リスナーによるリスナーのためのリスナーの小説を書かせていただきました。
とある方に色々と直してもらいました。
原作:我はフェニックス様じゃ

本人に許可を得て書かせていただきました、あまり気が進まない方はブラウザバックを推奨致します。そして、全然きにさへんで〜って人はどうぞ見てってください!

主人公:リスナーさん(当初は僕でしたが、リスナーさんの方が良いかなぁと)

ヒロイン:フェニックス様(利香さん)

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とりあえず楽しんで見てください。


フェニックス様はかわいい

とある田舎のとある神社には、幽霊がいるという噂がある。

 

「ふぅ……この神社だけは夏を忘れさせてくれるよなぁ……」

 

 生い茂る木に囲まれた稲荷大社。もう日が暮れる頃であり、人一人いない。風の音と木々が揺れる音だけが鳴り響いていた。

 

「……あ、また落書きしてるよ。まったく、毎回消すのも苦労するってのに……」

 

 その落書きは境内へ続く階段の灯篭に描いてあった。描いてる人は何を思ってここに変な文字を書いたり、奇怪的な絵を描いたりするのだろうか。少しは消してる人の身にもなってもらいたいものだ。

 

「あ! ゴミも捨てていってる……」

 

 ちらほらとお菓子のゴミやペットボトルが落ちている。正直いけすかない。ゴミはゴミ箱に捨てろ、このようなものは小学生でもわかる。ここにゴミを捨てている奴は、おそらく大きな不幸が訪れることだろう。

 

「こんな良いとこ、ゴミだらけだったらかわいそうだろ?」

 

 独り言をぶつぶつ言いながらゴミを拾い上げていると、どこからともなく「リンリン」と鈴の音が聞こえてきた。

 

「え、なに? 鈴の音? こっわ! そういえばここって幽霊が出るって噂あったな……やばいなぁまじか」

 

「誰じゃ我の眠りを妨げる者は――っ! ……人間よ何しに来た。今すぐここから立ち去れ、立ち去るのじゃ!!」

 

 鈴の音が小刻みに鳴り響いた後、背中から可愛らしい女の子の声が脳が震えるほど聞こえてきた。

 それに俺は困惑し、慌てふためく。

 

「……え? 誰ぇ!? 幽霊!?」

 

 慌てながらも俺は彼女の姿を確認する。

 その姿は、ごく普通の浴衣を来た女の子といったところだ。

 彼女の身長は140cm程度。その顔には狐の仮面を被っており、素顔を見ることはできなかった。

 

「幽霊じゃないわ! 阿呆が! わ、我の名は……名は……そ、そう! フェニックス様じゃ!」

 

 彼女は動揺したのか、少しながら戸惑いを俺に見せつけてきた。……フェニックス?

 

「――いや、え? フォックス()じゃないんですか?」

 

「ふぇ? フォ、フォックス? ええい! どちらでもよい!」

 

 俺の指摘は見事に弾き返されてしまった。ちなみに、フェニックスは不死鳥や火の鳥という意味である。

 

「……あ、あれ? 我が見えておるのか?」

 

「み、見えて……ますけ……ど?」

 

 彼女に意味の分からない質問をされ、俺は歯切れの悪い声で答えてしまう。

 

「 あ、あれれ……へっ!? あ、あれ? いじめない?」

 

 どこぞのシマリスみたいに言われても困る。

 どうしてこのような言葉を発したのかは不明だが、おそらく過去に何かあったのだろう。

 

「……いや、いじめません」

 

 俺の言葉で少しは落ち着いたと思っていたのだが、今度はそっぽを向かれてしまった。

 

「 ふん! 人間はいつも神社を荒らして落書きはするわ、ゴミは捨てるわ、嫌いじゃ……! お前もそうなのじゃろ。……んーしかし、最近ここのところ、落書きは減ってゴミも減っておるが……」

 

「それは俺が……」

 

「え……お、お前……が?」

 

 彼女は俺の左手に持っているゴミ袋を見る。どうやら察してくれたみたいだ。

 

「……そ、その……なんだ。……疑って……悪かったの」

 

「まぁ……しょうがないですけど」

 

 その時、突然フェニックス様はこちらに近づいてきて、なぜか匂いを嗅ぎ始めた。

 

