よう、首輪付き。ウォール・シーナを襲撃する。付き合わないか。あの間抜けども、温過ぎる。革命など、結局は殺すしかないのさ。――だろう?

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ヤリタカッタダケー
余り設定とか気にしない方が幸せになれます。
そして何故組み合わせたのか。何故書いたのか。


人類種の天敵

 第五十七回壁外調査――エレン・イェーガーにとってそれは決して脳裏から消えぬモノとなった。エレンが所属していた特別作戦班は長であるリヴァイを除き全滅。

 そして女型の巨人は取り逃がす結果となり、調査兵団の権威は失墜し巨人化出来る力を持ったエレンは、牢獄の中でウォール・ローゼ―王都―への召喚を待つ日々であった。

 

「……ん」

 

 コツコツと誰かが歩いて来る音が聞こえる。エレンの首に巻かれた鉄の首輪が酷く鬱陶しい。

 やがてその足元が止まる。暗闇でよく見えず、蝋燭の明かり以外まったく役に立たない。だがそれでも目を凝らせば見えて来る。

 ――いたのは男であった。無精髭を生やした、清潔さとは無縁な容姿の男がそこに立っていた。

 

「……へぇ、立派な鎖じゃねぇか。首輪付き」

「首輪付き? 俺が?」

 

 エレンの言葉に男は口元を歪める。

 男が牢の柵の隙間から指を伸ばし、エレンの首に巻かれている鎖を指さした。

 乾いた笑い声が酷く気に入らない。

 

「……じゃあアンタの名前は何だよ」

 

 男が嗤う。ニヤニヤとした口元と嘗め回すような視線。

 それが不快だと思わぬ程、エレンは無知ではない。

 

「オールドキング――」

 

 男はそう云った。

 オールドキング、憲兵団にいる謎の男。

名など知ったばかりであり素性も知れぬ存在が、その日からエレンの記憶に焼き付いた。

 

 

 

 

 その日から男――オールドキングは度々エレンのところへと訪れた。彼は博識とは思えぬ相貌ではあったが、知力に富んでいた。あらゆる物事を達観的に捉えていた。

 憲兵団と言う肩書はエレンにとって気に入らないモノだ。だが何故か、その男を憲兵団とは思えなかった。

 

「――首輪付き、お前が兵士になった理由は何だ?」

「はぁ?」

 

 オールドキングの言葉にエレンは片眉を吊り上げた。

 要するにこの男は、何故エレンが兵士を目指したのかを聞いているのだ。そんな事を憲兵団の兵士が知りたがるとは思えない。

 

「金か、女か、あるいは欲か。いや、お前はまだ十五のガキだったな。なら――」

「巨人を殺したいからに決まってるだろうが!」

 

 そう叫んでいた。心の底に渦巻く思いをまだエレンは堰き止める事が出来る齢ではない。

 満場の思いを込めて吼えた。だと言うのにオールドキングの表情は変わらない。頬の一片どころか、目の色一つも変えていなかった。

 

「――なるほど、つまりは家族の仇か」

「っ!」

「分かるのさ。お前みたいなガキが巨人を殺したいと思うのは、そんな言い分に決まってる」

「……言い分だって」

 

 喉が熱い。今すぐにでもこの男を殴り倒したい衝動に駆られる。

 

「あぁ、そうだ。お前の親一人死んだところで、世界など変わりはしない」

「テメェ!」

「お前も俺も死んだところで、何も変わりはしないさ。衆愚を急かすには、衆愚の死を見せるしかない」

「母さんが……」

 

 あの光景が蘇る。

 数年前、シガンシナ区で見せつけられたある一人の女性の死。

 ――愛していた大切な家族。

 

「母さんが死んだ理由がテメェなんかに分かるかよ!」

「分かるさ。単純な理屈だ」

 

 再びエレンの啖呵が切られようとした時、オールドキングはただ静かに言い放つ。

 まるで当たり前であるかのように。さもそれが、世界の摂理であるかのように。

 

「殺してるんだ――殺されもするさ」

 

