私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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お久しぶりです。
最近は、まだ春だというのに夜すら布団かけると暑いですねぇ。
眠れなくて小説書いたりしちゃいますねぇ!
ま、データ飛んでやる気が冷え切るまでがセットなのですが…

などと愚痴はここまでにして。
本編どーぞ!


第十五話 私と彼と長い空白

『行ってきます』

 

彼と最後に言葉を交わしてから十二時間経った。いつもならもう帰ってきててもいい時間で、テーブルには夕飯が並んでるはず。

けど、今日はまだ帰ってきていない。ううん。今日から彼はこの時間には帰ってこない。

夜勤じゃない。あくまでも彼はトロデーン城を辞めた元近衛兵だ。今の仕事に就いた際に、そうならないように契約していた。だから夜勤じゃない。

今回のは、そう。出張のようなもの。

今の彼はトロデーン城で最悪の場合に備えた剣の指南を兵士たちに行なっている。でも、彼の仕事はそれだけじゃない。

王国、国、村や町など様々な場所から優秀な戦士を一箇所に集めて武を競い合う戦いの祭典ーー剣闘ーー。

その戦士の育成も兼ねての指南役。むしろそっちがメインで、国同士だったりの戦争を想定した指南は単なる名目だ。

それはまぁいい。

彼から聞いたのはそれがスポーツと呼ばれるようになって、参加した人たちの友好関係を築くのに一役買っているらしく、引いては国同士、町や村なども含めて良い関係になり、最悪の事態が起こり辛くなっているらしいのだ。

だから、それ自体は問題じゃない。

問題なのはそう。

 

「何であの人も一緒に試合会場に行くのよーーー!!!」

 

指南役でしかないはずの彼が付いて行ったことだ。

 

「理屈はわかるわ!指南役って事なら、手塩にかけて育てた兵たちの雄姿を見せてやりたいと思うのが上の立場の人たちだし、教えてもらった人たちだって先生が近くにいたら緊張しないで戦えるはずだもの!

けーーどーーー!!」

 

埃が舞うことも気にせずベッドの上で駄々をこねる。

そろそろお風呂の時間だけれど、そんなことどうでも良い。

 

「だったら私も連れてきなさいよねーーー!!!」

 

こっちの問題の方が重要なのだ!

 

「なによ!お城の関係者じゃないから付いてきたらダメって!いーわよ!だったら自腹で行くから!なのに、今度は試合会場に入れてもらえない!?初めての大きな大会だから一般人は観覧禁止!?なによそれー!!」

 

布団に含まれた空気とバネの音が部屋に響く中、私の恨み言は続く。

 

「そりゃあ確かに私はトロデーン城に勤めて無いわよ!けど、旦那が勤めてるのよ?剣闘よ?もしものことがあったらどうするのよ!試合に出なくったって、弾いた剣かオノかハンマーか知らないけど飛んできて当たったらどうするのよ!側にいられなかったせいであの人の死に目に会えなかった、なんてことになったらあいつら全員呪い殺してやろうかしら!?

ま!あの人に限ってそんなこと絶対ありえないけど、ね!」

 

最後に思い切りベッドを叩き、荒くなった呼吸を整える。

うつ伏せだった体を仰向けにして、意味もなく天井の木目を数える。

 

「…しかも、三日もいないのよ?

その間私は、一人で、こんなに広い空間をどう過ごせば良いのよ」

 

今の今までベッドの上で現実から逃げていた代償がやってくる。

じわりじわりと目頭が熱くなり、目尻から伝った雫が耳の辺りで嫌に存在感を示す。

 

「そりゃあ泣くわよ。彼とずっと一緒にいたくて結婚したのに、結婚する前の方が一緒に居られる時間が長かったなんて…これじゃあべこべだもの。

意味分かんないわよ。ばか」

 

仰向けから横向きに身体を動かし、夕焼けも終わりかけている風景を窓から覗く。

二羽の鳥が沈む夕日に向かって互いを想い合うように羽ばたいているのが見える。

 

「…いーわよねー動物は。仕事なんて無いんだから、いつもいつでも好きな時に好きなだけ一緒に居られるんだから」

 

霞む目で、消えていくつがいの鳥を眺める。

いいなぁ…。きっとあの二人はこの後巣に戻って毛繕い…羽繕い?し合って、楽しくお喋りするんだろうなぁ…。

そんな光景を自分たちに当てはめて想像すると、涙が溢れてきた。

 

