私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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お久しぶりです。
最近は暑いんだから寒いんだから過ごしやすいんだからわからない天気ですね。
お互いに風邪をひかないように頑張りましょう!

それでは、どうぞ。


第十六話 久しぶりの帰郷

 

窓から差し込む日差しがテーブルの上にある料理を照らす。

リズミカルに奏でられるのは私たちのデュエット。

ただの朝食のはずなのに今日はとっても心が躍る。今すぐにでもスライムのマラカスを手にしたいくらいに。

 

「ねぇあなた。これから三日間、なにしましょうか」

 

「そうだね…たまには、お義母さんにでも会いに行ってみる?」

 

一通りの食事を終えた彼が手にした食器を置きながらそんなことを言う。

自然とそれに倣うようにしてフォークを置いて。

 

「…気は向かないけど、そろそろ顔出さないとマズイわよね…」

 

「あはは」

 

苦笑いするという事はきっと彼もあまり前向きな事ではないんだろう。けど、結婚してから半年以上経っているにもかかわらず、いまだに一度も顔を見せに行っていない現状から考えると、下手したら向こうから来る可能性だってある。

それは避けたい。

なぜって、私たちの家を荒らされたくないし…

 

「ご馳走さまでした。

二人はもう仲直りしたんだよね?」

 

「うん。まぁ、ね。

でも、こっちに住むようになってから全く顔を合わせてないし、もしかしたら前に戻ってるかも」

 

「…それはないと思うけど、でもそっか。なら、余計に行かないといけないね」

 

水を飲んでからそう言うと、決意を固めたような顔をして汚れ物を流しへと運ぶ。

善は急げ、ってことかしら。

 

「ご馳走さま。

そうね、行くなら決心が鈍らないうちに行かないとそのまま先延ばしになっちゃうものね」

 

今日の担当は彼が洗い物で私が保存係。

最初の頃は別にして、最近ではご飯が残る事はほとんどなくなった。それでも、時折残る事があるからそれを1つにまとめて夕飯の一品としたり、もしくはおやつ的なものにしたりとするのが保存係の役割。

今日は例に漏れず綺麗に完食していたから、ちょっとしたご褒美のようなお休み。

 

「じゃあ洗ってくるね」

 

手際よく重ねた汚れ物を持った彼はそのまま台所へと消える。

その間に私は宿泊の準備でもしちゃおう。

 

「お願いねー」

 

テーブルの端にある布巾で軽く拭いてから二階へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「御無沙汰ね。ゼシカ」

 

「ひ、久し振りねお母さん」

 

リーザス村に入るなり鉢合わせするラスボス・アローザ。…もとい、私のお母さん。

全く顔を見せなかったからなのか、それとも元からなのか。お腹でも痛いのかってくらい難しい顔をしてる。

 

「こんにちは、お義母さん。変わらずお元気そうでなによりです」

 

「こんにちは。…そんな他人行儀な挨拶しなくていいわ。

それじゃ、行きましょうか」

 

あくまで淡々と言葉を発するお母さんはそのまま一度も振り返る事なく丘の上の家へと向かう。

 

「相変わらず無愛想なんだから」

 

「あはは。それがアローザさんのいいとこでもあるんじゃない?」

 

「そうかしら。私からしたらおっかなくて近寄りたくないわ」

 

小言もそこそこに、お母さんの後に続いて懐かしの実家へと帰宅した。

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさいです!ゼシカお嬢さまぁ〜!!!」

 

「あら。久しぶり。元気にしてた?」

 

「はい〜!」

 

入り口から入ってすぐ、玄関で最初に声をかけられたのはいつも庭を掃除しているメイドだった。

おっとりしていて少し個性的だけどなんでもそつなくこなす子で、この家に働きに来たのが十歳の頃。私の1つ下だったからほかのメイドとかに比べて少しだけ仲がいい。

 

「こら。使えてる人に対してそんな態度がありますか!早く仕事に戻りなさい」

 

「あっ。ごめんなさいです。

それでは。ゼシカお嬢様、また後ほど〜」

 

