今頃になって何故ドラクエ8のしかもゼシカなのかと、疑問に思った方が多数と思われます。
それを説明できる理由は一つ。
私がゼシカのこと大好きだからです。
それ以上の理由はなく、それ以下の理由もないです。
私の描き起こしたこの作品に於いて、主人公に名前はありません。
従って、ゼシカやその他のキャラクターが主人公のことを呼ぶ時は「彼」や「あなた」あるいは「勇者様」となります。
その理由は、その三人称の部分に自分の名前を当てはめていただきたいなと思ったからです。
と言うか、私が自分の名前を当てはめて読みたいからそうしました(笑)。
最後にもう一つ、今回の話に於いてだけはある程度原作に忠実な部分が数多く出てきます。
まるっきり同じと言うことはありませんので御了承下さい。
前書きが長くなってしまいました。
それではどうか、お楽しみ下さい。
第一話 私とあなたと二人で歩いて行く道
私達は遂に成し遂げた。
あの人の育ったお城をイバラで蝕み、ミーティア姫とトロデ王を呪いで辱め、ククールがお世話になったオディロ院長を酷くも刺し殺しそして…
ーーー私の大好きな、サーベルト兄さんをも殺した、憎きドルマゲスを倒した。
更にはその裏で暗躍して、あまつさえ私をも操った真の黒幕ーーー暗黒神ラプソーンをも倒したのだ。
それまでに多くの人が涙を流した。
多くの人が宿した怒りに振り回された。
私やククールやヤンガスも幾度と無く怒りで我を忘れ、涙を流すだけの日々が続いた。
おかしくなりそうだった。
ーーーーそう、メディおばさんの時は本当に堪えた。
それでも彼は諦めはしなかった。
世界を飛び回り、出逢った人々に希望を与え続けた。
例え、自分の仕えていたお城がイバラの呪いで時が止まっている姿を見た時でさえも、彼は一度も【諦め】を口にしたことは無かった。
それどころか彼は私達を励まし続けた。
上辺だけの言葉ではなく、行動で示し続けてくれた。
だから私たちは彼について行くことができたのだ。
それでも、私達が本当に辛くなった時、彼は言葉をかけてくれた。
『僕はもう、みんなの泣く姿を見たくない』
そう言って私達に立ち上がる理由をくれた。
抗い続ける理由をくれた。
もしも、その言葉が無ければ私は…
多分、道中の魔物に殺されていただろう。
ーーーいつしか私は彼を好きになっていた。
いつからなのか、はっきりとは分からない。
アスカンタ城でパヴァン王とシセル王妃の為に奔走する彼の後ろを着いていった時かもしれない。
操られていたとは言え、みんなを攻撃した私を朝まで介抱してくれた時かもしれない。
メディおばさんの冥福を丸一日祈ってる姿を見た時かもしれない。
…もしかしたら出逢っ時から既に好きだったのかもしれない。
…いや、流石にそれはないか。
兎に角私は彼を好きになっていた。
うん、正直に言うと私はもう、彼無しでは生きてはいけないだろう。
彼ほど心の底から好きになれる人はきっともう間違いなく絶対に今後会うことは出来ないだろうと、胸を張って言えてしまう。
もはや依存と言ってもいいのかもしれない。
「ふふふ、なんてね。自分でも驚いちゃう。
まさか、天下の大魔法使いゼシカ様がこんなに女々しい事を考えるなんて」
らしく無く独り言を口にしていると、後ろから扉の開く音がした。
「ゼシカ、そろそろ入場の時間よ」
「わかってるー!」
おかあさんだ。
サーベルト兄さんが殺された時、誰よりも泣いて、誰よりも落ち込んで、そして誰よりも喪に服す事に徹し続けた、私がただ1人の家族になってしまったおかあさん。
「(そうね、あの事も彼に感謝しなきゃ)」
「あら、何か言いった?」
「んーん。別に!」
そうだ、彼がいなければ今だにお母さんとは仲直りができていなかったかもしれない。
あの日、彼が気を使って私の故郷・リーザス村に戻ってくれた事。
今だにしっかりとお礼は言えていないけれど、本当に凄く感謝している。
これは後でおかあさんから聞いた話なんだけど、その日、彼はおかあさんに私の事を必死に話していたらしい。
それはもう、私を褒めに褒めてベタベタに褒めた話を。
おかあさんはすぐにケンカの事だと察しがついたらしいけど、面白いからってそのまま話を続けさせたそう。
意地悪にも怒ってるような顔をしたままで。
その甲斐もあって今では昔よりも仲が良くなった。
…と思う。
まぁ、お陰でおかあさんとバージンロードを歩く羽目になったのだけれど。
「そろそろいくわよ」
若干の苛立ちと共に催促をされる。
当然だろう。
今となっては一人娘の私をお嫁に出すのだ。
嬉しさ半分悲しさ半分で気持ちが綯交(ないま)ぜになってるに違いない。
「勿論!」
普段なら出さないような大きい声で返事を返す。
やっぱり、心の中でとても喜んでいる私がいるんだろう。
「そう、じゃあベールを少し直してから行きましょう」
「別に、ちょっとくらいズレてたっていいのに…。
あの人はこんなところ気にしないんだから」
「ダメ。
こういうのはちゃんとしなくちゃ」
言いながらおかあさんは、にこりと笑って僅かにベールを動かした。
誤差の範囲もいいところだ。
「よし、流石は私の娘であの子の妹ね。世界で一番綺麗よ。
きっとあの子も…サーベルトも向こうで喜んでるわ」
「やだ、おかあさん。また年取ったんじゃない?
