月に至る2番目の歌   作:きりしら

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ご覧いただきありがとうございます。
感想を頂くと嬉しくなってつい展開を言ってしまいそうになりますね。
ニコニコしながら全力で自重させていただきます。
形式的な返信になってしまうかもしれませんが感想や評価、お気に入り登録はとても嬉しく、励みになります。

描写が苦手で急ぎ足になってしまう場面もありますが、どうかお許しください。
他の方々が書く素晴らしい作品を見て勉強していく所存です。


第7話 邂逅

時刻は12時を回り、夜の帳が下りる。

都会の明かりも落ちていき、私も普段なら床に入る頃合いだ。

 

私はウェルがくれたリンカーを弄びつつ、モニターを見つめる彼を見ていた。

モニターに映るのは病院の外。

入り口の門に設置してある監視カメラの映像だ。

 

 

「ねぇウェル。ナスターシャ達を作戦に送ったのって、今日襲撃があるって分かってたからでしょう?」

 

「分かったような口を利く…。」

 

 

彼の目的はアンチリンカーのテストだけではない。

おそらくはネフィリムの餌、シンフォギアとして起動している聖遺物の欠片を欲しているのだろう。

 

ウェルの考える事は単純だ。

彼はフロンティア計画を早急に進めたいらしい。

 

 

「日本の調査能力は本国のエージェントを上回る、向こうにはニンジャとかいう情報戦のプロがいるらしいしな。餌は撒いた、あとは獲物が引っかかるのを待つだけというわけだ。」

 

「なるほど…。ウェルはひねた方向に頭が良い、嫌がらせのプロだね。」

 

「二言余計だ。黙ってろガキンチョ。」

 

 

マリア達が出発して、早くも4時間が経過した。

帰投予定まで残り2時間ほど、それなのにウェルがモニターを見ているという事は、襲撃は間もなくなのではないだろうか。

性根は腐っているが、彼の予想は大体当たる。

 

 

「(本当にできるのかな)」

 

「あん?何か言ったか?」

 

「ううん、なんでも。ちょっと水を取りに行ってくるね」

 

 

いけない、緊張しているようだ。

失敗してはいけない。今夜の作戦で私が役に立てるという証明をしなければいけない。

そんな気持ちが過度に出てしまったのだろう。

 

ふぅ、と一息ついてウェルの冷蔵庫から彼お気に入りのジュースを拝借する。

ドクペとかいう炭酸だ。

彼がいつも嬉々として飲んでいるのだからきっと美味しいのだろう

 

 

「アン!」

 

「!?」

 

 

なにこの不思議な味(ばれたのかな)

 

恐る恐る振り向くと、ウェルは薄笑いを浮かべてモニターを見ていた。

 

 

「おもてなしの時間だ」

 

「そう。来たんだね、二課達が。」

 

 

緩みすぎた気持ちをリセットし、モニターを見据える。

 

邂逅の時はもう、目の前に迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『装者達!適合係数低下!』

 

『このままでは戦闘を継続できません!』

 

 

病院内廊下。

先鋒のノイズは全滅したが、傍受した向こうの通信を聞く限り、アンチリンカーの効果は発揮できているようだ。

ギアの出力が落ち、正規の装者でもまともに動かせていない。

 

 

『アン、そちらの出力は下がってはいるものの規定値で安定。アンチリンカーの下でも動けるとは、どうなっているのかギアを分解してみたいものです。』

 

「いくらウェルでもエスクラピウスは触らせないよ。これだけなんだから、私を私たらしめる物は。」

 

『ふん、まぁいいでしょう。想定通りあちらのギアは機能不全一歩手前状態、活躍を期待していますよ』

 

 

気取ったウェルの喋り方は気持ち悪いが、今はそんなことを考えている場合じゃない。

私と私のエスクラピウスの晴れ舞台、期待通り活躍して見せる。

 

 

「行くよ、エスクラピウス」

 

 

バチリとギアから火花を散らして一直線に突撃する。

不意打ちでもいい、私の存在を認識される前に、杖の先端を立花響に抉りこむことだけを考えた先制だ。

 

全力で踏み込んだおかげか彼我の距離が一瞬で詰まる。

しかし

 

 

「!?伏せろ立花ッ!」

 

