おやすみ人類   作:トクサン

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軍人としての才覚

 

「も、も……無理です、あ、足が」

「大丈夫かよ、大谷?」

「いや、マジヤベェわ、あの担任」

 

 訓練終了後。

 女組は疲労困憊状態で更衣室まで撤退、男組は大谷が行動不能に陥ったので体育館近くの水飲み場で休憩。三人揃って座り込み、時折水道から水を口に含む。既に午後三時を回っており、初日はこれで終了。

 明日からは訓練後にバトルドレスの操縦訓練――シミュレーターによる特訓が行われるとの事。ソレに関しては少しだけ楽しみな紬だったが、午後の訓練がこれ程過酷なモノだとは思っていなかったので楽しみが半減だ。

 

「す、すみません、ちょっと足が限界で、や、休ませてください」

「宿舎の門限は八時半だし、まだ余裕はあるからゆっくり休め、正直俺も足が辛ぇ」

「同じく、ぶっちゃけ棒になってるよ」

 

 両足を揉み解しながら涙目の大谷、どうやら本当に運動が苦手らしい。いや、運動が苦手と言うより体力が無いのか。

 

「明日絶対筋肉痛だよなぁ……でも明日も訓練あるんだろう? これ軽く詰んでない?」

「言うなよ……折角忘れてたのによ」

「恐らく明日が僕の命日です」

 

 紬が思い出したかのようにそんな事を言えば、二人の表情から色が抜け落ちる。紬もこんなハードな訓練を毎日続けると考えると死にそうだ。しかし既に後の祭り、辛いから逃げ出すと言う選択肢は無い。そもそも海に囲まれたこの場所からどうやって逃げ出せと。

 

「で、でも、明日は本業のバトルドレス操縦訓練がありますし、きっと軽めの訓練を……」

「……今日の訓練、軽めの奴って静流教官言ってたよな」

「………」

 

 大谷が僅かな希望に縋ろうとそんな事を言えば、杉田が空かさず事実を突き付け沈黙。どちらにせよ地獄の扱きから逃げ出す事は出来ないらしい。紬も明日の訓練を考えて憂鬱になった、仮病とか使っちゃ駄目だろうか。

 

「此処に居ましたか」

 

 全員が悲痛な面持ちで俯ていると、凛とした声が周囲に響く。振り向けばそこには先程まで自分達を追い回していた鬼教官が一人。大した汗も掻かず、乾いた野戦服を着て仁王立ちしている。思わず「ウヴァ」と意味不明な呻き声を上げてしまった大谷を責めることは出来ない、何故ならきっと紬も彼と似たような顔をしていたから。

 三人の表情を見た静流は眉間に皴を寄せると、不機嫌そうに言い放つ。

 

「何ですか、随分と嬉しそうな顔ですね?」

「い……イエ」

 

 引き攣った表情で何とか声を絞り出す紬。杉田は比較的平気そうな表情だが、その額に脂汗を滲ませているのが分かる。やはり彼女に対して潜在的な恐怖というか、苦手意識を持ってしまった様だ。

 

「全く、初日の訓練を乗り切った貴方達に労いの言葉一つでも掛けようと思っていたのに……それとも、まだ走り足りませんか」

「ヒェッ」

「とんでもありません! ああっと、大谷の体調が優れない様なので、すみません失礼します!」

「あっ、ちょ」

 

 威圧的な彼女の言葉に本気を感じた杉田は、行動不能になった大谷を肩に担いで素早く立ち上がり猛ダッシュ。その脚力は凄まじいの一言、紬は思わず逃げそびれその遠ざかる背を眺める羽目に。

 

「藤堂」

「はいッ!」

 

 彼に続いて自分もこの場から離れようとするが、その前に静流の鋭い声が足を地面に縫い付けた。特に大声を出された訳でも無いのに、彼女に名前を呼ばれるとそれ以上足が動かなかった。

 

「少し話したい事があります、付き合いなさい」

「りょ、了解しました」

 

 教官に引き留められては逃げ出す事も出来ない、無論断る事も。ガチガチに固まった状態で静流の前に立つ紬、対して彼女は小さく息を吐き出すと水飲み場の足場に腰かけ、「貴方もどうぞ、訓練後で足が辛いでしょう」と自分の隣を叩いた。

 

「は、はい、すみません、ありがとうございます」

 

