今日は振り分け試験である。いつもより余裕をもっていつもの通学路を軽く復習しながら歩いている二人の姿がある。一人は茶髪で顔はかっこいいというより少しかわいい要素もあるが顔は整っているが、いかにもバカ面であまり勉強はできそうにない感じだ。もう一人はピンク色の髪でうさぎの髪留めをしていておしとやかでかわらしい女の子で、こちらは勉強はできる優等生である。
「正解です。次の問題いきますよ?」
「OK!どんどんきてよ!」
「えっと、CH3COOHとはなんでしょうか?」
「それは確か・・・うう~んと・・・酢酸・・・だっけ?」
「そうです!よくできましたね!」
なんとか頭を働かして答えを言う男子―――――吉井明久。明久が答えを正解したのを自分のことのように嬉しそうに彼に笑顔をみせる女子―――――姫路瑞希。二人は小学生の頃から一緒にいて、遊ぶときも瑞希は明久の後ろについていった。明久は嫌な顔することなく笑顔で受け入れみんなで遊んでいた。明久が勉強でわからないところがあると瑞希に聴きに行き、丁寧にわかりやすく教えるというのが二人のいつもの日常であり、幸せな毎日だった。
「学校が見えてきたので次で最後にしましょう。いきますよ?」
「いつでもいいよ!次も正解してやる!!」
拳をぐっとして意気込む明久。
「ふふふ。最後の問題は~、三権分立は何と何と何で成り立ちますか?」
「えっと・・・確か・・・司法と・・・う~ん・・・立法と~・・・あ!行政だ!!」
「正解です!よく思い出しましたね!」
「だって昨日瑞希ちゃんに教えてもらったところだったからね。これなら瑞希ちゃんと同じクラスに行けるかな?」
「大丈夫だと思いますよ?明久君が凡ミスしなければですが・・・」
明久はそれはやりそうだなと否定しようにもあたっているので否定できないことを言われ、苦笑いして目をそらす。
「だ、大丈夫だよ?さすがにしない・・・はず」
しないと断言しようと瑞希に言おうとするが声が微妙に震え、どんどん声のボリュームがなくなっていく。
「ちゃんとはっきりいってください。・・・あ、ネクタイ曲がってますよ?」
そういって隣にいた瑞希が明久の前にいき、ネクタイを直す。明久の視界は彼女の髪でいっぱいになり、女の子の匂いとシャンプーのいい匂いがしてクラクラしてくる。ふと下を向くと、豊満に育った果実が自分の腹にあたっていることに気付く。テスト前なのになぜ今こんなことが起こるのか。起こるならテスト終わってからこういうご褒美がほしかった。
「どうしました?顔赤いですよ?」
彼女に声をかけられたことで我に返り、なんでもないと首を振る。一部を凝視していたが彼女にはどこを見ているのか気づいてはいないようだ。よかったとホッと胸をなで下ろす。
「でも、瑞希ちゃんも顔赤いよ?風邪?」
「なんでもないです。大丈夫ですよ?」
そういってあとはたわいない話をして学校に入っていく。
テストの時間になり、僕はテストの答案用紙に答えを書いていく。瑞希ちゃんとやったところがいっぱい出てる。これは瑞希ちゃんに感謝だね。あとでなにかお礼をしなきゃ。そう思いながらどんどん答えを埋めていく。すると後ろでガタンという音が聞こえた。
「ん?瑞希ちゃん!?しっかりして!大丈夫!?」
「あ、明久君・・・」
僕が大丈夫か確認しておでこに手を当てようとしたら後ろから試験監督の先生が歩いてきた。
「試験途中の退席は無得点扱いになるがそれでいいかね?」
メガネの教師が瑞希ちゃんに問う。彼女はほっぺを赤くしはぁはぁと息を乱している。傍からみても体調が悪いのがわかる。そして彼女ははいと言って立ち上がりふらふらしながら教室を出ていこうとするがその足取りは不安定で今にも倒れそうで見てるこっちが怖い。僕は彼女のところにいって両腕を肩に回しおんぶして教室を出ていこうとする。
「おい、吉井!貴様も無得点扱いにするぞ!」
「ええ、勝手にしてください。そんな数字よりも瑞希ちゃんのほうが何倍も大事なので」
そういって、僕は教室を後にする。
「瑞希ちゃん大丈夫?」
「大丈夫です・・・。すみません、明久君。せっかくがんばって勉強したのに私のせいで・・・」
彼女がどんな顔しているかわからないが、多分しゅんとした顔で心で自分を責めているだろう。
「違うよ。僕は瑞希ちゃんと一緒にいたくて勉強したんだ。だからそんなに責めないで?」
「うぅ~。明久君ずるいです。そんなこといって。これ以上熱を上げる気ですか?」
「そんなことないよ?これでも励ましたつもりだったんだけど・・・」
言葉を間違えたかな?と内心で溜息を吐いたら保健室が見えてきた。これで瑞希ちゃんは大丈夫だようね。僕は保健室の扉を開けた。
side 坂本雄二
あいつは姫路をおぶって教室を出ていった。おいおい、その言葉はプロポーズじゃないか?とは言っても姫路は意識が朦朧としていて聞いてなかったみたいだがな。このままやってもいいんだが、あいつはFクラスか。Fクラスのほうがなにかおもしろそうなことが起こりそうだな。そうと決まれば点数を調節しないとな。
「ちっ、あのクズが。」
「ああ?お前いまなんていった?」
俺は点数調整しようとしたら教師の声が聞こえ、無意識に席を立ちクズ教師に向かってガンを飛ばし聞き返していた。
「ふん。クズをクズといってなにが悪い?あいつは観察処分者で問題児だ。なにか間違ってるか?」
メガネをクイっと上げて自分は間違っていないといわんばかりに自信満々に言うクズ教師。
「明久がクズだと?確かにあいつはバカで観察処分者であり問題児だ。だがな、まっすぐでいつも他人のために自分のことを二の次にして行動する他人思いの優しいバカだ。少なくともてめえのような自分のことしか考えない人間のクズがあいつをバカにしていいわけねーんだよ!!」
俺は明久をバカにした胸糞悪いクズ教師を思いっきり体重を乗せた本気のパンチを顔にかましてやる。さらに俺はあいつの分のパンチ・・・いや蹴りを脇腹に蹴ろうとしたが秀吉に止められる。
「止めるのじゃ!確かにこやつは許せんがそれ以上やったら明久が悲しむ。それにもし退学にやったらどうするのじゃ?」
「・・・そうだな。こんなやつにこれ以上やっても俺の拳が穢れるだけだな。悪い秀吉。」
「いいのじゃ。・・・それでお主のパンチのせいでのびているこやつをどうするのじゃ?」
「ほっとけ。みろ、誰もこの教師の心配してねーし、むしろ笑ってるやつもいる。気にするな」
「そうじゃな」
俺は自分の席に戻る秀吉に耳打ちする。
(おい秀吉。俺は明久と同じFクラスに行く。お前はどうする?)
(お主も行くのか?ならわしもいこうかのう)
(いいのか?)
(いいもなにもお主たちといたほうがいろいろ面白いからのう。それにわしだけのけ者は嫌じゃ。)
(そうか。恩に着る)
そういって俺は自分の席に戻る。さてと、Fクラスに行くために点数調整しないとな。答案にさっき書いた答えを消し、Fクラスの代表になるために行動を移す。
これからこの学校の、文月学園で起こる物語が始まる。
こんなもんですかね?
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