私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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いやー、アローザさんって書くのちょっと楽しいですね。なんでかわからないけど楽しい。
帰郷編(命名)その二です。
それでは、どうぞ。


第十七話 過去と手紙と家系

「手紙に書いてあることって本当なの?」

 

彼の横を通り過ぎ、お母さんの座っているところに便箋を置く。

 

「…ええ。残念な事にね。

けれど、貴女にも分かるでしょう?少なくとも無視出来る類の話ではない、と」

 

背後で立っているメイドに何か合図を出しつつ答えるお母さん。

私と彼は近くの空いている席に座る。

 

「まぁ、ね。でもこれでようやく納得いったわ。お母さんがどうして焦ってるのか」

 

「別に焦っては…。いえ、そうね。確かに焦っていました。けれど焦りもするでしょう?何があってもそうあってはならないのですから」

 

私たちの深刻な表情に一人ぽかんとしている彼に、お母さんは手元にある手紙を差し出す。

受け取った手紙に目を通すと、彼は酷く驚いた顔をした。

 

「アルバート家の血を引く者は短命になる…」

 

「…やはり知らなかったのね。

そうです。私の夫やそれ以前のこの家の血を引く者は皆若いうちにその命を落としていきました。

事故死や病死、魔物に襲われた者など様々でしたがそのどれもがどこか不自然だったと伝えられています。

理由はわからないけれど…。あなた達なら察しがつくかと思います」

 

運ばれてきた紅茶を飲みながらそう語るお母さん。

その理由はきっとラプソーンによるものだろう。

遥か昔にラプソーンを杖に封じた七賢者が一人、シャマル・クランバートルにラプソーンは多分呪いを掛けたんだ。

代々、彼の血を引く者は短命になるような呪いを。

そうすることで杖の封印を少しでも弱めようとしたんだろう。

 

「…けど、その原因だったはずのものはもう私たちが倒したんだからそんなに心配する必要はないと思うんだけど…」

 

「ええ。そうね。確かにそう。

けれど、もしものこともある。呪いは怨念に変わるものだから」

 

「だから急かすようなことをした、って事ですか?」

 

彼の言葉にお母さんは頷く。

 

「でも、だとしてもちょっとあれはどうなのかな。その、エッチな本を部屋に置いとくとかって言うのは…」

 

「そ、それは…

確かに、早計だったとは思い…ます」

 

「…ふふっ、なによそれ」

 

生まれて初めて見るお母さんの赤い顔に思わず笑いがこぼれてしまった。

それを見たお母さんは更に顔を真っ赤にして、一気に紅茶を飲み干すと。

 

「何ですかゼシカ!人の顔を見て笑うなんてはしたない!」

 

普段の調子で怒り始めた。

 

「お、奥様…!落ち着いて下さい…」

 

「分かってます!

貴方も、ゼシカがあのような態度を取った時はキチンと叱ってくださらないと!」

 

おろおろとなだめるメイドをよそに今度は彼にまで飛び火して、本当にお母さんらしくない。

 

「あっはははは!慌てるお母さんなんて初めて見た!

ねぇねぇ、前から気になってたんだけど、私のお父さんでどんな人だったの?」

 

そんならしくなさに誘われたのか、ついつい聞き辛かったことを聞いてしまう。

すると、お母さんは驚いた顔をした後に一度だけ深く呼吸をすると、目を瞑ったまま話し始める。

 

「…私があの人と結婚したのも丁度あなた達と同じくらいの歳でした。婚姻を迫る彼に少しだけ嫌気がさした私は逃げるようにしてリーザスの塔へ向かい、その最中に魔物に襲われたんです」

 

懐かしく、絵本を読むように優しく語るお母さんに、私たちは紅茶が冷めることも忘れて話に聞き入る。

 

「今思えば大したことのない魔物だったのだけれど…どこか、期待していたのかもね。

そうしたら、期待通りにあの人が来てくれた。抜かしたこともない腰を抜かしてその場で座り込んでいた私の前に現れて、別れる前に酷いことを言ったのに嫌味の一つも言わずに、ただ『結婚しよう』と。そう言って守ってくれた」

 

「うん」

 

「それから、私達は交際を始めました。

散歩道はいつもお決まりで、村の中を一通り歩いた後にリーザスの塔を眺めてからポルトリンク近くの海沿いまで行って海岸で夕焼けを見る。

ただそれだけのことだったのに、毎日毎日新鮮で楽しかった。何でもないはずの壺が何故か可笑しくて、道端に転がっている石ころさえ微笑ましくて、砂浜なんて宝の山のように思えた。

そんなある時に教えてくれたんです。

『貴女がいなければ好きでもない人にこれをプレゼントしなければならなかった。私は幸せ者だ』

そう言って、いただいたのが婚姻の指輪とゼシカに譲った魔導書。

その日から私はあの人の妻となったのです」

 

