれないがどうにも軍隊と言う環境が彼には似合っていない。
「成程、青森ですか、どうやら全国規模で集められている様ですね」
「そうだね――なら、えっと、君は?」
紬は傑の言葉に頷きながら、この機を逃してなるものかと強面の男に質問を投げかけた。男は大きな体を傑と紬の方に向けながら、特に表情を変える事無く「オレは島根だ」とぶっきらぼうに答えた。
彼は大谷と名乗った男とは異なり、酷く軍隊に合った体格をしている。普段何かスポーツでもしているのか、或は格闘技かもしれない。これで野戦服など着せたらそのまま現役の陸兵に見えるな、何て事を紬は思った。それ程までに彼の体格は自分と比較して逞しかった。
「島根、島根か、確か中国地方のところだったよね、九州近くの」
「おう、其処だ、俺は昔から県を跨いだことがねぇ、青森ってのは大層寒いって聞くぜ」
「うん、まぁ東北は冬がね……京都は一度だけ行った事があるんだ、修学旅行で、数日だけだったけど」
「修学旅行! それは良い、僕の学校は数年前に廃止されてしまっていて、何処にも行けませんでした……貴方の学校は?」
「オレの所も廃止されていた、県外に出た事がねぇって言ったろ――それと、名前は杉田和典だ、苗字でも名前でも好きに呼べ」
彼――杉田は少しだけ表情を和らげ、そんな事を言う。顔立ちこそ強面だが別段話が通じないと言う訳でも、性格が高圧的という訳でもない。紬は内心で抱いた杉田の第一印象を書き換えながら、「俺は藤堂紬だ、藤堂でも、紬でも」と自己紹介を交わした。
「僕は大谷傑です、名前が余り好きではないので、大谷と呼んでください」
「おう、宜しく、藤堂と大谷だな」
全員が互いに握手を交わし僅かに表情を崩す。先行きが不安だった学校生活だがファーストコンタクトはまずまずと言った所。軍学校など全く勝手が分からない、そこで共に過ごす友人が早々に得られたのは僥倖だった。
そうして男三人、初対面ながらに友情を育んでいると教室の扉が開く音が響く。全員の視線が扉に向くと、教室に軍服を着た男が一人踏み込んで来た。陸兵が着込んでいる野戦服では無く、将校や佐官が着る様な軍服だ。その胸元には幾つかのバッジと肩には短い飾緒も見える。
男は教室内の面々を見渡した後、ゆっくりとした足取りで教壇の上に立った。
「全員揃ったか、遅刻は無しだな、結構――国防軍第三旅団第四〇六速成機甲兵部隊、君達の入校を心から歓迎する、良くぞ国家の要請に応え入学を決意してくれた、君達の愛国心は此処に証明された訳だ、日本国民としての誇りを君達の様な若人が胸に秘めていた事をとても嬉しく思う」
男は短く切り揃えられた短髪に四十代程度に見える風貌をしていた。胸に下げた勲章と言い、肩の飾緒と言い結構なお偉いさんだという事が分かる。教卓に手を乗せながら朗々と謳う男。
彼の言葉に紬は誰が好き好んで入学などするかと思ったが、口には出さず黙っていた。
すると彼は不意に口元を緩め、「――ま、これは建前だ」とおどけ両手を挙げる。それから笑みを見せ、目前に座す五人の子どもを眺めながら真剣な眼つきで告げた。
其処には軍人らしさというより、一人の大人としての優しさが滲み出ている。
「最初から君達に徴兵拒否の権利が無い事は知っている、君達が望む、望まぬ関係無くこの場に連れて来られた事もな――故に私は心から君達を尊敬し、敬意を表す、死を恐れる心を持ちながら逃げずに立ち向かった事に……覚悟も無く戦場へと赴くのは多大な勇気を要しただろう、私はその勇気を尊く、同時に大切なものだと思っている」
彼の目は真剣で、イノセントで。若人に対する見守る様な暖かさ、同時にその内側を覗く様な鋭さを孕んでいた。彼は自分達を子どもとは見ていない、まるで一人前の戦士を見る様な目だった。無論自分達はまだ戦争の「せ」の字すら知らない学生だ、彼のその眼は自分達の精神の在り方を見ているのだと紬は思った。
その視線が何となくむず痒くて、紬は男から目線を逸らす。
「約束しよう、私達は君達が生き残れるように全力を尽くす、前途ある若者を戦場に立たせると言うのは何とも情けない限りだが、適正ばかりはどうにもならん、だからこそバックアップは十全に行うと誓う、だからどうか私達を信用し頼ってくれ――この国防軍速成学校で最初に教える事はソレだ、私達を頼れ、最悪信頼せずとも良い、だが一人で何でも出来るとは思わないで欲しい」
男はそう言って徐にポケットを探ると、五つのブレスレットらしきものを取り出した。それを教卓に置き一列に並べる。見る限り無骨なブレスレットだ、装飾らしい装飾も無い。紬が覗き込むより早く、男はブレスレットを一つ摘まむと皆に見える様に掲げた。
「その証という訳でもないが……これは国防軍から支給されるウェアラブルデバイスだ、二十四時間三百六十五日私達と連絡が取れる専用の端末だと思ってくれ、無論登録したクラスメイトや友軍との通信も想定されている、言っておくがコレは君達の行動を監視する為だとか、そういう目的で用意されたものではない、GPSは搭載されていないしカメラも無い、純粋に君達を守る為の措置と思ってくれ」
廊下側から順番に取りに来たまえ、そう告げられた皆は互いに顔を見合わせながら言われた通り女性組からデバイスを受け取った。手に取ってみると分かるが恐ろしく軽い、金属が使用されているのだろうがまるでプラスチック製と思ってしまうような軽さだった。
腕に嵌めるとカチッと音が鳴って固定される。中央に小さなガラス玉の様なモノが嵌っていて、装着すると緑色のランプを何度か点滅させた。
「良し全員受け取ったな、では点呼を行う――」
小説書くの楽しすぎて大爆発しそう。
回線が不安定なのが玉に瑕。
ヤンデレ見つけたら結婚を前提に監禁を土下座でお願いしたい。