今回の語り手はタンバリン演奏者として名高いククールくん。
私がプレイしていた時も、暇さえあればシャンシャンやってみんなのサポートをしてくれていました。
そんな彼がどんなお話をするのか。
それでは、どうぞ。
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俺の暮らしてたマイエラ修道院で昔からよく噂になってた話があってな。
なんでも、夜になると[鳴る]っていうんだ。[出る]じゃなくて、[鳴る]ってところに興味の引かれた俺はまだガキの頃に拷問部屋の前にある尋問部屋に忍び込んだんだ。
その日の夜。音はすぐに鳴り始めた。
…デェーーー。
……デェーーー。
外からバレないように明かりはロウソク一本。
丁度、俺の目の前にあるやつと同じくらいのだな。それしかない明かりの中で、そんな音が鳴り始めたんだ。
興味本位で部屋に入ったはいいが、その音に耐え切れず俺はすぐに逃げようとした。
テーブルの下から頭をぶつけながら出て、ドアに手をかける。
だか、そのドアはビクともしないんだ。元々建て付けが悪いってのもあるかも知れないが、普段ならちょっと力むだけで問題なく開くんだぜ?
それが、その時に限って押しても引いてもうんともすんともいいやがらねぇ。
とうとう我慢の限界にきた俺は大声を出して誰かを呼ぼうとしたんだ。
だがどうだ?
喉から漏れるのは掠れた音だけで言葉と呼べるものは一つも出てこない。
お陰様でパニックになった俺はドアを思い切り叩いた。
ドンドンッ!ドンドンッ!
って。
でもな、不思議なことにドアを叩いた感触はあっても肝心の音が出ねぇ。
「あぁ、幽霊か…」
ここまでくりゃ、ガキでも分かる。
声は出ねぇ、叩いても音は出ねぇ。魔力の気配もなけりゃ人の気配もねぇ。
心底びびったね。
俺はとにかくその部屋から出たくて出たくて仕方がなかった。
口から出る掠れた音と、叩いても出ねぇドアの音に必死になって縋り付いてとにかく助けを待った。
だか、助けは一向に来ない。
いつもならとっくに夜回りの騎士が部屋に俺がいないことに気がついてもいいはずなのにだ。
そのせいで俺は一瞬冷静になっちまった。
昔から頭の回転は良い方だったからな、すぐに気がついた。
時間が経ってねぇってことにな。
メラメラ燃えてるくせに、ロウソクはロクに減ってなかったんだ。
それじゃあ誰も助けに来るはずがない。
今までの自分の行動が全て無意味だって気がついた時には愕然としたよ。その場にへたり込んで、一生ここから出られないんだと悟ったんだ。
…デェーー
……デェーー
必死に出ようとももがかなくなったからか、また音が聞こえ始めた。
だがその時にはあまり怖くはなかったんだ。
何せ一生付き合っていく音だ。びびったってしょうがねぇと思ってな。
そうやって冷静になると、今度はその音がよぉく聞こえてくるんだ。
…イデェーー
……ナイデェーー
鳴っている音は、[ナイデ]と言ってるように聞こえてきたんだ。
何がないんだ?そう思って、やめとけば良いのに耳を凝らした。
…サナイデェーー
……ロサナイデェーー
………コロサナイデェーー
……………コロサナイデェーー
間違いなかった。
今までずっと、鳴ってると思われてたのは誰かの声だったんだ。
他の連中は最初の段階でびびってすぐに逃げたんだろう。だから、[出る]じゃなくて[鳴る]と思ってた。
だが実際は、声が[する]だったってわけさ。
コロサナイデ
コロサナイデ
コロサナイデ
コロサナイデ
ずっと同じことを繰り返される言葉に言いようのない恐怖を感じた。
命を取られるとか、何か…要は幽霊だな…が出てくるとか、そういうのとは全く違う恐怖。
コロサナイデ
コロサナイデ
ヲコロサナイデ
シヲコロサナイデ
不安になればなるほど耳が敏感になって、本来なら聞こえないはずの音まで聞こえてくるんだ。
ワタシヲコロサナイデ
ワタシヲコロサナイデ
ワタシヲコロサナイデ
ワタシヲコロサナイデ
ワタシヲコロサナイデワタシヲコロサナイデワタシヲコロサナイデワタシヲコロサナイデワタシヲコロサナイデワタシヲコロサナイデワタシヲコロサナイデワタシヲコロサナイデワタシヲコロサナイデ
連鎖して聞こえてくる音。
いっそ恨みさえこもってくれてれば捻くれてた俺には良かったかも知れなかった。
異端者、異教徒の分際で何を。って思えたからな。
だがその音には恨みも恐怖も怒りも無かったんだ。
ただただ、ひたすらに助けを求めてた。
どこまでもどこまでも、ただただ切実に願ってるんだ。
ワタシヲコロサナイデ
ってな。
それが俺にはダメだった。
ずっと一本調子で言うんだ。音の高低も感情の起伏もずっと同じ。
