私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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…書くこと何にもない。

では、どうぞ。


第二十話 思いもよらない訪問者

「…あの、どうしたのかしら」

 

彼の三連休が終わり、今朝からいつも通りに歯車が動き出す。

そのはずだった。

 

「うふふ。少しお休みをいただいたので久し振りにお話をしたいと思いまして」

 

「そ、そう。なら、上る?」

 

「是非!」

 

シンプルながらも気品のある白いドレス。上げた髪を留める精密で綺麗な作りの髪留め。そして、歩くだけで漂う風格。

彼女は、そう。我らが[元]馬姫のミーティア姫。

何を思ってか全くわからない…うそ。思い当たる節はあるけど考えたくない、そんなちょっと微妙な関係になってしまったのに、私達の家へとお忍びで遊びにきていた。

 

「とっても素敵なお部屋。何度見てもうっとりしてしまいます」

 

「そ、そう?喜んでもらえて嬉しいわ。

あ、何か飲む?と言っても、安いお茶くらいしかないけど…」

 

「ミーティアは緑茶が飲みたいです。最近、ハマっていて」

 

身振り手振り足の運びに至るまで、身体のどこかを動かすだけで舞い上がる気品のオーラに圧倒されつつも、頷いてお茶を用意しにいく。

馬姫様の時ですら只者ではない雰囲気を醸し出し、人の姿に戻ってからは私達と一緒にいるのが場違いなのではと常に考えてしまっていたミーティア姫。

以前あった時から結構時間が経ってたけれど、その間にお城でお姫様としての仕事を多くしていたのか、今では気軽にお喋りなんてとてもじゃないけど言えない感じになっていた。

…いやまぁ、時々手紙でのやり取りとかはしてたから、完全に私が負い目を感じているだけなんだけど。

 

「はい、どうぞ。

美味しくなかったら言ってね。他にもまだいくつかあるから」

 

「ありがとうございます。

…美味しい。緑茶は心が温まりますね」

 

「そうね。芯から来る感じよね。わかるわ」

 

「うふふ」

 

テンポよく会話が続いたのもここまで。それからはなんだか気まずい感じがして上手く言葉が口から出てこない。

おかしい。以前、ゲルダさんを加えた三人で三角谷に行った時や、みんなでワイワイした時はこんな事なかったのに…

そう自分で考えていて気がつく。

よくよく思えば私、ミーティア姫と二人で話したことってなくない?あの時もこの時もその時も思い返せば必ず私とミーティア姫にプラス誰かだった。

…え、どうしよう。

 

気がついた途端に訪れる僅かな動悸。別にミーティア姫が嫌いだったり苦手だったりするわけじゃない。

だだ、その、どうしても彼のことがあるから手放しで安心できる相手じゃないのだ。

だ、だって、彼女が本気になったら私なんて秒で消されるわよ。多分。

ミーティア姫に限ってそんなことはないと分かってはいても、心のどこかで〔もしかして〕と思ってしまう自分がいる。

 

「…なんだか変な感じですわね」

 

「へ?」

 

湯呑みを驚くほど上品にテーブルに置いてそんなことを言うミーティア姫に、思わず間抜けな声が出る。

 

「旅をしている時は皆さんとたくさんお喋りしたいと思っていたのに、いざこうして二人きりでお会いすると、取り留めのないお話すら思い浮かばないのです」

 

寂しげに笑って首を傾げるミーティア姫。

…多分、それだけが理由なわけじゃないと思うのだけど…。

 

「わかっていますわ。ゼシカさんがミーティアに苦手意識というか…そういうのを待っていることを」

 

「え、そ、そんなことないわよ?」

 

疾風突きのような素早さで核心に触れられる。

も、もしかして、今日家に来た理由ってそれ、かしら。

 

「ふふ、良いんです。ミーティアも初めのうちはそうでしたから」

 

「いや、その…

…うん。実は少しだけ。で、でも!嫌いとか苦手とかそういうのじゃなくて…えっと…」

 

なんとか弁明しようにも必ず触れなければならない話題を前に言葉が詰まる。

私は本当にミーティア姫を苦手だと思ったりしたことはない。むしろ、あんなに芯の強い子だもの。好きに決まってる。

けど…

 

「あの人の事、ですわよね」

 

「…うん」

 

言い辛い事をはっきりと言えるミーティア姫。

ホントに凄いと思う。

 

「多分、ゼシカさんは勘違いしていると思いますのではっきりとお伝えしておきますわ」

 

「…?」

 

いつも笑顔で振る舞うミーティア姫には珍しく、神妙な面持ちに変わる。

いずれ一国を預かる者の風格と言うのだろうか。部屋が一瞬で引き締まるのを感じた。

 

「ミーティアは、あの人を好きだと思った事はありませんわ。

ミーティアは、ただ、あの人に憧れていただけですの。強く逞しく穏やかで優しい真面目なあの方のようになりたいと、小さい頃から思っていたのです。

ただの憧れを、何も知らないミーティアはそれを恋だと勘違いしていたのです。

その事実をあの日、結婚式をあげるはずだった前夜に理解したのです」

 

聞く者を虜にするほどの美しい声で、口が挟めないほど確固たる意志を持って語り終えたミーティア姫は、いつものような優しい笑顔をみせて。

 

「だって、ミーティアはわがままな子なんですよ?本当に好きな方だったら、意地でも自分のものにしてしまいますもの」

 

そう締めくくった。

 

「…そっか」

 

どれだけ自分が子供だったのか、今ここでようやく思い知った。

ミーティア姫は自分の気持ちに嘘をついてまで私たちの事を認めてくれていた。なのに、私はいつまでもうじうじと過去を引っ張り、いざ目の前にミーティア姫が現れたら彼女にこんな事を言わせてしまうほど取り乱していたなんて。

申し訳なくて腹が立つ。

 

「ごめんなさい。私、貴女の言うように勘違いしていたみたい」

 

「ふふ、なら誤解が解けてよかった。これからは気をつけてくださいね?」

 

「うふふ、了解」

 

ミーティア姫がそう決めていたのなら、私が駄々をこねるわけにはいかない。

そもそも、結婚するあの日に決めたじゃない。

もうこれ以上、自分の気持ちに嘘をつきたくないって。

 

「ところでゼシカさん!普段のあの人ってどんな感じなんですか!?

お城で見るあの人はいつも気を張り詰めていて、少しだけ怖いの」

 

「戦闘してた時みたいってことかな。それは確かに怖いわね。

えっとね、家だと結構気の抜けた顔してること多いのよ」

 

「本当!?もしかして…こんな感じてすか?」

 

「そうそう!

あはは、すっごい似てるわ!」

 

「うふ、実を言うとあの人、見習いの頃はよく『ボーッとするなーッ!』って、よく怒られていましたの。

それが今では、逆に起こる立場になってて…」

 

「想像つかないわね…

ねぇねぇ、お仕事してる時の彼、どんな感じなの?」

 

「えーっとですね、なんて言うか、すごく厳しい感じですわ。でも、優しさも滲み出てるからか、みんなに慕われています!」

 

続けられる会話はとどまる事を知らず、話題は言い出せなかった彼のことばかり。減り続ける御茶請けのお菓子と、不思議と注がれることのないお茶。

私もミーティア姫も今はただ、自分の知らない彼のことを知りたくて仕方がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

To be next story.

 

 





久々のミーティア姫登場回でした。
というか、もしかして番外編以外で出るの初めてかな?
この二人にはとても仲良しでいてほしい願い、こんな内容になりますた。

ではまた次回。さよーならー
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