 思考が止まる。

 たった、たったそんな簡単な理屈で、母は、カルラ・イェーガーは死んだと言うのか。

 あり得ない。そんな事を認めたくはない。

 

「母さんが誰を殺したって言うんだよ!」

「今まで喰った肉の数だ。人も巨人も、肉を食う事は同じだろう」

 

 今度こそ何も言い返せなかった。

 この男は、人の死を何とも思わない。例えそれが自己の死であろうとも、淡々としているだろう。

 オールドキングは不気味に笑って、踵を返した。

 

「人を喰う巨人と人を喰う人――違いはただデカいか小さいかだけ。まぁ、せいぜい楽しみにしてな、首輪付き」

 

 そういって彼は牢獄から出ていった。

 エレンは頭を埋める。

 ――殺すから殺される。殺されるから殺す。

 あぁ、確かにこれほどまでにない程道理に適っている。

 

「……」

 

 それがこの世界の法則だとでもいうのか。

 そんな下らないモノのために、カルラ・イェーガーは死んだのか。

 戦死していった仲間の思いは、そんな言葉だけで済まされるモノだったのか。

 

「……駆逐(こわ)してやる」

 

 震える喉から声を絞り出す。

 世界の摂理で死ぬ者を止めるには一体どうすればいいのか。

 

「……駆逐(ころ)してやる」

 

 そんな答えはもう――分かり切っている事だ。

 

「この世界を一つ残らず……!」

 

 この日――少年を繋ぎとめていた首輪は砕かれ、少年は獣になった。

 

 

 

「――よう、首輪付き」

 

 ウォール・ローゼ召喚の日、オールドキングが牢屋の前に立っていた。

 彼は珍しく兵士としての装備をしており、傍らにはもう一式の装備を持っている。

 手にした剣で、扉の蝶番を破壊し、扉を蹴り開ける。その剣は何故か血を帯びており、それはまだ新しい。

 エレンを繋ぎとめていた鎖を彼はもう一度剣で砕いた。

 

「ウォール・シーナを襲撃する。付き合わないか」

 

 エレンの前に投げられた装備。それは名も知らぬ兵士のもの。だがここから脱獄するには十分すぎる。

 何より決めたはずだ。

 母を殺し、仲間を殺したこの世界を決して許しはしないと。

 最早彼の思考は、正常な役割を維持出来てはいなかった。

 

「あの間抜け共、温過ぎる」

 

 それが女型の巨人やそれに通じる仲間達を示しているのは嫌でも分かる。

 だとすれば付着していた血は彼らのモノか。だがそんな事は最早どうでもよくなってしまった。

 

「革命など結局は殺すしかないのさ」

 

 ――そうとも。

 この世界を壊すには、まず人間から変えなければ。

 救済を行うにはまず破壊を成し遂げなければ。

 

「――だろう?」

 

 オールドキングの言葉に、エレンは小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 ウォール・シーナは最早死屍累々の大地だった。

 二体の巨人によって生み出された破壊と死はその全てを覆い尽くした。

 

「――ド阿保が」

 

 リヴァイは剣を引き抜く。女型の巨人で傷んだ脚はまだ悲鳴を挙げているが戦えないレベルではない。

 何よりも、今の彼には責任がある。

 二体の巨人の内の一匹は間違いなく――エレン・イェーガーによるモノだ。

 彼らによって殺された人間の数は既に百万を超えている。このまま放置されば、一億人すら容易に殺せるのではないのだろうかと思わせる程。

 既に駐屯兵団と調査兵団は彼らの手によって四割近くが死亡している。

 

「覚えてるか、エレン」

 

 屋根に着地し、リヴァイは巨人化したエレンを見上げる。既に眼下に広がるのは焦土しかない。

 

「お前が暴走した時は、俺が始末すると言ったな。前はお前がまともだったから手を下さずに済んだが、今回は話が別だ」

 

 リヴァイの声はいつもと変わらない。だがその奥底には僅かな怒りが秘められている。

 

「――狩らせてもらうぞ」

 

 そう言って、リヴァイはエレンともう一体の巨人へ向けて走り出した。

 