驚いているのかなんなのか、口に手を当てお辞儀をして手を振ってから仕事に戻るメイド。

ま、昔から同じことでよく怒られてたし、慣れちゃったんだろう。お母さんも口ではああ言いながらも、どこか優しい顔してるし。

 

「うん。またね。

あ、そうだ。私たちはこっちにいる間、どこに寝泊まりすればいい?」

 

「あら、泊まるの?」

 

「まぁね。日帰りじゃ味気ないし。

イヤならやめるけど」

 

「またそうやって憎まれ口を叩いて。

大丈夫です。止めはしませんからいつまででもいなさい」

 

「あら?寂しかったのかしら」

 

「居ないと静かで暮らしやすかったわ」

 

今にも口喧嘩がヒートアップしそうだと察したのか、彼が隣であたふたと汗を飛ばしている。

でもそんな心配は無用。ここに来て少し話してわかったけど、これは口喧嘩なんかじゃなくてスキンシップ。

お母さんとは元々こんな会話くらいしかしたことがないから、それがいつの間にか一つの愛情表現みたいになっている。

ここでもしお母さんが嫌味の一つも言い返さなかったりしたとしたら、それこそ病気を疑ったりして気が気じゃない。

 

「寝る場所は考えるまでもないでしょう?あなたたちは夫婦なのだから、ゼシカの部屋で仲良く眠ればいいでしょう」

 

こともなげに言い放つ驚きの発言に一瞬頭の中が白くなる。

…お母さんって、割と過激なことを平然と言うのね。

 

「えっ、あ、まぁ、そう、ね…

あ、あなたもそれでいい?」

 

全く予想もしてなかった言葉にしどろもどろになりながらも答える。

てっきり、兄さんの部屋を使え、とか言うのかと思ったのに。

 

「もちろん」

 

「少なくとも、まだ愛想は尽かされてないみたいねゼシカ。ボロが出てないみたいでなによりです」

 

彼の返事が嬉しかったのか滅多に見せない微笑みでやっぱり口悪く言うお母さん。

反論したいところだったけど、流石にこれ以上荷物を持ったまま玄関付近で言い合うのも良くないと思い、ベー、っと舌を出すだけに収めた。

 

「はぁ…。他所でそんな顔しないでよね。

お昼は後二時間もしたら出来ますから食べたければいつものところへ来なさい。

それまでは大人しくしてるのよゼシカ」

 

「私がいつお腹減って暴れたっていうのよ」

 

「あら、旦那さんの前で言っていいの?」

 

「…やった覚えはないけど、あったらイヤだからやめとく」

 

そう最後のスキンシップを終えて、私たちは元…になるんだろう、私の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

「…何にも変わってないわね。…これ以外は、だけど」

 

懐かしの自室。そこには壁掛けの写真やずっと使ってた羽ペン。時々、空が飛べたらなって練習してた箒に、勉強机。どれもこれも綺麗すぎず、汚すぎず、丁度いい具合に掃除されていて、幼い頃の記憶が鮮やかに蘇る。

けれどそれは、この目の前にある大きな物に全て掻き消される。

 

「…こんなに大きかったっけ」

 

「もっと小さかったわ。それこそ、一人用だもの」

 

部屋の入り口の端に置かれてあったはずの私のベッド。それはもう影も形もなく、ただベッドが置いてあったはずの場所だけが他の床よりも新し目に映る。

疑問を抱えたまま階段を上がり、屋根裏部屋に近い場所へ向かうとそこには二人用のベッドがおいてあった。

 

「…なるほど、お母さんからの無言の催促ってわけね」

 

「孫、的な事だよね」

 

「はぁ…。まぁ仕方ないんでしょうけど。でも、流石にこの家でってのは、ねぇ?

