私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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さて、始まりましたトロデーン城百物語会。
元ネタとして使えそうなのを探して、いい感じのを見つけるんですけどそれがアホみたいに怖い。
ゼシカじゃないですが、私も心が鍛えられそうです。

では、どうぞ。


第二十五話 彼と私と百物語〜其の十〜

「…そうして、二人は今も夜の街を彷徨っているのです。真夜中に駆け回る子供を友達にするために。

[駆ケル日ノユメ]と言うお話でした」

 

薄暗いスポットライトが少しずつ色味を失っていく。

やがて綺麗に消え去り、残ったのはロウソクの灯り。それも、語っていた人の吐息によって一本の白く細い線へと姿を変えたのだった…。

 

「…いやー、正直一人くらいそんなに怖くない話の人がいると思っていましたが、まさか九人目まで身震いするようなお話だとは思いもしませんでした」

 

再びスポットライトに照らされる司会の人は、どこかオロついた様子で進行を再開する。

司会の人が言う通り、今の人の話も含めてどれも恐ろしく聞こえる話ばかりだった。

怪談話なのだから当然と言えば当然なんだけど、でもまさかここまで沢山の種類があるとは思っていなくて、そこには少し驚いた。

 

「(結構怖かったね。大丈夫、ゼシカ?)」

 

「(えっ!

あ、うん。そんなにでもなかったわ。怖かったけどね)」

 

突然耳打ちしてくる彼に心臓を飛び上がらせながらも答える。

さっきの話より、今の彼の方が驚いたというのは内緒だ。

 

「(そっか。特訓して良かった)」

 

「(うん)」

 

彼の微笑みに同じく微笑みで返す。

ホント、あの特訓が役に立ったわ。だって、今日聞いた九つのお話のうち三つはその時に知ったものだったし。

残りの六つも、流れや場所出てくる人や人数が違うだけで大まかな筋と落ちが同じだって気がついてからは、やっぱりそんなに怖くなかった。

彼の言っていたように『中身さえ知ってれば怖くない』と言うのは本当だったみたい。

 

「おぉっと!ここでトロデ王とミーティア姫の点数が出たようです!」

 

玉座に座る二人の手元には今日で九度目のフリップポード。

点数は、トロデ王が八点。ミーティア姫が最高得点の十点だ。

 

「ふむふむなるほど。

これまで七点前後だったミーティア姫が初めての最高得点を付けました。理由を伺ってみましょう!」

 

マイクを手に玉座の方へと向かい、大臣に渡されたマイクがミーティア姫へと届けられる。

 

「このお話は、なんて言いますか怖いだけではなく悲しい気持ちにもなりました。

魔物に殺されてしまい街を彷徨う幼い男女の霊。彼らはただ友達が欲しかったのに、恐れられてしまったために余計に友達が出来なくなってしまった…

二人のことを思うと胸が苦しくなってしまいます。

なので、十点を付けさせてもらいました」

 

少し潤んだ声で理由を述べる姿に、会場の人達からも啜り泣く声が聞こえる。

…うん。私も、点数をつけられる立場だったら十点をつけてたかも知れない。

 

「ちなみにワシは怖かったが怪談か?と思ったから八点じゃ!」

 

ミーティア姫からマイクをひったくり、誰も聞いていない点数の理由を大声で言うのはトロデ王。

会場からも「そうだそうだ」という声が聞こえる。

 

「賛否両論と言ったところですね。ちなみに私は怖すぎて途中から聞くのをやめてました!」

 

いつの間にかマイクを取り戻した司会が、やっぱり誰も聞いてない感想を口にしたことで会場は徐々に落ち着く事となった。

 

「さぁて!場内の恐れおののく空気冷めやらぬ中、とうとう真打ち登場です!

それでは行ってみましょう!我らが勇者と兄弟の盃を酌み交わした山賊!コワモテヤンガスの登場です!」

 

バトルロードよろしく、声高らかに紹介されたヤンガスにスポットライトが当たる。目に出来た影がただでさえ怖く見える顔をさらに際立たせていて既にホラーのようだ。

 

「ようやくオレの番か…。

アニキ!アッシの晴れ舞台見ててくれでゲス!」

 

楽しげに笑って手を振ってくるヤンガスに彼も手を振ることで応える。

…あれでも怖く見えるんだから不思議よね。

 

「気合いは充分なようです!では、どうぞ!」

 

司会の人を照らしていたスポットライトが徐々に消えていき、残ったのは生きる怪談のような怖さを持つヤンガスを照らす光だけ。

示し合わせたかのようにシン…と静まり返る会場で、ゆっくりと話し始めた。

 

 

ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー

 

アレはまだアッシがアニキと会う前の話でゲス。

皆さんも知ってると思うでガスが、悪徳の町で有名なパルミドは昼も夜も物盗りが歩き回るような場所でガス。

ある日、アッシはいつものように町の外で家業を終え、町へと戻ったのでゲス。

腹が減ってたアッシは、いつの間にが出来てた新しいくせにオンボロの店に入ったでゲス。

 

「オヤジ!ここで一番高いメシと酒をくれ」

 