 

 

 

「っ……!」

 

 ミカサが刃を振るうのは、10m級の巨人だ。

 間違いなくこの巨人がエレン・イェーガーを狂わせた。そして多くの人を殺めた。

 故に決して許せない。許すわけにはいかない。

 

「貴方のせいで……!」

 

 巨人が跳ぶ。

 その巨人は機動力に富んでおり、建物を足場にして幾度となく上空へ跳躍を繰り返していた。

 そして両腕から骨を弾丸として撃ち出す力は最早巨人と言う枠組みには収まらない。その力で、何百人のも兵士が死んだのだ。

 

「エレンを――」

 

 逆風に耐え、剣にしがみつきながらミカサは剣を構える。ブレードは既に交換している。それが残り最後だ。

 エレンはリヴァイが相手にしている。故にミカサはもう一体の巨人を殺すしかない。以前、女型の巨人では彼女の判断ミスのせいでリヴァイに負傷させた。

 もしその負傷が無ければ、間違いなくリヴァイはエレンを沈黙させていただろう。だと言うのに彼は今劣勢を強いられている。

 だが何よりも滅するべきであるのは、この状況を作り出した巨人だ。エレンを誑かした者だ。

 

「返せ!」

 

 うなじへと跳ぶ。剣を引き抜き、渾身の力を込めて振り抜いた。

 砕け散る刃。換装の刃など一本も無い。だが手応えは確かにあった。

 溢れる蒸気――消滅していく巨人の肉体。

 アンカーを突き刺し、着地しようとしたが立体機動装置は空気の抜ける音を響かせるだけだ。

 故にワイヤーが出来る役割と言えば、着地の振動を和らげ、ミカサの負傷を骨折まで留める事が限界だった。

 

 

 

 

 

「――」

 

 仰向けになったまま、ミカサは目を開ける。エレンは間違いなくリヴァイによって仕留められるだろう。彼女が出来る事など何もない。

 それが酷く気に食わないが、以前の二の舞など御免だった。

 まもなく、まもなく決着がつくだろう。

 

「――え」

 

 ミカサの目に映ったのは、エレンの拳がリヴァイへと炸裂する瞬間だった。

 いくら人類最強と言えども巨躯の剛腕を受け、五体満足で済むはずがない。

 リヴァイはその体を四散させ、肉片と贓物の散物となって、周囲の焦土へと散らばっていった。

 

「あ……」

 

 音を立てて歩いて来るエレンの姿。

 以前、シガンシナ区でも同じような事があった。今と違うところを挙げるとすればそれは――エレンが人類に対して明確な殺意を持っている事だ。

 振り上げられた拳。まもなくそれはミカサへと振り下ろされ、彼女の命を絶命させるだろう。

 呆然としたまま見上げ、そしてふと笑った。

 

「――貴方に殺されるなら、それもいい」

 

 愛していた者によって命を断たれる――そんな幻想の幸福に浸りながら、ミカサはただ静かに、その時を受け入れた。

 

 

 

 

 エレンは周囲を見渡す。

 焦土と化した場には、既に何もない。共にいたはずの巨人は既に倒されている。

 ウォール・シーナは全滅した。

 後残るはウォール・ローゼのみ。――元々、王都側から召集をしていたのだから、エレンは赴かなければならないだろう。

 そうして彼は、血に染まった巨体を人類最後の砦へと向けた。

 

 

 

 

 この後、たった一人の巨人により人類は、深刻な出血を強いられる。

 

 

 『人類種の天敵』とすら呼ばれた彼は、史上最も多くの人命を奪った個人でもある。

 

 

 

 




ちなみにオールドキングが巨大化したらリザみたいな性能になります。
骨を弾丸として散弾とライフル弾を撃ち出す……うん、やっぱ無理ですね。

ちなみにですが元ネタにしたミッションは「クレイドル03防衛」「クレイドル03襲撃」「アルテリア・カーパルス占拠」の三つです。「アルテリア・カーパルス占拠」はとっつきでなければクリア出来なかった……。

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