鼓膜を永遠に揺らすその音に耐え切れず俺はとうとう気を失った。
糸が切れるみてぇにプッツリと。
眼が覚めると、目の前にはオディロ院長の心配する顔があった。
明け方、その時の騎士団長様が尋問部屋に行くと、俺が寝てたらしいんだ。
騎士団長様はたいそう驚いたらしい。
何せ、俺が部屋に閉じ込められてた時の夜回りが団長様だったんだからな。
横着者だった団長様は俺の部屋にノックして聞いたらしい。
『ククール、いるか?』
そう聞くと部屋からは。
『居ますよ。もう寝ます』
と声が返ってきたらしい。
俺にそんな記憶はないから、抜け出した後の出来事だ。
本来なら夜中に抜け出すなんて折檻ものなんだが、その時は騎士団長様の失態ということもあってお咎めはなかった。
オディロ院長は元々折檻には難色を示してたしな。
騎士団長様が部屋を出て行った後、オディロ院長に俺は尋問部屋で何がいるのか知ってるか聞いてみたんだ。
「まだ幼いお前に話すべきかは分からないが…
あの尋問部屋では、稀に無実の人を収容してしまうことがあって、そういった人たちは我々と同じ神を信仰する者。
尋問中もただ許しを請うていたんだよ」
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「オディロ院長はそう言いながら俺の頭を優しく撫でてくれた…。
って、話だ。
題名はそうだな…[部屋の鳴る音]ってのはどうだ」
ククールら最後に、ふっ、と笑い、ロウソクの火を消した。
会場からは誰一人として声が上がらない。さっきの、ヤンガスの時の大笑いが嘘のようだ。
「…え、えぇと。ま、まずはお二人の点数を見てみましょうか」
司会の言葉に、急いで点数を書き始めるトロデ王とミーティア姫。
他の人たちが呆然としているのだから、この二人だって例外じゃない。
トロデ王[十点]ミーティア姫[十点]
という、当然と言える高得点だった。
「な、なるほど。理由は聞くまでもなさそうですね。
いやぁ、ククールさん。貴方、幼少期にどれだけ恐ろしい思いをしているんですか」
努めて明るく振る舞う司会。けれど、その身振り手振りはどこかぎこちない。
「(…大丈夫、ゼシカ?)」
「(ダメね。無理。怖い)」
司会とククールが会話をする中、彼の耳打ちに答える。
正直、冷や汗で手が大変なことになってる。身体はカタカタ震えてるし、口元が痙れんしてピクついてる。彼には申し訳ないけど、この手を離してもらうわけにはいかない。
「(僕も、かなり肝が冷えたよ。内容もそうだけど、ククールの話し方が上手いなんてものじゃなかった。
やっぱり、実際に体験してる人はとんでもないね)」
「(全くよ。途中から心臓が口から飛び出て来ないか心配で余計に怖かったわ)」
「さて!それでは次に行ってみましょうか!
今度の話し手は…女盗賊のゲルダさん!」
恨み言を全部吐く暇もなく会は勧められる。
「これだけ恐ろしい話の後にするのも気が引けるけど…
なぁに、アタシの負けず劣らずさ!お前ら!びびって腰抜かすんじゃないよ!」
声高に宣言し、恐怖で沈んでいたはずの会場中からちらほらと声が上がる。
流石は荒くれ者どもを率いていたゲルダさんだ。発破の威力が違う。
「それではいってみましょう!」
スポットライトの下で右手に持ったマイクを真上に掲げる司会。
さっきまではしてなかったのに…。
…ていうか、もう最高得点出たんだし、終わりで良くない?
「アレはアタシが船に乗ってた時のことさ…」
私の思いもむなしく、百物語は続くみたいだった。
To be next story.
今回のお話の元ネタは「不安の種」シリーズ(作・中山 昌亮)からです。
ですが、作者様には謝らなければならないことが。
そもそも二次創作は色々グレーなので、元ネタとして扱うのなら相応の調べをしなければならないと思っています。
それなのに今回は、画像検索で引っかかった「何これ怖ッ!」と思っただけで題材にしようと思いました。
当然、公式サイト等で読める立ち読みなども使い、作品そのものの世界観は理解したつもりですが、その分、元になった画像の話を調べにくくなってしまったのです。
…要するに、あんまりにも話が怖くてそれ以上読むのを拒否した。と言うことです
なので、元にさせていただいたお話とは大分、どころかかなり違うと思います。
…というか、「殺さないで」のところ以外は全く違うのかも。(世界観すら)
それでも、筆者的に引っ掛かりを持ったのであとがきにて弁明のような言い訳のような謝罪を致しました。
不安の種はホラー系が好きな方なら必ず楽しめると思いますよ!興味が出ましたら是非!実写化もされているそうな!
それでは、次回。
さよーならー。