懐が潤ってたアッシは気前良く頼んだでガス。

今思えば、それが間違いだったのかも知れねぇでゲスなぁ…

 

「はいよ。

酒はこれで、メシはちょっと待ってな」

 

パルミドには珍しく活気のある振る舞いと目をした店主のオヤジはすぐに酒を持ってくると厨房へ消えたでガス。

オマケで出されたツマミを食いつつ酒を舐めて待つこと十分、いい匂いが香ってくる。

…店一の酒とは言えパルミドのでゲスから、他所に行けば安酒の部類でゲスが、それでもアッシはほどほどに酔ってた。

 

「これがアタシの店で一番高いメシのソバだよ」

 

「そば?聞きなれねぇ食いもんだな。まぁいいや。いただくぜ」

 

店主が自慢するだけあってそのメシはめちゃくちゃ美味かったでゲス。出来るならもう一度食いたいと思うくらいでゲス。

 

メシを食い終わり、酒も飲み終えたアッシは勘定を払うため財布を出したでゲス。

 

「オヤジ、いくらだ?」

 

「あいよ、勘定だね。全部で五百七十ゴールドだ」

 

「あぁそうかい。そんなにしなかったな。

…っと、ちっと飲みすぎた上に小銭ばっかりだ。ちょっと一緒に数えてくれねぇか?」

 

「仕方ないお客だねぇ。

いいよ、出しな」

 

「へっ、すまねぇなオヤジ。

えぇっと、五十ゴールドが、一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚…」

 

「ん?お客さん、今何時か見てもらえるかい?仕込みの時間かも知れないんだ」

 

「おう。今は二時だな」

 

「そうか、ありがとう。お客さんが帰ったら仕込み始めなきゃな」

 

「まぁ頑張ってくれ。

二枚、三枚、四枚、五枚、六枚、七枚、八枚九枚十枚っと!あとは二十ゴールドだな。

ごちそうさん」

 

そうしてアッシは家へ帰り、翌朝気がついたんでゲス。

 

お金を多く払ってたってことに!

しかも!その店は次の日には綺麗さっぱり跡形も無くなってたんでゲス!

 

ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー

 

「ありゃあ幽霊の仕業だったんだろうなぁ…」

 

静まり返ったままの会場。

さっきまでなら話のオチに差し掛かった辺りからぼんやりとライトの明かりが落ちていっていたにも関わらず、未だに充分な光を放ったままだ。

 

「このバカが!それのどこが怪談だって言うんだい!」

 

スパーンッ!と気持ちの良い軽い音が響く。

 

「いってぇな!何すんだよゲルダ!」

 

「アンタがあんまりにも間抜けだからつい手が出ちまったんだよ!」

 

叩かれた頭をさすり抗議するも勢いの強いゲルダさんにたじろぐヤンガス。

途端に会場は笑い声で溢れかえった。

 

「と、取り敢えず、お二人の点数を見てみましょうか」

 

あまりの展開について行けてなかった司会。我に帰り、振り返った先にあったのは。

 

トロデ王[0点] ミーティア姫[五点]

 

という、現状では最低点数だった。

 

「馬鹿者!ここは落語を披露する場所ではないわい!出直してこい!」

 

「なんだとこの野郎!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください?

ミーティア姫は何故五点という高得点を付けたのですか?」

 

 

懐かしい言い合いが始まりそうな中、一人違和感に気がつく司会。

確かに、あの話なら五点がかなりの高得点になる。

 

「…えっと、その、実は昔、ミーティアも似た事がありまして…。そのせいでお小遣いをほとんど使うことになってしまったんです…

なので、気持ちがわかります…」

 

話しながら恥ずかしくなってきたのか、フラップに顔を隠してしまうミーティア姫。至る所から黄色い声援が飛んできている

…ていうか、お姫様のお小遣いをほとんど使っての買い物って、一体どれだけぼったくられたのよ…。間違いなくホラーじゃないそんなの。

 

「人が違えばここまで違うんですねぇ…。

それにしてもヤンガスさん!貴方のおかげでいい感じに会場に活気が溢れてきました!おかげで私も新しい気持ちで次のお話を聞けそうです!

ありがとうございました!」

 

上手い具合に司会が締めくくるとヤンガスを照らしていたスポットライトが消え、十一人目の語り手へと移る。

 

「さぁて次は!世界の女性を手玉にしてきたであろう色男!」

 

銀の髪を照らされて、皮肉屋に笑うククールだ。

 

 

 

 

To be next story.

 

 




怪談だと言ったな?アレは嘘だ。

今回の元ネタは言わずと知れた落語の[時そば]。
説明は不要でしょう。
ちなみに、私が初めてかの話を知ったのは小学生くらいの頃。
あの時でも面白く感じたかな落語ですが、今見てみると上手いこと誘導されていることに気がつきます。
数えながら時計を見て、時計の数を継続してまた数え直す。マヌケに聞こえるかもしれないけれど、同じようなことなら誰にだって経験あるはず…
老若男女問わずに楽しめるのが落語の良いところですね。

それではまた次回。
さよーならー。
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