 ――クンカクンカ。

 

「んー、なんじゃ? ……良い匂いがするのう」

 

「え?」

 

 今度は俺が右手に持っていたパンの袋を、彼女は見てこう言った。

 

「あ、そ、その黄色くて、まんまるい物は……それに、網目がついておるのか……」

 

 どうやら彼女は、このパンに興味があるようだ。かなり興味津々である。

 とりあえず、俺は袋からそれを一つ取り出してみる。

 

「……」

 

 すると、彼女は自身の仮面を取り外した。

 

(……か、可愛い)

 

 最初に俺が思ったのはこれである。

 なんというべきか、美少女、その一言に尽きる。俺の語彙力がなくなるほどに可愛らしい彼女は、芸能界スカウトされてもおかしくはないほどだろう。

 

「あーん……」

 

 そのとき、急に彼女は小さな口を開けた。

 

「何してるんですか?」

 

「な、何してるんだって……わ、我にもはよ食べさせんか! ほ、ほーら」

 

 物欲しそうにこちらを上目遣いで向いてくる。なんてこった、こんな可愛い子が上目遣いとか反則だろう。

 

「あーん……ふんふん……ん〜、美味しい〜」

 

「それは良かった(あ、食べた……かわいい!)」

 

「これはなんとゆう食べ物なのじゃ?」

 

 小さくそのパンを呑み込んだ後、彼女はそう訊いてきた。

 

「メ、メロンパンで……す」

 

「メロン……パン? ふむ、メロンパンか! 我はメロンパンが好きじゃ」

 

「そっかぁ、じゃあ、全部食べてもいいですよ?」

 

「え? 全部……くれるのか? うわ〜」

 

 彼女は屈託のない笑顔で喜んでいる。言うまでなく非常に可愛い。抱き締めたいくらいだ。

 例えるなら、某有名な〇語シリーズの八〇時真〇みたいな存在だ。ちなみに、声質だけなら花澤〇菜さんであろう。

 

「あむ……もぐもぐ……」

 

 黙々と食べ続ける彼女の顔に、パンのカスがくっついていた。

 

「あ、口にメロンパンが」

 

「なんじゃ? 口にメロンパンが?」

 

「はい、ついてますよ?」

 

「と、とって?」

 

 その言葉で俺は不意によろけた。彼女のお願いの仕方が、俺はあざといと感じてしまったらしい。

 よろけた足を戻し、彼女の顔に付いているメロンパンをとる。

 

「はい、とれましたよ」

 

「お前は優しいの」

 

 ついにカラスまで鳴き始める。完全に夕暮れを知らせるように、寂しく、悲しく、哀しく。

 橙色に染まる空が、徐々に暗くなっていくばかりである。

 

「あぁ、日が暮れてきたのう」

 

 彼女は空を見上げ、黄昏るようにそう呟いた。

 

「ほんとですねぇ……そろそろ帰るか」

 

「え!? もう……帰るの?」

 

 帰ろうと思った矢先に、彼女から残念そうな顔でこちらを窺ってきた。

 

「暗くなる前に帰らないと……」

 

 がしりと彼女は俺の腕を掴んでくる。

 意地でも俺を帰らせたくないのか、彼女の力は小さくも強かった。

 

「いやじゃ……我はずっとここでひとりぼっち……ずっと、我のことを見つけてくれる人間を待っておったのじゃ……」

 

「そうなんですか……」

 

「ゴミを捨てたり、落書きをしたり……そんな人間は嫌いじゃ。……でも、お前は……その……()()……なのじゃ」

 

「ん、んん!?」

 

 聞き慣れない単語を耳にした俺は、変に驚いてしまう。

 

「勘違いするんじゃないぞ! メロンパンをくれたからであって、んーえっと、だから、その……お友達になって……くれませんか?」

 

 またも上目遣いでこちらにお願いしてくる。しかも、最後は敬語になって。その破壊力はロリコンを一撃で殺すほどに違いない。なんだよ、これ……可愛すぎんだろ!