涙腺が脆くなってるわよ」
「あんた、貰われた先でもそんなこと言って見なさい?
すぐに捨てられますからね」
目尻に浮かんだ雫を優しく拭っていると、おかあさんはおかしな事を言い出した。
「そんなことあり得ると思う?」
「…あの方に限ってはないと思うけれど、万が一という可能性も捨てられないわ。
なんて言っても、田舎のじゃじゃ馬娘と、姿を変えられても高貴なままのお馬様になった一国のお姫様を比べたら、どっちの方が魅力的か、なんて簡単にわかるんだから」
むぅ…そう言われると自信が無くなってくる。
確かに、ミーティア姫は優しくて賢くてお上品で優雅。
対して私は、気が強くて素直じゃなくて意地っ張りで負けず嫌い。
自分で言うのもなんだけど、私が男だったら多分相手としては選ばないだろう。
…気をつけないと。
「そ、そんな事より、そろそろ入場した方がいいんじゃない!?」
「そうね。
それじゃあ手を乗せて、ゼシカ」
「…はい。おかあさん」
差し出されたお母さんの手の上に私の手を重ねて、扉から出る。
少し道を歩いた先にはとても大きく、荘厳で雄大な礼拝堂の大きな扉に行き当たる。
裏口ですらこのように豪華なのだからびっくりだ。
ゆっくり、けれど確かに。
確実に、一歩ずつ進む。
その度に心臓が高鳴るのがわかる。
額が汗ばんで、指先が微かに震えているのがわかる。
やがてその時は訪れた。
僅かにでも手を伸ばせばそこに扉はある。
「(はぁ、はぁ)」
気がつけば呼吸も速くなっていた。
「…大丈夫、ゼシカ。貴女の好きな時に扉を開けなさい」
小さく頷く。
このドアの先にはあの人がいる。
どんな時も一緒にいてくれたあの人が。
私なんかで本当にいいのだろうか。
本当はミーティア姫の方が彼に相応しいんじゃ無いのだろうか。
そもそも彼はOKしてくれないんじゃ無いか。
ここまで来て私らしく無い。
女々しい考えが頭の中を駆け回る。
でも、悔しい事にその考えのどれにも私が望む答えなんて当てはめようもなかった。
「ゼシカ」
名前を呼ばれて我に帰ると、おかあさんの顔が目の前にあった。
「さっきはあんな風に言いましたが、自分の選んだ人を信じなさい。
『彼に限ってそんな事は起きるはずない』ってね」
優しくてあったかいおかあさんの手が私の頬に触れる。
随分ともう触れ合うことのなかったその温かさは私を安心させてくれた。
けれど、私はまだ彼の口からは何も聞いていないのだ。
昨夜聞いたミーティア姫の話。
正直に言って、今でも半信半疑でいる。
ミーティア姫の嬉しそうな悲しそうな、楽しそうな寂しそうな、そんな表情で語られていた話。
何度思い出して考えてみても、やっぱり飲み込む事が出来ない。
「(ううん。今更何を考えたってしょうがないじゃない)」
小さく呟いて弱気な気持ちに喝を入れる。
ダメで元々。
当たって砕けろ。
やらずに後悔ならやって後悔!
