ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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リリスケさん、ZZZZさん、hisaoさん、誤字報告ありがとうございます。
TEL 92さん、一応あれは元ネタになった【攻殻機動隊】の台詞になりますので実は誤字ではないのです。報告ありがとうございましたm(_ _)m

あ、それと宣伝です。
びみさんの書いた漫画をまんま小説化した【田舎に帰るとやけに自分に懐いた褐色ポニテショタがいる】をあげました。
Twitterのリンクも貼りましたのでよかったら併せて読んでください(´・ω・`)
https://syosetu.org/novel/146169/1.html
BLですがそうでないようにも見えますのでオススメです。


第68話【普賢】

新しい名を付けようと思ったとき、自然と思い浮かんだのが“ゼノ”だった。

 

ゼノとは、()()という意味を持つ。未知という意味もあるが、トランクスにはそちらの方が性に合った。

 

戦いの果てに待っていた安らぎは、神の気まぐれによって奪われた。

 

守りたかったモノのことごとくを失い、残ったのは愛する女性のみ。

 

彼自身、これまでのことを後悔しない日々はなかった。己を鍛えながら、練磨を続けながら、“こうすればよかったんじゃないか”、“ああすれば結果は違ったんじゃないか”、そんな妄想ばかりが頭をよぎる。

 

究極化によってそれらの思考をしながらも冷静に己を鍛えられるようになったことは、さながら無間地獄のようにトランクスの心を苛んだ。

 

かつて目の前で失った母と会うこともできた。だが()()()()()。自分を守り、育み、背中を押してくれたあの人ではない。

 

──時折、何もかもを滅茶苦茶に壊してしまいたい瞬間があるのをトランクスは自覚していた。思うだけであるし、それを実行に移すことはない。

 

だが後悔と不安に悩むトランクスは、いつかそれを自分は実行に移してしまうのではないかと気が気ではなかった。

 

彼が真にひとりであれば、いずれその考えは現実になっていたかもしれない。だが幸いにも、彼はひとりではなかった。

 

「どうしたの、トランクス」

 

「……マイ」

 

汗をかき、ベッドで互いに重なった状態で不意に耳元で囁かれる。

 

トランクスは彼女に答えることはせず、ただがむしゃらに彼女を求める。

 

彼は安堵したかった。居場所が欲しかった。己の全てをぶつける相手が欲しかった。

 

そんなトランクスの求めにマイはただ優しく応じ、彼が望むだけその鬱憤の捌け口となった。

 

「大丈夫、大丈夫だよトランクス」

 

息を荒げるトランクスの頭を優しく撫でるマイ。トランクスはささくれた心が癒されていくのを感じ、彼女の胸元に顔を埋める。

 

「怖いんだマイ。どんなに強くなっても、どんなに鍛えても、いつかまた理不尽に全てを奪われるんじゃないかって……!!」

 

涙は流さずとも、それは彼の止めどない慟哭だった。

 

あの時だってそうだったのだ。かつてのセルを圧倒するパワーを己も身に付け、宇宙において並ぶ者のない強さを手にいれていたはずだったのだ。それが、自信と共に呆気なく砕かれた瞬間の絶望。トランクスの正気は、ギリギリで保たれていたに過ぎなかった。

 

「大丈夫だよ、トランクス」

 

「どうしてそんなことが言える……! 俺はもし君を奪われたら、この宇宙を滅ぼしてしまうかもしれない……!!」

 

「その時は、私が自分で自分を殺すわ。誰かに奪われる前に」

 

「なっ……!!」

 

トランクスは迷いなく告げられたその言葉に絶句する。

 

「あなたが私を奪われることを恐れるなら、その前に私が終わらせてあげる。もう二度と絶望は与えない。ただ二人残った世界の異物である私達だもの。だったら、私の全部をあなたにあげるわ。誰にも奪わせない。誰にも与えない。子供さえいらないわ。私の命も、魂も、あなたのもの。いずれ死が二人を別つときまでの誓いよ、トランクス」

 

それはあまりにも歪みきった愛。だが同時に、歪みきったトランクスにはその答えがまるで失ったパズルのピースを嵌め込むかのようにカチリと噛み合った。

 