 

「俺と友達に……なります! なります!」

 

(大事なことなので二回言いました)

 

「これでお前と我は、友達! うぬ、いい響きじゃ……では我もそろそろ帰ろうとするかの」

 

「はい」

 

「すぅ……」

 

 そのまま何処かへ去っていくのかと思いきや、彼女は息を吸い込んで俺の頬にキスをした。

 一瞬、何が起こったかわからないだろう。俺もまたそうである。

 いや、普通はこういった表現は、人が死んだとかもっと複雑な時とかに使うんだろう。だが、そんなことはお構い無しだ。どうしたらいいのかわからない。とにかくきゃわ!

 

「こ、これは……メロンパンとやらのお礼じゃ。こうやって礼をすると……聞いたでの」

 

「ん、んん」

 

 俺は照れてしまった。こんなに可愛いのだから当然だ。きっと、これを見れている人は羨ましがるだろう。ふっ……どうだ、獣耳っ娘! 羨ましいだろう?

 

「またの……」

 

 優しくそう言って彼女は、来た時と同じく鈴の音を鳴らし奏でながら社の裏へと消えていった。

 

「あれはなんだったんだろうか……幻? いや、メロンパンは無くなってる。……また明日も来てみようかな」

 

 次の日の期待を胸に、家へ帰った。本当はもう少し滞在したいのだが、少しばかり忙しい。仕方の無いことだ。

 

◆◇◆

 

「今日も行くか」

 

 翌日の夕方。今日も今日とて神社への道を歩いていくことにした。もちろん、メロンパンを持参で。

 

「フェニックス様ぁ? いますかー。メロンパン持って来ましたよー。……もしかして、起きてないのかな」

 

「なんじゃ……? お、この声は!」

 

 彼女は草木の中からひょこっと飛び出してきた。どうやら仮面はつけていない模様。

 

「あ、仮面外してていいんですか?」

 

「お前はいいのじゃ! さっそくじゃがメロンパンを、くれ!」

 

 めちゃくちゃ偉そうに要求して来た。フェニックス様なのだから、当然といえば当然なのだが。

 

「はぁ……はい」

 

 少し呆れながらもメロンパンを彼女に差し出す。

 少し焦らしていじりたいという気持ちもあるが、相手はフォック――フェニックス様である。故に、渡さないわけにはいかない。

 

「なんじゃ? その顔は。少しばかりにやけておるぞ」

 

「なんでもないです」

 

「そうか」

 

 彼女が話を終わらせた途端、彼女はメロンパンを頬張る。

 口いっぱいにメロンパンを放り込んだ彼女は、リスのようでとても可愛い。

 

「んー、やっぱり美味しいの! あれ? でも、なんかこれ昨日と違っておるぞ」

 

 どうやら昨日のメロンパンと違うことに彼女が気づいたらしい。

 咀嚼しながら話されたのはあれだが、今は大目に見てやるとしよう。俺がすごく興奮しているみたいで申し訳ないが、何回も言うぞ。かわいい。

 

「それは一日50個限定のやつなんで、また別物ですよ」

 

 ドヤ顔で俺はそう返す。フェニック様、これが女の子の為に何かをする男性の図だ。変態だろ? あはははは……やべぇ、これじゃほんとに変態じゃないか。

 

「おぉ! そうなのか! ありがとな!」

 

「いえいえ」

 

「それで、今日はどうしたのじゃ?」

 

 彼女が頬張っていたメロンパンを呑み込んだと同時に、おかしなことを訊いてきた。

 

「いや、フェニックス様に会いに来ただけですよ」

 

「そ、そう……だったか。な、なんか……照れるの」

 

「……かわいいなぁ」

 

 思わず、ここの中の声が口に出てしまった。

 

「うぇ!? か、かわ……いい?」

 

 ここで言い訳するのも無駄なので、そのまま話を続けることにした。

 

「フェニックス様ってかわいいですよね」

 

「う、うぅ……だ、黙れ!」

 

 典型的なツンデレだ。これはかわいい。何この女神、かわいくてかわいいなんて……かわいいじゃないか! (語彙力が来い)

 

「しかし……お前に聞きたいことがあるのじゃが」

 

 先程から頬を赤らめたままな彼女だったが、そのまま俺に質問してくる。

 

「はい? なんですか?」

 

「お、お前は……その……好きなおなごはおるのかの……?」

 

 予想外の質問に俺は動揺してしまう。彼女に少し変に思われたかもしれないが、気のせいだと信じよう。

 

「あ、え……? ……あ、いや、と、とくにいないですが……」

 