そうやって気持ちを奮い立たせて深呼吸をする。
ゆっくりと差し出した掌に伝わる厳かな冷ややかさ。
布越しでも伝わるのは、緊張と期待で身体が火照っているからだろう。
「じゃあ、開けるね…」
自分でも驚くくらいに弱々しい声を合図に、おかあさんも扉に手をかける。
遅くもなく速くもない。ただ、普段通りに扉を開ける。
やがて、静かに開けられた扉の先には、恋い焦がれて止まない彼の姿があった。
メダパニ系の魔法を受けたような顔をして呆然と立ち尽くす彼。
そんな彼の元へ、逸る気持ちを出来るだけ抑えてお淑やかに歩み、手を伸ばせば届くほどの距離まで間合いを詰める。
「ふふ、どうかな」
可能な限り普段と同じように。
「ちょっと窮屈だけど、似合ってるかしら?」
でも、どこか可愛らしい女の子のように。
「昨日、貴方が宿に帰った後に突然ミーティア姫に呼び出されたの」
何だろうと思って、着いて行ってみたら『自分の結婚式は無くなったから代わりに私(ゼシカ)の結婚式をやる』って言い出したのよ」
…自分で言っていて嫌になる。
「最初は、何かの冗談か何かかなって思ったけれど…
トロデ王どころか、クラビウス王からも本当の事だって言われて、びっくりしたわ」
私は知って…いいや、わかってるんだ。
「それで、気が付いたら…
こんな格好にされちゃったわ」
本当はミーティア姫は彼の事が好きだという事を。
「しかも、いつの間にかおかあさんや、ポルク達まで連れてこられているし」
本当はトロデ王もクラビウス王も、彼とミーティア姫の結婚を望んでいる事を。
「もう、何が何だか………」
それでも、私は彼に想いを伝えたい。
胸の中にある、重くて辛くて苦しくて、でも、どこか愛おしいこの気持ちを。
「……………………。
私は……」
言わなければ。
人の気持ちを蔑ろにするような事までして望んだ、今日のこの瞬間。
それさえも、踏み躙る事は許されない。
それになにより…
これ以上私は、自分に嘘をつきたくない。
「私は、貴方の事が…好き」
たった一言。
『好き』という二文字のありふれたセリフ。
ただそれだけの言葉が口から出た途端、それまでに溜めていた言葉達が止めようも無く溢れ出した。
「いつからなのか、わからないけれど……。
気がついたら、貴方の事ばかり考えていたわ……」
いつもの私らしく、強がっているつもりだったのに。
一つ、口を動かすたび、そんな気持ちとは真逆の態度に変わっていく。
「でも、私は…。
この気持ちを思い出にして、心の奥にしまっておこうと思っていた。
だって、貴方はきっと…
ミーティア姫の事を……」
決して見せまいとしていた弱い部分を曝け出していく。
いつからか在った想いを露わにしていく。
「なのに…
そのミーティア姫が『貴方(かれ)には自分以外に結婚したい程、好きな人がいる』って言い出したのよ」
昨夜の話の内容が脳裏を過る。
あんな…あんな話を聞かされたら。
私は、ラプソーンなんかに心を手玉に取られてしまうような私は…。
「そんなこと言われたら、期待…しちゃうじゃない……」
貴方に、好きだと言って欲しい。
「私は、もう自分に…嘘をつくつもりはないわ。
だって、貴方を好きな気持ちは…今も昔も変わらないんだもの」
出来る事なら、これから先を一緒に歩みたい。
家庭を築いて、寝食を共にして、朝まで話して、笑って、時にはケンカをして、やっぱり仲直りをして。
そんな風に暮らしたい…
「でも、貴方はどうなの?