 彼女の厚意に甘え腰を下ろす紬、体はガチガチだが心もガチガチだ。一体何を言われるのかと戦々恐々としている、そもそも軍人という人種と対面する事自体が紬にとっては緊張を伴う行為だった。

 

「……まぁ、そう硬くならないで下さい、立場上は確かに貴方の上官となりますが過度に緊張されては話せる事も話せません、それに入校してまだ初日です、勝手も分からないでしょうし軍の規則にも疎いでしょう、蔑ろにして良いとは言いませんが、もう少し肩の力を抜きなさい」

「は、はぁ……」

 

 そんな心身共に緊張状態の紬を見た静流教官は、溜息を吐き出しながら紬の背を叩く。緊張するなと言われて、緊張を素直に解ける筈が無いのだが。それでも何も言われないよりはマシだと心なし強張った体から力が抜けた。

 そのまま何度か深呼吸すれば、ガチガチの心も幾分か楽になる。

 

「えっと、それで話したい事というのは……」

 

 緊張が解けている内にと紬は静流に対して早速用件を尋ねる。彼女はそんな紬に「せっかちですね」と肩を竦めながらポケットから鍵を取り出した。

 

「開始時刻ギリギリに到着したと報告を受けています、宿舎の鍵をまだ受け取っていないでしょう、これが貴方の部屋の鍵です」

「あ、ど、どうも」

「本当は担当官から手渡される手筈だったのですが、訓練後に渡した方が早いと言われまして」

 

 頭を下げながら差し出された鍵を受け取ってまじまじと眺める。てっきり宿舎の管理人辺りにでも貰えるものだと思っていたが、どうやらヘリで此処に来た時点で受け取るモノだったらしい。

 

「えっと、静流教官、わざわざすみません、ありがとうございます」

「元々此方の不手際ですから、それで――軍学校、やっていけそうですか」

 

 静流は鍵を手渡すと足を伸ばして楽な態勢を見せる。

 そんな彼女の放った一言、紬は言葉を詰まらせた。手に握った鍵をそのままに、紬は言葉を選ぶべきだと思った、同級生との雑談とは訳が違う。

 それを見越してか静流は「貴方の素直な感想を聞かせなさい」と告げる。その一言で頭に浮かべた無難な回答は軒並み砕かれ、視線を左右に泳がせながら紬は慎重に自身の素直な感想を口に出した。

 

「……正直言うと、厳しいって言うか、やっていける自信が無いっていうか――今までただの一般人で、戦争とか銃とかそんなもの全然縁遠い所に居ましたから、まだ軍学校に入ったっていう実感すらないというのが本当の所です」

 

 背を曲げて呟くように吐き出す言葉。

 一応頭の中で言葉を選んでいるが、幾ら遠回しな表現、言葉を飾った所で目の前の女性には意味を成さないだろう。結局紬と言う人間の軍隊に対する印象、感想というのは収束される。

 

「退学も出来ないって聞きました、操縦適正以外に余程目に余る難があるか、若しくは極度に体が弱いか、自分はどちらも当てはまらないと……何で俺なんだって気持ちもあります、他の人じゃ駄目だったのかって、でも此処に来た以上逃げ出す事は許されない、だから自分の出来る所まではやってやるって、そう思っています、自信は、その、本当に無いんですけどね」

「……そうですか」

 

 嘘偽りのない言葉。

 紬の本心、その一部を静流に告げた。「それでも軍人か!」とか「弛んでいる!」とか、苛烈な言葉が飛んでくる事も覚悟していたが、まだ紬には軍人という人種に片足突っ込んでいるという自覚が無い。

 故にこれが紬の本当。

 

「人はそう簡単に変われません」

 

 目を瞑って静流教官の怒声に備えていると、隣から聞こえて来たのは酷く優しい声だった。その声に引っ張られる様にして顔を上げると、静流は微笑みを浮かべながら紬を見ている。凛としていて、軍人然としている、しかし同時に子どもを見守る様な慈愛に満ちた視線に紬の心臓が高鳴った。

 

「民間人が軍学校に入って一日で一人前になるならば私達は不要です、ましてや貴方達はまだ成人すらしていない、ならばこそ貴方の感情は真っ当なものです、望んでこの場に立っているのではなく、誰かに選ばれ手を引かれ、無理矢理立たされているのですから」