「……だったら俺も誓う。俺は君に決してそんなことをさせはしない。ああ、させないとも。もはやどんな相手が敵でも躊躇はしない。君だけを見て、君だけを守る。愛してるよ、マイ」

 

「……ええ、愛してるわトランクス」

 

幾度目か数えきれぬ営みへと、両者は再び重なり合うのであった。

 

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約300年。

 

思えば、永く生きてきたものだと桃白々は思った。

 

師である武泰斗が死んだことを兄から知らされ、弟子としては一番遅い時期に仙道を学んだ彼は自分自身その才能は紛れもない本物だと自負している。

 

その後も独学で気の扱いを学び、昇華させ、兄や兄弟子のジャッキー・チュンと同じく不老の肉体を手にいれた。

 

だが彼の情熱はそこまでだった。飽きてしまったのだ。それ以上の強さを求めることに。

 

なぜならばその時点で彼の単純な強さは武泰斗を超え、多数の技を開発した兄である鶴仙人でさえその時点での桃白々を恐れたからだ。

 

虚しかった。強くなっても、それをぶつける相手のいないことが。

 

それから100年を晴耕雨読で過ごし、次の100年をあくせく働いて過ごした。

 

やがて働くのも飽きると、今度は不意に自分の力を試したくなった。殺し屋は、乾いた心を僅かだが潤した。

 

そうして気がつけば、殺せない相手と出会った。真紅の名を冠する無類の魔王に。

 

世界最高の殺し屋とまで謳われた自分が、殺すつもりにすらなれない相手。クリムゾンとの出会いが、桃白々を変化させた。

 

あるいはあのまま殺し屋として生きるのもよかったかもしれない。僅かな年月で手にいれたちっぽけなプライドにしがみつき、生き汚くもがくのもよかったかもしれない。

 

だが事態はそれを許さなかった。そして予想通り、まともに修行した桃白々は武の極みを得た。

 

肉体の強度はともかく、気の扱いに関する練度において桃白々に匹敵するのはクリリンや亀仙人のみである。それとて、全員が方向性の違う鍛え方をしているため、本来であれば技の性質は決して同じではない。

 

しかし亀仙人の闘いを見た桃白々は、その術理を己のものとしていた。

 

遠・中・近距離における対抗手段を身に付けた桃白々。彼を倒すのは、生半(なまなか)なことではなかった。

 

__________________________________

 

 

「さあ二回戦も残すところ二試合!! 練武長久の達人桃白々が勝つか! それとも初代勇者をも圧倒した仮面の戦士ゼノが勝つか!? 見逃せない勝負、二回戦第七試合開始(はじ)めいッッ!!」

 

アナウンサーの掛け声と共にゼノが動いた。

 

構えた剣で飛来したどどん波を油断なく全て叩き伏せる──が、その瞬間ゼノの持つ新生Zソードが突如として重量を増す。桃白々の外気功によって“重さ”が追加されたからだ。

 

それは元々超重量であるZソードのバランスを崩し、ゼノの体幹が僅かに揺らぐ。

 

「疾っ!!」

 

その瞬間を見計らい、桃白々が肉薄する。人中に向かって突き出された一本拳がゼノを打ち、恐るべきことにゼノは衝撃で首がもげんばかりの勢いでのけぞる。

 

「ごはっ……! こ、この技は……!!」

 

全身に力を入れ、防御を固め体勢を整えようとするゼノ。しかし、“極みの一撃”はゼノ自身の気をも含めた同調の一撃。彼の身を守るのは鍛え抜かれた筋肉のみである。

 

「ぜぁっ!」

 

再び“極みの一撃”がゼノの顎に直撃する──が、今度はゼノはそれを耐えてみせる。“極みの一撃”の性質を見極めた彼は、あえて気の防御を解き筋肉のみで桃白々の一撃を耐えて見せた。その証拠に彼の首にはくっきりと血管が浮かび、今の一撃の凄まじさを物語っている。

 

しかし本当にとんでもないのは、そこからだった。

 

「はいぃぃ!」

 

なんと、“極みの一撃”が防がれたことを察した桃白々はゼノの手から新生Zソードを奪い取ってしまったのだ。

 

超サイヤ人という規格外の存在となって初めて扱える超重量兵器Zソード。桃白々は己の外気功を応用し、Zソードそのものに舞空術を纏わせることで見事に扱ってしまった。

 