こんな、弱くて身勝手な私でいいの?」
それがどんな答えだって構わない。
私は貴方の言葉(こたえ)を知りたい。
「人伝てじゃない、貴方の本当の気持ち…
教えて下さい……」
そう言い終えると、少しの時間もなく、彼は私の左手を取り薬指に御両親の形見であるアルゴンリングをはめてくれた。
その刹那。
ほんの僅かな間だけ、私はあらゆる感情を忘れた。
薬指にしっかりと乗る、大粒の真紅の宝石。
吸い寄せられるようにして心を奪われる。
「これが、僕の答えだよ。ゼシカ」
我を忘れた私を引き戻したのは、いつもなら殆ど話さない彼の言葉だった。
優しくて、柔らかくて、でも頼りになる不思議な声。
胸の中にあったいろんな心配が全てかき消えて、今にも泣き崩れそうになる。
ずるいな…
こんな時まで行動で示すなんて…
くしゃくしゃに歪んでいるであろう私の顔を見たおかあさんは彼から向き直ると、努めても緩んでしまう表情で言葉を紡いだ。
「ゼシカ。
貴女の選んだ道について、私はもう何も言いません。
ふたりで、幸せになりなさい」
どこまでも優しく、どこまでも厳しくそう言い放ったおかあさんも最後は、柔和に微笑んでしまう。
「おかあさん…。
ありがとう」
「こんな、ふつつかな娘ですが、ゼシカの事をどうか、よろしくお願いしますね」
今までに無い寂しい声でそう言うと、彼はどこまでも真っ直ぐな目で私を一瞥すると、おかあさんの方に向き直り頷いてくれた。
ーーーーー ーーーーー ーーーーー ーーーー
「リーザス様。
私たちふたりの行く末を、どうか見守っていて下さい」
ここはリーザス村から出て左に少し進むとある、リーザスの塔の頂上。
サーベルト兄さんが殺され、私が彼を殺そうとした、リーザスの像が静かに佇む神聖な場所。
今はもう、両目に紅く輝いていたクラン・スピネルは無い。
けれど、それでもリーザス様はきっと、私達を見守っていて下さる。
やがてお祈りも終わり、その場を後にしようとした時、思わず口が開いた。
「ここで貴方達と出逢ってから、本当に、いろんなことがあったわね」
彼は私の話に優しく頷く。
そんな彼が可愛くて、つい、意地悪をして見たくなった。
「最初はあなたの事、『なんだか、頼りなさそうな人だな』って思っていたのよ。
気づいてた?」
苦笑いして頭の後ろに手を当てた彼は、少し考えてから恥ずかしそうに頬を紅くして言葉を返す。
「じゃあ、どうしてゼシカは僕の事を好きになってくれたの?」
思ってもみなかった反撃に私は少しだけ戸惑う。
にまにまと笑ってみせる彼を見て、私は彼の知らなかった一面を見れた事に内心喜んでしまった。
ーーーなら私も、相応の返し方をしないといけないわね。
「そうね…
やっぱり、ラプソーンに操られていた私を助けてくれた時からかな、あなたを見直したのは」
「うんうん、それで?」
「それでね、いつの間にか…あなたの事を、サーベルト兄さんの影を重ねるようになったの。
それで、一緒に旅する内に、だんだんあなたの事が好きになっていって…」
そこまで言うと、彼は顔を真っ赤にして下の方を見始めてしまう。
きっと、そこまで言うとは思っていなくて急に恥ずかしくなってしまったのだろう。
勿論、今言った事は全て本当だ。
ただ、もう少し正確に言うのなら。
今も彼の事を好きになり続けている、ってところかな。
「ふふっ。
なんだか、色々ありすぎて、全部ずっと遠い昔の出来事みたいな気がするわ」
下を向いていた彼は「そうだね」と返す。
「さぁあなた、そろそろ戻りましょうか。
私たちの…家に」
『私たちの家』
そう言うのは、今でもまだ照れくさい。
とんでもない結婚式が終わってから、だいたい半月。
急な結婚式内容の変更に、呼ばれていたお客さんの中には怒りの声を上げた人もいたそうだけど、殆どが私たちが旅の途中で出逢った人々で、あまり大事にはならなかったらしい。
両国の関係も特に亀裂が入ったわけではなく、トロデーン城内では『姫様の貞操が守られた!今なら婚約できる可能性もあるぞ!武勲を立てろ!』と言った風にむしろ士気が上がり、サザンビーク城内では『チャゴス王子。あの時の物言いは皆、流石に腹に据えかねました。旅人とは言え、貴方は彼らに恩があるのですぞ?そのたるんだ腹と共に精神も鍛え直しましょう!』となり、王家の山に篭らされているのだとか。
その間、ヤンガスやククールそれにゲルダさんやモリーさん達と一緒に、私と彼の定住する場所を世界を飛び回りながら探していた。
幸いにも彼はルーラを使えたからそれほど苦では無かったし、割とすぐに場所は見つかった。
ーーーーエジェウスの石碑
私たちが旅をする最中、本当に偶然見つける事ができた古ぼけた石碑。
『僕とゼシカでこの石碑を守り続けよう』
私は、彼に賛成した。
この石碑には、ラプソーンを倒すための手かがりが刻まれている。
