月に至る2番目の歌   作:きりしら

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ご存知かと思いますが、本作は表現が稚拙です。
感覚で書いているので矛盾も出てくるかと思います。
矛盾点等ありましたら、お手数ですがご指摘願います。


第3話 夜明けの光

「やめようよこんな戦い!

 今日出会った私たちが争う理由なんてないよ!」

 

 

ステージを見上げる形で響は叫ぶ。

 

 

「…っ!そんな綺麗事を…!」

 

 

戦う理由は無い、話し合えば分かり合える。

立花響の言うその言葉は、大抵の場合その場を治めることができるだろう。

 

だが最早話し合いでは解決しない問題であることは、調と切歌は十分わかっていた。

 

綺麗事を言う奴はいつだって己の利益を優先する。

月が落ちることを隠匿した国もそうだ。

混乱を招くことは出来ないと宣いつつ、自らは地球外へ逃亡するロケットを組み立てる。

この世界に信用に足る者は少ない.

己と家族を守らなければ、生きてはいくことさえできはしないのだ。

 

 

「この世界には…あなたのような偽善者が多すぎる…!」

 

 

激昂する調は、睨み合いの状況を崩す様に歌い上げる。

この計画で、多くの人を救うのだ

その為に邪魔をする者を排除しなくてはならないと。

 

 

だからそんな世界は(だからそんな世界は) 切り刻んであげましょう(切り刻んであげましょう)

 

 

調の百輪廻 α式により再び開かれた戦端。

アンのサポートもあって身体が軽い、多少の無茶も問題ないだろう。

 

 

「何をしている立花!」

 

 

翼の剣で丸鋸群を切り伏せ、クリスが前へ出てステージへ射撃を行う。

ターゲットとなった切歌は、鎌で弾丸をはじきながらも斬りかかる。

 

 

「赤いのの相手は、この私デェス!」

 

 

「くそっ!近すぎんだよ!」

 

 

ガトリングでは分が悪くボウガンに切り替えたクリスは、距離を取るため後方へ跳びながらも射撃を繰り返す。

切歌は着地を刈るために矢を浴びながらも接近し、クリスに一撃を与えることに成功した。

 

 

「日本の正規装者はルナアタックの英雄という風にマムから聞いてましたが、てんで大したことないデスね!」

 

 

ふふんと挑発するようにクリスを見る切歌。

 

 

「なんで攻撃が通らない…!あたしの矢は府抜けてねぇってのに!」

 

 

いくら撃てども切歌にダメージが通る様子は無く、防戦を強いられるクリス。

 

 

一方

 

「はぁぁぁっ!」

 

 

「どうしたの?

 防人の剣はこの程度なのかしら、これでは守るべきものも守れない!」

 

翼は二本の剣で果敢に斬撃を加えるも、全てマリアのマントで防がれ、叩き返される。

 

翼は思う。

まるで霞を斬っているかのようだと

 

「だからとて、私にも守るべき使命があるのだ!」

 

だが防人が挫けることは無い、自らを一振りの剣とした時から、諦めることを止めたのだ。

 

 

 

そして響と調の戦いは、未だ進展することなく問答を繰り広げていた。

 

 

「私はっ、困っている皆を助けたいっ、だけで

 あなたにも理由があるんでしょ…だから…!」

 

襲い来る調の大鋸を鍛え上げた身体能力で避けるものの、響はこの戦いにおいて、その拳を振るうことは無かった。

話し合いこそが解決の糸口であり、拳は争いのために振るわれるものではないのだと愚直に信じているがために。

 

 

「それこそが偽善…!

 痛みを知らないあなたに、誰かのためになんて言って欲しくない!」

 

 

「…っ!?」

 

 

【卍火車 γ式】

 

 

自分の言っていることが偽善であると指摘され、体が硬直する響。

飛翔する2つの大鋸を前にして響は動くことが出来なかった。

 

そこへ駆けつけるクリスと翼、互いに傷つきながらも大鋸を防ぎ、彼方へと弾き飛ばした。

 

「鈍くさいことしてんじゃねぇ!」

 

「気持ちを乱すな!」

 

「はっ、はいっ!」

 

叱咤されることで、改めて戦意を奮い立たせる響。

戦闘が始まって10分が経過しようという頃、変化は突然に起こった。

 

 

『4人とも引きなさい』

 

 

マリア、調、切歌、アンのギアにナスターシャから通信が入る。

フォニックゲインの目標値100%に対して、現状の数値は25%にも満たない

最早手段を選ばず、増殖分裂型ノイズをドームの中心に発生させ、ルナアタックの英雄による絶唱を引き出すことで計画の遂行を狙ったのだ。

 

 

「増殖分裂タイプ…」

 

「こんなの使うなんて聞いてないデスよ!」

 

「マム、分かったわ。行くわよ、二人とも」

 

マリアはガングニールのアームドギアを形成

ノイズへ向けてビーム、HORIZON✛SPEARを放つ。

 

増殖分裂型のノイズはコアを破壊されない限り分裂しても増え続ける、マリアの一撃は響達の目をくらますこととなり、同時に選択肢をも削った。

 

 

「(行くわよ、アーニャ)」

 

 

「(うん、マリア(お姉ちゃん)。もう終わったの?)」

 

 

ステージの裏、マリアに呼ばれたアンは追従するように離脱する。

 

 

離脱先はライブ会場となったドームが見えるビルの上。

マリア、調、切歌、アンの4人は、虹色に輝く絶唱の渦を目にすることとなる。

 

「何デスかあのトンデモは!」

 

「綺麗…」

 

「こんな化け物もまた、私たちの戦う相手…」

 

「大丈夫、どんなに傷ついても、私が全部治すから」

 

 

力の奔流。

絶唱という限界を超えたエネルギーを撃ち出す戦姫最後の手段。

 

 

その絶唱を重ねて調律するというイレギュラー、立花響が存在したからこそ、ネフィリムの覚醒は成し得た。

 

だがそれは同時に、フロンティア計画の大きな障害となることを指している。

イレギュラーにはイレギュラーを。

用意された切り札の存在は、未来に何を望むのか。

 

 

「…フ、夜明けの光ね」

 

 

ナスターシャは独り言ちる。

これが世界を救う唯一の手段だと信じて。

 




2018/01/29 一部言葉の表現を変更。

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