「そうか! よかった」

 

 彼女が安堵のため息を漏らすと、俺はなんだか腑に落ちない感情が湧き出てくる。なぜだろうか。

 

「で、何がよかったんですか?」

 

「……な、なんでもないのじゃ!」

 

「お、おう。そうですか……まぁ、いいや」

 

「そうじゃ! 別によいじゃろ! そんなことより、お前、我の行きたい所へ付き合え!」

 

 彼女は情緒不安定なのか、怒鳴り気味で俺に命じた。しかも、急に。

 

「突然だなぁ。いいですけど、どこに行きたいんですか?」

 

「そうじゃなぁ……」

 

 決まってないのに言うなよ、と心の中で突っ込む俺。

 彼女はしばらく考え込んだままである。

 

「あ、都会へ行きたい! 連れていくのじゃ!」

 

 都会。いわゆる、東京都のことだろう。まだ祭りとかなら普通に行くだろうが、ここから東京は遠い。

 といっても、お金はそれなりに持っているため問題は無い。しかし、こんな可愛い子とデートしちゃっていいのか、そんな躊躇いも少しある。

 

「都会ですか?」

 

「そうじゃ」

 

「……いいですよ」

 

 結局、良いと言ってしまった。自分だけ美味しい思いをするというのか。どこかの視聴者達よ、すまない。

 しかし、俺はふとした疑問を抱く。

 

「でも……外に出られるんですか?」

 

「出られるとはどうゆうことじゃ?」

 

「いや、なんかその、なんかの力とかで、この鳥居からは出られないのかと……」

 

「そんなわけなかろう?」

 

 いや、ないのかよ。

 こうなると、フェニックス様が神に近い存在なのか疑ってしまいがちになる。ただのコスプレ説もあるぞ。

 

「そうだったんですか……じゃあ行きましょうか、今から」

 

「い、今からか!?」

 

「そうですよ?」

 

「……いいじゃろう」

 

 なぜ微妙に乗り気じゃないのか。

 

「よし、じゃあ! 行きますよ!」

 

 フェニックス様を置いて、俺は駅までヤケクソに向こうとする。しかし、彼女に腕を掴まれ止められてしまった。

 

「そ、その前に、その……おんぶ……して?」

 

 デジャヴでしかない彼女の上目遣いが俺を襲う。あざといといえばそれまでかもしれないが、紛れもなく可愛いのだから断ることなど俺には到底不可能だ。

 

「しょうがないなぁ」

 

 ゆっくりと彼女をおぶる。見た目通り体重はそれなりに軽いようなので、すんなりと持ち上がった。

 

「しっかりつかまっててくださいね」

 

「おう! まかしておけ!」

 

 早足で駅へ向かう。なぜおぶる必要があるのか疑問に思うところであるが、今の俺にはどうでもよかった。

 

「本当に周りの人には見えてないんですよね?」

 

 それでも、これだけは気になって仕方がなかった。なぜか俺だけすれ違う人々に必ず変な目で見られる。

 

「あぁ、見えてたらそもそも神社にはおらんよ。はよ通れ」

 

「はい……」

 

 どうにも腑に落ちないが、フェニックス様をおぶったまま改札を通って電車に乗る。

 特に何も言われなかった辺り、本当に他の人には彼女が見えないようだ。

 やっぱり幽霊じゃねえか説が俺の中に立てられた。

 

「おぉこれが電車か!」

 

 しかし、この無邪気な笑顔といい可愛さといい、本来俺が苦手な幽霊だとしても全く怖くない。とても複雑な気持ちである。

 

「見えなくても当たってはしまうんですから、僕のとこにいてくださいね」

 

「わかっておる」

 

 フェニックス様が返事をした途端、彼女は俺の膝の上に座ってきた。

 

「……え、ちょっと」

 

「なんじゃ!」

 

「……なんでもないです」

 

 周りには乗客が多く、フェニックス様は他人から見えないらしい。従って、小声で答えることにしている。

 ちなみに正直に言おう。俺は男である故に、膝の上で動かれると色々と規制がかかってしまうだろう

 

「………………」

 