「えっ!?はいっ!」

 

 

風鳴翼に察知され、私の不意打ちは剣戟によって防がれた上、切り返してくる。

 

 

「ぐっ…!」

 

 

不意打ちに反応された上に反撃されるとは思ってもいなかった。

一刀を受け、弾き返されるようにして廊下を滑る。

お互いに受けた傷は浅い。私はエスクラピウスの特性で傷を治しつつ3人の装者と向かい合った。

 

 

「あの娘!緒川さんが見たっていう…!」

 

「赤毛のシンフォギア装者…!」

 

 

バレている…。

会場内の監視カメラのせい?

だけど、私のギアの特性は露見してないはず!

 

 

「マリア達の悲願達成のため、ここで死んでもらいます」

 

 

杖を槍のように構え、再度駆ける。

不意打ちが通用しない今、マリア達が帰投するまで時間を稼ぐしかない。

時間を掛けるほどこちらに有利になるのは分かってる、だとしてもここで頭を潰せば!

 

 

「お姉ちゃん達…?待って!私たちは戦いたいわけじゃ!っぐぅ!」

 

「邪魔なの、計画の遂行にはあなたが!」

 

 

こちらの攻撃を防ぐだけで反撃をしてこない立花響。

 

 

「あのバカ!なんで反撃しねぇんだ!っ!?あぁぁぁ!!」

 

【BILLION MAIDEN】

 

 

雪音クリスのアームドギア、4つの砲門から放たれる弾丸の嵐、アンチリンカーが舞う中での大技はバックファイアで身が引き裂かれるような痛みを伴うだろう。

撃った後の悲鳴が痛々しい。

 

 

「うぅっ…!くっ…!おおおぉぉ!!」

 

 

私は避けない、避けてしまえばまた距離が空き隙を与えてしまう。

過去の実験から、どの程度の損傷までならギアで回復できるか分かっている。

ここで誰か一人でも潰してマリアの障害が減ることと、私が折れて障害を残すこと

どちらが最善かなど自明の理だ

 

 

「戦う気がないなら大人しく退場してギアを寄越しなさい!」

 

「それは…できないッ!この力は誰かを守る力なんだ!」

 

「戯れ言を!いっ!?」

 

【青の一閃】

 

 

立花響が応戦を開始すると同時に放たれた風鳴翼の斬撃、直撃した身体が宙に浮く。

 

 

「しまっ…!」

 

「ごめんっ!」

 

 

そこへ叩きつけられた重い衝撃、アームドギアを持たない立花響が唯一使うパイルバンカーだろう。

 

衝撃を逃がすこともできず、無様に廊下の端まで吹き飛ぶ。

ウェルがノイズの壁を作り衝撃を和らげてくれたようだけど、あまり効果はなさそうだ。

 

杖は砕け、ギアも機能不全、もう一度装備し直さなければ最低限の回復もできない状況まで追い詰められた。

 

 

「ごぼっ…ま…だ、まだ終わって…ない…!」

 

 

げほげほとせき込んだ私の喉からは、ごぼごぼと嫌な音が響き、せり上がる血反吐を地面に吐く。

視界が霞む、ギアが悲鳴を上げている。

 

 

「なんで…どうしてそこまで…!」

 

 

「立花…ひびき…風鳴翼…雪音…クリス、あなた達を倒せばマリア達が…喜んでくれる…げほっ…私は…私は役に立てるんだ…」

 

 

嫌だ、いやだ、ここで膝をつけばウェルが連れていかれる。

ナスターシャ、マリア、切歌、調、ウェル、皆の期待に応えるんだ。

私は失敗作じゃない、役に立たないガラクタじゃあない。

 

割れずに残っていたもう一本のリンカーを首に打ち込み、ふらつく足から徐々に回復を始める。

 

 

「もう少し付き合って…融合症例第一号…!」

 

「その必要はありませんよ」

 

 

ウェルの声がインカム越しではなく後ろから聞こえ

瞬間、私の横を黒い物体が駆けた。

 




1話の描写が完全にアニメを垂れ流しているだけなので、加筆及び修正を考えております。
1話で見限られてしまっては、アドバイス等いただく機会も減ってしまうと思うので頑張ります。

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