「…バカ。妻が泣いてるんだから隣で慰めなさいよ」

 

誰にも届かない悪口は虚しくシーツに消えていく。

分かってるわよ。お仕事なんだから、やらなきゃいけないことなんだって。

 

「でーもー!!」

 

そんな叫びも当然彼に届くことはなく…

落ち込み疲れた私は、そのまま眠ってしまった。

 

ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー

 

「…あ」

 

空腹で目が醒めるとさっき沈んだはずの太陽の光が差し込んでいて、外を見れば太陽が空の中心より西に傾いていた。

 

「…やっちゃった」

 

布団を剥がしつつベッドに腰掛けて昨日の夜のことを思い出す。

 

「…我ながらよくもあれだけ落ち込めたわね…。結婚までしてるのに、まさかあのまま寝落ちなんて」

 

額に手を当てて自分の子供っぽいところに辟易する。

そうすると、一つの疑問が出てきた。

 

「それにしても、私、いつの間にかけたんだっけ」

 

手に持ったままの掛け布団を剥がしてベッドに腰掛ける。

もしあのまま眠ったのなら、かけているはずがないのだけど…

 

「…多分寝てる間か、寒くて起きてかけたのに忘れてるだけね。

それよりも今は気持ち悪い身体をお風呂に入ってさっぱりさせよっと」

 

ベタつく…まではいかなくとも、あんまりいい感じのしない首元をさすりつつドアに手をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…変ね」

 

視界を遮る湯気。優しくて心の落ち着く室温。霞む視線の先には沸かした覚えのないお風呂がなぜが出来上がっている。

 

「…カギは、確かに閉めたわよね。合鍵は彼と私のお母さんしか持ってないし…」

 

服を脱ぎつつそんなことを考える。

泥棒…山賊…?けど、いくらあんな野蛮な人間でもこんなところまで登って来れるわけがない。現に、私たちがここを見つけた時は誰も住んでるようには見えなかったし、集合場所にしてるような雰囲気もなかった。

となると…

 

「昨日、使ったっけ?」

 

以前に比べて家事にも慣れ、覚えておきたい料理も大方作れるようになったおかげで時間に余裕ができた。その時間を無駄にしないために、最近は新しい呪文の開発もしているのだけれど…

パンツを脱ぎ、タイツと一緒に洗濯籠へ放り込む。

一昨日くらいに完成したアレの応用で必要な時に大量のお湯が沸く時間魔法を使った気がしないこともない。

…だとしても、どうしてこの時間に沸くようにできたのかが分からないけど。

 

「ま、こんな辺境の土地に家があるとは誰も思わないだろうし、流石に泥棒とかじゃないわよね!」

 

疑問を思考の外に追いやってシャワーの蛇口へと手をかける。

少し冷たい水で顔を洗い流して、適温になり始めたお湯で髪を梳く。次に谷間を開いて中をすすぐようにして擦り、最後に首元を中心にシャワーで流してから、軽石で出来た椅子に腰かけた。

それからシャンプーとリンスで念入りに、アカスリを使って身体を丁寧に洗う。

そうして、ようやく湯船へ足から堕ちていく。

驚くほど丁度いい温度に再び謎が持ち上がるも湯船のお湯で顔を流して気分を変えた。

 

「は〜。やっぱりお風呂はいいわねぇー」

 

両手で伸びをして湯船に肩まで浸かる。余計な力が抜けて気持ちのいい脱力感が全身を襲いまさに極楽気分。

…なのだけど。

 

「やっぱり、一人で入ると広いわよね…」

 

両膝を抱え込んで座り直し、人一人分か少しある空間を見つめる。

最近は毎日と言っていいほど一緒に入っていたせいか、改めて体感してみるとその広さに驚く。

同時にこれは、私の持つ心の隙間の大きさに近い。

 

「あーもー!やめやめ!どうもダメね、今日は。別にたまにくらい居なくったっていいじゃない!今生の別れでもあるまいし」

 

抱えた足を解放して目一杯伸びをする。すると、足のつま先が僅かに反対側の浴槽に触れた感触がある。

 

「…よっ…ほっ!もう、ちょ…あっ!!」

 

