聖白蓮のスペルカード、大魔法「魔神復誦」の由来が遂に明かされる!?
 その裏にはとんでもない出来事が存在した。

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スキンフォビア

 人間の里に程近い妖怪寺『命蓮寺』。

 今日ものどかな雰囲気が、辺りを包んでいた。

 遠くからは、幽谷響子のお経が聞こえる。

「ところで……」

 縁側で脚をブラブラさせていた二ッ岩マミゾウが、不意に命蓮寺の本尊たる寅丸星に問いかけた。

「何ですか?」

「お前さん、知っておるかのう?」

 会話が噛み合ってない。

 星は、いつものボケだなと、苦笑いをする。

「何をですか?」

「おや、言っておらんかったか。ほっほっほっほっほっほっ……」

 マミゾウはケタケタ笑う。

「いや、白蓮どのの大魔法「魔神復誦」についてなんじゃが……」

「それがどうかしましたか?」

「お前さんも気づいておるのではないのか?」

「はて?」

 星はしらばっくれているが、頬を冷や汗がタラリと垂れていた。

 何かを知っている証だ。

 それをマミゾウは、見逃さなかった。

「あの魔法だけ、白蓮どの本来の力ではないということをじゃ」

「それは……存じております……」

「いったい、何処で手に入れたのか、お前さんは知らんかのう?」

「知りませんね」

 話はなかなか進展せず、そのまま終わるかと思われた。

「おや、お困りのようだね、ご主人様」

 縁の下からひょっこりと、ネズミの妖怪ナズーリンが姿を現す。

「ナズーリン!? こんなところで何をやっているの?」

「お宝の臭いがして、潜っていたんだ」

 呆れる星を他所に、ナズーリンは生き生きとしている。

「そんなことより、聖の大魔法の出所を知りたいんだって?」

「聞いておったのか……。そうじゃよ。あれからは強大な何かを感じたからのう」

「それなら、良い方法がある」

「ほう?」

 ナズーリンの提案に、マミゾウが耳を傾けた。

 自分が思いつかなかった方法とは何だろう?と、マミゾウは興味津々だ。

「ズバリ、本人に直接聞くことさ!!」

 だが次の瞬間、マミゾウと星はずっこけた。

「なっ!? 馬鹿にするな! 聞き込みは調査の基本なんだぞ!!」

 馬鹿にされたと思ったのか、ナズーリンは顔を真っ赤にして怒り出した。

 ダウジングに一家言ありらしい。

「そんなことできれば、苦労しなかろうて……」

「聖にそんなことを聞くなんて……」

 2人には躊躇いがあるのか、なかなか動こうとしなかった。

「そんなことを言うけど、君たちの後ろにいるよ」

 ナズーリンの指差す方向には……

「どうかしたの?」

「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」

 突如現れた聖白蓮に、マミゾウと星は絶叫を上げた。

 大層、怖かったらしい。

 ちなみに、ナズーリンは凄く意地悪そうな笑みを浮かべている。

 余程、馬鹿にされたのが気に食わなかったようだ。

「魔法で足音を消さないでください」

 呼吸を整えた星は、白蓮に注意した。

「いいじゃないの。いざ使おうって時にちゃんと使えなかったら意味ないでしょ? 僧侶は日々鍛錬よ」

 白蓮は、残像を残して動きつつ、星をなだめた。

 星の注意を聞くつもりは全然ない。

「それで大魔法「魔神復誦」のことを教えてはもらえるのかの?」

「ええ。どうせなら、寺のみんなも誘ってお話ししましょう」

 マミゾウの質問に、白蓮は快く答えた。

 それからしばらくして白蓮の周りに、人間や妖怪が集まり話を聞くこととなった。

 

 

~以下、白蓮の回想~

 あれは、私が修行で唐に行っていた頃の出来事だったわ。

 都に行く途中で、疫病に苦しむ村があったの。

 私は未熟者ながら、彼らを救おうとしたわ。

 でも、なかなか疫病は去らなかった。

 精一杯の努力はしたのだけれど、疫病はむしろ酷くなる一方だった。

 これが私の限界か……と思った時、1人の村人がこんなことを教えてくれたの。

「この村は元々魔界の一部で、大昔に魔界から離反して地上に来た。それに怒った魔界の神様が疫病を蔓延させている」

 って。

 今だったら、容易に信じられたけれど、その時の私はまだ未熟。

 そんなことが現実にあるなんて、思ってもみなかった。

 だから、試しに神を罵倒したの。

「やーい。魔界の神、出てこい、やーい!」

 そうしたら、突然地響きがして、お空が割れて、見たこともない異形が姿を現したの。

「あら、誰かしら? 私を侮辱する輩は……」

 六枚の翼を持ち、たくましい髪型をした、魔界の神が本当に降臨してしまったの。

 きゃー、大変。

 って、逃げるわけにもいかないから、私は啖呵を切った。

「あなたが、この村を苦しめる元凶なのね! 絶対に許さないわ!」

 何処かで聞いたことのある台詞だったけど、その時は気にしなかったわ。

「許さない? 笑止!! この村の者は魔界人!! あなたに私の造った物に手出しされる言われはないわ!!」

 人々のことを何だと思っているのだろうとその時は思ったわ。

 後から考えれば、この魔界の神が言っていることの方が正しかったんだけど……

 それでも、人々を苦しめていることが許せなかった私は、魔界の神に掴みかかって、

ブチィィィィィィィィィィィィィィ!!!!

