今回からは普通に主人公も話すようになります。
それではどうぞお楽しみください。
『ギェェェーー!!!』
怪鳥・キメラの鳴き声と共に眼が覚める。
「んん〜!」
まだ重たい瞼をどうにかして持ち上げるとカーテンから光が溢れているのが見える。
「ふぁ〜…」
私はいつものように身体を起こして欠伸をして何度か目を擦って、はたと気付く。
ここはいつも寝起きしていた自分の家ではない事に。
「そうだ、私はあの人と…結婚、したんだっけ」
改めて結婚式の事を思い出す。
あれからもう半月くらい経っているけれど、こうやって二人で朝を迎えるのは初めての事だ。
今更になって実感が湧いたのだ。
隣を見れば、やっぱり彼が眠っている。
旅の途中で何度も見た頼り気のない穏やかな寝顔。
前まではこの寝顔を盗み見ては喜んでいたっけ。
「でも今はもう違うのよね。
だって、この寝顔を独り占め出来るんだもの」
なんてね。
ちょっと、あざと過ぎたかしら。
一人でクスクスと笑ってみる。
「ん?ちょっと待って。
そう言えば確か、彼は昨日気絶していたんじゃ…」
そうだ、思い出してきた。
昨日、私の思っていた事を素直に伝えたら、彼は急に胸を押さえて気絶して…
気がついたら家に着いていて、彼を部屋まで連れてきて、その後は私は看病をしていたような…
そう思って周りを見渡してみると、ベッドの側には確かに椅子が置いてあるし、その隣には小さな机があって濡れタオルだったり薬草だったりが置いてある。
つまり、看病していた事は間違いないはずだ。
「あれ?
じゃあなんで私はベットで寝ているのかしら」
まだ若干寝ぼけている頭で考えてはみるけれど、当然答えは出ない。
「まぁいっか!」
わからないなら考えたって仕方がない。
そのうち思い出すだろう。
それよりも、彼は大丈夫なのだろうか。
記憶にある時点だと少なくとも彼は苦しんでいる様子はなかったし、熱もなかった。
「今も特におかしな様子は見れないし…」
と、そこで彼に違和感を感じた。
僅かに身体が震えているのだ。
「け、痙攣(けいれん)!?」
急いで彼の肩を揺すって彼の名前を呼びかける。
すると、さらなる違和感に気づく。
「なんだか…口をつぐんでるみたい…?」
彼は必死に口をつぐんでいるように見える。
しかも、目もしっかり閉じている。
まるで何かを我慢するように。
「…っぷ」
私が彼の顔を覗き込んでいると、どこからか空気の漏れるような声が聞こえた。
「待って…これ、まさか…!」
そうか、分かったわ。
もしそうならこうすればきっと起きるはず…
私は自分の考えが正しいのか確かめるため、彼の耳元にゆっくりと顔を近づけた。
そして小さな声で囁いてみる。
「旦那様、朝ですよ。起きて下さい」
言い切ると、彼はピクリと身体を震わせる。
どうやら私の考えは当たっていたみたいだ。
けれど、一向に起きる様子がない。
ーーーそれならこっちにも考えがあるわよ。
一旦耳元から離れてしっかりと深呼吸をする
「よし」
再び彼の耳元に顔を寄せて、さっき同じように囁く。
「旦那様、旦那様?起きてくれないとイタズラしちゃいますよ…?
…魔法でね」
「ごめんなさい。起きてました」
効果てきめん。
彼はすぐさま身体を起こすと、とても寝起きとは思えない程はっきりとした声で私に謝った。
「いつから起きていたのかしら?」
少しだけ怒り気味に聞いてみる。
勿論、全然怒ってなんかいない。
これはちょっとした仕返しだ。
人の話を盗み聞きしていたのだからこのくらいしたってリーザス様は怒らないだろう。
「言っても怒らない?」
「返答次第かな〜」
「うぅ…
えっと、その、『んん〜』の辺りから…」
「まるっきり初めからじゃないの!?」
「いや、最初はすぐに起きようと思ったんだけど、なんていうか、その…」
「ちゃんと言ってくれないと、初めて会った時みたいにメラを唱えるわよ」
指先に小さな炎を出して見せる。
「…可愛いかったから…その、もっと聴きたかったなぁ…なんて思って…」
「え?」
一瞬呆気に取られた私は次第に彼の言った言葉を理解し始める。
『可愛いから聴いていたかった』…ですって…?