「ぐっ……!」

 

「どしたどしたどしたぁ!」

 

中国剣法に見られる演舞のように縦横無尽に振るわれるZソード。その卓越した剣捌きによってゼノは無数の裂傷を負うが、同時に平静を保つ精神の傍らで“まだ自分は強くなれる”ことを発見して感動する。

 

「これで、仕舞いぞっ!!!」

 

桃白々は上空へと逃れるように誘導したゼノへと剣を蹴りあげ、己がその上に乗る形で特攻していく。

 

「~~~~~かはっっっ!!!!!!」

 

剣がゼノの腹にめり込み、彼の口からおびただしい量の血が吐き出される。

 

「……俺の勝ちです!」

 

「なんと……!!」

 

ゼノは腹を貫いたZソードを筋肉で無理矢理受け止めると、桃白々の体を抱き締め武舞台へと急転直下する。

 

「「がはあっ!!」」

 

自らもダメージを負う相討ち覚悟の攻撃。立ち上がったのは、より己の肉体を鍛え続けたゼノだった。

 

『勝者! ゼノ選手!!』

 

万雷の拍手もゼノには届かない。彼は自らが持つ仙豆によって自身と桃白々を回復させると、その前に土下座した。

 

「どうか……!! 俺をあなたの弟子にしてください……!!!」

 

究極の技巧によって潜在能力を超えた強さを持つゼノを追い詰めた桃白々。彼は、(おの)が目指す(いただき)を彼に見いだした。

 

「……勝者が敗者に弟子入りとはな。いいだろう、それもお前の権利だ。ついてこい」

 

そう言って武舞台を飛び降りていく桃白々。それを追いかけるゼノの仮面に隠れた瞳には、情熱の炎が燃え上がっていた。

 

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特別観客室で、人造人間ミラは途方に暮れていた。

 

「……いっちゃやだ」

 

自身にしがみつく彼の主、トワ。彼女は一糸纏わぬ姿でミラに股がり、その柔らかい体をすりつけソファにトワを押し倒していた。

 

「しかし、間もなく俺の試合です。戦わねば、俺の役目は……」

 

「だめ」

 

知識として、男女との交合(まぐわい)というものをミラは知っていた。

 

恐怖に支配され、自分の姿を見た瞬間泣き出した主を慰める方法として最も合理的な手段としてそれを選んだのはミラだ。

 

しかし、まさかあの怜悧な才女がこうも幼児帰りしてしまうのはミラにとっても予想外の出来事であった。

 

「マスター、どいてください。私に与えられた命令はこの大会で勝利すること。このままでは──んむっ……!!」

 

ミラの唇にトワの熱い口づけが落とされる。

 

唇を()み、口蓋を舐め、舌を絡めて唾液を啜られる。

 

一方的な口への愛撫は、彼女が満足するまで続けられる。

 

「ん、ちゅ……はっ……もういいわよ、大会なんて。バビディが死んだならお兄様はすでに正気に戻っているし、これ以上戦う理由なんてないわ。今私は……はんっ! あなたが、欲しいの……!!」

 

情熱的に見下ろされ、ミラは己のなかにこんな感情があったのかと驚きながら下腹部を侵す熱に自身を委ねる。

 

「手加減、しませんよ……!!」

 

「むしろこれまでしてたの……? きゃっ!?」

 

……その後、一部始終を把握してしまっていたクリムゾンが何とも言えない顔でアナウンサーにヴォミットの不戦勝を伝えにいったそうな。

 

 

 




ミラとトワがナニしてたかって? おせっせだよ(爆)
なお18禁じゃないのでここまでです(´・ω・`)(笑)

アダルティな今回。迂遠な表現はむしろエロスを強調すると改めて思いました。あーたのしい(笑)

実際不安な時にセックスは特効薬です。強制的に落ち着きます(ただし満足することが絶対条件)。

では次回予告(´・ω・`)


かつて“王”を名乗った暴君。
いまや“銀河”を統べる皇帝。
数奇な運命がふたりを武舞台に手繰り寄せ、今無双の拳が振るわれる。
次回【同撃】。見よ、これが極めた先にある力だ。


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