 さすがに電車内だとお互い無言になってしまう。会話したとしても、客観的には独り言を言ってる可哀想な人と思われるので、助かったといえば良いだろう。

 ちなみに俺の身長は174cmくらいである。そのに対し、フェニックス様は小柄なので、妹が膝上に座っているような感覚に陥っている。

 それにしても、フェニックス様の髪の毛から柔らかなシャンプーの香りがする訳で。神も風呂に入るんだな。当たり前か……。

 

 夜八時。途中から俺とフェニックス様は爆睡していたので、いつの間にか目的地に到着していた。

 

「……着きましたよ」

 

「ふわぁ〜、着いたか」

 

 彼女が目をこすりながら伸びをする。寝起きだからこそ起こるその仕草は、俺にとっては堪らなく好きだ。

 

「……人が多いですねー」

 

「そうじゃな」

 

 都会なのだから当たり前だが、見渡す限りの人。モタモタしているとはぐれてしまう可能性があるので、さっさと行き先を考える。

 

「……水族館にでも行きますか」

 

「水族館? なんじゃそれは」

 

 水族館も知らないとは、たまげたなぁ。

 

「お魚とか、サメとか、イルカとか、色々な海洋生物の展示場ですよ」

 

「面白そうじゃの! ほれ、行くぞ。当然、おんぶでの!」

 

「はいはい。分かりました」

 

 駅から歩いて10分。シーエントランスという水族館へ到着した。※実在はしておりません。

 

「着きましたよ」

 

「おぉ〜、綺麗じゃな!」

 

 初めて水族館に訪れた彼女は、無邪気にはしゃぐ。身長も小さい故に、自分の妹を見ている気分だ。無論、俺に妹はいないぞ。

 

「でしょう? あ、あっちにラッコがいますよ」

 

「ラッコ? ラッコとはなんじゃ?」

 

「説明しにくいな……まぁ、とにかく見に行きましょう?」

 

「そうじゃな」

 

 ぷかぷかと浮かぶラッコがいる水槽の前に俺たちは立つ。

 

「あ、このラッコ、名前がありますよ? えっと……()()()ですって」

 

 デジャヴのような名前だが、気のせいだと信じよう。

 

「おお! かわゆいな!」

 

「ですね!」

 

「他にはおらんのか?」

 

「いっぱいいますよ、ほら! あっちの大きな水槽には色んなのが」

 

「おぉ、ほんとじゃ! 大きなやつがおるの!」

 

「今は水槽に入ってますけど、外にいたら俺たちは食べられちゃいますからね」

 

「そうなのか! 危ないやつじゃの!」

 

 その後も色々な生物を堪能して周ってみた。帰りにはもう一回ラッコを見に行っており、とても気に入っているようだった。

 

「楽しかったですね」

 

「そうじゃな! 楽しかったの! ありがとな」

 

「いえいえ! じゃあそろそろ帰りますか」

 

「そ、そうじゃな……お、おい、お前」

 

「はい?」

 

 俺が振り向いた瞬間、フェニックス様は俺にキスをした。この感覚は忘れることがない。なにせ女神のキスだ。死ぬまで忘れないだろう。これも二度目なので、さらに忘れにくくなった。

 

「ん、んんんん!?」

 

「な、何を勘違いしておる! お礼はこうした方がいいじゃろ!」

 

「ま、まぁ僕は嬉しいんですけど他の人にはしちゃだめですよ?」

 

「な、なぜじゃ?」

 

「そ、それはその……なんでもないです!」

 

「そうか」

 

「そうです! 気にしなくていいです! じゃ、帰りますよ……」

 

 ここで俺は何かを察する。

 

(時間、やばい……)

 

 現在の時刻は午後九時。今から帰るにも遅すぎる。しかも、夜食を取っていないため腹が鳴り始めてしまった。

 俺はフェニックス様と目を合わせて訊いてみる。

 

「ホテル……泊まります?」

 

「ホテル……?」

 

「行けばわかります」

 

「うぬ、わかった」

 

 やむを得ず、近くのホテルを探して泊まることにした。

 普通に考えたら、女の子をホテルに連れ込む犯罪者として疑われるだろう。

 しかし、彼女の姿はなぜか俺にしか見えない。つまり、実質泊まるのは俺のみであり、金銭的にも社会的にも問題ない。言うまでもないが、普通のホテルである。

 