私の小さな叫びとともに上がる水飛沫。

 

「ぷはっ!けほっけほっ…はぁ…」

 

盛大に濡れた顔を手で拭って、天井を見上げる。

開けた視界に一息ついて、さっきした自分の行いに顔が熱くなる。

 

「…何やってるんだろ、私」

 

うつ伏せの態勢になって浴槽のふちに両手を置いて顎を乗せる。

 

「あーあ。早く帰ってこないかしら」

 

乗せるものを顎から頬に変えて間仕切りをぼうっと見つめる。

そこに出来た雫が僅かにトーポに見えて思わず笑ってしまった。

 

「こういう時って大体本人が見えるんじゃなかったっけ」

 

呟いて、湯船から上がって脱衣所へと向かう。

 

「けど、しょうがないわね。思い出してみれば、途中から見てたのは彼の顔じゃなくて背中ばかりだったもの」

 

バスタオルで水滴を拭って髪を拭く。一定のリズムで髪をタオルで挟んで叩く音が少しずつ昔を思い出させる。

最初は私の方が強いと思ってて。仲間だと感じた時には差はなくて。…気が付いたら、憧れていて。

 

「…うん。そうね。多分、そう。いつの間にか、周りを気にするふりをして目を逸らしてたりしたもの。

あの頃から私は彼に、好き、って気持ちを持ってたんだわ」

 

髪を叩くのを一旦やめ、寝巻きに着替える。

それからバスタオルを籠に放り込んで小さなタオルを首にかけて脱衣所を後にした。

 

 

 

 

 

 

「さて、夕飯はどうしようかしら」

 

髪を拭き上げながら歩く廊下。通路を照らす光はデイン系の呪文を応用して作られたデイン球という魔法アイテム。

…と言っても、デイン系の呪文は本来勇者の血筋の人じゃないと使えないから、その実態はかなり謎だ。

 

「一人だと作るのも面倒よねぇ…。

あー、そうだ。ちょっと前に貰った果物、食べないと。結構量あるし、ついでにジャムか何かも作っちゃおっと」

 

保存庫に入れてある大量の果物のことを思い出す。

一昨日くらいにヤンガスとゲルダさんが家にやってきて、近くで採れたリンゴをお裾分けしてくれたんだけど、樽いっぱいくらいあったからどうしようか迷っていたんだった。

 

「しっかし、よくあんなに採れたわよねぇ…果樹園でも始めたのかしら」

 

そんなことを言いつつ髪を拭きながらドアを開ける。

すると。

 

「…あれ。なんか、いい匂いがする」

 

鼻腔をくすぐり味蕾を刺激する攻撃的な匂いと、後から香った香ばしくて甘い果物のような匂い。

それがなんなのかを知るよりも先に聞こえてきたのは。

 

「ただいま」

 

待ち望んでいた彼の声だった。

 

「…どうしたのゼシカ?」

 

「え?あ、いや、その…えっと…え?」

 

突然の彼の登場。…もとい、帰宅。

それは本来嬉しいことのはずなのに、なぜか受け入れられてない自分がいる。

 

「だって、あなたは今、大会会場のアスカンタにいるはずなのに…」

 

もしかしたら、あまりにも会いたい気持ちが強すぎて自分に見せている幻なのでは?と疑ってしまったり、実は夢なんじゃ?と頬をつねってみる。

けれど。

 

「…痛いわね。って事は、夢じゃ…ない?」

 

コトン、とテーブルに皿が置かれる。

2人前のカレーやホール型のアップルパイ。コップに注がれた薄い黄色をした飲み物…多分、りんごジュース。

 

「実は、先に帰らせて貰ったんだ。

組まれてた日程の最終日が打ち上げだったみたいで、それなら僕がいる必要はないかなって」

 

一度台所に戻って持ってきたスプーンを置きながら、早く帰って来れた理由を話す彼は、どこか恥ずかしそうに私の前へ来た。

 

「帰っってきてそのまま部屋に戻ったらゼシカがぐっすり寝ててさ、いつもは僕に合わせて早起きしてくれてるから、たまにはゆっくり寝ててほしいなと思って…」

 

照れ笑いを浮かべながらポリポリと後頭部をかく。

 

「いつもありがとう、ゼシカ」

 

手を握られて、真っ直ぐな目で、そう言われた。

 

「分担するはずだったのに、最近は家事を任せっきりでごめん。でも、もう少しすれば僕の仕事もひと段落ついて出勤する時間とか頻度とかが変わるはずだから、そうしたら、また前みたいに一緒にご飯を作ったりしよう」

 

抱き寄せられて耳元で囁かれるとても温かな彼の声。私の胸が苦しいのは多分、彼に抱き締められているからだけじゃなくて。

 

「…ふふっ、改まって何よ。また教え子に何か言われたの?

