私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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さて、いよいよトロデーン百物語会も残すところも後四組。
今回の語り手は我らがげるださんじゅうにさい!見た目の割に思いの外年が言ってるというアネゴです!
不覚にも十二という数が被ってる!(今気がついた)

では、どうぞ!


第二十七話 私と彼と百物語〜其の十二〜

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これはまだアタシが二流からアタマをもたげた頃の話さ。

後ちょっとで、世界中で有名になれるってんで、知らず知らずアタシは焦ってた。

とにかく功を欲しがったアタシは至る所で盗み回ったさ。

洞窟、塔、滅びた城といったところはもちろん、地主や金持ちの家とかにもね。

ヤバイお宝を知ったのもその時だ。

廃れて廃墟となっていたある名家に盗みに入った時のこと。

そこには蔵が二つあった。

片方にはゴミ同然のガラクタばかり置いてある蔵。

もう一つはお宝と呼べるものばかりを集めてあった蔵だ。

とっくに誰も住んでいなかった家だからね。蔵から物を盗るのは大して苦じゃなかった。精々が重たいってくらいか。まぁ、うれしい悲鳴さ。

で、欲が出た。

チラッとしかガラクタの蔵は見てなかったからね。もしかしたら、とんでもないのが埋まってるんじゃないかと思った。

重たそうなのを一通り運び終えたアタシ達は、部下二人にガラクタの蔵を見に行くように言って、残りの細かな宝石だの装飾品だのをアタシ一人で漁ってた。

それの量が思いの外多くてね、予定よりだいぶ合流するのが遅れちまった。

先に行かせてた部下の二人はちょいとビビりでね。威勢はいいんだが、暗がりの中だと肝が小さくなっちまうような奴らだ。

だから最初は何かのイタズラかと思った。

 

ガラクタの蔵に行くと、部下の一人…Aとしとくか。が入り口に背を向けて何かを口にくわえてるんだ。

もう一人の部下…Bは、手にしてるロウソクがグラグラ揺れるのも気にしないでAの事をしきりに呼んでた。

 

「おい!何やってんだ!んなもん開けたところでアネゴは喜ばねぇよ!」

 

ってな具合でな。

あんまりにもビビり散らしながら言ってるもんだから、アタシを怖がらせようとしてやってるんだと思って、入り口の影から少し様子を見てたんだ。

だが、どうにも様子がおかしい。

Aは相変わらずガジガジと不快な音を立ててるだけで、一向にBに返事を返さない。二人は気持ち悪いくらい仲がよかったからね。そんなのはあり得ないのさ。

Bも、アタシが来るのを探ってる様子が一つもない。怖がらせようとする相手がいないんじゃ演技の意味もないんだから、チラリとだって入り口を確認するはずだ。

そこで気がついた。

これは普通じゃない。何か、魔物のせいかもしれないと。

 

「おい!なにやってんだいあんたら!」

 

そう考えてからはすぐだった。

一息に二人のところまで駆け寄って、まずはBに問いかけたんだ。

 

「あ、アネゴ!

や、ヤバイんですよ!なんか、Aがいきなり!」

 

冷や汗を垂らしながらBはAを指差す。指先はアホみたいに揺れてるんだ。筋骨隆々の、荒くれ者がだよ?これは多分魔物のせいじゃないと思ったのはその為だ。

指差された先を見て、アタシは本気でビビった。

 

死んだ目で、ひたすら木箱をかじってるAがいたんだ。

 

しかもただの木箱じゃない。鉄の鎖でぐるぐる巻きにされてんだ。どう考えても人の歯じゃ歯が立たない鉄の鎖を、どうにかして噛みちぎろうとしてるんだ。

半分パニックになったアタシはすぐさまそいつの顔を思いっきり殴ってその木箱を奪い取った。

手にまとわりつくのはAのヨダレだけじゃない、噛みすぎて歯茎から垂れた血もだった。

 

「アネゴ!それ、そこの鎧の隣にあったんです!」

 

惨状に呆気にとられてたアタシに声をかけたB。すぐに目に入った、鎧の隣にそれを叩きつけるようにしておいて、起き上がってきたAを連れて急いで外に出たんだ。

出た先に見えたのは井戸。

やることが理にかなってるかどうかなんて知ったことじゃないが、咄嗟にその井戸から水をすくい上げてAに、文字通り浴びせるようにして飲ませたよ。

あの木箱がなんなのかわからない。見た感じ魔物でもない。なら呪いの違いだろう。だったら、水で洗い流せるんじゃないかって思ってね。

我ながら頭の悪い結論だったが、それがよかった。

三杯目か四杯目だったかね…。

それまで、Bに押さえつけられてないと蔵の方に行こうとしてたAが急に暴れるのをやめてさ。

 