それは、とても幸せそうな顔で左の薬指を見つめる。

その姿はまるで少女のように輝いていて、どこか若返ったようだった。

 

「…驚いた。お母さんって昔から口が悪かったのね」

 

「えぇ。貴女の母ですもの」

 

ふふ、と二人で笑う。

既に冷え切っている紅茶を流し込み、席を立ち上がる。

 

「やっぱりもう少しここにいるわ。日帰りなんて寂しいでしょ?」

 

「好きになさい。

ただ、この家にいる以上は規則正しい生活をしてもらいますからね」

 

「はーいはい。分かってるわよ。

行きましょ、あなた」

 

今までなんとなく聞き辛かったことも聞けて、お母さんの惚気も聞けて、それにあんなに嬉しそうな顔を初めて見れて、ここに帰ってきてよかった。

 

「(私たちも負けないようにしないとね)」

 

「(もう勝ってるかも?)」

 

手を引く旦那様とそう囁き合う。

確かに、少なくとも負けてはないわね。でもどうせなら圧勝しないとね!

 

「部屋に戻るのは構わないけど、後一時間もしたら夕飯ですからね」

 

後ろで呆れ気味に言うお母さんに、はいはい、とだけ返してその場を後にした。

 

「…今でも覚えてます。あの日の夕焼けは本当に綺麗でしたね。もう、見ることは叶わないのでしょうけど」

 

そう、小さく呟く声と一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一時間しないうちに夕飯になった。

お母さんはいつも通りと言い張るけれど、どう見ても一人分とは言えないご飯の量に、彼と顔を見合わせて笑い合う。

食事のお供は当然と言うかなんと言うか、私たちの今日までにしてきたことだった。

中でも、特に食い付いていたのがハネムーンの話で、フォーグとユッケにあれだけのことをされたのに事に及ばなかったと言ったら大きなため息をついて。

 

「私が浅はかでした。

娘だけなら或いはと思っていましたが、義息子の貴方もそうだったのならお手上げです」

 

と、失礼なことを言われた。

それから特に大きな問題もなく世間話や、幼い頃の私の話なんかを少しして、今までにないくらい賑やかな夕飯は終わりを迎えた。

 

「こんなに話をして食事をしたのはかなり久し振りです。

本来ならお行儀が悪いとたしなめる場面もありましたが、今日はいいでしょう。

明日、朝食の十五分前には起こしに行きますから今日はもう外には出ず、お風呂に入って大人しく部屋で寝ること。良いですね?」

 

「ちょっとお母さん。私もこの人ももう子供じゃないんだからそんな言い方ないでしょ?」

 

せっかくの楽しいご飯だったのに。そう付け加えようとしたら、彼が口を開き。

 

「あはは。

ありがとうございます。それじゃあお言葉に甘えて、明日は起こしてもらおうか」

 

なんて、そんなことを言う。

ホント、この人はどこまで優しいんだか。

 

「えぇ。いつもは貴方が起こしているんでしょう?ゼシカは朝が弱かったから」

 

「ちょ、普段は私が起こしてるから!ね、あなた!?」

 

「え、えっと、結婚してからはゼシカによく起こしてもらってますね。でも、旅してる時は…」

 

「余計なこと言わない」

 

「はぁ…。

まぁいいわ。ほら、いずれ家長になるのですから先にお風呂へ入ってきなさい」

 

お母さんに言われると、彼は少し申し訳なさそうな顔をしてその場を後にする。

 

「お母さん?あんまり私のこと子供扱いしないでよ。恥ずかしい」

 

「何言ってるの。親から見れば子はいつまでも子供なんです。諦めさなさい」

 

食後の紅茶を啜りながらそんなことを言われる。

まぁ、そうでしょうけど。

 

「次は貴女が入りなさい。私はその後に入りますから」

 

飲み終えたのかカップを皿の上に置くと席を立ち上がるお母さん。どうやら自室に戻るみたいだ。

なら、その前に言っておかないと。

 

「ねぇ、明日のお昼過ぎからって時間ある?」

 

「…珍しいわね。

暇ですけど、なに?」

 

「ちょっと、そんな驚いた顔しないでよ。とんでもないことやらかしたみたいで変な気分なんだけど。

あのね、暇だったらここにいて欲しいの。彼とその、ちょっとお出かけって言うか、したいから」

 

どこか恥ずかしくそう言うと、お母さんは更に驚いた顔をした後に。

 

「分かりました。

明日は一日何もないですからどこへでも付いていきます」

 

そう、少しだけ嬉しそうに返して部屋へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be next story.

 

 




またも中途半端な感じで終わらせました。
次回、帰郷編その三 最終話。
お楽しみにしてください。

さよーならー。
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