「それ、ホント?」
「勿論ホントだよ!
そしたら予想以上にゼシカの可愛い声が聞けて…!!」
「ちょ、ちょっと待ってて!」
「って言うか、ゼシカって結構乙女なところがあるんだね!
普段の勝ち気な姿からは想像もできなかったよ!」
「待っててって!」
サッと彼に背中を向けた私は、真っ赤になっているであろう顔を覆った。
まさか彼があそこまでストレートに言うなんて思いもしなかった。
正直に言わせて恥ずかしがる姿を見てやるつもりだったのに、これじゃまるっきり私がしてやられてるじゃない…
何より、一番堪えるのは彼自身そんなつもりが毛頭無い事だ。
彼は、素で言っているんだ。
それはつまり…本心、となるわけ…よね…
考えれば考えるほど身体が火照ってくるのがわかる。
まずい、まずいまずい!
今もし誰かに顔を見せたらきっとこう言われるだろう。
『おどるほうせきのような笑顔』と。
「あの…大丈夫、ゼシカ?」
「ごめんなさい!もうちょっとだけ待ってね!」
右側から覗き込もうとする彼の顔を避けるようにして背を向ける。
だめだ、こんな顔を見せたらいけない。
流石にこんな顔を見せたら気持ち悪がられる。
多分、そのくらいの笑顔だ。
「ごめん、ゼシカ。そんなに怒るとは思わなくて…
どうしたら許してくれるかな…?」
彼のシュンとした声が聞こえる。
まずい、これはこれでまずい。
元はと言えば私が悪いのだから、彼に罪悪感を感じさせてはいけない。
…そうだ。
良いこと思いついたわ。
「ね、ねぇあなた。
それなら、私のお願い事を一つだけ聞いてくれるかしら?」
今にも甘えそうになる気持ちをどうにか抑え込んで彼に聞いてみる。
「僕にできることならなんでもするよ!」
「そ、それなら…
私が良いよって言うまで目を瞑ってくれる…?」
「わかった。それでゼシカが許してくれるなら」
そう言うと彼はしっかりと目を瞑った。
「ありがとう。
…少し、苦しいかもしれないけど我慢してね…」
私の言葉を聞いた彼はコクリと頷く。
ごめんなさい、あなた。
これで、許して。
私は胸元の服にそっと指をかけて下に引く。
「(確か、あのお店だと…こんな風、だったかな…)」
遠い記憶を必至に探り思い出す。
「(そ、そーれ!ぱ…ふぱふ…ぱふ…!)」
むにむにと弾力のあるスライム越しにも伝わる彼の頭の形と混乱。
一体何をされているんだ?と考えているのだろう。
ーーーそう言えばあのバニーさんも『目隠しすると更に興奮する』とかなんとか言ってた気がしたわね。
「(そろそろ、良いかな…?)」
まだ彼を挟んでから10秒程しか経っていないけれど、正直、こっちが恥ずかしくて仕方がない。
あのバニーさんはよく色んな人にこんなことが出来るな、と感心してしまった。
なんて、そんな事はどうでも良い。
私は彼を二対のスライムからゆっくりと解放すると、すぐに元の位置に服を戻した。
「も、もう目を開けても良いわよ!」
「え、あ、うん」
「どう…だったかな…」
「どうって…えぇと…」
彼は少し、考えたた素振りを見せると左手を頬に当てて。
「よくわからないけど、凄く幸せな気持ちになれた…かな?」
「そう、なんだ…!なら、今日はこれでおしまい!また今度にしましょうね!」
私は言いながらベットから降り、そさくさと歩いて、ドアノブに手をかけた。
早く別の事をして頭を冷やさなければ。
もうそろそろ恥ずかしさの我慢の限界を超えてしまう。
「え、うん。
ゼシカがそれで良いなら…」
「じゃあ、朝ごはんにしましょうか!