 

 静流はそう言って立ち上がると、紬から視線を逸らして空を見上げた。その時の静流教官の姿は何と表現すれば良いだろうか。

 悲しそうで、辛そうで、それでも何処か美しさを感じる様な。その一瞬だけは静流が軍人と言う枠から外され、等身大の人間に見えた。

 

「藤堂、これだけは憶えておきなさい――例え兵器を上手く扱える適正があったとしても、軍人としての才が欠けていれば、それは当人にとって悲劇を生みます」

 

 それを努々、忘れぬように。

 

「は、はい」

 

 言いたい事はそれだけだと、静流はニコリと微笑み紬の前から立ち去る。最後までその背を見送った紬は、彼女の告げた言葉を頭の中で反芻した。

 例え兵器を上手く扱える適正があったとしても、軍人としての才が欠けていれば――それは当人にとって悲劇を生む。

 

 彼女は俺に何を伝えたかったのだろうか。

 

 その時の紬には、何も分からなかった。

 

 

 

 ☆

 

 

 入校初日の夜。

 

 教官から手渡された鍵で宿舎に向かい、自室で段ボール箱と格闘して二時間。部屋にはベッドと机が一つ、後は小さなクローゼットのみ。トイレとシャワー室は共同、元々持ち込んだ私物は少なかったので荷解きにはそれ程手間取らなかった。

 殺風景な六畳一間、紬としては窮屈な部屋だがこれでも優遇された宿舎らしい。徴兵拒否権の存在しないバトルドレス操縦者だからこそ許される贅沢な宿舎、陸兵の軍学校では同じ部屋の大きさでも四人共同なんてところもあるらしい。

 宿舎は科によって細かく区切られている為、他の整備科や医療科などは基本的に引きこもって居れば顔を合わせる事も無い。シャワーとトイレは区切られたフロアごとに存在し、唯一顔を合わせるとすれば飯時か。

 食堂は男女関係無く宿舎合同で使用する。

 

 隣部屋の大谷と杉田は、疲労困憊の大谷を心配した杉田が彼の足をマッサージしていた。あの状態では荷解きが出来る状態ではないと判断し、今日は早めに休むらしい。どうせなら何か食い物を買って来てくれと杉谷と大谷に頼まれ、財布を持って宿舎を出たのが十分前。

 

 この時間の食堂はとても混むとの事で二人は食堂での食事を断念、どうせなら男三人で親睦を深めようと大谷の部屋に集まり飯を食う事になった。幸いな事に購買は夜八時まで営業している、場所は宿舎ではなく本棟一階。

 本来ならば訓練用の体操着や靴、筆記用具、各科によって必要な備品を揃える為の購買なのだが、おにぎりやパン、弁当など食料も幾つか揃えてある。ラインナップは少ないがあるだけマシだ、取り敢えず残ったモノをあるだけ買って来てくれとのお達しだった。どうやら杉田は大食らいらしい。

 

「迷った」

 

 そして紬は迷子になった。

 ヘリから見下ろした学校はそれ程大きく見えなかったが、実際はかなり広かったと言うオチだ。本棟には辿り着いたものの、購買が何処にあるか詳しい位置を把握していなかった。体育館の時は教室に地図があったが、今手元に地図は無い。

 

「参ったな」

 

 頬を掻きながら周囲を見渡す、本棟の灯りは軒並み消えており節電の為廊下は薄暗い。購買はまだ営業しているのだし、中庭に出て見渡せば見つかるだろうかと紬は判断、正面玄関から静かに中庭へと出る。

 軍学校の中庭は中々広く、花と数本の木が植えられた憩いの場だ。ベンチも複数用意されており、休憩時間は此処で時間を潰すのも良いかもしれないと思った。

 煉瓦造りの道を歩いて周囲に目を向けるモノの一向に灯りが見える事は無い、空を見上げれば星々が瞬き月は自分を見下ろしている。時間的にはまだ余裕があるけれど、このままずっと迷っていては購買のシャッターが下りてしまう。

 さて、どうしたものか。

 

「ん……?」

 

 教室に行って地図を確認するか、若しくはどこかで人を捕まえて道を聞くか。幾つかの案を頭に浮かべていると、ふと背中に視線を感じた。視線は中庭の端にあるベンチから、紬は何かに引っ張れるようにそちらの方に顔を向ける。

