私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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サクサクっと季節ネタを。
投稿時間とかなんとかは気にしちゃあいけない。
時系列とかそんなのはあんまり気にしないで書いてるのでご了承下さい。

それでは、どうぞ!


番外編 私とエイプリルフール

「…ごめんねゼシカ。実は僕、君に言わなきゃいけない事があるんだ」

 

朝食も残り僅かで終わる…そんな時に、向かい側に座る彼の顔が悲しく歪んだ。

 

「ど、どうしたのよ急に」

 

聞き返すと、更に辛そうな顔をして俯いてしまう。

そんなに重大な問題なかしら。

 

「ゼシカの事は凄く好きだよ!でも…実はね、その、僕…」

 

そう言ってまた黙ってしまう。

 

「…どうしたのよ、あなた。私、前にも言ったわよね?うじうじしてる人は嫌いよ!って。

だから、ね?言ってよ。大丈夫!あなたとならどんな問題でも解決出来るから!」

 

「実は僕…と言うか『僕たち』…」

 

一瞬、声が二重に聞こえた?

その疑問を彼に聞く前に、部屋のドアが勢いよく開く。

それと同時に、丸っこい影が彼の椅子の隣にまで転がって来て…。

 

「結婚する事になったんでがす!」

 

はち切れんばかりの身体をフォーマル(だった)スーツに身を包んだヤンガスがいた…!?

 

「え!?は、えっ!?な、何でヤンガスがここに!?

そ、それよりも!結婚って!?」

 

慌てふためく私をよそに、ヤンガスが転がって来たドアから、ククール、ゲルダさん、モリーさん、それに、ミーティア姫とトロデ王までもが現れた。

しかもみんな、結婚式に着て来そうな礼儀正しい格好をしている。

 

「どうもこうも、そう言う事だよゼシカ。君のいとしの旦那様は」

 

「そこで破裂しそうなイノブタマンの旦那にもなる、って事だね」

 

「ま、よそ様から見れば立場は逆じゃろうけどのぅ」

 

「うるさいでがすよ!

そもそも、アニキの漢前は内面からあふれるものなんでがすから、他の人にわかるわけないんでがす!」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!

え、なに、どう言うことなのこれ!?だって、彼とその…結婚、したのは私なんだから、今更そんな…」

 

「うむ、その不安は最もだ!だがしかぁ〜し!心配は無用だぞガール!

正式な発表は少し先らしいが、姫様が直々に判を押した法案が可決されたため、ボーイ達の結婚は認められるのだ!」

 

「へ!?な、え、ま、まって!頭が追いつかないんだけど!?」

 

「はい!おじさまの言う通り、私が提案して、そのまま可決まで持って行きました!」

 

最後尾から分け入って出て来たミーティア姫は屈託の無い笑顔でそう言った。

 

「わ、分かったわ!うん、分かった、一旦落ち着きましょう!」

 

自分の声が混沌とした空間を正すように部屋の中を響かせる。

 

「まず、ミーティア姫の言う法案って、なに?」

 

「はい、それは〈既に異性との結婚をしている場合、同性との婚姻は結婚として認めない代わりに互いの…?」

 

「〈互いの関係をそれに準ずるものと出来る〉

ま、要するに、異性と同性での事実上の結婚を認めるぜ、って法案だな」

 

「うむ、この国では重婚を認めておらぬからな」

 

「…と言う事は、私にとっての旦那様は…」

 

「あっしにとっての旦那様にもなるって訳でガスな!」

 

「ふっ、アンタ、いまやっと理解しただろ?」

 

「う、うるさいでがす」

 

「って…事なんだ。ごめんね、ゼシカ。僕、どうしてもヤンガスの求婚を拒め無くて…」

 

「はっはっは!ボーイもまんざらでは無かったではないか!」

 

「うっ、そ、それは…」

 

「…ゼシカさん?」

 

「ゼシカ?」

 

「あはは…そっか、ふふふ」

 

「ど、どうしたんだゼシカ。急に笑い出して、気持ち悪いぞ?」

 

「ううん。別に。ただね、三人で船に乗った日を思い出してね」

 

「馬鹿でかいイカを倒した時の事でがすか?」

 

「そう。その時、私が感じたのはやっぱり間違いじゃ無かったんだなーって」

 

「へ?」

 

「やっぱり、あなたとヤンガスってそういう関係だったんだなぁって」

 

視界がぐにゃぐにゃと歪んで見える。

 

「あれ、ゼシカ?目の光が薄くなってるような…?」

 

これまでの彼との日々が走馬灯のように脳を走り回る。

 

「うん、いいの。いいのよ。私はあなたにとっての二番目でもいいの。あなたが一番好きな人が例えヤンガスでも…」

 

そう、確かに二人はお似合いだ。

旅の時、戦闘だけじゃ無くて普段の生活の時も阿吽の呼吸だった。

 