大丈夫。確かに慣れるまでは色々失敗はしたけど、一番大変な時はあなたと一緒にやったんだから、それだけでも充分。そのうちあなたが仕事に行って、あんまり家にいられなくなる事は薄々気がついてたし」

 

ずっと待っていた彼の温もりが身体中を煽っていく。

今では、最も安心出来る行為。彼と私の心音を感じ合い、息遣いに直で触れて、互いの気が済むまで身を寄せ合う。

…いつもなら、それが別れと再会の挨拶。行って来ますとお帰りなさいの合図。

でも、今日は…

 

「でも、そうね。なら一つ、いいかしら」

 

彼の肩に寄りかかるようにして頬を預ける。

 

「うん。なんでも言って」

 

「…久し振りにしたいの。ちゅーを。

おやすみ前の軽い口づけじゃなくて、ね」

 

耳元でそう囁いた私はとても穏やかで落ち着いた気持ちだった。

 

「…もちろん」

 

身体は密着したまま彼と見つめ合う。その目に映っているのは、私だけ。

 

 

気が付いたら唇が触れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それとこれ」

 

適度な温度になった夕飯を済ませ、一通りのことを済ませた私達は、寝室のベッドの上で彼に何かを差し出される。

 

「なに、これ?」

 

受け取ってよく見てみると、どうやらラッピングされた小箱のようだ。

 

「ほら、この前チョコ貰ったからそのお返し」

 

「開けてみて」と促されるまま包みを開いて蓋を取る。

 

「…これ、イヤリング?」

 

藁のようなクッション材の上に置かれているのは両耳用のイヤリング。

いつも私がつけているのと似ているけど、球体の色が青ではなく緋色だ。

 

「…まさか、前に言ってたのを覚えてて…?」

 

「うん。…気にいっ…わわっ!」

 

彼の言葉より早く、私は抱きついていた。

 

「ありがとう!とっても嬉しい!」

 

「そ、そっか。それなら良かった」

 

勢いよく抱きついたせいで彼と一緒にベッドに横たわる。結果的に押し倒す形になってしまったわけだけれど、彼は微笑んでいた。

 

「そんなに喜んでもらえるとは思わなかったから、僕も嬉しい」

 

そうして落とされた沈黙。

気まずいとかそういうのじゃない、気持ちのいい静けさ。

お互いの気持ちが通じているからこそ訪れるこの瞬間は、ずっと感じていたい時間の停滞。

永遠を思わせる数秒は風に流される綿毛のように自然に終わり、私達はもう一度唇を交わし、身を寄せ合って眠りに就いた。

 

 

 

ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー

 

「…おはよう。目、覚めた?」

 

窓から射す柔らかな日差しがベッドに腰掛ける少女と、眩しさに目を擦る少年に降り注ぐ。

その日は普段よりも遅い始まりだった。太陽は中天を位置し、空腹が二人を襲う。

それでも、少女は彼が目覚めるのを待っていた。

やるべき事はある。していた方が遅れを簡単に取り戻すことができる。けれど、少女はその瞬間のためにただ、待っていた。

 

「…どう、かな」

 

少し照れ気味に頬を染め、口元を掌で抑えて顔を逸らす。

それは照れから来るものではなく。

 

「…うん。凄く良く似合ってる」

 

太陽を浴び、一際紅く輝く球体。隣接するほど近くにあった頬は、それ以上に紅くなり。

 

「とーぜん!」

 

言葉とは裏腹に態度は可愛らしく、少年を破顔させた。

 

 

 

 

 

 

To be next story.

 

 




全く、いつになったらps4で8(リメイク版)がリリースされるんでしょうね。高画質、大画面で花嫁ゼシカ観たいんですわ。
ps5ですら出なかったらどうしよう…

ではまた、次回。
さよーならー。
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