 紬の向けた視線の先には一人の女性が居た。

 月明かりに照らされ絹の様な髪が光を反射し、ゆっくりと影になった顔立ちが露わになる。その姿は美しく、一目惚れなんてモノを欠片も信じていない紬でさえ、思わず見惚れてしまった。

 

 着込んでいるのは紬達と同じ制服だ、となると軍学校の生徒だろう。しかし機甲兵操縦科の生徒ではない、紬とは初対面。しかし彼女は紬を真っ直ぐ見つめ、薄っすらと口元に笑みを浮かべている。優し気な瞳、僅かに緩んだ口元、凄まじい美人。

 

「あ……っと」

 

 まさか人が居るとは思わなくて、紬は自分が何か変な事をしていなかっただろうかと不安になった。それから意味も無く頬を掻いて、彼女に道を尋ねるべきかどうか迷う。周囲に彼女以外の人影はなく、この機を逃せばどうなるか。僅かな逡巡を経て紬は唾を呑み込むと恐る恐る女性に声を掛けた。

 

「あの――少し、良いですか?」

「あら、デートのお誘い?」

「少し道を……えっ」

 

 道を尋ねようと話しかけたら、満面の笑みでデートのお誘いかと問われた。その切り返しに思わず紬の動きが止まり、出そうと思った言葉を呑み込む。何と言うか、全く予想していなかった返事だ。

 当の本人は期待しているのかニコニコと自分を見ている。

 

「い、いえ、えっと、デートの誘いでは無く、その、道を聞きたくて」

「あら、残念」

 

 からかう様に口を尖らせ、そのまま此方を見上げる女性。寡黙な外見とは裏腹に茶目っ気を含んだ性格をしている。そのちぐはぐ具合に揺さぶられながらも、紬は何とか一歩踏み込んだ。

 

「その、購買の場所を教えて欲しいのですが」

「購買? えぇ、お安い御用よ」

 

 そう言って立ち上がる女性、それからふわりと髪を靡かせながら「ついて来て」と歩き出した。口で言って貰えれば良いのに、どうやら態々案内してくれるようだ。紬は女性の後を慌てて追い、その背に言葉を投げ掛ける。

 

「あの、口頭で教えて頂ければ、それで……」

「ふふっ、それじゃ味気ないもの、それに私が紬と一緒に歩きたいの」

「――」

 

 満面の笑みでそんな事を言われ、思わず赤面。

 というか、何故彼女は自分の名前を知っているのだろうか。頬を赤くしながらも紬は疑問を抱いた、何処かで彼女と逢っている? しかしこんな美人、人生で逢っていれば忘れる筈も無い。

 

「紬が今何を考えているか分かるわ、でも教えてあげない、その方が印象に残るでしょう?」

「えっ」

「戸惑う紬も見れて幸せ……凛々しい貴方も良いけれど、偶には違う紬も新鮮で可愛いわ」

 

 振り向き、そんな事を言う彼女は酷く楽し気だ。からかって遊んでいるのだろうかと勘繰るものの、表情を見る限り心の底から嬉しそうにしていて、単にからかっているだけという訳でもない。

 故に怒るべきか、恥ずかしがるべきか、照れるべきか、紬は感情の出し方が分からず表情は非常に不格好なものになる。そんな紬を見た彼女は少しだけ眉を下げ、慌てて弁明した。

 

「あら、ごめんなさい、怒った? けれど別にからかっている訳ではないの、全部本心よ」

「……いや、全部本心だからマズいんですよ」

 

 この、彼女から齎される好意は一体何なのだろうか。

 こんな美人と出会った記憶はなく、であれば彼女が一方的に知っているだけ。しかし自分は芸能人でもなければ何かで有名になった才人でもない。彼女との接点は皆無なのだ、美人に好かれるのは非常に嬉しい事だが同時に何処か恐怖を覚える。

 紬は他人の好意に理由を求めなければ気が済まない気質だった。

 

「あの、俺達初対面ですよね? 何処かで逢ったりしていましたか?」

「初対面――そうね、直接顔を合わせたのは初めて、紬と私は今まで逢った事も無いわ」

 

 少しだけ、寂しそうに告げる彼女。

 その事に疑問を覚えながらも、続けて「じゃあ、何で俺の名前を――」と言いかけて、彼女の指が紬の唇を塞いだ。

 