「まって!?僕そんな事一度も言ってないよ!?」

 

「違うんでがすか!?」

 

「ちょ、アンタは黙ってなイノブタマン!」

 

なんだか、体までが揺れているような気になる。

 

「ううん。大丈夫、時々一緒に寝てくれるだけで私は満足だから…だからほら、うん」

 

「ちょっと待って!僕はゼシカ一筋だから!ね!?戻って来て!?」

 

「おいおい、揺らし過ぎだぞ勇者様!」

 

「ふぅむ、ここらがやめ時じゃのう」

 

「そ、そうですね。まさかこんなにショックを受けてしまうなんて、思いもしませんでした…」

 

「ゼシカ!?今日はほら、エ、エイプリルフールだから!全部嘘だよ!真っ赤な嘘!だから、本気にしないで!?」

 

「エイプリル…フール?」

 

エイプリルフール…そっか、今日は四月の一日…みんなが嘘をついても許される日…なんだっけ、そっか、へー…

 

「へ?エイプリルフール?」

 

「そう!だからぜーんぶ嘘!あんな法案は無いし、僕にそっちのけは無い!僕はこれから先もずっとゼシカだけ!」

 

「そっか、そうよね…うん、あなたがヤンガスとなんてあり得ないものね…」

 

「そうそう!だよね、ヤンガス!」

 

「まぁ、あっしは別に構いやしませんが…」

 

「「えっ」」

 

「イノブタマンはその意味がわかってないと思うけどね。

しかしククール、アンタやっぱり詐欺師の方が向いてるんじゃ無いのかい?

『勢いと数に任せてそれっぽい事言っとけば大抵の奴は騙せる』なんて、よく思いつくもんだよ」

 

「ばっ、ゲルダ!絶対バラすなって言っただろ!?」

 

途端に声を荒げる。

 

「へぇ、そう。やっぱりククールが元凶なのね?

どう?私が騙される様は面白かったかしら?」

 

「え、あ、いや。…まぁまぁ、だったかな?」

 

「おっと、潔い方が可愛いバニーちゃんたちにモテるぞ?」

 

「な、クソ!離せよモリー!!アンタだって『たまには美しいガールの困惑する姿を見てみたいな』とか言ってたじゃ無いか!」

 

「なぁ!?そ、それは…!」

 

「おっと、離さねぇぜ!潔い方がモテるんだろ!?死なば諸共だ!」

 

モリーさんがククールを羽交い締めにし、ククールはその腕が離れないようしっかりと脇を締める。

二人は静かな争いをしつつもジリジリと後退し、とうとう、外へと繋がる玄関へと到着した。

 

「トロデ王?そこのドア開けてちょうだい?」

 

「よ、よしきた!」

 

そうして外から流れ込む風に当たる。

 

「ありがとう。それじゃあ行くわよ?」

 

「ま、待ってくれゼシカ!」

 

「う、うむ!話を聞いて欲しい!」

 

「ほら、二人とも?潔よくしてくれたら、私も好きになってあげるわよ?」

 

「「え?」」

 

「ウ・ソ」

 

巨大な爆煙とともに二人の姿は彼方へと消え去った。

 

「ら、来年は、やり過ぎには注意、ですね」

 

「いえ、もう二度としたく無いです…」

 

 

 

 

 

それから少しして、焦げ気味の服を着た二人がキメラのつばさをつかって戻って来た。

 

「あら、いい度胸ね?」

 

「「ご、ごめんなさい」」

 

土下座の体勢で。

 

「ふふ、なんてね。冗談よ冗談。今、私とゲルダさんとミーティア姫で昼食の準備をしてるの。ちょっと、早いけどね。

それで、どう?良かったら食べてく?」

 

「お、怒ってないのか?」

 

「あら、エイプリルフールでしょ?怒らないわよ。さっきの呪文もちゃんと威力を抑えたし。

そりゃあ少しは頭に来たけど…でもほら、久しぶりにみんなに会えたし、それで良いかなって」

 

「お、おぉ!やはりガールは天使だったか…!」

 

「あら、そんな事言っても何も出ないわよ?

中ではもうお酒飲み始めてるから早く入りなさい」

 

二人は互いの顔を見合わせると安堵のため息を漏らして部屋の中へと入っていった。

 

その後はもう、どんちゃん騒ぎ。

みんなの近況を報告しながら夜を過ごした。

 

 

 

END.

 




と言った感じのお話でした。
いろんな人を出して書くのは大変ですね…

ちなみに、ミーティア姫的には結婚出来なかったことに対しての遺恨なんかは今はもう一切ありません。
主人公との日々を胸に、新しい恋へと歩みを進めたのです。
とは言っても、主人公ほど好きになる殿方が現れるとは思えませんが…それはまた別のお話。
今回のエイプリルフール作戦に参加したのはそんな心境の表れです。

なんて言ってないで、本編の続きを書かなければ!

それではさよーなら!

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