「…水浴びには早くないですか?」

 

なんて言い出したんだ。

怒りより先に安心感が湧いたアタシ達は、ホッと胸を撫で下ろして家に帰ったんだ。

 

 

翌日、パルミドにいる情報屋から盗みに行った名家の話を聞いたんだけどね。

なんでも、あそこには代々呪具が祀られてるって噂があったらしい。

呪具に祈りを捧げることでその家は長い間繁栄出来ていたんだ。

だが、ある代の当主が『そんな気色の悪いもの、どこかに捨て置け』とメイドにいったらしくてね。

昔から使えてたメイドは困り果てた末に蔵にしまうことにした。

宝の方じゃ目立つだろうから、詰め込まれてるだけのガラクタの蔵にしようってことでね。

それが原因で名家はその代で没する事になったんだが…

未だに、あの木箱の謎は解けていないんだ。

 

 

ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー

 

「[隣の蔵のお宝]の話は以上だよ。

どうだい?あんたらもその家に盗みに行ってみたら。

責任は負わないけどね」

 

ふぅ…、と流れるような自然さでロウソクの炎が消えた。

 

「ククールさんに続き、実話からでした。

しかし恐ろしいお話ですね。盗みに行く、なんてことはまず無いでしょうけど、友人の家や祖父母の家だったりに蔵がある人は、不用意に触らないほうがいいでしょう…」

 

感想を言い終え、振り向く司会。

スポットライトに照らされた玉座の二人の手元には。

 

トロデ王[九点]ミーティア姫[七点]

 

とあった。

 

「おや、ミーティア姫様は七点ですか。あまり怖くなかった?」

 

不思議そうに問いかける司会に、ミーティア姫は少し困った表情を見せる。

 

「えっと、お話は凄く怖かったのですけれど、盗みに行った先での出来事なので、自業自得なのでは…?と思ってしまいました。

なのでこの点数です」

 

「なるほど。一理あります。ミイラ取りがミイラ、ではありませんが、減点されてしまうのも致し方無いでしょう」

 

「くぅ。手厳しいねぇ」

 

指を鳴らして残念がるゲルダさん。

会場からは、結構怖かったぞー、なんて応援めいた声が聞こえる。

 

「(ねぇあなた。どうしよう)」

 

「(どうしたのゼシカ?)」

 

いっそ繋がってほしいとまで思いながら彼の手を握る。

腕が震えて心臓が高い位置で鼓動を鳴らす。それは、さっきのゲルダさんのお話が怖かったからでも、ククールやその前の人たちのお話がぶり返したせいでも無い。

 

「(私、緊張してきちゃった。どうしよう)」

 

「(…頑張って!…痛っ!)」

 

無責任な彼の発言に思わず握る手に力を込める。

分かってるわよ。この緊張は自分でどうにかしなきゃいけないってことくらい!

分かってはいても、反撃せずにはいられなかった。

 

「さぁみなさん!トロデーン百物語会もいよいよ大詰め!残すところあと三人となってまいりました!

次なる語り手はこのお方!見た目が恐怖感から一切かけ離れている彼!

モリーさんです!」

 

瞬間、会場全体が揺れるような熱気と拍手に湧く。

さながら、バトルロードの試合が始まる直前のように。

そう。

今まではみんな座っているだけだった椅子の上に立つ、モリーさんの姿を見て。

 

 

 

To be next story.

 

 




今回のお話は「怖話ノ館」さんに投稿された「蔵にしまわれないお宝」というお話が元になっています。
知ってる方なら途中で察しがついたかと思いますが、怖話ノ館さんに投稿されてた内容とかなり類似しています。
気になった方は検索検索ゥ!
それにしても、蔵や小箱、といったものって怪談話とかの定番だったりするんですかね?
あの、とんでも怖い「コトリバコ」のお話も蔵から出た小箱だったような…
もしも、蔵に小箱やら怪しいものがあったら不用意に触らないことをお勧めします!

それでは、また次回!
さよーならー
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