「それは秘密と言ったわ」

 

 ふわりと香る甘い匂い、指が離された後に紬は思わず一歩後退する。女性と触れ合った経験が皆無とは言わないけれど、彼女の間合いは今まで経験した事が無い程近い。知り合いと言う感じでも無い、下手をするともっと親密な――。

 

「さぁ、購買に行きましょう? 急がないと閉まってしまうわ」

「………はい」

 

 この人に何を聞いてもきっとはぐらかされる、そんな予感を抱いた紬はそれ以上何かを追及する事をやめた。或は彼女は先輩で、今日入校して来る機甲兵科の生徒全員を把握していたとか、存外オチはそんなものかもしれないと。

 

「せめて名前くらい、教えて貰えませんか」

「あら、やっぱりデートのお誘い?」

「いえ、そうではなく――」

「ふふっ、冗談よ」

 

 悪戯っぽく笑って、それから何処か愛おしそうな視線を寄越す女性。一拍置いて彼女は、「鏑木」と口にした。

 

「鏑木杏璃、アンリって呼んで」

 

 振り向き、満面の笑みでそう告げる杏璃。紬はその笑顔に見惚れながらも、そんな素振りを欠片も見せずに「分かりました、鏑木さん」と言い放った。途端に下がる両眉、杏璃は露骨に肩を落とす。

 

「もう、紬は意地悪ね、私悲しいわ、名前で呼んで欲しいのに」

 

 紬の苗字呼びに不満があるのか抗議を口にする杏璃。数歩の距離を詰め寄る彼女に対して、紬は顔を逸らしてもっともらしい理由を告げた。

 

「俺達そこまで親しくないでしょう……それに、鏑木さん、俺より年上じゃないんですか?」

「歳の差なんて関係ないわ、私と紬の仲ですもの」

「いや、だから――」

 

 この人にとって、自分は一体何なんだ。

 そう問いかけたい気持ちが溢れるけれど、目の前でニコニコと屈託なく笑う杏璃を見ているとどうにも口を開けない。戸惑う紬を他所に杏璃は少しだけ寂しそうに、「まぁ、良いわ」と言ってそっぽを向いた。

 

「きっと直ぐに名前で呼ぶ位紬にとって親しくなれるから、それまで待ってる」

「……そうですか」

 

 きっと彼女は自分の理解の範囲外で生きているのだ。

 この学校に来て何度も思ったが、どうやら自分は女性という性別の生態系を今まで全く理解していなかったらしい。或は、自分の人生経験が足りていないのか。

 それでも彼女に対して好意的な感情を抱いてしまうのは相手が美人で自分に好意的だからか。つくづく男と言うのは単純といか、現金と言うか、全く以て分かり易い。

 男の生態系も彼女達からすれば似たようなものかと、紬は一人笑った。

 

「あぁ、そうだ、まだ言っていなかったわ」

「?」

 

 ふわりと体を半回転させ、振り向き様に彼女は言う。

 

「これからよろしく、紬」

 

 それは同じ軍学校の生徒としてか、もしくは――いや、それは思春期特有の思い込みという奴だろう。紬は胸内に浮かんだ感情を努めて押し殺し、柔らかい笑みを以て彼女の言葉に応えた。

 

「……はい、こちらこそ」

 





 ハーメルンを開くのに三十分掛かりました。
 感想返し遅れてすみません、回線安定するまでお待ちください……。
 
 以下関係ない話。

 町のアンティークショップみたいなところに行った時、綺麗な小箱(多分アクセサリーとか入れる奴)がガラスケースの中にセール190ルーブルで売っていたんですよ。日本円にすると大体380円位。
 凄く綺麗でこれを将来のヤンデレ嫁さんにプレゼントしたら「好き! 監禁しちゃう!」ってなって結婚を前提にした逆レお願い出来るかな~と思って買ったら、私の見間違いで、190ルーブルじゃなくて790ルーブルだったんですよ。
 
 二つ合わせて1000円未満やっすいわぁ~とか思ってたら、1580ルーブル(3160円)って表示されで「ンィィィィ↑」ってなりました。クレカ使える店で良かったです(九死に一生感)

 帰りにドルをルーブルに両替して帰りました。皆さんも両替は小まめにしましょう。
 
 
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