 と、奴のたくましい髪の毛をぶっこ抜いたの。

「わっ!? 何をするの!? 乱暴者!!」

 魔界の神は、私の行動に慌てふためいた様子だった。

 けど、それだけでやめる私じゃないわ。

ブチィィィィィィィ!!!

ギイイイイイイイイイイイイイブチ!!

ブチブチブチブチブチブチブチ!!!!

 1本残らず引っこ抜いてやったわ。

 しばらくして魔界の神は戦意喪失して消えたの。

 いやあ、凄く清々しい気分だったわ!

~回想終了~

 

 

 辺りが静寂に包まれる。

 話を聞いていた者は揃って青ざめた顔をしていた。

 その中でただ1人、喋っていた白蓮だけは、何故そうなっているのかが理解できていない様子だ。

「あら? みんな、どうしたのかしら?」

 涼しい顔で、一同の顔を見回す白蓮。

 それに対して、その場にいた全員は白蓮と顔を合わせないようにした。

 何故なら、彼女の気に障って髪の毛を獲られてしまうかも、と思ったから……

「ちょっと待ってください」

 星が汗がだくだくにかきながら、やっとの思いで口を開いた。

「なんで、魔界の神なんて存在の髪の毛を全部引っこ抜いて、最終的につるっぱげにしたんですか!?」

 皆が抱えている疑問を、星は大声で白蓮に質問する。

 敬愛する師匠の、あまりにも的外れな行動に、星も動揺を隠せていない。

 他の妖怪たちも同様だ。

「だって、仏教に入信させようと思ったから……」

「ふぁ!?」

 あまりにも予想外な回答に、その場にいた全員が奇声をあげた。

「バリカンは!?」

「ちょうどなかったのよ」

 そういう問題じゃないだろという周りからのツッコミをスルーしつつ、白蓮は答えた。

「なんてことだ……。まさか、聖が脳筋脱毛少女だったなんて……」

 頭を抱えた星が、絶望の表情で呟いた。

 敬愛する師匠の実態を知って、失望してしまったようだ。

「そんなこと言わないでよ……ねえ?」

 白蓮は周りを見渡し、自分の賛同者を見つけようとするが、見られた者たちはそそくさと逃げる準備を始めている。

 賛同すれば、脳筋脱毛少女と同じ思考をしていると思われ、反対すれば、頭髪が無くなってしまうからだ。

「え?」

「白蓮どの……」

 呆気にとられる白蓮にマミゾウが話しかける。

「ところで、それがどうして大魔法「魔神復誦」に繋がるのかのう?」

 マミゾウだけは、まだ当初の目的を忘れていなかった。

 それでも、自分の帽子を手で押さえていたが……

「そうだったわね。私が魔界に封印されてしばらくしてから、魔界にさっきの神が現れたの」

 白蓮は懐かしそうに語る。

「私はしばらくの間、忘れていたのだけど、その神が私に土下座してこう言ったの」

 ウインクして無理矢理明るい話にしようとしているが、もう遅いことに白蓮は気づいていない。

 マミゾウの顔も引きつっている。

「『もう髪の毛を抜くのはやめてください! あなたの言うことなら、何でも聞きますから!!』」

「ほわあ……」

「そこで、私はその神の弾幕を教えてもらったということよ」

 明るく振舞われたが、マミゾウはそれどころではなかった。

 自分の毛髪を心配しなければならないからだ。

 マミゾウは、狸寝入りする訳にもいかず、急いで命蓮寺を後にした。

 他の妖怪や人間も、マミゾウが逃げていくのを見ると、静かに命蓮寺から出ていった。

 命蓮寺は、廃寺のように静かになった。

 

 

 それからというもの、幻想郷では帽子が飛ぶように売れた。

 髪の毛を引っこ抜いて強制的に出家させる僧侶から、身を守るためだ。

 ありとあらゆる人間、妖怪が、頭髪を晒さないように生活するようになった。

 命蓮寺には妖怪もいなくなり、今では1人の僧侶がいるのみとなった。

 その結果……

 幻想郷のZUN帽着用者は、元々の4倍になった。


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