第一、自分たちの家でも一緒に寝てるわけだし、今更こんなのあったからって…」

 

ばふん、とふっかふかのベッドの上に勢いよく座る。そのふかふか具合は私達が選び抜いて買ったベッドよりも凄くてちょっとだけ悔しい気持ちになる。

そのまま寝転がり、思わず眠ってしまいそうになっていると。

 

「ん?これ、本?」

 

右隣に置かれていた小さな机の上に、ランプとは別に何か薄いものが置いてあった。見つけた彼はそれを手に取り…

 

「…ちょっと待って。どういうこと?」

 

今まで見たことないくらい驚いた顔で見つめられる。

何も思い当たる節のない私は疑問に思ってすぐにベッドから起き上がり、彼の手にしている本を覗き見る。

 

「ちょっと!お母さん!?!?」

 

そしてすぐさまそれを持って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「昔からあなたはその辺が奥手だったでしょう?だから、後押しになればと」

 

「余計なお世話よ!!あ、あのねぇ!?これ、こんなの…あのねぇ!?」

 

椅子に座り、優雅に紅茶を飲むアローザ・アルバート。そのあまりにも余裕に満ちた悪びれもしない態度に私は言葉を失いつつある。

それでもどうにかこうにか言葉を繋げて抗議するも、本当に言いたい事は口から出てきてはくれなくて、だからと言ってここで黙って仕舞えばなんだか負けた気になってしまう。

結果、よくわからないことを延々と言うことになってしまっていた。

 

「一度落ち着きなさいゼシカ。

…悪いけど、この子の分のお茶も用意してもらえる?いえ、この子と旦那さんの分もね。多分、来るでしょうから」

 

「わ、分かりました」

 

私の手にしている本に目を奪われながらも頷いて調理場へ向かうメイド。

どうしてそんなに落ち着いていられるのか全くわからない。

 

「落ち着けるわけないでしょう!?こんな、その、物を部屋に置かれて!」

 

「…本当にダメなの?」

 

「ダメよ!ダメに決まってるでしょ!?」

 

ここ一番の大声に、けれどやっぱり落ち着いて紅茶のカップを皿の上に戻すお母さん。

 

「…そう。聞いた話と違うわね」

 

「聞いた話?」

 

いい加減叫び疲れた私は、呼吸を整えつつ椅子に座る。それと同時ぐらいに運んでこられた紅茶で枯れかけの喉を潤す。

 

「ええ。その方の希望のため名前は伏せますけど、なんでも、今あなたが手にしているえ、エッチな本、をベッドの横に置いておくと、良いきっかけになって夜のお供になるのだとか」

 

頭の痛くなる返答に思わず手にしていたカップを皿に叩きつけそうになるのを必死に堪え、お母さんにそんなことを教えたバカを聞き出すことにシフトチェンジした。

 

「ククール?それともモリーさん?どっちかしら」

 

あるいはトロデ王という線も考えられたけど、今のあの人は流石にそこまで暇ではないはず。

となると、残る可能性は二人しかない。

 

「モッ…匿名の紳士です」

 

「そう…その紳士さんお礼したいから後で怒りの魔神を送っておくわ」

 

元々ウソをつくのが不得意…と言うより、そもそもロクにウソをついたことがないお母さん。

案の定、反射的に名前に繋がるヒントを教えてくれた。

それに気が付いたのかすぐさま話題を変えようとしたのか。

 

「そっ、それよりも。どうですゼシカ?…したの?」

 

慣れない作り笑いで頬が引きつっているお母さん。

勿論、そんな失礼な問いに冷静に返せるわけもなく…

 

「最低な返しね!するわけないでしょう!」

 

とうとうカップを叩きつけるようにして皿の上に置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、もう帰ろうって?」

 

「そ。自分たちの家が無いわけじゃないし、我慢してまでいる必要はないかなって。

これ以上話してたら手が呪文か出ちゃいそうだったし」

 

お母さんとのお話も終わり、一先ず彼の待っている元自室へと戻ってきた私は、用意されていた二人用のベッドに仲良く横になっていた。

私がいない間暇だったのかライトの置いてある小さな机の上にいくつかの本が乗っていて、中には私のアルバムもあった。

 

「そっか。

僕としてはもう少しいたかったけど、家が焼けちゃったりしたら大変だしね」

 

「あら、失礼ね。そのくらいの加減は出来るわよ」

 

「あはは。ちょっと怖い」

 

そう言ってベッドから起き上がると、彼は階段の方へと向かっていく。

 

「どこ行くの?」

 