 ふたりで軽く食事を取った後、無事にホテルの一室を使うことができた。

 おんぶのまま受付に行けば、変人に見られてしまう。故に、彼女には少しだけ歩いてもらった。(当然だとは思うが……)

 

 最終的に彼女をおぶって部屋に入る。気がついたら彼女はスヤスヤと眠っていた。

 

「はぁ……疲れたなぁ。俺も寝ようっと」

 

 彼女をベットに寝かし、その横に自分も寝転がる。

 

「おやすみなさーい」

 

 彼女の寝顔を少しだけ堪能した後、俺は疲れていたのか、ほんの数分で眠った。

 

(ん、んん……ここはどこじゃ? ……だ、誰の腕じゃ!? これは……あぁ、お前のか……そ、そんなに抱き締められたら動けないじゃろうが……。起こすのも悪いし、こ、このままでいるしかないか……。いや、これは実際しかたなくやっているだけじゃ! 決してこいつへの好意ではない!)

 

 真夜中、誰か一人が慌てていたのは言うまでもない。

 

 翌日、腕時計のアラームが鳴り響き、俺は目が覚める。

 

「ん、んん……あ、もう朝かぁ……フェニックス様ぁ、もう起きてください」

 

「……お、おう」

 

 やはり、フェニックス様の寝起きは可愛い。目をこする辺りからそれは確信ものだ。

 

「ごはん食べに行きますか?」

 

「メロンパンがいい!」

 

 デスヨネー。

 フェニックス様対策の非常食として例のメロンパンを一つ渡す。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとナス!」

 

 彼女からよくわからない言葉で感謝される。どこの語録かしら。

 それにしても、可愛い笑顔である。ニヤけそうになる自分を抑えるのに必死になりそうだ。

 

「さて、神社帰りますか?」

 

「! ――い、いやじゃ! 我は……我はずっと、お前の傍に居たいのじゃ! 我はお前が好き……いや、大好きなのじゃ……。い、いちゃ……だめなのか?」

 

 突然、彼女に告白されて動揺する俺氏。

 

「あ、あや、その、んん……や、やっぱりそれは良くないですよ。い、嫌なわけはないんです、しかし、フェニックス様はフェニックス様でしょ? お、俺は人間であなたはその……神様みたいな存在なのだから、神社にいないと、良くないです」

 

「……うぅ」

 

 グスリと彼女は泣き出してしまう。 

 俺はとんでもないことをした。フェニックス様の告白に動揺して、あたかも彼女を振るかのようにその返事を後回しにしてしまった。

 

「いや、それは神社にいなきゃいけないってことで……。お、俺もフェニックス様が好きです、大好きです! 毎日神社に会いに行きますから、メロンパン持って!」

 

「……そうじゃな」

 

 彼女は少しだけ微笑んでいたが、彼女の声は微かに震えていた。おそらく、少し涙を流した後だからだろう。そう信じよう。

 

 朝っぱらからシリアスなムードになる。

 感動的な場面だろうが、あいにく今はチェックアウト目前である。のんびりしててはいけないので、フェニックス様にハンカチを渡し、ふたりで部屋を出ていった。

 

「……」「……」

 

 その後は沈黙が続いて気まずくなる。新幹線に乗車した後も、この状態だ。まぁ、こうなるのも無理はないが。

 お互いに顔が真っ赤なのが分かる。彼女を窺った訳では無いが、俺にはそう感じたのだ。

 

 とうとう神社に着いてしまった。ここまで来るまでに会話はほぼ無かった。

 

「神社、着きましたよ」

 

 時刻は夕方。思えば初めてあったのもこの時間だったかもしれない。

 出会って二日なのに、俺は彼女がとてつもなく好きになった。

 これは、一目惚れなのかもしれない。

 

「明日も……絶対に、来るのじゃぞ」

 

 フェニックス様は俺の裾をつまみながら言ってくる。答えはもちろん決まっていた。

 

「毎日メロンパンを持ってきますよ」

 

「……うむ」

 

 彼女が微笑み、つられて俺も笑みを浮かべる。

 そして、ふたりで手を振り合い解散となった。

 最後に、俺が思ったことは一つ。

 

――もう俺、ロリコンでいいや。




続編はありませんが、利香さんシリーズはいくつか出来たらいいと思います。この類以外の小説は書きません。ありがとうございました

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