今日は私が作るから、先に下に行ってるね!」
「あ、うん。
それなら僕はベッドを直しておくね」
「わかった!お願いするわ!それじゃ!」
バタンとドアを開けて颯爽と寝室を後にする。
危なかった…あと1秒でもいたらスーパーハイテンションさながら、全身がピンク色に輝いていたかもしれない…
まぁ、そうなったからと言ってどうなるって訳でも無いんだろうけど。
変に気まずくなるのは嫌だし、ね。
階段を下りながらそんな事を考えて頭を冷やす。
新婚生活初日からこんな事件が起きるなんて思いもしなかった。
けれど、そうね…
「次はもっと上手く、してあげなきゃね」
まさかアレがあんなに難しかっただなんて、思いもよらなかった。
やっぱり、バニーさんは凄かった…
「そうね…先ずはククールとモリーさん辺りに声をかけて資料を借りようかしら」
そしたら次は…やっぱりプロに教えて貰うべきかな。
なんて事を考えていると、いつの間にか台所に着いてしまった。
「あ…朝食に何を作るのか考えてなかった」
取り敢えず、保存室にあるもので適当なものを作ろうかな。
そう思って食料を漁り始めた。
ここにあるのはミーティア姫やトロデ王達が新婚祝いとして私達に贈ってくれた品々で、どれもこれも長持ちする食材ばかり。
当然、その全てが抜群に味のいいものだ。
「んー、結構色々あるのね。
これだと色んな料理が作れそうだけど…」
正直なところ私はあまり料理をしたことがない。
旅に出る前はメイドさんが料理をしてくれていたし、旅に出てからは一番起きるのが遅かった私は殆ど料理を作ったことがなかった。
勿論、一切料理ができない訳じゃない。
田舎とは言え、元は七賢者の一人が血を引く名家のお嬢様。
一通りの家事と、少なくとも五日分のローテーションを組めるだけの料理は作れる。
「と言っても、流石にこれだけ沢山の種類の食材があるならもっと料理のレパートリーを増やさなきゃならないわね」
となると、料理の事を聞くならやっぱりユリマちゃんかキラさんがいいかしら。
「んー…あ、そうだ!」
ゲルダさんやユッケ、ラジュさんやグラッドさんにトーポ…じゃなくてグルーノさんに聞くのも良さそうね。
面白そうな料理を知ってそうだし、何よりグルーノさんは彼の故郷・竜神族の里に住む竜神族だもの、彼の口に合うものが沢山あるはず!
「うん、俄然やる気が出てきたわ!片っ端からマスターして見せるんだから!」
今後の大まかな方針も決まった事だし、早速料理に取り掛かる。
「今朝は簡単なスープとベーコンエッグにしましょう!」
鼻歌交じりに調理を始める。
「うんうん!思ってた以上に楽しくなりそう!」
まだ見ぬ未来に胸をときめかせた私は、この後調子に乗って作りすぎてしまうのだけれど、それも彼と一緒に笑いながら食べ切った。
ダイエットも視野に入れておかなきゃ。
To be next story.
いやぁ、やっぱりゼシカは可愛いですね。
結婚したいです(切実)。
というか、取材(?)もかねてドラクエ8がやりたい。
自分、パヴァン王とシセル王妃の話が一番好きなんですよね。
リメイク版のボイス有りも良いですが、やっぱりテキストだけの方が好きですね。
あー、やりたい。
何故、ゼシカとはゲームの中でしか会えないのか…これがわからない…。
なんて下らないこと言ってないで、早速次の話の構成を考えますね。
それではまた次回の更新で会いましょう。
さようなら。