「お義母さんに帰るって挨拶してくる。流石に無言で帰るって訳にもいかないし」

 

「そう、わかった。

…ホントは私も行った方がいいんだろうけど、やめとくわ」

 

「うん。それじゃ、少し待ってて」

 

会話が終わり階段を降りていく彼の背中を見送ってから机の上にある本を一つとる。

それは私が字が読めるようになってから始めてもらった魔道書だった。

貰った時から既にボロボロだったけど、擦り切れるまで読み込んだ本だから、今ではもう人によってはゴミと言ってしまいそうなくらいに古びてる。

中に書いてあるのは初歩的な物から既に失われてしまった超高等魔法まで様々で、後々知った話ではかなり値の張る本だったらしい。

 

「…メラゾーマにマヒャド。ライデインにギガデイン。マダンテも載ってる。本当、凄かったのねこの本」

 

破れないよう注意しながらページを捲る。

今読んでいる項は[いずれ失われるかもしれない高等呪文]。次に書かれているのが[使い手と共に失われていった超高等呪文]で。聞いたこともない物ばかり載っている。

 

「メドローアにベタン。ラナルータ、マホイミ、ミナデイン、メラガイアーとマヒャデドスにバギムーチョ。…なになに?言い伝えによると後述の超高等呪文は天上の世界に住む天使たちや時を超える術を得た者たちが使える。…ね。

地上は制覇したと思うけど、流石に空の上までは無理ね。神鳥の魂を使っても天使様達に会えなかったんだから、多分一生会えることはないのかしらね」

 

本来なら笑って読み飛ばしてしまうような文も暗黒神やもう一つの世界を実際に見てきたお陰で本当にあるんだろうと思えてしまう。

…事実、多分あるんだろう。

そこへ旅が出来ないのが少しさみしい。

 

「たまには思い出に浸ってみるものね。知ってたのに知らなかったこととか結構あるみたい」

 

そろそろ彼も帰ってくるだろうと思って本を閉じようとする。

すると、本の隙間から何かが飛び出てきた。

 

「….手紙?何かしら」

 

不思議に思いながらも、飛び出したもの….妙に新しい茶色の便箋を拾う。要点しか書かれてないのか、それとも中に何も入っていないのか、封筒はかなり薄い。

 

「…[ゼシカへ]か。

いつ貰ったんだっけ」

 

後ろに書かれていた宛名は間違いなく私のものだ。

ラブレターを貰った記憶も文通していた記憶もない。と言うことは、必然的に家族かメイドたちからのものになるのだけど。

 

「メイドは、まぁ無いわよね。仲のいい子はいるけど、どっちかっていうと怖がられてたし。

ってなると…サーベルト兄さん?いや、それは無いか。読み書きを教えてくれたのはサーベルト兄さんだったけど、手紙書くような人じゃなかったし。

…私宛だもの、読んでもいいわよね?」

 

なんとなく開け辛くある封筒。自分に言い聞かせるようにしてそんなことを言って中を確認する。

出てきたのは半分に折られたごく普通の便箋。派手でもなく地味過ぎない。当たり障りのないどこにでも売ってそうな物だ。

そうして中身を確認して、全てに合点がいく。

 

「…なるほど。そういうことね」

 

封筒はベッドの上に置きっ放しにし、右手に便箋だけを持って階段を降りる。

 

「ゼ、ゼシカお嬢様!?」

 

「ごめんね!また後で!」

 

部屋から出る瞬間、ドアをノックしようとしていたメイドとぶつかりそうになるが今は謝ってる暇はない。

 

「お母さん!」

 

「ゼシカ!?

ど、どうしたんです。はしたない」

 

幸いにもお母さんは自室じゃなく、いつものところに座っていて、今まさに彼と会話している途中だった。

 

「手紙、読んだわ」

 

そう言って便箋を差し出すとお母さんは少しだけ顔色を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be next story.

 




珍しく歯切れの悪い終わり方になりました。
理由は、単純に長くなるからというのと、続きの気になる終わり方(引きって言うんでしたっけ)をしてみようかなと思いまして。
ということで、次回をお楽しみに!
それでは、さよーならー
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