七賢者の一人・エジェウス様が書き記し、残してくださった大切な教えが。
他のみんなは口々に『ラプソーンが復活することはないんだからもっと便利なとこに住むべき』と言ってくれたけれど、万が一ということもあるし、ルーラの使える彼がいれば基本的に移動に不便はない。
それに何より、この石碑がなければ私たちは今頃どうなっていたかすらわからない。
恩返しの意味も込めて、私と彼でこの石碑を守っていくべきだと思った。
最後にはみんなも納得してくれて、そこに家を建てる事にした。
旅の途中で仲間にした優しい心を待つ魔物達や、みんなで協力して建てた家は二人で住むにはあまりにも立派な物だったけれど、みんなで集まる時や、トロデ王やミーティア姫達が来た時の事も考えれば決して大き過ぎはしない家になった。
それから何日かはトロデ王やミーティア姫も呼んでみんなでお祭り騒ぎをした。
とても楽しい時間だった。
中でも驚いたのはゲルダさんがヤンガスに告白(?)した事だ。
酔った勢い、なんて言葉もあるけれど、アレはまさにその言葉のままだった。
『なんで私があんたに意地の悪いことするかわかるかい?このイノブタマン。
全く、こういう事になるとそのブタっ鼻はなんの役にも立ちゃしないんだから、困ったもんだよ。
…いい加減、こっちの身にもなりなっての』
唐突にそう言い放ったゲルダさんは、自分の発言を思い返すと普段のクールでカッコいい態度からは想像も付かない顔をして、別の部屋に篭ってしまった。
面白がったククールとトロデ王は、慌てふためくヤンガスをけしかけてゲルダさんの居る部屋に入れてゲラゲラ笑っていた。
そうして日々はピオリムがかかったように流れて行き、今日が訪れた。
私は、彼が差し出してくれた左手に自分の右手を重ねて歩幅を合わせて、塔の中を見て歩いた。
男らしい彼の手が私の手を包み込む感覚は結婚式の日以来だ。
やっぱり胸がドキドキする。
そんな心臓の高鳴りが彼には届いてしまっているのだろうか。
変に力を入れてはいないだろうか。
手汗は大丈夫だろうか。
それ以前に顔はどうなっているんだろう。
そう思った私は、努めて冷静な顔を作ってみた。
「(だめね、やっぱりどうしてもにやけちゃう)」
ーーー絶対に叶わないと思っていた願い事が現実になる。
それがこんなにも心踊る事だったなんて。
そこでふと、彼の事が気になった。
普段、物静かであんまり表情を変えない彼は今、どんな顔をしているのだろう、と。
塔を出た辺りで彼の顔を、ちらりと横目で確認してみる。
すると彼も、ほんのり顔を紅くして口元がにやけていた。
その顔を見て私は急に嬉しくなった。
ーーー彼も私と同じ気持ちなのかな…
そう思うと、胸の中がキュンとするような、変な気持ちになる。
だから私は思い切って立ち止まってみた。
彼は驚いた風に私を見る。
当然だ、さっきまで一緒に歩いていたのに、急に止まったのだから。
けれど、今言っておかなければならないと思ったのだ。
「ねぇ、あなた。
私は今、とっても幸せよ」
【僕もだよ】
そんな表情で頷く彼。
そんな些細な事が凄く嬉しい。
「だから…」
彼は小首を傾げて私の次の言葉を聴き逃すまいとする。
「これからも、ずっと頼りにしてるからね。
私の旦那様!」
恥ずかしげもなく大きい声で私はそう言った。
これからはいつだって言えるセリフ。
けれど、何故かはわからないけれど、今言わなければならない。
そう思ったから、精一杯の心と笑顔を込めて彼の事をそう呼んでみた。
すると彼は一瞬だけ微動だにせず立ち尽くす。
「ぬ"っ"!」
そして彼は、胸の辺りを強く握り締めると、そのまま草むらに倒れ…た?
「…え?」
突然の出来事について行けず混乱しながらも、大急ぎで彼の元まで駆け寄る。
「ねぇ、あなた!大丈夫!?あなた!ねぇってば!」
何度も声をかけると私の声が届いたのか、彼は反応し僅かに目を開くと、ゆっくり右手を持ち上げて私の頬をそっと撫でる。
「ゼ、ゼシカ…
君は…かわい…過ぎ…る…ーら…」
「へ?」
彼が何かを言い終えると刹那にして視界が光に覆われ、気がつくと私達の家に戻っていた。
私の旦那様は何故か、満面の笑みで気絶していた。
To be next story.
とまぁ、こんな具合でかなり原作に忠実となっております。
正直、結婚式場に入場したあたりからの主人公以外のセリフは秀逸過ぎて私には書けません。
なので、ほんの少しだけ蛇足をさせていただき、オリジナリティのあるオマージュをさせていただきました。
そんなこんなでps2版ドラクエ8をプレイしていた頃から暖めていた、ゼシカとのラブでラブな物語をこれから綴っていこうと思います。
そうそう、Twitterもやっているので良ければのぞいてみて下さい。
それでは、次の更新がいつになるかはわかりませんが、次回までさようならです。